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18番人気の奇跡から始まった、俺と隆平の探偵事務所 ~ざまぁもチートもない、探偵事務所のリアルな日常と裏稼業~  作者: 風風風


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第10話 【 隆平のブレインたち 】

依頼を断れば、これまでの悪事がどこへ

通報されるか分からない。かといって、

この底知れない老人の巨大な罠わなにこの

まま飛び込めば、二人の人生は完全に

その男の玩具おもちゃにされてしまう。

「どうする、隆平……」

俺の問いかけに、隆平は目を光らせた

まま、静かにこう呟つぶやいた。

「乗るしかないだろ。……たとえそれが、

地獄への片道切符だとしてもな」

滝野川の冷たい夜風が、眼下の街に吹い

ている。

康介と隆平の心を、揺らし続けるように。

「なあ、隆平。あのじじいと樫野里奈

の間に、いったい何があったのか、

お前はどこまでつかんでる?」

滝野川のマンションの高層階。

西日が傾き、室内の影が濃くなる中で、

康介は手元のメモ用紙から目を上げて

相棒に問いかけた。

隆平は冷え切ったコーヒーの缶をテー

ブルに置き、静かにディスプレイの

画面をスクロールさせながら口を開く。

隆平の情報の実際の入手先は、隆平の

ブレインの一人、藤田だ。

彼は、弁護士事務所に勤めるサラリー

マンだが、高校時代から趣味でプログ

ラミングをたしなんでいた。

隆平とは、同級生である。

その藤田が、自身の知識とAIを駆使

して、プログラミング仲間と協力しな

がら収集した情報だった。


すべては、銀座の夜から始まった。

劉が初めて里奈を見初めたのは、とある

高級クラブでのことだった。

当時、里奈は『椎名しいなりん』という

源氏名でホステスをしていた。

その知性とたたずまいに一目惚れした劉は、

すぐにその店の経営者、「水野まゆみ」

に声をかけた。

劉とは古い付き合いだ。彼女は、雇われ

ママながら有能な経営者でもあった。

劉はまゆみに頼み込んで、りん

自分の秘書として引き抜いた。

それも、一般のサラリーマンが何年働いて

も届かないような、破格の条件で自分の

貿易会社に入社させたという。


隆平は知らないが、富田の指がリズミ

カルにキーボードを叩いていた。

画面には、当時の高級クラブの会員

名簿や、劉の貿易会社の不審な人事

記録のデータが次々と映し出されていく。


「そこから、里奈の人生は一変した訳か」

「そういうことらしい。本名の『樫野

里奈』に戻った彼女は、単なる秘書に

とどまらなかったという。

劉の愛人となり、さらには組織の裏金や

海外との黒い交渉を担う『重要な案件の

メッセンジャー』として、劉の懐深くに

入り込んだのさ。

じじいの信頼は絶大だったはずだと思う」

「それだけの地位を手に入れたなら、

おとなしく従ってれば一生安泰だった

はずだろ。なんでわざわざ姿を消すよう

な真似を……」

「欲が出たのか、それとも生き残るため

の防衛本能か。……そこから二年の月日

が流れた。正確には、二年三ヶ月後だっ

たみたいだ」


隆平は目を光らせ、紅茶の入ったカップ

を軽く傾けた。


「二年三ヶ月?」

「そうらしい。その頃には、里奈は劉の

裏の顔や組織の汚れ仕事をすべて把握し

ていたみたいだ。

彼女はその機密を利用して、自分の会社

を立ち上げ、劉の組織から完全に独立し

ようと企てたんだろう」

「おいおい……相手は香港系マフィアの

顔役だぞ。そんな男に牙を剥くなんて、

正気の沙汰じゃないだろ」

「野心しかなかったのか、それとも劉に

縛られる生活に耐えられなかったのかは

分からない。里奈は劉の握られたくない

最大の秘密を取引材料にして、

直接の独立交渉を申し出たんだろう」

「結果は、言うまでもないな……」

「ああ。一瞬で決裂したということだ。

劉の逆鱗に触れ、交渉のテーブルについ

たその場で、彼女は自分が殺されると

直感したらしい」

「それで、すべてを捨てて姿を消したっ

てわけか」


俺は腕を組み、冷や汗のにじ

首筋をさすった。


「命からがら逃げ出したんだろうよ。

だが、劉にとっては、それが何よりの

屈辱だったのは想像がつく。

自分の愛人に裏切られ、秘密を握られ、

ビジネスを乗っ取られかけた。

じじいの中で、里奈への執着と怒りは、

今でも消えていないんと違うか?」

「だから、俺たちを使って里奈を血眼に

なって探させているのか……」

「それだけじゃない。劉は、俺たちが

裏で進めているクローンのスキームを

も乗っ取り、自分に従わない人間を排除

するための『使い捨ての道具』にしよう

としている。里奈の捜索も、そのスキー

ムの実行も、すべて奴の手のひらの上の

出来事ってわけだ」

「樫野里奈の持ってる情報は、俺らの

身を守る盾になるかもな。……」

「おお! そうだよ、康介」

「劉に押さえられる前に、こっちで

里奈を確保すれば、じじいを牽制できる」


オフィスの空気が、さらに冷たく重く

沈み込む。

劉という怪物の底知れ無い執念と、

かつて俺たちが追った樫野里奈という女

が抱えていた巨大な秘密の重みが、いま、

俺たちの首元に冷たい刃物のように突き

つけられていた。


©2026 [風風風]. All rights reserve.

「劉がなぜ俺たちのクローン事業に目

をつけたか、その理由さ。奴の配下が

中国本土の生殖医療の闇ネットワーク

を監視していて、そこに俺たちが手配

した東南アジアのルートと酷似した不

審な資金移動の影を検知した」

「そこから、俺たちのところに行き着

いたってわけか?」


港区白金台の豪壮なやしき

ガラス張りの向こうには、日本庭園が

広がる。その風景を背にして、

洪腹ごうはら劉一郎りゅういちろう――本名・りゅう洪貴ごうきは、

特製のチャイナティーのカップを

静かに傾けていた。


明日も 20:00 に、投稿します。

よろしくお願いいたします。

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