7話
広家は流石に、後半とはいえ乱世を経験しているか。
「広家、お前よ」
「…」
「返事ぐらいしろよ。お前、あの家康が約束を守ると思っているのか?」
「…」
「恵瓊どう思う?」
「守りませんな」
「俺もそう思う。仮にもこちらの総大将だぞ。それも大領を持っている。小早川を入れたら二番目に多い所領だぞ?そんな大名を残すと思うか?上杉を潰そうとする家康だぞ。なあ、恵瓊」
「はい、上杉家の前は前田家が標的されました。明らかに大領を持っている大名を潰そうとしているのは自明の理。吉川殿がどのような約定をしているか分かりませんが、確実に反故にされるでしょう」
「そうそう、タヌキは律儀の仮面を被っているが、強欲なのは分かるだろう。毛利を残したいのかもしれんが、確実に長政の約定は勝手にした事として破約されるのは確実だぞ。お前は、功績として所領を得れるかもしれんけどな」
「…」
ほれほれ、眉を潜めている。
それさえも想定しているのか?
大領を持てば毛利が標的にされ、何れは取り潰される可能性がある。
もしくは、要らぬ野心を持って自滅することもあり得る。
そんな事を想定しているのか?
確かに、家康は秀吉より甘くはない。
それを見越しているなら、広家はすごいな!
「家康からの誓詞あるのか?」
「そのようなことをしておりませんので、あるわけありませんな」
「では、幸長や輝政を攻めろよ。お前らが攻めたら、正家が動ける」
「おい、盛親は?」
「秀元、盛親はこちらに移動して寺沢などを攻めてもらうよう依頼している」
「そうなると、こちら側の兵が少なるなるな」
「攻めもしないんだから兵はいらないだろ」
「ぐっ!」
悔し気な表情するなよ。
広家は秀元に睨まれても表情を変えないな。
「問題ないなら攻めれるな、攻めろ!」
「小早川様に命じられる権限はないと言っています。こちらの準備が整い次第攻めるます」
「そう、俺は小早川だ。一応は毛利一門だ。立場は、両川だからな」
「それが?」
「お前と俺は立場だぞ?」
「それでも、我々への命令は出来ませんな」
「だから、吉川の兵はどけ」
「できませんな」
「出来る出来ないではなく、此処の頭は誰だ?」
「頭?」
「大将は誰なんだよ」
「秀元様です」
「なら、何故、その命令を聞かない?お前の言っていることは筋が通らないぞ」
「ですから、準備が整っておりません」
「だそうだけど、秀元、どうなんだ?」
「ふん、いつでも攻めることは出来ている」
「広家、お前嘘ついているぞ?」
「我々吉川は準備が整えてません」
「そうか、分かった。秀元!」
「なんだ」
「大将の命令を聞かない場合は、軍法ではどうなっているんだ?」
「拘束するか、首を刎ねるしかないが…」
「ふむ、まあ、それはそれで禍根を残しそうだから…広家を放置して、陣を移動させればよい。邪魔するなら広家の陣を通れば良かろう」
「は?それでは陣が乱れるぞ?!そこをつかれたら、どうする!」
「仕方あるまい、広家が邪魔するかでは?処罰もしにくいだろうし、仕方あるまい」
「ぐっ…」
「時間が経過すれば、大津攻めている元康殿たちの兵も来るが、信州から秀忠の兵もくる。どっちもどっちだが、持久戦もありとは思う。だが、内通している者たちがいるかもしれないから、一撃を家康にくらわす必要がある。まして、幸長は豊臣一門で、一豊らは叔父上に引き上げられたのに、家康にしっぽ振っているからな。潰してもよいだろうよ。叔母上も家康に付けと言っていたが、家康は確実に目障りな大名は潰していくだろう。もしくは、労役を課して、諸大名の財政を悪化させるのは確実だ」
「殿下より、徳川様は武士らしい支配をするでしょうな。我が毛利家も標的になります」
「二人が言うならそうかもしれないな」
「だから攻めるしかないんだよ。家を残すのは重要だと思う。だから、広家」
「…何でしょう」
「お前はこの場に留まるか、戦が終われば、家康の元に逃れるのもありだぞ」
「何か?」
「それも、毛利の血を残すやり方だろう?」
「…」
「ああ、あと、秀元」
「なんだ?」
「この戦いが終わって、落ち着いたら小早川の名跡を毛利に返す」
「は?」
「秀包に小早川の名跡を継がせろ」
「え?」
「一応、俺の養子として、後を継がせたら良いだろう。年上の子も違和感あるがな…」
「…本気か」
「ああ、これが俺に唯一出来る誠意だな」
「わかった。殿に話はする」
「でも、毛利家は今以上の所領を求めるのは止めろよ」
「それは…」
「第二の家康になったら意味がないからな」
「そうか」
「それと、俺は家康を殺す気もないし、徳川を潰す気もないぞ」
「はぁ?」
「家康は隠居、減封はするけどな」
「ぬるくないか?」
「徳川には秀康もいるし、秀忠もいる、兄弟間も仲が良いとは言えないからな」
「悪辣だな…」
「別に、家が残るなら良いんじゃないか?まあ、徳川に従った連中も含めて、どうするかは戦後の調整が必要だろうが…だから、勝たなければいけない」
「石田殿や宇喜多殿が五月蠅いかもしれんぞ」
「だから、輝元殿には所領を一部返すことを頼みたいがな」
「…無理だろ?」
「だから、小早川の家名を渡すんだよ」
「そういう事か…」
「両川が押さえるんだよ、毛利の暴走を」
「…それは、不満が溜まりそうだが」
「そして、海外に、日本の外に進出するんだよ」
秀元は腕を組んで考え出したな。
恵瓊も広家も考えているな。
「どうせ、この国の所領にも限界がある。蝦夷や大陸にも土地はある。原住民もいるだろうが、協力していけば何とかなるはず。そこで国を起こせばいい」
「は!?」
三人ともびっくりしているな!
「何を言っているんだ?!」
「外で国を興して、連合国を形成したら良いよ。今の大名の立ち位置と変わらない。頂点に朝廷にして支配体制を組めばよい。それに、外国人もここに侵略してくる。特に唯一一神教のような連中は、日本のような信仰を認めないし、南蛮や紅毛と言われている連中もこちらを見下しているからな。殴りやすい」
「おい、最後の言葉!?」
「まあ、こんな話は、終わった後の話だ。とりあえず、一発家康を殴ってからだ!」
「な、殴るって!?首を取るんじゃないのか?」
「いや?」
「なんだ、そのきょとんとした表情は!?」
「むかついたら殴り合う、それで終わりだ!」
「だから、なんだ、その話は!?」
「ふふふ、ははは」
「どうした、広家?」
「なんて、ばかばかしい話をしているんです。今は、この国の形を決める大一番の戦いなのに、外に攻めるとか、南蛮とか、先の話ばかり」
「まあ、勝てないと絵に描いた餅だがな」
「そうですね。徳川様の命を取らないので?」
「ああ、喧嘩売られたから殴るだけだ!」
「天下を決めることを喧嘩だの殴るだのと、真面目に考えているのが馬鹿々々しいことを言いますね」
「良いでしょう。あなたの話に乗りましょう」
「お?そうか?なら?」
「山内殿、浅野殿、池田殿を攻めましょう」
「ああ、よろしくな!」
「この戦のあと、話をさせて下さいね」
「そうだな、恵瓊お前もな」
「わかりました」
「ちょっと待て、俺は!」
「秀元は…話についてこれるか?」
「ついていけるは!」
「ははは、では頼むぞ」
「分かりました」
「そういえば、福原広俊、粟屋就光はどうなっている?」
「人質にはなっていますが、身代わりを送っています」
「そうか、でもなるべく助けてやりたいが」
「世鬼衆が化けているので、逃げる指示を出します」
「おう、よろしく頼むぜ!」
「分かりました。負けないでくださいね」
よし、とりあえず、話合いは出来た。
毛利が動けば、家康を殴りやすくなる。
もどって、正則を捕まえる算段を考えないとなぁ。
くそ、歌いたいぜ!
ロックだぜ!ほら、ロックだぜ!ロックロックロックだぜ!
(だから、ムネ!お前の歌はロックじゃない!盆踊りだなんだ!和風なんだよ!)
煩いジン!お前は…って、なんか声が聞こえたな?
おや?




