58話
『大谷吉継の陣』
今日は乾坤一擲の攻撃で、敵を破ると三成が言っていたが難しいであろうな。
敵の先陣は敗れるかもしれないが、徳川本陣は揺るぎないだろう。
前線で戦っている者たちも旗色が悪くなれば、徳川本陣に逃れるだろう。
離脱したいだろうが、後々の事を考えれば踏みとどまるしかない。
戦後を考えれば、徳川殿に配慮せねばならないだろう。
「殿、朽木様らの動きが鈍いです」
やはり、朽木殿、小川殿、赤座殿は動きが鈍い。
脇坂殿のように、動きを決めて腹をくくればよいものを、ここにきての動きの悪さは、どちらにとっても印象が悪いぞ?
小早川殿も言っていたが、やはり、予想通り、三家は裏切る予定だったのだろう。
だからこそ、徳川殿に配慮したい気持ちが抜けきっていない。
だが、徳川殿にしてみれば寝返らない煮え切らない態度は不愉快だろう。
我々からしても、必死に戦わない姿は印象が悪し、疑いの目で見られ、敵に壁に使われる事を理解していないらしい。
あやつらは不満を口にしたり、批判の声を挙げていたが、小早川殿が投石機や炮烙を渡さなかった理由も理解できる。
「どうされますか?」
「どうもできないですね。すりつぶれてもらうしかないでしょう」
「…敗走して、こちらを巻き込む恐れはありませんか?」
「それを含めて、それぞれに目付の部隊を付けていますし、もし、敗走したり、寝返るような動きをすれば、攻撃するようにと言っています」
「確かに、小西様もこちらに来られたので、兵数的にも楽になりました」
「確かにそうですね」
毛利大蔵大輔殿が三成の支援に回ることになったので、小西殿に来てもらったのが良かったのか、こちらは兵力的には余裕が出来ました。
本当は、小早川殿と行動を併せたかったのだが、徳川殿が直属の兵を送った事によって、それも難しくなりましたね。
「投石機の効果はどうですか」
「藤堂らの兵は混乱しているようですが、崩れるほどの状態ではないようです」
流石、藤堂は老練だから混乱からの崩壊はないでしょうが、さて、他の家は耐えれるのでしょうか?
「殿」
「どうした」
「宇喜多様と戦っている井伊、松平の両家が陣を出て、攻撃を仕掛けているようです」
「ふむ」
このままでは、じり貧だからか?
下がる事も出来ず、投石機は火薬がなくても撃ち続けれるから、時間稼ぎも難しい。
それならば、被害が出ても投石機を破壊するしかない。
流石だな、井伊は。
松平は井伊に引きずられているだけでしょう。
「状況は?」
「宇喜多勢は防いでいるようです」
「なるほど」
小早川殿も注意喚起していたから、宇喜多殿も考えて配置しているのだろう。
「他の家はどうです」
「投石機の為に混乱して、攻撃に移れていないようです」
「それが普通でしょう」
他家は混乱しているか。
流石は井伊直政、松平忠吉も良き武将のようだ。
「藤堂らは?」
「守って、こちらに打って出るようには思えません」
「分かった、だが、監視を続けよ」
「はっ」
藤堂殿は老練だが、危険を犯すとするならば、絶妙な時を狙うだろう。
注意深く見なければなりませんね。
石田三成…三成
小西行長…行長
宇喜多秀家…秀家
毛利元康…元康、大蔵大輔
朽木元綱…元綱
小川祐忠…祐忠
赤座直保…直保
徳川家康…家康
井伊直政…直政
松平忠吉…忠吉
脇坂安治…安治
藤堂高虎…高虎




