56話
『石田三成の陣』
朝焼けが空を染めているな。
今日で決着をつける。
そうでなければ、江戸中納言が来るだろう。
先陣はもうすぐ来るという話を、毛利宰相から報告を受けている。
直ぐ来て、まともに戦えるとは思えないが、榊原が率いているとなれば、油断はできない。
まして、決戦となれば、奮起する可能性もある。
油断は出来ぬ。
「始まったか、前線、郷舎は左近に任せるしかない」
「殿」
「兵庫、いつでも前線の兵と入れ替えが出来るように、後方も準備を」
「はい」
此処でも、投石器から飛ばされる石や丸太が見えるな。
小早川殿があのようなものを作り、渡してくるとは思わなかった。
まあ、その分、鉄砲に使う火薬が減ってしまい、鉄砲が使えなくなったのは痛かった。
鉄砲の有用性は誰でも撃て、弓はある程度の練度をあげなければならないぐらいの差がある。
だが、相手を討ち取るのは弓の方が多いのだがな。
『黒田長政の陣』
やはり、木や石を飛ばしてくるか!
馬房柵は敵を踏み込ませないことは出来ているが、前線の兵たちは飛ばされてくるものに当たり、逃げ惑うものがいる。
木で盾を作ったか、流石に小石は防げても大きな木や石は無理か。
「このままでは前線が崩れますぞ」
分かっておるわ!
又兵衛め、さかしいわ!
「菅様!石に当たり負傷!」
「母里様!爆発に巻き込まれ負傷!」
前線の指揮をしている者たちが負傷したら、崩壊するではないか。
「清兵衛は!」
「前線を纏めておりますが、兵たちが混乱してまとまりきれていません!」
くそ!これでは…
「又兵衛!」
「はっ」
「兵を率いて、敵を討ってこい!」
「…」
「後備に置いている予備の兵五百付ける。投石器を潰してこい!」
「はっ」
ふん、別に死んでも良いが、悔しいが又兵衛の武勇であればやってくれるはずだ。
それに、後備に残していた兵も精鋭が多い。
一点突破であれば、石田の兵であれば…
『後藤基次の陣』
殿はよほど、わしの事が嫌いなのだな。
あの兵を突破して投石器を潰せとはな。
「どうされました」
「ああ、殿から投石器を潰してこいと言われた」
「それは…」
配下の者も、石田の兵の厚さを見て絶句しているな。
たかだか、兵五百であれを突破しろとは。
「ところで、正面からと言われたのですか」
「…いや」
そう言えば、そうだったな。
別にまっ正面から行く必要ないな。
「側面にまわれるか?」
「刻がかかりますが」
「そうだな、難しいとは思うが、正面よりマシか…だが、その前に、我が家の兵が撤退している可能性があるな」
「それは…」
それはそれで仕方ないか。
殿の力量次第だ。
大殿に比べて、手ぬるいからな。
これで経験を付けて、一回り大きくなってもらいたいものだ。
「では、行くぞ」
「はっ」
命が降った以上、行くしかないからな。
さて、敵は島左近と聞いているが、腕がなるな。
『細川忠興の陣』
やはり、投石器の攻撃を断続的にしてくるな。
石田も愚かではないか。
一度に飛ばせば、間が空くからな。
隙がない、島左近ら戦上手が配下に居るからだろうが。
「被害は?」
「出てはいますが、興元様の指揮で混乱は起きておりません」
頷いたが、今のままでは必ず崩壊する。
あちらはそこらに転がっている物を飛ばすことが出来る。
最悪、遺体も投げれるからな…まあ、そこまで非情なことはするまい。
「木の盾は、どうだ?」
「木の盾に濡らした布を貼っているのが良かったのか、炮烙や火の玉の影響ないようです」
念のために行ったことが役に立っているか。
黒田の陣を見たら、火があがっているようだな。
油まで仕込んでくるとは、こんな絡めてのやり方を石田如きがしてくるのか?
突撃したとしても、相手は待ち構えているだろう。
このままでは、前線は崩壊する。
かといって、こちらから出れば防がれるだろう。
前線が混乱し崩壊すれば、相手は攻め込んでくるだろう。
守り切れるか?
「他の者たちはどうなっている?」
「他の方々は、黒田様の陣のようになっております」
「だろうな」
私のところは比較的ましなんだろう。
盾も機能している。
あるいは、手加減を?
それはないか。
今は耐えるしかないのか?
『島清興の陣』
良い感じに、敵は混乱している。
細川は、良く防いでいる。
「殿」
「用意できたか?」
「はい
「よし!用意できたら撃ち放て」
「はっ」
小早川様から新しい投石器が送られてきた。
今までよりも大きなもので、流石に複数は無理で、一機だけだが今までの者よりも大きいものを投げれる。
相手は盾を持って防いでいるが、粉砕することが可能だ。
「殿!」
「何か問題か!」
「黒田の陣から兵が北に向かったとのことです」
「何?」
やぐらを組んで、眼の良いものを配置して監視をしている事が良かったのか。
流石に狙われるから高いものは組めなかったが。
北に向かったか。
ならば、こちらを強襲するして、投石器や殿を狙う為か。
「殿に伝令を!敵の奇襲の可能性ありと」
「はっ!」
「前野殿に、投石器の周囲を密にして守るように」
「はっ!」
「北に物見を放て!」
「はっ!」
相手も打開するために動くか。
黒田や細川は動いているが、他の者も何か動くかもしれんな。
相手が崩れれば、一機に突入する気で入るが、それさえ罠の可能性もある。
徹底的に投石器で潰さなければ。
毛利秀元…秀元、宰相
島清興…清興、左近
前野忠康…忠康、兵庫
蒲生郷舎…郷舎
徳川秀忠…秀忠、中納言
榊原康政…康政
後藤基次…基次、又兵衛
菅正利…正利
母里友信…友信
黒田一成…一成、清兵衛
細川興元…興元




