53話
『毛利秀元の陣』
「広家」
「はい、小早川殿から大量の炮烙と投石器が送られてきました」
「投石か、分かりやすいが富ませるものを考えると、違和感がないわけではないがな」
「ははは、気にしては駄目ですよ」
「分かっている」
本当にあ奴は変わり過ぎだな。
どちらかと言えば、酒や肴を寄こせと言ってきてもおかしくないはずなのだがな。
そう言えば、奴は女色におぼれたという話は聞いていないな。
古満も離縁しているが、それ以降はあまり効かぬな。
遊女でも相手にしていたのか?
側室はいるようだが、あまりその手の話は無いな。
衆道にはまったとも聞いてはいないが…
そう言えば、離縁の時に仲介したのは秀忠だったな。
元居た小早川家臣と、秀樹が連れてた豊臣家臣の間で諍いもあり、家中が分裂もしていた。
小早川であるはずが、毛利ではなく豊臣に従う状況では毛利家中でも反感が大きかったからな。
まして、安芸の者と、尾張や美濃の者たちお生活も言葉も違うから、話合いも難しかった労。
まあ、それを治めるのが秀秋の役目だが、当時は未熟な若者だったから無理だろう。
それを補佐する稲葉、平岡だったはずが、小早川家ではなく豊臣家優先であったから元から居た小早川家臣は毛利に戻ることになった。
今の小早川家はかつての小早川家ではない。
まあ、物頭ら下の者はある程度残ったようだが、牢人を雇った為に、かつての精強な小早川ではなくなったと思ったがな。
それが、あんなふうに変わったら、隆景叔父上の御力か?
いや、それならもっと早く…
「どうされた」
「ため息をついてたが?」
「広家、恵瓊、秀秋があんなふうに変わるならもっと早く変わってほしかったと思ったてな。それなら、古満や元小早川の家中の者たちも納得できただろうに」
広家も恵瓊も苦笑を浮かべているな。
同じ思いか?
「致し方ありません。人は危機に陥って、覚醒する事もそのものの性根が出てくるとも言われていますからな」
「坊主のうんちくか?」
「いえいえ」
「過ぎたることは今更ですが、今は良いと思うべきでしょうね」
「そうだな、これだけの炮烙と投石器があれば、中山道からくる徳川の兵を混乱させれるか」
「できましょうな」
「確かに、出来ますがあちらの方が兵数が多く、桃配山方面の徳川と挟撃されることを考えれば、兵数はさらに劣ることになります。長束殿の兵を含めても厳しいかと」
「長宗我部殿が向こうに行ったのはいたかったか」
「そう思いますが、今更ですな」
「ならば、坊主、知恵を出せ」
「ふむ、投石器を守るならば、拙僧や長束殿でも問題ありますまい」
「それは、恵瓊殿らが守り、我らが攻めると?」
「そうです。拙僧らと吉川殿で中山道の兵を混乱させるというのはどうでしょうかな」
「どうおもう?」
「それしかないかと。ただ、山内殿ら積極的に打って出てくるとは思えません」
「何故だ?」
「おそらく、我らが中山道の徳川兵を気にして、攻勢に出てこないと考えていると思われます」
「確かに、あちらにかかりっきりにれば、背後から攻撃され挟撃されるからな。まして、兵数はこちらが劣っている。兵たちが逃げる可能性があるか」
「はい、それを踏まえて、守りを固くするかと。また、浅野殿、池田殿も負傷したと言われています。そうなれば、両家の兵の動きは鈍くなり、攻勢に出るには難しくなるはずです」
「浅野と池田が負傷したのは、こちらとしては良い話だがな」
「ええ、ですので、投石器を大半を回し、炮烙の大半を中山道へまわしてはどうでしょうか」
「…動ぬ山内ら投石器を打ち込み混乱させるか」
「そうです、動かぬ以上、打ち込めば打ち込むほど効果があるでしょうし、兵たちも不安に駆られるでしょう」
「そして、素早い動きが必要な中山道方面には炮烙をもって混乱させるか」
「投石器も後方への攻撃に有用ですが、報告によると先陣は榊原ですので油断はできませんが」
榊原か、戦上手と言われているものだからな、何処まで有効打を与えるか。
吉川広家…広家
長束正家…正家
長宗我部盛親…盛親
稲葉正成…正成
平岡頼勝…頼勝
徳川秀忠…秀忠、中納言
榊原康政…康政
山内一豊…一豊
浅野幸長…幸長
池田輝政…輝政




