51話
『徳川家康の陣』
さて、諸将と話をするか。
「皆様方揃っております」
「分かった」
諸将は従うか、不平不満を言うぐらいならば問題ないが、反抗的な行動を取られると面倒だな。
かといって、捕らえることも無理だろう。
捕らえたとして、その配下が納得するとは思えないし、下手をすれば戦いが始まった後に槍を逆さにすることもあり得るし、前線に送っても、そのまま降る恐れもある。
ふふふ、かつての三河武士もそうであったな。
松平の分家、酒井など、我の強いものが多かったものだ。
「殿」
「うむ、皆、よくぞ集まってくれた。小競り合い程度ではあるが、このにらみ合った状況を利用して、今後の事を話し合いたい。これが落ち着いて話せる最後になるかもしれぬ」
頷いている者、苦い表情を浮かべている者、不安の表情を浮かべるもの、色々おるな。
今後は、落ち着いて話せる事は無理だろう。
話せるのは、敗れて追い詰められた時か、勝利が確定している時か。
「黒田殿、細川殿は大丈夫ですかな」
「被害は出ていますが、私は問題ありません」
「こちらは、流石に木や炮烙が飛んできた事による被害もあり、流石に厳しいですな」
黒田は意地なのか、無理をしているな。
よっぽど、小早川が離反しなかった事を負い目と感じているのか?
今まで石田に対する恨みで、周囲が見えていないようにがむしゃらに攻めていたが、流石に被害に耐えれなくなったか。
「そもそも、徳川殿の後詰もあまりありませんし、私は流石に継続的には叩けませんね」
「それは、申し訳ない。こちらも各所に大抵の手当もあって、遅れたようだ」
「確かにそうですね。ただ、吉田殿、織田殿、金森殿、竹中殿、加藤殿は、そこまで戦っておられぬようで、被害も少なくて羨ましいですね」
「なっ!?」
「細川殿とは言え、その言葉は許されるものではないぞ!」
細川はわしへの当てつけに、他の者を貶しているのだろうな。
吉田は驚き、加藤は激怒しておるな。
他の三人は、驚いていても別に声を挙げる気がないか。
金森はため息をついているか。
老練な金森にしてみれば、細川の言動は決して良くないし、幼く見えるかもしれん。
「細川殿、その辺にして欲しい。すべてはわしの不徳の致すところだ」
「…言い過ぎたようですね。申し訳ない」
面倒な事だが、わしが頭を下げれば収まる事だ。
細川も謝罪したが納得はしていまいし、加藤も不満の表情を浮かべているな。
二人とも年齢が同じであり、場数も同じ、双方とも気が強い。
こんなやつらを纏めていた、秀吉がすごいことよ。
…まあ、三河武士はもっとひどいか。
「分かり申した。ならば、細川殿は後方に下がってもらい、加藤殿らを前線にて、石田らを受け止めてもらう事にしたいが、どうかな」
「私は構いません」
「私も望むところです」
「他の方々も宜しいか?」
金森らも頷いたか。
仕方あるまいな、此処で拒否することは無理だろうし、離脱もできまいか。
ただ、金森や織田は油断できぬがな。
生き残るためなら、なんでもするだろう。
なにせ、織田は豊臣の親族だから、逃げ切れることはあるだろう。
淀に頼み込みそうだ。
「では、各々方はそのまま石田の兵に当たってもらいたい」
「「「はっ」」」
後で、宗矩に探らせた情報を聞かねばな。
「直次」
「はっ」
「お主に、二千の兵を預ける。支援を任せるぞ」
「分かりました」
目付としての役割もあるが、兵を出しておけば安心はされるだろう。
「宇喜多への抑えは、忠吉、直政が行え」
「はい」
「お任せを」
「兵を新たに三千を与える」
「はっ」
「筒井殿、田中殿、生駒殿は、直政の指揮下に入り戦っていただきたい」
ふむ、三人とも頷いてくれたな、反抗的でなくやりやすいわ。
豊臣秀吉…秀吉
石田三成…三成
宇喜多秀家…秀家
柳生宗矩…宗矩
成瀬正成…正成、小吉
安藤直次…直次、彦兵衛
松平忠吉…忠吉
井伊直政…直政
黒田長政…長政
細川忠興…忠興
吉田重勝…重勝
織田長益…長益
金森長近…長近
竹中重門…重門
加藤嘉明…嘉明
筒井定次…定次
田中吉政…吉政
生駒一正…一正




