50話
『徳川家康の陣』
さて、どうするかな。
配下の者だけでも、やつらならば跳ね返すこともできるが、被害が大きすぎる。
出来るならば、他の者たちの兵を減らしておきたい。
今のままでは、まだまだ、わしの優位が確立されているわけではないからな。
「どうだ、諸将は」
「一部、不満を持っている方もおられるようです」
「そうなのか、正純」
「はい、そう柳生殿から報告を受けています」
わしと正純の話に、忠勝が割り込んでくるか。
正純が嫌いであっても、流石に諸将の不満には敏感にはなるか。
他の者たちは、諸将の態度への不満や不安な表情をしているな。
「仕方あるまい、わしはあくまで盟主であって、主君ではない。まだな」
「それはそうですが、この状況での不満は離反で済めば良いですが、槍を返されたら…」
「確かに、厳しいが奴らごときであれば、裏切った所で守り切れるので心配はない。信玄や謙信であれば、少数でも油断は出来ぬがな。信玄はどのような策が、謙信はあの戦の感覚で何をしでかすか分からんからな」
信玄や武田家とやり合っていた経験のある者たちは頷いている。
皆の表情も良くなったな。
「しかし、油断はできませんぞ」
「忠勝よ、お主はそこまで心配性であったか?確かに、気を配ることは正しいが、配りすぎると周囲を不安にさせるぞ」
「分かっております。ただ、槍がこちらに向けられれば、混乱することは間違いなく、連鎖を引き起こす可能性があります」
「もっともな話だ。だが、石田は人望がない、宇喜多は維新がない若造、小早川如きではなおさらだ。もし、維新が指揮しておれば恐ろしいが、戦場の修羅場の経験の少ないやつらであれば、恐るるに足らず」
そう言えば、忠勝は不承不承で頷いた。
油断はしない、今までの戦でも油断することはなかった。
若かりしときは、失敗は多かったがな。
それを思い出したら、秀忠は叱れぬな。
「宗矩」
「はっ」
「諸将への監視を強めよ、また、敵陣も探れ、人が減れば探りやすくなるだろう。出来るならば、兵器を作っている者たちの始末、破壊が出来ればよいが、無理ならよい」
「はっ」
平気を作っている者たちを始末で切ればよいが、無理をしても仕方あるまい。
それで、諜報活動が難しくなるよりはよい。
「殿」
「なんだ」
「別動隊を編成し、相手が出払ったところで兵糧や弾薬を燃やすのはどうでしょうか」
「ふむ」
「正純、そのようなことは敵も予測しているぞ」
「分かっております。忠勝殿が言われるのはもっともです。ですので、やることが叶えばです」
確かに、正純の考えも分かる。
破壊や始末なら時間がかかるが、火をかける程度であれば、まだ、やりやすいか。
「宗矩、どうだ?」
「失敗する可能性が高いですが、やれと言われれば」
「高いか」
「はい、戦いが始まる前、一度目の休戦まではそこまで警備はあつくなかったのですが、休戦後はあつくなっていました」
「そうか」
そうなると、誰かが入れ知恵をしたのか?
誰なんだ?
小早川の小僧か?
あれがか?
見えぬ知恵者は誰なんだ?
徳川秀忠…秀忠、中納言
本多正純…正純
本多忠勝…忠勝
柳生宗矩…宗矩
武田信玄…信玄
上杉謙信…謙信
石田三成…三成
宇喜多秀家…秀家
島津義弘…義弘、維新




