5話
『赤座直保の陣』
なんだ、騒がしいな。
小早川が動いたか?
「どうした!」
「はっ!小早川家からの使者が来ています」
「通せ!」
大谷に攻めるか、藤堂、京極を攻めるのか。
「表を上げろ!」
「はっ」
「して、何用か」
「殿はこれより打ちかかる為、道を開けてほしいとのことです」
「そうか、それでどこへ向かう」
「いえ、殿からは道を開けてもらいたいとのことです」
「なんだと?」
「では、失礼します」
「ちょ、ちょっと待て!」
使者が去って行く、呼び止めたのに!?
『小川祐忠の陣』
「まて、道を開けろと言ったのか?」
「はっ!」
「どこによけろというのか!赤座殿の陣もあるんだぞ!?」
「それについては、私は何も言われておりませぬ。では、これにて」
「ちょっとまて!」
『朽木元綱の陣』
「無理に決まっておろう!我々は小川殿と脇坂殿との間だぞ!行けるとするなら前に行くしかないではないか!」
「私は何も言われておりませゆえ。では、これにて」
「おい!くそっ、陣を出て行った…小早川の先手として京極を攻めろという事か?」
『脇坂安治の陣』
「な、なんと…」
「それではこれで」
馬鹿な、これでは家康殿に寝返りを約束したことが無駄になるではないか!
かといって、小早川を攻撃することはできん。
ならば、南によけて様子を見るしかないのか。
『大谷吉継の陣』
「…」
「それでは、ごめん」
「ご苦労だった」
「殿、本当でしょうか」
「分からない。だが、使者を出した以上、動くのは確か」
「はい」
「攻めかかる様子を見て動けばよい。藤堂が鉄砲を撃ちかけたのも合図と思ったが…」
『小早川秀秋の陣(松野重元)』
ふむ、殿も決断したか。
どうも、黒田家とのつながりがある頼勝殿が何かしら動いていたから寝返るかもしれんと思っていたが…
「重元殿」
「何かな、景幸殿」
「さすがに、下にいる四家に敵対的な使者をだすのは問題では?敵対して、こちらに槍を向けたら突破に時間が掛かってしまいます」
「そうですな。だが、糧秣などは後ろにあるから焼き払えば、戦意もおちて藤堂の方に逃げていくかもしれませんよ」
「そうなれば、藤堂や京極は混乱するかもしれませんが…」
「ん?どうした!」
「はっ、斥候から脇坂殿は南東に移動しているようです」
「…じゃまですな」
「そうですね、重元殿」
「五百ぐらいをそちらの監視に」
「わかりました」
「ふむ、赤座殿、朽木殿、小川殿は戦の準備を始め、前に進んでいるみたいですな」
「ええ、では後ろから押し出していきますか」
「そうですな、では、景幸殿は京極を」
「重元殿は、藤堂を」
「攻めるぞ!進め!」
「「おう!」」
ふと思ったら、俺の命令で大勢の人が死ぬのか…
それを考えたら怖い、怖いが、何故だろjう震えないな。
考えたら何故ここまで恐怖が湧いていないのか。
…秀秋の心が、記憶が残っている?
「殿?」
「ん?ああ、すまんな。少し考え事をしていた」
「そうですか」
「どうだ、下に布陣している連中は?」
「脇坂殿の動きには注意が必要かと思いますが、松野殿が押さえを置いているようです」
「そうか、後ろから邪魔をしたら潰す」
「はい」
「他の動きは他の三家は動くも逃げるも避けるもできぬようで、こちらに合わせて攻撃をするようです」
「ならいいか、重元にその三家を使って、藤堂を抑えさせろ。京極は気にしなくても良いが、流石に藤堂は油断できるような奴じゃねぇからな」
「はっ」
「俺たちは、吉継と共に正則を潰しに行く」
「…正則殿の件は大丈夫なのですか?」
「まあ、何とかなるだろう。あれは単純だからな。単純癖に中途半端な知恵が回るやつだからな。おだてられ、煽られて家康に踊らされているんだろうよ。冷静になれば、判断できるだろうに…本当に、蜀漢の張飛みたいだわ。酒癖の悪さも?」
「無理はされませんように、殿に何かあれば小早川家は断絶します」
「ははは、別に毛利に小早川を返しても良い」
「な、何を!?」
頼勝は驚き、正成は眉をひそめているな。
別に家名なんぞ、作ればよいだけだろ。
秀吉も家康も家名を勝手に変えているんだから、新しい家名でを作ればよいだけだ。
「別に領地を渡すわけではない。小早川の返せばよいんだよ。如水と叔父上が毛利を乗っ取ろうと画策した結果、隆景殿が防いで俺が小早川を継いだだけなんだからな」
「まあ、そうなんですが…」
「新しい家名を起こして、俺が祖となればよいだけだ」
「しかし、そうなると小早川家の家臣たちが離反する恐れがあります」
「そうだな、けど、それはそれでいいじゃねぇか、使えたくないならどっか行ってくれた方が良い。それに今後浪人も大量に出るだろうし、元々、毛利に仕えていたんだから返してやればよい」
「…」
「まあ、それも勝った後の話だ。毛利を動かす手札の一つになるだろ?」
「それは確かに…」
「あとは、家名としては羽柴を使っている者もいないしな。与えられてはいるが、それを使うのも良い。木下は多いからなぁ。お前らも案出せよ、その案が通れば、お前たちも名付けで名を残せるぞ?」
「はぁ」
「そんな、簡単に…」
正成はため息か、頭が切れすぎると考えすぎるな。
頼勝は真面目か…
「ん?」
「三家が、藤堂と京極勢に攻撃を仕掛けたようです」
「そうか、その後ろの寺沢に対しても、仕掛けた方が良いか?」
「兵が分散しすぎますが」
「三家が攻撃している以上、攻撃する隙間がないだろう?」
「確かに、俺たちが率いている本体で寺沢に仕掛けて、斜めから京極らを攻撃する」
「そうすると、徳川本体が出てくる可能性がありますが」
「毛利が動けば本体を守るために前線の部隊もいくらか減りそうだが…」
「動きますか?」
「そうだな…よし!俺が秀元のケツをひっぱたいてくる!」
「はっ?」
「それは危険ですぞ!?」
「構わねぇよ、どうせ、毛利を動かさないと勝てるものも勝てない。広家は動かないだろうからな、秀元を蹴ってでも動かすしかねぇ」
「志賀殿が向かっていますが」
「足りねぇんじゃないかなぁ、広家を黙らすには良いわいだろう」
「…」
「正成」
「はい」
「ここを任せる」
「…」
「そう難しい顔するな。これは勝つか負けるかの博打だ」
「だから、徳川様に見方をしろと」
「今更だぞ?」
「はぁ」
「すまんな、これで勝ったらお前らの恩賞で報いる」
「仕方ありません」
「頼勝」
「はっ」
「正成を補佐してくれ」
「分かりました」
「再度、吉継に使者をだし、こちらと合わせて正則を攻めろと。こちらの監視の為の兵を前に出せと言え」
「…気付いていましたか」
「そりゃ、裏切る可能性があるんだから警戒するだろ、はははは」
「そうなると、福島様を討ち取る可能性がありますが?」
「それは、それで仕方ないな」
「分かりました」
「じゃあ、行ってくる!正吉!」
「はっ、護衛を頼むぞ!」
「分かりました」
さて、秀元は良い、あいつはいえば動くだろうが、広家だな問題は…ぶん殴るか?
そうしたら広家の家臣に殺されるかもしれんが…邪魔なんだよ。
広家の行動が毛利を救ったというが、結果、毛利家は所領を削られて、幕末に繋がるストーリーがあるけど。
家康のやり方を広家は察していなかったのか?
察していて、家中から裏切り者と言われても毛利を残すために動いたのか?
まあ、四国や九州で動かした毛利勢があれだからなぁ。




