48話
『石田三成の陣』
「皆様方、先ほど、毛利大蔵大輔殿の先ぶれが来ました。もうすぐ着陣する予定です」
「それは良いな、吉報だ」
「確かに、宇喜多殿の言う通り、敵も退きましたし、こちらが有利となりましたな」
宇喜多殿、小西殿が良き雰囲気に持っていこうとしているな。
徳川方が兵を後方に引いている為、集まれているが今後は難しくなるだろう。
特に南宮山の毛利は無理だな。
「確かに、毛利大蔵大輔殿が来ることはこっちにとっては良い知らせだが、悪い知らせもある」
「吉川殿…徳川中納言の兵が?」
「はい、本体ではなく、先陣でしょうが明日には着きそうです」
「こちらの方が少し早いですが、あまり差はないようですね」
「ええ、兵数も三、四千ほど、榊原の旗印だったそうです」
「戦上手の榊原ですか」
「とりあえず、こちらも奇襲をかける予定ではありますが、さて、どれほどのものか」
「ありがとうございます」
「いえ、こちらも勝たねば意味がありませんので」
榊原が来ているという事は、明後日か、明々後日にも本陣が来る可能性があるな。
そこまでに勝ちを得る必要がある。
「このまま陣を守っていれば、負けることはありますまい。しかし、奥州、北陸、九州での戦いがどうなるかも不明です」
「そうですね、九州四国には殿が兵を出していますが、多分、負けるでしょう」
「吉川殿」
吉川殿がため息をついている。
反対であったのだろうな。
「将がおりません。四国は河野の残党、九州は大友の残党を使っています。四国は上手くいけば、加藤殿が居ないので取れるかもしれませんが、河野がどこまでできるか。九州は、もう一人の加藤殿と如水殿がいるので、大友の残党如きでは無理でしょうね」
鼻で笑っているな、大友とは因縁もあるだろうし、大友義統殿では歯が立つまい。
鍋島直茂殿がいるからな、どっちにしてもこちら側の大名、武将が居なさすぎる。
如水殿がどのような考えか分からないが、勝つことは万が一にもあるまい。
しかし、何故、毛利殿は無意味な事をするのか。
九州の情勢を考えれば、下関で守りを固めて様子をみて、四国には手を出さずともよいものを、兵を文ささせ過ぎている。
それを率いる将もない状況で…
「どちらにしろ、此処で勝ち、徳川殿を逃さなければ、奥州や九州が乱れたところで些末な事です」
「吉川殿の言う通りです。毛利大蔵大輔殿が着陣した後、兵を編成し攻勢をかけようと思うのですが、よろしいでしょうか」
「そうだな、攻めるしかないな」
「宇喜多殿、よろしくお願いします」
「おう、この筋肉にかけて、敵を粉砕して見せよう」
「…はい、ところで、小早川殿、黙っているようですが、どうかされましたか?」
「うーん、投石器をどこまで移動できるかと思ってな。板の上に置いて、兵や馬に引かせればそこそこ持っていけるだろうけど。その場合は、退くことが出来ないだろうなって」
「退くことが出来ない?」
「いや、投石器を陣に戻せればよいけど、もし、家康らに奪われたらやつらも造るだろ?そうなったら、こっちの優位性がなくなるから、前線に出すべきかって」
「そうですね」
「ある程度は前線に持っていけるだろうけど…」
「ここは、数を減らして、前線に持って行った方が良いでしょう」
「吉継もそう思う?」
「ええ、ここは勝負の時です、出し惜しみは良くありません。背水の陣とまでは言いませんが、不退転で行くべきです。移動させることが出来るのであれば、移動させて、戻せないのであれば、分解して敵にぶつけてやればよいかと」
「…力技だな、おい!まあ、それしかないかぁ。斧を持った奴も付随させて、駄目ならばらすか」
「はい、後は、炮烙を作れるだけ作り、ああ、小早川殿が言っていた投石紐の用意もできています」
「あれなぁ、接近戦には無理だけど、中距離から近距離の間なら使い勝手が良いと思う。あれに、砂なりの入った袋を付けた投げつければ、目つぶしにもなるだろうし」
「ええ、試してみましたが、使えそうです。あのような簡単な構造でそこまで使えるものが出来るとは驚きです」
「投石が主力の飛び道具と思わなかったからなぁ」
「あれは良いものです。女子でも簡単に使えるものですので」
「そっか、狩猟にも使えるぞ、西洋…南蛮では、巨人を倒した武器と言われているみたいだしな」
「巨人ですか?」
「まあ、伝説らしいぞ。それぐらい強力ということだろうな。後で、そっちに作ったものを渡すよ、広家」
「はい、ありがとうございます。小早川殿から頂いた投石器、炮烙は役に立っています。ただ、太鼓の件はどうかと思いますが」
「本当は、昼夜叩き続ければよいかと思ったけど。こっちが持たないだろうって考えてやめた」
「それは、そうでしょうが、籠城戦であればよいと思いますが、此処では響きすぎて、入れ替えができませんからね」
「残念だよ」
本当に、小早川殿は残念そうな表情をしている。
あの愚か者として、殿下に叱責を受けた人物とは思えないな。
だが、その兵器への造詣の深さに我々は助けられている。
あのままであれば、何度か柵を超えられたかもしれない。
「では、攻撃を開始するという事でよろしいか」
皆、頷いている。
「合図は、太鼓を鳴らし止めるを二回行い、止めたのちに三回目を鳴らしたと同時に」
「「おう!」」
明日、勝つつもりではあるが…
「そういえば、三成」
「何でしょう、小早川殿」
「前田の動きどう?」
「今のところは動きがないようです」
「いったん退いたとはいえ、兵はそこまで減っていないだろうし、家康の事だから何かやってそうだから注意がいると思う」
「ええ、ただ、前田が兵を整えてくるには数日はかかるはずです」
「そうか、勝てば問題ないのか」
「はい」
「わかった」
やっぱり、違和感が残る。
良い事なのだが、まともな小早川殿にはなれないな。
『毛利元康の陣』
もうすぐ、関ケ原だな。
立花殿は上手く山道を通れたかな。
精強な立花の兵であれば問題なかろうが。
大津で手間を取ったが、ここはその遅れを取り戻すため奮起せねばならんな。
『立花宗茂の陣』
通りやすい山道だな。
これならば、直ぐに通り抜けれそうだな。
「先ぶれを!」
「はっ」
合流したは良いが、敵と思われたらいやだからな。
さて、無双の本多殿との戦いか、決して油断は出来ないが、楽しみでもある。
小早川殿の書状には、一人での戦いはしない。
複数人で相手するので、嫌ならば周囲を抑えて欲しいとあったが…
毛利元康…元康、大蔵大輔
立花宗茂…宗茂
宇喜多秀家…秀家
小西行長…行長
吉川広家…広家
大友義統…義統
毛利輝元…輝元
大谷吉継…吉継
徳川秀忠…秀忠、中納言
榊原康政…康政
伊達政宗…政宗
最上義光…義光
前田利長…利長
黒田孝高…孝高、如水
加藤嘉明…嘉明
鍋島直茂…直茂
本多忠勝…忠勝




