46話
『石田三成の陣』
もうすぐ夜が明けるな。
夜が明ければ休戦が終わり戦が再開される。
刻を考えれば、毛利大蔵大輔殿らが今日、明日に来るだろう。
だが、来てすぐの戦闘は流石に厳しいだろうが、兵が増えればあちらも警戒して引くはずだ。
「殿、小早川殿から送られてきた投石器を組み立ててみました」
「そうか、どうだ使えるか?」
「試していませんが、問題ないと思われますが何度放てるか分かりませんが」
「ならば、戦が再開されてしばらくたってからでも良いか」
「はい、敵が密集した際に、まずは木砲を一気に放ち、その後、前野殿に守りを任せ、私が黒田に、蒲生殿が細川に突入し混乱させます」
「危険だが頼んだぞ」
「はっ」
不思議なことに、黒田や細川は陣を下げていない。
被害は大きいはずなのに、何故だ?
恨みを持っている細川は分かるが、流石に黒田は引かぬのはおかしい。
それに、徳川が下げさせないのもおかしい。
如水殿ならいざ知らず、黒田であれば手綱を持ちやすい御仁だと思うが…
「では、行ってまいります」
「任せる」
さて、毛利大蔵大輔殿が来なくても、今日で何かしらの打撃を与えねばならん。
そうでなければ、長陣になると、大坂にいる毛利殿が要らぬことをしかねぬ。
小早川殿を調略したように、下手をすれば毛利殿や残っている増田殿もどうなるか分からない。
なるべく早く決着をつけねばらなぬが…
『黒田長政の陣』
くそ!なんてことだ!
大筒が何故、あんなにもあるんだ!
聞いてないぞ!
最低でも二けたはあるのではないか?
馬どもや雑兵が慌てている!
「ええい!落ち着かせろ!」
又兵衛め、また、馬鹿にした目で見おって!
誰でも、あれだけの大筒で攻撃されれば慌てるし、落ち着かせる時間関わるわ!
何に付けても父上と比較しおって!
「殿」
「なんだ!」
「この状況であれば、敵が打って出てくる恐れがありますぞ」
「!?」
その可能性を忘れておった。
動転していたのだろうが、ぬかったわ!!
「吾輩かを中心に前線に向かいます」
「…行ってこい」
「では」
またしても又兵衛に!又兵衛に先を越されたわ!
腹立たしい!
「ええ、落ち着け皆の者!所詮、大筒など何度も撃てるものではない!傷ついたものは下がれ!」
あちらを見れば、細川殿も混乱しているようだな。
ふう、不思議だな、他の者が混乱しているのを見ると、落ち着くのは…
さて、兵を纏めばらん、悔しいが又兵衛が刻を稼いでくれるはずだ。
『島清興の陣』
上手い事、細川も黒田も混乱しているな。
この混乱に乗じて、二人を討ち取れれば良いが…
「では、蒲生殿頼んだぞ」
「そちらこそな」
「では」
「では」
「鉄砲隊前に!」
大筒で混乱した前面に対して、更に鉄砲で追撃し、弓を浴びせれば混乱も広がり、落ち着きを取り戻す暇はあるまい。
「撃て!更に、弓隊も放て!」
うむ、更に、黒田勢や細川勢が混乱したな。
「突撃するぞ!」
「「おう!」」
混乱して、組頭らもまともに指揮が取れていないな。
だが、あまり深入りすれば、後詰も来るだろうしある程度で。
「ん?」
「ここからはいかせん!」
「ほう、では!」
ほう、わしの槍の一撃を躱すか!
その返礼か槍を突き出してくるが、まだまだ甘いな!
「そりゃ!」
「ふん!」
中々やるな、跳ね返しても直ぐに持ち直す。
直ぐに決着はつかぬな。
そんな事をしていたら、黒田を討ち取れぬし、敵中に囲まれてしまう。
「俺を相手に考え事とは、なめられたものだな!」
突きも、薙ぎ払いも見事だな。
だが、まだ一歩足りぬな。
戦っていれば、何れ倒せるだろうが…
「まあ、今回は挨拶だ!」
胸に渾身の突きを放ったが、やはり交わされたが…そのまま横に払うためだよ!
「ぐはっ!」
ふう、中々骨のあるやつだったから、此処で討ち取れれば良かったが流石に難しいか。
柄で胴を払う事ぐらいしかできなかったな。
もう少し、経験を積めば、私も危ないだろうな。
「皆の者退くぞ!」
「「はっ」」
やはり、黒田も歴戦の武士、こちらがてこずっている間に、混乱を抑えたか。
後ろから後詰の兵も来ていそうだな。
こちらを囲もうと動いておるわ。
「投げつけつつ、退け!」
炮烙を周囲に投げつけ、追撃を抑えれる。
小早川殿のおかげで、混乱する事無く楽に退ける。
「ま、まて!」
「待てぬな」
「違う!お主の名は!」
「島左近だ!」
「お主が!?俺は後藤又兵衛だ!何れ倒してやる!」
「その機会が来るかどうか…まあ、その時はその時だ」
流石に黒田家だな。
武勇に優れたものが多いようだな。
だが、今回の攻撃で、被害が甚大になっただろうから、後方に退くことになるか。
『細川忠興の陣』
ええい!
我が目の前まで石田の兵がきやがった!
もう少し危ないとこだった。
石田如き弱兵にここまで押し込まれるとは、恥でしかないわ!
炮烙まで用意して、逃げていきおって!
なんだ!?
また、騒ぎが起きているだと!
「殿!」
「何があった!」
「そ、空から木や石が降ってきています!」
「は?何を言っているだ?馬鹿ものが!」
「本当です、あちらを!」
兵がさす方向に目を向けると、何かが石田の陣から飛び出してきている。
よく見ると、大きな薪のようなものが飛んできている…飛んできているだと!?
「兵を引かせろ!石田はどうにかして、物を飛ばしているようだ!先の大筒とは違い、石や薪であれば、ばらけて降ってくる恐れがある!射程距離外に兵を退かせろ!」
「はっ」
「ええ!」
地面を蹴った所で何にもならんが、腹立ちがおさまらん!
ガラシャを自害させ、父の居る田辺も攻められ、こちらでも石田に勝てぬ。
黒田の方にも飛んでいるようだが…
宇喜多の方を見れば、井伊や松平、筒井へも宇喜多から攻撃を受けているようだな。
「ん?!」
炮烙まで投げているのか!
何を作ったんだ奴らは!
徳川殿も何も言っておらぬし、頼りない!
秀頼様では頼りなしとして、徳川殿に付いたが…何のために、ガラシャや父上を犠牲にしたのだ!
このままでは壊滅するわ!
「徳川殿に、さらなる後詰を求めてこい!」
「はっ!」
流石に休戦をは挟んだとはいえ、私と黒田の兵は限界だろう。
これで、徳川殿が大した後詰を渡さなければ…
『宇喜多秀家の陣』
秀秋から送られてきた投石器は面白いな。
大筒は耐久力がなく、火薬も砲弾も必要だが、投石器は加工していない石や、袋につめれば石を積めたりしても良い。
木を切り刻んで薪を纏めて投げつければ、上手くすれば空中で紐が緩んでばらけて落ちていく。
「殿」
「全登か」
「殿がその石や薪を投げても敵陣には届きませんぞ」
「ふむ、そうか、私の筋肉では無理か」
「どのような筋肉を持っていても無理です」
「そうか、残念だ」
そう言えば、石を腕を回して投げるものも渡されていな。
前線に渡しているが、役に立っているだろうか
毛利輝元…輝元
毛利元康…元康、大蔵大輔
毛利秀元…秀元、宰相
島清興…清興、左近
蒲生郷舎…郷舎
前野忠康…忠康、兵庫
増田長盛…長盛
宇喜多秀家…秀家
明石全登…全登
徳川家康…家康
黒田孝高…孝高、如水
黒田長政…長政
細川忠興…忠興
細川藤孝…藤孝、幽斎、父上
後藤基次…基次、又兵衛
松平忠吉…忠吉
井伊直政…直政
筒井定次…定次




