45話
『小早川秀秋の陣』
しかし、このまま戦が長引いたところで、どう決着つくんだ?
それだけじゃなく、家康を殴り飛ばすと言った俺が恥ずかしい!いやん!
「気味が悪い」
「うっさい、正則!」
「くねくねしやがって、なんだ、女にでもなったのか?」
「いや、女も強いだろ!」
「そうか?」
「箒に叩かれて、嫁さんから逃げ回った奴が!」
「な、なんだと!」
「殿」
「なんだ、正成」
「休戦とのことです」
「だよなぁ、このままだと、停戦にならないか?」
「可能性はありますね」
「そうなると、落としどころがなくなるな…景勝に責任を押し付ける気もするが、そうなれば三成も黙っていないだろうから、どうやってもまとまらない。ああ、利長の越前攻めもやりだまにあがるか」
「かもしれませんね」
「家康は確かに立場的に高いけど、独裁でもないし、豊臣の意向には現状では逆らえない。でも、秀頼が幼すぎるし、その母親の淀が口出ししそうだ」
「かか様は徳川殿を支持しそうだがな」
「まあ、確かにな。寧々さんは今の豊臣を良い様に思っていないだろうし…母親なり、父親が子をおざなりにして口出しをするのはあまり良い結果にならないなぁ」
「そうか、子が幼ければあることだろ?」
「そうなんだけど、ほれ、隣の国の昔の王朝では母親や外戚が口出ししすぎて政務が混乱した事もある。この国は、藤原氏がうまいことやったけどな。ああ、鎌倉の北条氏なんて、外戚が乗っ取った例としては分かりやすいんじゃないか?我が子さえ見殺しにするんだからな」
「そうかもしれんが、淀様の親は既に亡くなられているし、一族もほぼ残っていない」
「そうだな、だが、その家臣がいるじゃないか?」
「大野とかか」
「そうそう、そういう連中が動くのも面倒だよ。家康も三河以来の家臣の統制に苦労したんじゃない?三河武士は我が強いから」
「そこは何処の家でも同じと思うが…なんだ、その眼は?」
「確かに、我の強い家臣はどの家もかと思ってな」
「何が言いたい?」
「ふふふ」
「てめぇ!」
「殿落ち着いてくだされ」
「だがな、才蔵!」
「どっちもどっちですぞ」
「くっ」
どこの家も家臣は我が強いのは確かだな。
今の時代、領地を貰う為の立身出世が当たり前だから。
しかし、現状変わらないな。
こちら側は籠城戦に近いから、守るのは良いだろうし、兵数も互角に近い。
少し負けているが、地理的優位を考えれば互角か。
でも、籠城戦は他から後詰や援軍が来るか、相手が根負けして撤退することが出来ればだ。
援軍は来る、来るが相手も来るから状況に変化があるとは思えない。
補給線を破壊する動きをすれば、相手も動いてくるだろう。
正直、関ケ原の戦いって、秀秋や広家が寝返らなかったら長期対陣になっていたんじゃないか?
決定的な事がなさすぎる。
家康が前線に行くことが今回起きるのか?
起きれば状況が変わりそうだが…
「似合わないな」
「何がだよ」
「真面目な表情が」
「ふん、お前の顔よりましだ」
「なんだと?」
「だから、殿…はぁ」
「才蔵!」
「正成」
「なんでしょうか」
「もうすぐ、元康あたりが来そうなんだが」
「そうなんですか?」
「多分な、そんな気がする」
「気がするですか…」
おい、正成、ついでに正則も残念な奴を見る表情してこちらを見てくるな。
確か、関ケ原で戦いが始まったころに、大津が落ちたはずなんだよ。
だから、日数的に考えれば、明日か、明後日に来そうなんだよ。
まあ、宮津はもっと後だろうけど。
そうなると、利長あたりが動いてもおかしくないからな…
「明日着陣されれば、良いですが明後日ですと、移動の疲れもありまともに戦えないと思いますが」
「ああ、そうだなぁ」
そりゃそうか、大津で戦って、あまり休めず移動して、即戦いは無理か。
三成から家康の陣は難しいから、こちらが動く必要があるんだろうけど…
はぁ、ゲームみたいに楽にはいかないな。
あ、秀忠の軍も来そうだな。
秀元に伝えておくか。
『毛利秀元の陣』
ふむ、小早川殿の書状を見たが…なるほど、確かに、もうすぐ、江戸中納言がこちらに来る可能性があるな。
本体でなくても、先陣が来てもおかしくはないか。
「どうされました」
「恵瓊か、ん、広家も来たか」
「はい、誰からですか」
「小早川殿からだ」
「なんと?」
「もうそろそろ、中山道を江戸中納言が来ると思うと」
「忍びからの情報でもえましたか」
「そうではないな、予測と書いている」
「予測とは?」
「拙僧はあまり関りがありませんが、噂に聞く小早川殿の予測ですか?」
恵瓊が不思議そうな表情を浮かべるなよ。
広家も苦笑を浮かべているじゃないか。
「まあ、お前がそう思うのも分かる。分かるが読んでいたら納得は出来るぞ。ほれ」
「では」
とりあえず、恵瓊に書状を渡して、広家と話すか。
「どう思う」
「そうですね」
顎を撫でながら考えているな。
確かに、書いている通り、降伏を待つことも、攻め落とすことも時間がかかる。
しかし、別に上田を落とし、真田殿が降った所で状況は変わらない。
石田殿を下せば徳川殿の勝ちだからな。
枝を刈った所で、幹を切り落とせば終わりという事ぐらい分かるだろう。
いくら戦上手であっても、真田殿の兵力では江戸中納言に勝つことは出来ん。
真田に後ろでかく乱されるのが怖いというのも分かるが、無理する必要もない。
まあ、此処での戦いがすぐ終わるはずもないと思えば刻もかけるか。
「あり得ますね。攻めるにしても、降伏を待つにしても、時間をかける必要がありません。まして、配下の者がそれぐらいの事を進言するでしょう。今まで、此処に来ていない事が不思議でありません。ただ、一日でここでの戦いが終わると思わなければ、時間をかけることもあるでしょう。もし、遅れても不利な状況になっていれば、後詰としては十分に機能します」
「そうだな。遊軍としては使えるな」
「ええ、ただ、中山道から来るなら待ち構える事もできます」
そうだな、待ち構えることは出来る。
出来るが、だれを送るかだな…安心できるのは広家なんだが。
「誰に行かせる?」
「私が行きましょう」
「だがな…」
「預けれるものが居ませんし、素早く引くことも必要です。先陣を潰したとしても、本陣が来れば、山内勢と挟撃されますので」
「そうか…いや、駄目だな。それなら世鬼衆に任せた方が良い」
「…なるほど」
「一撃を入れて、即離脱であれば少数でも良い。あと、小早川殿からは火薬を地面なりに埋めておいて、爆破したらどうだとかもあったな」
「うまくいきますか?」
「休戦のようだから、少し試してみるか」
「そうですね」
「…拙僧からも一つ」
「なんだ」
「小早川殿が投石器が出来れば送るとあります」
「ああ、書いてあったな」
「これは、南蛮や明などでも使われている攻城戦の兵器に思えます」
「そうなのか?」
「はい、それがあれば、かなり離れた場所から石を投げることが出来るはずです」
「ほう」
「書状には、石を袋にいれるなり、木の切り株を投げるなりするのも良いとありますので、木砲より使い勝手が良いかもしれませんな」
「確かに、木砲には火薬なり、石も頑丈でなければ使えないからな。ただ、それは試す時間がないからうまくいくか分からないともあるな」
「そうでしょうな。見よう見まねで作っても、壊れる恐れもありますゆえ。私が小早川殿の陣に向かって話してきましょう」
「そうか…何かあるのか?」
「いえ、変わりようが気になりますので、確かめに」
「入れ替わっていると?」
「吉川殿、そうではありませぬが…気にはなりますゆえ」
「そうだな、俺も気になるが、あれは本人だぞ」
「中身が入れ替わっているかもしれませぬし、取りつかれているかもしれません」
「ああ、そっちか…でも、こちらに不利にならなければ良いのでは?」
「そうですが、拙僧として気になる事を放置できませぬゆえ」
「そうか、なら行ってこい」
「ありがとうございます」
「広家、世鬼衆を読んでくれ」
「はい」
さて、小早川殿が何者で、こちらにとってはどうでもいい。
この戦に勝てばなんでもよいからな。
石田三成…三成
上杉景勝…景勝
大野治長…治長
吉川広家…広家
毛利元康…元康
毛利秀元…秀元
真田昌幸…昌幸
可児吉長…吉長、才蔵
長束正家…正家
徳川家康…家康
徳川秀忠…秀忠、江戸中納言
山内一豊…一豊
前田利長…利長




