36話
『朽木元綱の陣』
ついていないな、戦い続けることになるとは。
徳川方は、藤堂らは下がって、徳川の兵と入れ替わった。
こちらは兵も傷つき、出来れば後方に下がりたいが認められなかった。
流石に大谷殿や小早川殿が援軍を送ってきているが…
小川殿や赤座殿も先の軍議の時には厳しいと言っていたな。
大津や宮津からの軍勢が後詰で来ると言っても、いつになるのか。
「殿」
「どうした」
「兵の士気も上がらず、このままでは崩れる可能性があります」
「そうか…」
今更寝返ってところで、どう評価されるか。
まして、大谷殿や小早川殿が後ろに控えている。
脇坂殿のように、寝返った方が良かったのか。
しかし、徳川殿には何も言っていないし、何も言われていない。
休戦中に書状が来たが、どこまで本当の事やら。
「殿」
「どうした」
殿、殿と煩いな、考える時間もない。
「小早川様の兵を率いて、溝江様が来られています」
「分かった」
軍目付か?
裏切りそうな我々への監視なんだろうな。
愚か者と言われた小早川殿にしては、手配が良いな。
稲葉が居たな、あの者は目端がきくから、そっちkが手配したか?
って、何だこの音は!?
攻めたてろと言った覚えはないぞ!
「おい、何だあの太鼓の音は!」
「は、はっ、見てきます!」
太鼓の音はひとつふたつではない、あんな数、持ってきていないぞ。
いったい誰が…まさか、本多がうった手か?
こちらを混乱させよと?
「と、殿」
「何だったんだ?今でも鳴りやまないぞ」
「そ、それが」
「ごめん」
誰か入ってきたな。
顔に見覚えがない、私の家臣ではない。
だが、何故、許可なく通したのだ?
暗殺とは考えにくいが…
「お主は何者だ、私を殺しに来たか?」
「申し訳ありません。取次を頼んだのですが、いつまで待っても来なかったのもので、今は戦の最中ですのでご無礼をお許しください」
「そうか」
「はっ、小早川の家臣、溝江長氏と申します」
あ、そうだった。
あの太鼓の音に驚いて、放置しておったわ。
確かに、今は戦の最中、援軍ともなればすぐにあって、意見を交換しなければ疑われる可能性もあった。
くそっ、冷静にならないと。
「そうか、済まなかった」
「いえ」
「あの太鼓の音の原因を調べるために指示を出していたのだ」
「それは、申し訳ございません」
「ん?何故、誤っているんだ?」
「あの太鼓の事です」
「まさか、小早川殿が嫌がらせを?まさか、まさか?」
「はい、申し訳ございません。殿が気合を入れるためにと…」
「そうか、これは後方から」
小早川殿は何を考えているんだ、あの愚か者が!
亡き殿下の力で小早川家に無理やり入り、大領を得ただけの馬鹿者が!
「こんなことをすれば、我々が混乱すると思わなかったのか」
「殿の命令故…」
「それを止めるのが家臣の役目だろ!稲葉は何をしていたんだ!」
「殿の独断です」
「くそったれ!おい!我が兵はどうなっている!」
家臣に八つ当たりしても仕方ないが、声が荒くなってしまう。
腐っても豊臣一門で、毛利一門、大領もあり、私では太刀打ちできぬ。
悔やまれるのは、朝倉に負けた織田の撤退に朽木を通らさなければ、殿下の天下もなく、私も日陰者にもならなかたったのではないか。
織田から厚遇もされていない、命の危機を助けたのにだ…
「そ、それが…」
「どうした!」
ええ、早く言わんか!
混乱しているなら立て直すために、兵を退く必要があるんだぞ!
「前線の兵たちが、太鼓の音で元気になったようで…」
「は?」
「士気が下がっていましたが、太鼓の音で皆が鼓舞されたように士気が持ち直して、防戦を行っています。また、小早川様の兵と一部入れ替わり、休憩をとることもできているようです」
ど、どういうことだ?
いや、勝手に兵を入れ替えられたら困るが!
「どういうことだ?」
「本来は確認すべきですが、兵が入れる隙間があれば、前線で戦い朽木様や赤座様、小川様の負担を減らせと言われています」
「事前に行ってもらわねば、攻撃しかねなかったのでは?」
「そこは、太鼓を鳴らしながら進むと、不思議と、皆がこちらに注目して道を譲手tもらえました」
確かに、太鼓を鳴らしながら来た奴らに言い知れぬ恐怖を持つかもしれない。
この戦場で、太鼓を叩くとか、まして、大きな音だ、馬たちも驚いてる…驚いている?
「徳川の兵はどうなっている?」
「太鼓の音などで、驚いた馬が驚いて暴れ一時指揮が取れず混乱した為、兵を入れることが出来ました」
「そうか」
「基本的には朽木様の指示を仰げとのことですので、命令をお願いします」
太鼓を止めたい、止めたいが、士気が上がるならそのままでも良いが…
まあ、良いか、有利に進めるなら。
「分かった、そちらはそちらで戦ってもらいたい」
「分かりました」
「崩れるようならいったん退いてもらっても良い」
「はい、殿からは一定ごとに兵を入れ替えろと言われておりますので、そのようにさせて頂きます。まあ、今は安定しているので出来るとは思いますが、混戦になれば無理でしょう」
「そうだな、よろしく頼む」
「はっ」
溝江とやらが出て行ったな。
しかし、小早川殿は何を考えているのか、することを言っていくれないと混乱と、下手すれば攻撃していたかもしれないのに。
まあ良い、これで、こちらの負担も減る。
こちらをちゃんと支援してくれているのか、心の中だけど愚か者と言って申し訳なかった。
「おい」
「はっ」
「前線にこの件を伝えてこい」
「はっ」
「ああ、そうだ」
「なんでしょう」
「小早川でも行われるように、兵の入れ替えが出来るようなら行うように言ってくれ」
「分かりました」
数としては千を超えるぐらいかもしれないが、それでもありがたいな。
赤座殿や小川殿の方もそうだんだろうか。
『小早川秀秋の陣』
あ、なんか正成が走ってきた。
鬼の形相だな?!
さっきは何とか宥め、誤魔化して、あの場は収めた…
前線に言っていたはずの正成が戻ってきた。
「殿!!!!!!!」
「いや!!!!!」
「逃げるな」
「うおぉ!?」
「何するんだ正則!」
「次から次へとお前、何やったんだよ」
「何もやってねぇ!だから離せ!」
「駄目だ、面倒ごとはちゃっちゃと片付けろ」
「また、怒られるじゃねぇか!」
「そうだ、だから怒られろ」
「いやなのじゃ!いやでござる!殿中で!!!」
「意味分からない」
「殿…」
「な、何かな?こふーこふーと口から息を吐いているが、調子が悪いなら休んだ方が…」
「問題ありません」
「そ、そうか」
「殿」
「ど、どうかしたか」
「朽木様らに援軍を送られましたか?」
「送ったぞ、問題あるか?」
「ありません、千程度ですが三家にとっては良い兵数の援軍だと思います」
「そうか」
これは胸を張っても良いな!
なら、ほめろよ!
「じゃ、何が問題だ?」
「何故、太鼓を持って行かせたのです?」
「そりゃ、士気を上げるためだけど?」
「朽木様らに先ぶれを出して、説明はされましたか?」
「…し、したよ」
「してないな、誤魔化しが下手だぞ、お前」
「し、知らないな!」
「殿?」
「ごめんなさい!」
「謝れば許されるものではありません!」
「ひぇ~!?」
「笑うんじゃねぇ!」
「他人事だし」
くそ!
俺は悪くない!
士気を上げるため為には必要なんだよ!
決して、コンサートの準備とかじゃない!
藤堂高虎…高虎
脇坂安治…安治
徳川家康…家康
本多忠勝…忠勝
大谷吉継…吉継
朽木元綱…元綱
赤座直保…直保
小川祐忠…祐忠
溝江長氏…長氏
稲葉正成…正成
織田信長…信長




