34話
『小早川秀秋の陣』
「殿!ええい、お前たちもやめぬか!」
「あ、でも、殿が…」
「止めろ!」
「止めなくても良いぞ!景気づけだ!いえぇい!!!」
「殿!」
折角、のってきたんだぞ!
最初から、テンションマックスで、アゲアゲで行けるなんて、それもこんな朝から!
ははははははは。
(お前は、調子乗り出すと手が付けられない…まして、朝からテンションが高い奴なんざ、そんなにいないぞ。ほんと、お前の存在は迷惑でしかないな)
ジンうるせぇ!
(テンションが高くて、ノリが良いのは良いけどよ、良いんだけど…歌が、何で演歌や童謡なんだ?逆に気が抜けるんだが?)
なんで、タクまでツッコミが!?
(だよなぁ、テンション上げようとして、何故か躓くんだよなぁ。ああ、でも祭礼だと思えば、良い感じか?太鼓のテンポは地車なんだよ。あれ、テンション上がるけど、ロックじゃないぞ?)
ヨウジ!?
…あれ?
アヤのツッコミはない?
(やれやれね)
時間差か!?
「殿!」
「うるせぇ!音楽は人の心を豊かにする!躍らせる!気持ちを高ぶらせるんだよ!」
「それは分かりますが、進軍などの命令が伝えれませぬぞ!」
「ふん、どうせ、攻めはないからよ、守りだけだろ?問題ないじゃない?引きの合図もないし」
「はぁ、遊びではありませんぞ?」
「ふん、構わねぇ!俺のパッションが!ナウでヤングなんだよ!ひゃはー!」
「殴って、黙らせるべきなんでしょうか?」
「まあ、良いんじゃないか?」
「福島様、これは小早川家の問題です。もし、福島様の陣で同じことがされたらどうされます?」
「ん~、それで兵たちが嫌がらなければ良いんじゃない?」
「…他人事ですから、適当ですね」
「いや、別にそうじゃないぞ。こいつは歌っている気だろうけど。太鼓の音と、何か知らないが金属板を叩いたり、木の板を叩いた音で、一切、声は届いていないと思うからな。音で後押ししているとしか感じないんじゃないか?」
「そうだろうな」
「島津様も…」
「まあ、無駄な体力を使うだけだから、わしなら殴って止めるが」
「そうですよね」
「そうだ。が、朝からの攻めで気が入らない状況。なら、別にかわまんじゃろ。それに、本多が勘違いしてくれるかもしれんぞ?」
「まさか、本多殿は冷静対処されるでしょう。実際に殿と会われていますし」
「ははは、そうだの。それでも、他の者たちは、すわ、総攻撃か!って、勘違いするかもしれんな。特に、雑兵たちはな」
「ああ、確かに、そうかもしれんな」
「そうだろう、福島殿。命のやり取りの緊張感のなかで、予想外の事が起き続けると混乱するものだ。特に、雑兵と戦慣れしてないものたちはな」
「…分かりますが、流石に、戦乱を生き残られてきた方々も多いですよ」
「稲葉よ、全員が全員そうでもないであろう?ほころびが産まれる可能性はあるんじゃよ。今でなくてもな」
「はあ、分かりました、島津様」
「わははは、もう少し落ち着かれなされ」
「はい」
「しかし、本多が指揮しているという事は、徳川の兵かな?」
「確認させましたが、そう思われます」
「そうか」
「どうじゃ、あった感じ勝てそうか?」
「無理だな。俺一人では」
「確かにな、あれは化け物だな。あれと相対できるものはそういまい。剣であれば、うちの重位、あとは長恵あたりならもしかしたらだが、槍とは相性が悪いな。龍造寺隆信あたりなら良い戦いをするかもしれぬな」
「龍造寺というと…肥前で勢力を伸ばして、島津殿に負けた?」
「そうだな。あやつは中々の武人だぞ?討ち取れたのも晩年で身体がなまっていたからだが、最盛期であれば無理だったら首はとれなかったろう」
「そうなのか…うちの才蔵も宝蔵院で槍を学び中々のものだが」
「宝蔵院か槍が得意な僧がいると聞いたな」
「そうだ、そこで鍛えたがそれでも本多にとどかないな」
ありゃ、正則が才蔵をディスってる?
悔しそうな表情をしているけど、言い返していないという事は無理って事か?
あいつ、どんだけ化け物なんだ?
くそ、巨大スピーカーあれば、耳を破壊できるんだけどなぁ。
ガラスがあればこすって、キーキーならしたら…意味ないか。
「あれは、戦場で鍛えられた槍だから超えることは無理であろうな」
「そうかもしれない」
「根本的に身体の元々の資質と、日ごろの鍛錬と戦いで鍛え上げられたんだろうな」
「なんだ秀秋、もういいのか?」
「まあ、交代で太鼓は叩き続けさせるぞ」
「そうか、止まると相手も迷うかもしれぬな」
「そうだったら、面白いけどね、維新さん」
「身体の資質はどうしようもないな」
「そうでもないけどな、正則」
「なに?」
才蔵さんもこちらを向いている。
でも、残念ながら即効性があるならスポーツ選手の禁断の方法だけど。
こんな時代にそんなものはないから無理。
あっちの薬はあるかもしれないけど、それも結局はその場限りの破滅するものだから話せない。
あれは頭を壊すものだからな…
「まあ、どっちにしろ即効性はないけどな」
「ふむ、では今聞いても無駄かな」
「期待させるなよ」
維新さんは分かる、けど、正則の言い方はないだろう!
「ちなみに、聞いてもいいか?」
「良いぞ。ただ、今の日本人の体質に合うかは分からないけどな…」
「日本人?」
「ああ、この国、日本に住む人たちだよ」
「なるほど、で?」
「まずは食事だな」
「食事?米を食えと?」
「いや、肉だな肉」
「肉というと、猪や鹿とかか?」
「そうだな、脂身ではなく赤身だな」
「ふむ」
「それが無理だと、大豆だな。三食の後だな」
「三食…朝、昼、晩か」
「そうだな」
中々、ここら辺は詳しくないから聞きかじり何だよなぁ。
ざっくりざっくりで良いか、間違っていてもこの時代ならバレない!
稲葉正成…正成
福島正則…正則
島津義弘…義弘、維新
東郷重位…重位
丸目長恵…長恵
龍造寺隆信…隆信
可児吉長…吉長、才蔵
本多忠勝…忠勝




