33話
『石田三成の陣』
相変わらず、黒田と細川の旗が見えるな。
ガラシャ殿の件があるから細川はこちらを攻めるのは分かるが、黒田は何故だ?
九州で如水殿が何か画策しているのか?
あの御仁ならば分からぬこともないが。
「殿、旗を見る限り、吉田、織田、金森の兵と竹中、加藤の兵が入れ替わっているようです」
「亡き殿下の恩があるはずの加藤があちらで戦うとは。敵にすると面倒だ」
「そうですな、手ごわいですね」
「周囲から巻き込むような気配はあるか」
「物見からは何もありませぬ」
「油断は出来ぬ、夜に襲撃があったと聞いている」
「はい、ただ、被害は出ましたが敵を撃退、斬り捨てました」
徳川殿も手段を選ばないのだろう。
ならば、襲撃を踏まえれば、北から兵を送り込む可能性も否定できぬ。
「回り込まれた場合の対策として、柵によって防げるように手配しております」
「そうか」
「はい」
「…始まったか」
「では、私は前線に向かいます」
「頼むぞ」
「はっ」
初日は互角に戦った。
こちらは大津の毛利大蔵大輔殿や宮津の小野木から兵が来る刻を稼ぎたい。
あちらは信州からの江戸中納言が来る。
毛利大蔵大輔殿や小野木殿が来れば、兵数では上回るが徳川直属の兵は精強だから、互角ともいえる。
攻めて、島津殿が三千か、五千の兵があれば…
龍伯殿や忠恒殿が幸侃殿を殺害せねば、もっと助力を得れたかもしれぬものを…
「ん?なんだそれは?」
「はっ、小早川様から送られてきたものです」
「太鼓か?こちらにもあるが?」
「これを」
「小早川殿からの書状か?」
「はい」
「ふむ」
…何を考えているんだ、あの者は…
何が良い音が出る、音を鳴らせば鼓舞できるし、ロックだから叩きながら歌えば良いとか…
「はあ、ある意味、器が大きいのか、戯けか分からぬな」
「兵庫」
「はっ」
「木砲の準備を」
「分かりました。多く作りましたし、今も造り続けていますので、火薬と砲弾が続く限り討ち続けれます」
「そうか、一発か、二発程度で潰れるとの事だが、暴発の危険もあるから十分に気を付けよ」
「はっ、では行ってまいります」
小早川殿の助言は良きものがあるが…
「ボン、ボン、ボン」
「確かに音は良いな、即席にしては…でも、今いるか?」
「さ、さあ」
兵に問いかけたわけではないが、答えずらいな確かに。
平時であれば…いや、私らしくないな。
精神的に追い詰められている証拠か。
『宇喜多秀家の陣』
そうか、筒井らは下がったか。
旗を見るに井伊と徳川殿の四男か。
その兵も増えているところを見ると、徳川殿が増援を送ったか。
「全登」
「何でしょう」
「俺の筋肉が唸っている」
「素晴らしいと思います」
「そうであろう」
「あちらは兵を入れ替えてきたので、こちらに比べたら元気でしょうな」
「そうだな、だが、俺の筋肉が唸っている以上、敵はここまで踏み込むことは出来ないだろう。ふん!」
「そうですな」
もう少し、上腕二頭筋を鍛えなけば、美しい槍さばきが出来ないな。
兵たちも訓練をかして、筋肉を鍛えさせるか。
井伊の赤備え…相手にとって不足なし!
「ドン!ドン!ドン!」
「良いなこの太鼓、秀秋から送ってきたものだが、即席とは言え良い音が出ている」
「まことに」
「書状には、ろっくとか意味の分からない言葉もあるが、これで気合を入れろという事なのは理解できる!」
「そうかもしれませんな」
「そうだ!今日は、井伊らを撃退したら攻め込むか」
「殿、まだ、その時ではありません」
はっ、太鼓の音に高揚してしまったか、無謀な事を考えてしまった。
確かに今ではないな、井伊らの後ろにもまだ兵はいるからな。
くそ、秀秋め、このような良いものを送ってきやがって!
「はぁ、殿は感化されやすすぎる。良き御方なのだがな」
「全登何か言ったか」
「いえ、何も」
「そうか」
「はい」
「む、攻めてきたようだな…皆のもの奮起せよ!」
「はっ」
『大谷吉継の陣』
ふむ、藤堂らは下がりましたか。
宇喜多殿のところも入れ替わっているんでしょう。
傷ついたり疲れた者たちを下げて入れ替えるのは当然ですね。
忠誠心を確かめながら、外様の兵を減らして、余裕を持って戦いたかったかもしれませんが。
しかし、小早川殿から送られてきた太鼓の音は中々だったが、何を考えているのか。
まるで行動が別人すぎます。
小早川殿の陣を見る限り、裏切っている可能性が高かったと思いましたが、こちらの期待を良い意味で裏切ってくれました。
そして、毛利家も参戦して、膠着状態になりました。
徳川殿の事だ、調略を仕掛けていたんでしょうが、さぞ、悔しがっておられるでしょうね。
「殿」
「攻撃が始まりましたね」
「はっ」
「旗からみるに、本多殿が指揮するという事は、徳川直属の兵か」
「おそらくは」
「藤堂殿が居なくなっても、徳川兵が来ると圧力が強くなりますね」
「はい、そういえば、小早川様は本多殿を捕らえると息巻いておられましたが」
「…あれほどの者を相手できるものがこの国にどれほどいるか」
「確かに」
「今のまま守りに徹しておれば、大津と宮津の兵が来る」
「そこまで持ちますか」
「兵糧さえあれば持つが…」
「何かありますか」
「九州や東北の行方次第で状況が変化する恐れがあります」
「なるほど」
「ああ、そういえば、小早川殿が言っていた物は作れましたか?」
「はい、今も造り続けています」
「後方からの輸送を急がせましょう」
「分かりました」
柵の数も増やし十分に抑えれます。
あれがあれば、接近されても投石の要領で投げれるし、回して投げるのも有効と言っていましたね。
あの方は変わられましたが…まあ、それは勝った後でも良いですね。
『小早川秀秋の陣』
「殿煩い!命令が聞こえにくくなります!」
「ええ!?俺の美声をうならせれば、勇気百倍、千倍だろう!」
島清興…清興、左近
前野忠康…忠康、兵庫
毛利元康…元康、大蔵大輔
小野木重次…重次
島津義久…義久、龍伯
島津義弘…義弘、維新
島津忠恒…忠恒
伊集院忠棟…忠棟、幸侃
宇喜多秀家…秀家
明石全登…全登
黒田長政…長政
細川忠興…忠興
竹中重門…重門
加藤嘉明…嘉明
織田長益…長益
吉田重勝…重勝
金森長近…長近
筒井定次…定次
藤堂高虎…高虎
徳川秀忠…秀忠、江戸中納言
井伊直政…直政
松平忠吉…忠吉
永井直勝…直勝
阿部正次…正次
内藤清正…清正
本多康俊…康俊




