32話
『小早川秀秋の陣』
この時代は医学なんて、そこまで発達してない。
馬糞を使うなんて、破傷風とかリスクしかないんだけど、経験則で何故忌避されていないのか。
イスラム圏ならば進んでいたとか聞いたことあるけど、西洋でもそこまで発展していないしな。
三国時代の華佗の医学書が発達していたらとか思ってしまう
曹操のバカ野郎…
かといって、穢れだの呪いだのと言い出すと、なんか違う方向で忌避が暴走しそうだしな。
どう説明しよう。
「よくわからないな。金創医も行っているぞ?」
「いやな、正則、薬草や水に流して綺麗にする人たちもいるだろ?あと、馬糞なんぞ塗ったら縫う事も出来ないだろう」
「確かに、金創医によって変わりますが」
「そうだろう?だから、本当はそういう情報を集めて整理した方が良いんだけどな」
正成が言うように、データを集めて集計して統計で目に見えて示せればよいんだろうけど。
戦の真っただ中で、そんなことできない!
ちっくしょう、秀秋の日ごろの行いのせいで説得力がないじゃまいか。
「ああ正則、ほら、水も放っておくと腐るだろ?」
「確かに、古い水は飲むと腹を壊すな。孑孑が湧いている事もある」
「孑孑がなくても、水で腹を壊すことがあるだ?」
「あるな」
「それと同じなんだよ。馬糞は既に腐っているんだよ」
「まあ、排泄物だからそうかもしれんな」
「馬糞も発酵させれば、退避になって良い肥料になるんだがなぁ」
「馬糞を発酵?」
「ん~、あれだ、鮒ずしとかあるだろ?」
「あの匂いがきつい奴か?」
「そうそう、あれが発酵だな。あ、酒もそうだ」
「酒もか?」
「そう、発酵だけど。それは人にとって良いものであって、悪いものが腐敗なんだよ」
「は?発酵が腐敗だと?」
「そう、腐るのと発酵は紙一重で、人が取り込めないのはすべて腐敗だな」
「…よくわからんな」
「まっ、俺もちゃんと説明は出来ないけどな」
「そうか」
「で、馬糞は人にとってそのまま使えば危険なんだよって、傷口とかはもってのほかだけどな」
「…俺のところにも知らせてよいか?」
「いいぞ、被害は低い帆が良いからな。苦しむやつが減るには良い事だ」
「三成には言っているのか?」
「一応帰り際には言ったぞ、あっちが信じるかどうかは分からないけど。少なくとも吉継は信じて指示していたぞ。何か思い出すことがあったようだし」
「そうか、才蔵」
「はっ」
「正勝に伝えに行ってくれ」
「分かりました」
「ん~、忠勝にも言っておけばよかったな」
「おい、流石に敵に教えるのか?」
「まあ、そう言われたら伝えない方が良いだろうけど、助かる命が失われるのもなぁ」
なんだよ、正則呆れた表情しやがって。
正成もため息をつくなよ。
少しでも苦しんだり、後遺症がない方が良いだろう。
流石に、このタイミングで教えるのはどうかと思うけど…って、教えたところで、あっちが信じるかどうかも分からないけど。
「殿、もし教えるとしても、戦が終わってからでも良いかと」
「まっ、そうなるな。でも、麓の三家と盛親には伝えているけどな」
「それはそうだろう、味方なんだからな」
「だよな」
兵糧も、物資も十分に手配で来ているから、入れ替えながら少しは良いものを食べさせてやりたない。
「正成」
「なんでしょう」
何で嫌な顔するんだよ!
「いえ、また厄介なことを言い出すかと思いまして」
「俺を信じろよ!」
「無理ですな」
「む…」
「で、今度は何をやらかすんだ?」
「正則まで!?」
「お前、信頼されていると思っているのか?」
「思っている!」
「言い切りやがった…はぁ」
ため息、重いため息が二人から!?
くそ、泣いても良いんじゃないか俺!?
「ええい!黙れ!正成!」
「何でしょうか」
身構えるな正成!
やれやれ見たいな動作するな、正則!
「近くの村から何か食料を入れれないか?」
「兵糧は十分にありますが」
「いや、それ以外にも肉なり、野菜なりを手に入れれないか?」
「…入れれるかもしれませんが、そこまでの良はないと思いますが」
「それでもよい、山菜も含め夜までに手に入れる分だけ仕入れて、兵たちに食わせてやれ」
「殿は?」
「俺はいらないよ、明日から激戦になるかもしれないから、今だけでもな」
「ほう、お前が兵の心配を…それとも最後に飯をとか?」
「最後の晩餐じゃねぇ!ちょっとでも英気を養って、貰いたいだけだ!」
「殿がそんな事を考えるとは…」
「考えるとは?」
「びっくりです、驚愕です。明日負けるんじゃないでしょうか」
「正成!?言い過ぎだなおい!流石に泣くぞ!?」
「泣くなら泣いてください、気にしませんので」
「お前、そんなキャラだったか!?」
「きゃらが何をさしているか分かりませんが、殿にははっきりわないと無駄と思いましたので」
「おお!?主君をいじめる、これが下克上か!?」
「いえ、諫言です」
「諫言ですか…しくしく」
「とりあえず、殿の事は放置するとしても、良いお考えと思います」
「…くそ、まあ、いい。銭はあるか?」
「ある程度はあるので大丈夫でしょう。なければ、商人に借りるか、石田殿に融通して頂きましょう」
「そうだな。うん、今回かかった費用は三成に請求しよう」
「お任せします」
「おう、任された!でも、正則は無理だぞ」
「そんなこと言うかよ」
「お前、家康に兵糧を提供したから、城には何も残っていなんじゃないのか?」
「…残ってないな」
「はあ。叔父上が家康の抑えに置いた連中がすべて寝返っているんだから、叔父上も泣いているだろうな」
「くっ」
「あの家康を見て、律義者と思える連中はよっぽどお花畑か、現実を見ずに自らに言い聞かせているのか…正成、頼んだ」
「はっ」
正成が支持を出すために行ったな。
さて、俺は、楽器作りに精を出すか。
俺が出来ることは少ないからな…
『石田三成の陣』
小早川殿が言っていたことは本当なのか。
今までの兵たちの治療方法がおかしかったと?
とりあえず、左近らに聞いてみるか。
「兵庫、左近」
「どうされました」
「何でしょう」
「小早川殿が言っていた治療についての話は、本当だろうか」
「馬糞の件は、確かに思い出してみると傷が悪化しているものが多かった気がします」
「前野殿の言う通りに、武士と兵との治療も違う事もありますが、兵たちが後遺症を残すことがありました」
「やはりそうか…」
武士でも余裕がないところは兵と同じ処置だったものが多い。
そして、命を失うものが居たのも事実。
それを考えれば、若くして亡くなる者たちの理由の一つだったのか。
今考えるべきことではないが、何故、小早川殿はもっと早く言わなかったのか。
「殿」
「何でもない。兵庫、言われたような治療は可能か?」
「清潔な水も難しいので、一旦沸騰した水で洗い流して綺麗に洗った布で傷をふさぐことは可能かと」
「そうですね。ただ、薬草などもないので、傷を洗い流すことぐらいしかできませぬか」
「左近、そこは仕方あるまい」
兵たちすべてに供給できるような薬草や薬はないし、備蓄もしていない。
施薬院全宗にもっと、支援して規模を拡大しておけばよかった。
そう言えば、徳川殿も薬草や調合を良くしていたと聞いたな。
ただ、それは自らであって、家臣や兵たちのものではないし、そこに固執したら自らの命を縮めそうだな。
「とりあえず、小早川殿が言われたように傷を得た者たちを治療を行ってくれ、明日からも激戦だろうからな」
「「はっ」」
明日からの戦い、どうなるか。
稲葉正成…正成
平岡頼勝…頼勝
福祉正則…正則
大谷吉継…吉継
石田三成…三成
可児吉長…吉長、才蔵
尾関正勝…正勝
長宗我部盛親…盛親
石田三成…三成
前野忠康…忠康、兵庫
島清興…清興、左近
本多忠勝…忠勝




