30話
『毛利元康の陣』
ここにきている諸将も立花殿は信頼できるが、後背を信じれぬものもいる。
負けていないなら寝返らないだろうが、しかし、膠着状態で寝返られるのも困るが。
「して、今後はどうされるので」
「その事については、石田殿から指示で出ている」
片桐殿の肩眉が動いたな。
豊臣の家老としては、石田殿の存在は目障りだろうな。
浅野侍従殿も石田殿を苦々しく思っていたらしいし、豊臣家臣団は分裂しているな。
豊臣恩顧と言われている者たちも徳川殿に付いている者も多いし、まったく、幼君を支えるのは難しいな。
殿は当主利元康の陣』
ここにきている諸将も立花殿は信頼できるが、後背を信じれぬものもいる。
負けていないなら寝返らないだろうが、しかし、膠着状態で寝返られるのも困るが。
「して、今後はどうされるので」
「その事については、石田殿から指示で出ている」
片桐殿の肩眉が動いたな。
豊臣の家老としては、石田殿の存在は目障りだろうな。
浅野侍従殿も石田殿を苦々しく思っていたらしいし、豊臣家臣団は分裂しているな。
豊臣恩顧と言われている者たちも徳川殿に付いている者も多いし、まったく、幼君を支えるのは難しいな。
兄上たちは殿を輔弼したから良かった。
本来であれば、大和大納言殿が輔弼できればよかったが、早くに亡くなり過ぎたな。
また、秀次様がご存命であればな。
他の親族と比べて、秀次様は戦は苦手でも政は問題なく行えた方だったし、気配りもされていた。
少々、心が弱いところが問題で、秀頼様が産まれたことで秀吉様の態度も悪くなり、疑心を持って接していたことがあのような悲劇になったのであろうな。
それを考えれば、今の豊臣家臣団の分裂と徳川殿が付け込む隙を作ったのは、秀吉様が原因か。
殿も、兄上たちもよくそのようなことを起こさせなかったものだな。
父上が長い間いたことも関係しているかもしれないが…
そう言えば、兄上たちは上の兄上を見下していたと聞いたことがあるな。
大内に人質に出され義隆殿の寵愛を受け、大内の影響を受けたことに反感を持っていたみたいだな。
まして、兄上たちは他家に入り、乗っ取りで家中をまとめ上げるのに苦労していたから、上の兄上が楽をしていたと思ったんだろうか。
だが、上の兄上が亡くなった後、商人とのやり取りや政を受けもち兄上たちはかなり苦労したとか、上の兄上の実力を実感して、ため息を漏らしたと隆景兄上は言っていたな。
「大蔵大輔殿」
「ああ済まぬ。石田殿からは兵を二手に分けてもらいたいとのことだ」
「それは、戦力が分散して良くないのでは?」
「立花殿の言う通りだが、関ケ原に入る道を考えると大軍を入れるには詰まるだけとのことだ」
「なるほど、中山道ぞいに行くとしても、これだけの兵だと元々陣をはっているところとぶつかると」
「そういうことで、北國街道と中山道と分けていくことになる」
はて、立花殿が思案顔しているな。
「陣分けはどうなります?」
「片桐殿、私が率いて北國街道から入り、今、島津殿が陣を置いているところに入ることになる。それまでは小西殿が陣を構えるようだ」
「なるほど」
「中山道は、立花殿が率いて入ってもらう」
「私がですか?」
「ああ、どうも小早川殿が立花殿を希望しているようだ」
「小早川殿が?」
立花殿は首を傾げているな。
あのふざけた手紙にも、立花殿を向かわせてくれとか…あんな言葉づかいだったか?
まあそれはおいておいて、本多忠勝と戦うために強い武将が欲しい…かもんってなんだよ、宗茂カモンって!?
家門か?違うよなぁ、違うと思うが…
「どうされた、ため息をつかれて」
「いや、何でもありません」
「大蔵大輔殿」
「何かな、立花殿」
「出来れば、私は伊勢街道から進ませてもらえないか」
「伊勢街道…南から回ると?」
「ええ、我々が入れば、戦い続けている石田殿らと入れ替わることは出来ますが、それでは守るだけです」
「ああ、なるほど。横合いを突くと?」
「そうです。話では長曾我部殿が攻めたてているとの事ですが、入れ替わるのもよいかと」
「ふむ」
石田殿の指示とは違うが、確かにあまり兵を詰めても兵が無駄になる。
それを考えれば、横合いを突いても良いかもしれないな。
「分かりました。石田殿と小早川殿にはこちらから書状を出しておきましょう」
「ありがとうございます」
「では、中山道は片桐殿にお任せしてもよろしいか」
「…分かりました」
石田殿との関係もあるから、小早川殿や大谷殿の方が協力しやすいだろう。
大谷殿なら上手くやってくれるだろう。
「それならば、ひとつ提案があるのですが」
「何です、片桐殿」
「南宮山への後詰は必要ありませんか?」
確かに、石田殿、宇喜多殿を倒せば終わるから当然、そちらへの攻撃は激しいだろうが、南宮山の毛利勢が厳しくないわけがないか。
まして、信州から江戸中納言殿が来る恐れがある。
書状には未だ来ていないと書かれていたが、流石に、上田城に固執し続けるとは思わないか。
そうなると、兵力は互角になるか。
「分かりました。良き案です。秀包に率いさせて向かわせます」
「それで良きかと」
「では、再編しますので各々方よろしくお願いします」
「「はっ」」
流石に伊勢街道、濃尾に回るには刻がかかりすぎるから、実際は中山道から山間を進むことになるだろうが、立花家の兵であれば問題あるまいし、秀包ならやってくれるだろう。
物資はしっかり回さないと駄目だがな。
増田殿にはさらなる支援を要望しておこう。
『大坂城』
「兵糧や弾薬、刀などの要求が多すぎるな」
「増田殿」
「何でもありません」
石田や毛利からの要請が多すぎる。
兵糧や弾薬にしても限界がある。
要望する連中は好き勝手言いやがって…
徳川殿に書状を送らねばならんな。
ふふふ、関ケ原で家康を討てば、私の天下となる。
まあ、豊臣家を残すかは家内で協議する必要があるがな。
祖父は天下を目指すなと言ったが、目の前に落ちている物を拾えるなら拾うべきではないか?
時期を逸したら滅ぼされるのは戦乱の常。
義統や通軌、武吉らが、九州や伊予を落とせば、旧領を復活することもできる。
広家が色々言っていたが、これだけ兵力差がなければ負けることもあるまい。
機は熟したのだ、毛利が天下を取って何が悪いか。
これで、祖父や叔父上たちと比べられることもあるまい。
「毛利様」
「何か」
「淀様がお話があると」
「分かった、向かおう」
ちっ、いちいち口をはさむな。
いくら秀頼様が可愛いからと言って、危険を犯さずして天下を治めることは無理だぞ。
口うるさく厳しかったが、祖父や叔父上たちがいた。
戦場でも苦労したこともある。
だが、秀頼様のような幼子が天下を治めることは、この国にとっては不幸にしかならん。
わしが治めてくれよう。
立花宗茂…宗茂
片桐且元…且元
浅野長政…侍従
豊臣秀長…大和大納言
豊臣秀次…秀次
豊臣秀吉…秀吉
豊臣秀頼…秀頼
大内義隆…義隆
毛利元康…大蔵大輔
小西行長…行長
長曾我部盛親…盛親
大谷吉継…吉継
石田三成…三成
毛利秀元…秀元
宇喜多秀家…秀家
増田長盛…長盛
大友義統…義統
河野通軌…通軌
村上武吉…武吉
吉川広家…広家
兄上たち、叔父上たち…吉川元春、小早川隆景
上の兄上…毛利隆元




