3話
『藤堂家からバン、バン、バンと、数百の鉄砲が小早川の陣に打ち込まれた。敵方が攻めてきたかと、兵は陣を固め、警戒をするがそれ以上の攻撃はなかった』
「重元殿、あの攻撃はいったい何であろうか」
「親次殿か、分からぬ。数百のそもそも、あの距離の攻撃では意味はないろうし、後続の兵も見当たらない」
「そうだな。ただ、この時分になっても、攻撃指示がないことを考えたら、徳川方の攻撃は、何かの合図にも見えるが……」
「確かに、この段階で東軍に寝返るなぞ、馬鹿馬鹿しく思うが家名存続を考えれば、それもあり得るか」
「俺としては、そのような恥ずかしい真似はしたくはないが……」
「そう言えば、家中の者ではない奴がふんどし一つで追い出されたと話を聞いたが、知っているか?」
「知っている。それも、俺は見たことあるやつだった」
「ほぉ、誰だ?」
「名前まで知らぬが、黒田家の家臣だ」
「黒田家か……」
『志賀親次、松野重元が話をしている目の前には、赤座家、小川家、朽木家、脇坂家の軍が陣を張っているが、未だに、東軍に攻撃する気配がなく、陣を固めていた。
そこそこの武将なのに、こそこそしか出来ない、小大名のさがなのかもしれない』
「おい!藤堂が攻撃してきやがったぞ!あいつら徳川方だろ!」
「殿!徳川様が、西軍に攻撃するように合図をしているのです!」
「そうです。早く攻撃を!そうすれば、先ほどの件も不問にされます!」
「はぁ?お前ら、さっきの武士の態度見たのか?自分の親分が、バカにされて腹を立てないって、どういうことだ?やっぱり、お前ら、徳川家の家臣か?あぁ?」
「違います!今ここで、西軍を攻撃しなければ、小早川家が滅びます!」
「その通りです!この戦い、西軍の負けです!」
「なんで、そんなこと分かるんだよ?」
「石田は、稚拙な工作を仕掛けるしか手を打っていません」
「オレに関白の座を与えるとかだな?」
「その通りです。ほかの大名には加増を約束していますが、石田は所詮、元奉行職、大名に加増をする権限なぞありませぬ」
「また、毛利家にも徳川様は、手を打っているはずです。その証拠が、南宮山から毛利家が下りてきていないことです」
正成、頼勝が代わる代わる説得してくるな。
確かに言っていることは分かる。
家を残すには、三成よりも家康の方が今なら正しいと思われるだろうな。
でも、その後の歴史を知っていたら、大領を持っている大名は潰される可能性がある。
前田利常は馬鹿を装い、伊達政宗でさえ配慮していた。
現時点では、家康は律義者として偽っているからな。
「ふん!だが、徳川は……いや、家康は、オレに喧嘩を売った!」
「と、殿!早まってはいけません!」
「あぁ?ロックは、反骨!権力者をブッ飛ばす!これこそ、ロックの醍醐味じゃないか!」
「ろ、ろっくって、なんですか!?」
「こうなったら仕方ねぇ!この時代で、ロックを広めて、オレが一番になってやる!その為には、こんなくだらなぇ~、権力争いなんぞ、ブッ飛ばしてやる!ロッケンロール!ヒャハー!」
「と、殿が壊れえた!?」
「だ、誰か、殿が乱心した!押さえろ!」
「バカ野郎!てめぇ~らは、誰の下についているだ!正成か!頼勝か!オレか!どっちなんだ!」
正成、頼勝に呼ばれえて、陣に飛び込んできた兵は俺を抑えようとしていたが、俺が一括したら動きを止めたな。
人間日和見が一番なのかもしれない。
「正成!頼勝!てめぇ~ら、付いてるものついてるなら、藤堂、京極にぶっこんで来い!」
「ついてるものって、何ですか!」
「仕えている奴の命令が聞きたくないなら、此処から出て行け!」
「「なっ!?」」
頼勝としては秀秋を見捨てることが出来ないのか、表情を固まらせた。
正成は呆れとあきらめの表情を浮かべていたな。
二人はそれぞれ、わが身と忠義を天秤にかけていたようだな。
「それに考えてみろ、お前らが交渉したのは長政であって、家康じゃないだろう!」
「そ、それは」
「殿、頼勝殿は長政殿と何度も話し合い、家康様とも話が出来ていると言われていました」
「お前ら、甘すぎないか?あの狸おやじだぞ?」
「律義者の内府殿を」
「頼勝」
「はい」
「狸おやじは、信長、叔父上、その前は、今川義元や武田信玄とやり合っていた奴だぞ?口先三寸で相手を遣り込めることもできるだろう。まして、家臣でもない長政の約束など、たとえ、誓詞があっても知らぬ存ぜぬもあり得るぞ?」
「そ、それは!」
「…」
正成は何となくわかっているのか。
理解したうえでの行動か、三成人望ねぇ。
「分かりました。藤堂、京極に攻撃を行います」
「おぉ!正成、攻撃してきた落とし前、きっちり、家康に着けさせてやれ!」
「前面の赤座家、小川家、朽木家、脇坂家は、どのようにしましょうか」
「使者を出して、先陣として、藤堂、京極を攻撃するなら攻撃させろ。敵対したら、落とし前つけろ」
「はっ」
「分かってると思うが、大谷に攻めるなよ?攻めた瞬間、お前ら、落とし前つけさすからな?」
「「分かっております!」」
「よし、行け!」
檄を飛ばしたら、正成は前面の四家に使者を出し、即刻、藤堂、京極に進撃するように伝令を出した。
頼勝は、前線の松野重元、日野景幸に指示を出し、前面四家の動きに合わせ兵を進める事、滝川辰政にいち軍を割いて、藤堂、京極の背後を攻撃することを命令したな。
何の間の言っても二人とも優秀だな。
『笹尾山の石田軍では、小早川軍の動きを察知していた。島左近は、小早川家と黒田家の動きを察知しており、大谷吉継からの話もあり、寝返りの可能性を三成に報告していた。三成は、その報告に対し、豊臣一門が、徳川家に通じているとは信じてはいなかったが、左近と吉継の話もあり、警戒は強めていた。
死闘、激闘の中、一進一退を繰り返しており、小早川軍の行動で、決定的になると三成は考えており、進軍の情報を受け取っていた』
「殿!小早川軍が動き出しました!」
「左近!どっちに動いておる?」
「未だ、分かりませぬが……」
『桃配山の家康は、秀秋の事を見下しており、早く動けと苛立ちながら、親指の爪を噛みまくりながら、報告を待っていた。ついでに貧乏ゆすりもしているのを、正純は見て見ないふりをして報告をする』
「殿、小早川軍が動いたようです」
「大谷に攻め入っているか?」
「動いているだけで、まだ、確報は入っておりませぬ」
「ふむ、確認を急げ、万が一という事がある」
「はっ」
『松尾山では、秀秋が叫び声を上げながら、兵士が若干引いているのに気が付いていない。いや、それ以上に、ロックの演奏をするためのギター、エレキ、ドラム、音響関係などないことにも気が付いていない。ちょっと、残念な秀秋が、関ヶ原の決着をつけるべく動き出すのであった?』
「わっははははは!家康に落とし前つけさせて、とっとと、こんな事終らせ、ステージを作るぞ!あ、そうだ!武道館を作ろう!今なら、チョーでっけぇ~の作れるぜ!野外ライブも良いな!」
短編を編集したものになります。




