2話
『刻は、西暦1600年、徳川家康が天下に向け、豊臣家の切り崩しを図り、石田三成の挙兵を誘い、発生した関ヶ原の戦い。
その関ヶ原の松尾山に陣を張る、小早川秀秋が叫び声を上げた処から、物語は進みだす。』
「と、殿大丈夫ですか!?」
なんだ、おっさんの顔が近くにあるぞ?
あれ、アヤは?
周囲を見てみたら、室内にいたのに野外に居る?
病院でもないよな?
で、時代劇のような鎧兜を着ているおっさん…
「何処だ此処わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「殿、どうなされました!」
「殿だぁ~?」
俺に声をかけてくるおっさんは誰だ。
ぐっ、頭が何かが…記憶か蘇っているのか?
…こ、小早川秀秋だと、俺が?!
声をかけたのは稲葉正成か、元々、豊臣秀吉に仕え秀秋に仕えることになった。
ちょっと、残念な秀秋を支えるべく、平岡頼勝と共に小早川家を支えていたやつだな。
でも、この二人や秀吉の命で小早川家に入った者たちに対して、先代小早川隆景に仕えていた家臣は面白くなく毛利家に戻った者たちもいた。
軋轢を産み出していたが、二人はその事を理解しながら家中を統制していた為、ある意味では小早川家にとってはマイナス要因だったかもしれない。
秀秋にとっては良かったであろうが。
昔は、関ケ原で戦いが始まってから決断したように言われていたが、研究が進むと家康が挙兵する前から正成と頼勝が徳川家と陰で交渉をしていて関ヶ原合戦は始まる前から決まっていたと言われていたな。
伏見城戦いも石田三成への目くらましと、家康への交渉材料の為に行われたかもしれない。
石田三成の西軍にとっては、獅子身中の虫でしかなかったな。
正成と頼勝は、秀秋にとって面倒ごとをさばいてくれる家臣だったんだろうな。
「ちょっと、待て!今、整理する!」
「え!?」
「殿、今はそんな刻はありませんぞ!」
「シャラップ!ウェイト!」
「は、はぁ?」
「なんですか、その言葉は?!」
「うっせい、黙れ!」
おかしいな、コンサートで何かが起きて、アヤに照明が落ちてきてそれを庇って…
ここは何処なんだよ、太秦か?
いや、その割には臭い、汗のにおいがきついな。
考え込んでいる側で正成と頼勝はひそひそ話をしているが、不敬だろ。
「はぁ~、またこのバカ殿は、意味の分からないことを……」
「正成殿、もう少しの辛抱です。太平の世になれば殿も落ち着かれます」
「分かってはいるが、勘弁してもらいたいわ。太閤殿下も、もう少し、教育してくれれば良いものを」
こいつら喧嘩売っているのか。
そうだ、俺は小早川秀秋だったな。
そうか、あれだ関ヶ原合戦後、石田三成を裏切り勝利のきっかけを作った事で加増転封を受けるが、しばらくして発狂して死ぬんだった。
大谷吉継の亡霊によってと言われているけど、子どもの頃から酒を飲んでいたら肝臓がやられて、肝硬変で診断じゃないか?
周囲には阿諛追従が群がり、プレッシャーもあってストレスから酒に逃げていたんだろうな。
俺は進学校への進学と成績が上がらず、プレッシャーで心も体も弱っていたんだよな。
酒は飲まなかったし、飲んだら駄目だし、逃げ場がなかったがテレビで見たロックバンドを見て、心が救われたんだよな。
やりたいことを表現して、生きているって感じたあの時の感動は忘れない。
まあ、そのロックバンドもメンバー同士の不和で数年で解散した時もショックで寝込んだが…
「ちくしょう!!!」
「と、殿!?」
「五月蠅い!黙ってろ!」
「し、しかし、もうすぐ、黒田様からの依頼で、大谷勢に突入する時刻になります」
「知るか!そんなものほっとけ!」
「い、いや、それは!」
頼勝は黒田長政と親戚で交渉していたんだったな。
まあ、頼勝も正成も小早川家の事を思ったんだろうけど。
「小早川様、大谷勢への突入をお願い致します」
慇懃無礼な態度で俺たちの会話に入ってくるなよ。
誰だよ、このおっさん、正成、頼勝は苦虫を噛み潰したよう表情をするな。
…ああ、こいつが
「誰だ、こいつは?」
「殿、黒田様の使者でございます」
「黒田?なんで、他人の陣に、我が物顔で居ているんだ?えらい、調子こいてんな?あぁ?」
「と、殿、黒田様の使者に、なんと無礼な事を!」
「正成、お前は誰の家臣だ?ん?黒田の顔色みるなら、黒田の家臣か?なら、此処から出て行けよ」
「な!?」
顔を真っ赤にさせ正成は黙ったな。
その姿を見て、頼勝は深く大きなため息をつくなよ。
まるで長政が俺より身分が上のような扱いするのが悪いだよ。
で、喧嘩腰に言葉をかけられたやつは見下したような表情で俺を見ているな。
胸糞悪いな!
「な!?と、殿!盃を投げるなど、失礼ですぞ!」
「そうです。躱されましたが、もしあっていたらどうするつもりですか!?」
「正成、頼勝煩いぞ!」
「何をなさいます!」
「あぁ?お前、オレのこと、バカにするような目で見ていたよな?えぇ?」
「そのようなことは」
「うるせぇ!言い訳してんじゃねぇよ!ばれねぇ~とでも思ったか?それとも、黒田の家臣は、この俺よりも偉いのか?黒田に俺が仕えてるのか、言ってみろ!」
「何をバカなことを…」
「はっ!正成!頼勝!こいつを放り出せ!」
「「な!?」」
「それは、小早川家が徳川様を裏切るということでしょうか?」
「おい、カス!いつから、オレが徳川の家臣となったんだ?言ってみろよ!」
「もう一度お聞きします。徳川様を…」
「もういい!」
そう叫んで、周囲から軟弱者と思われているんだろうが秀秋は結構鍛えているんだぞ?
普段からの動きから分からぬ速度で近づいて、顔面に拳を叩きこんでやった。
おお、油断していたんだろうがまともに拳を受けて、気を失ったか。
正成と頼勝が呆然として、顔が真っ青だな。
「おい!このボケをどっかに転がしておけ!」
命令を受け、兵たちが入ってきて兵が武士を担ぎ出していった。
後で知ったが、担ぎ出された武士は、身ぐるみをはがされ、ふんどし一丁で、小早川の陣から追い出されたようだ。
どう言い訳するつもりだったんだろう?
『小早川本陣が混乱している間に、松尾山の眼下では、宇喜多軍と福島軍が死闘を繰り広げ、大谷軍と平塚軍が藤堂家、京極家と激闘を繰り広げていた。戦い自体は、五分五分に見えるが、西軍は、毛利軍、小早川軍など、大軍は動いておらず、徳川軍も本体は動かず、状況は膠着状態に近くなっていた。戦況が一進一退で思い通りにいかない事に徳川家康も不機嫌であった』
ふむ、思い通りにいかないのは戦の常ではあるが、約定をした連中も動かぬか。
小早川も、吉川も、いや吉川は毛利本陣をとどめておるか。
「正純」
「はっ」
「小早川軍は動いておらぬのか」
「動く様な気配はありませぬ」
「長政は、父親の如水には勝てぬか……」
「……」
「如水であれば、動く気配があっても良いのだがな、奴を過大評価しすぎたな。鉄砲隊を、小早川軍に向けて攻撃させろ」
「しかし、それでは、こちらに攻撃をしてくるのではないでしょうか」
「お前も、正信を越えれぬな」
「……」
ふん、顔の表情を変えてないつもりだろうが、正純はまだまだだな、悔し気な表情が出ておるわ。
正信にも三成にも伍することは無理か。
正信はわしの話を聞かずとも、意思をくみ取り策を献策できるのだがな。
「ん?」
伝令が入ってきたな。
「藤堂高虎様より、伝令です」
「どうした」
「小早川秀秋の動向を確かめる為、鉄砲を打ち込むも動きなしとのことです」
「そうか分かった、下がれ」
「はっ」
「ふむ、動かぬか」
高虎の鉄砲は、裏切りの合図であったが長政も凋落に失敗したのか?
役に立たないな。
短編を編集したものになります。




