27話
『小早川秀秋の陣』
何も言わなくなったな、忠勝。
まあ、海外の話をしたところで、家康や秀吉ぐらいは理解しているぐらいか?
後は、三成は…どうかな?
維新さんや茲矩なら意識していたかな?
行長は元商人の流れで理解しているかもしれないなぁ
「小早川殿は、この国の将来を…豊臣家の存在は?」
「行政として必要なんじゃね?政治体系何て、その都度、必要に応じて体制を作るしかないし、豊臣家の支配体制が問題なら変えるしかないとは思うけどな。今は、各大名が好き勝手にしているから一律には刑罰などは決めた方が良いと思うけど。そんな、面倒なことは家康や三成に任せる!おれはしらん!」
「行政とは分からぬが…豊臣家が無くなってもよいと?」
「何で、無くなるんだよ」
「それは、殿が日本を統べるなら豊臣家は邪魔になる。ならば、潰すか、縮小させるしかあるまい。ならば、豊臣家という存在は消えることになる」
「ああ、領地縮小か。まあ、それは仕方ないけど。そうなると、家康も縮小しないと駄目だろ?」
「それは無理だな。他の諸将を抑えるには兵が必要だから手放すことは無理だ」
「ははは、ふざけた話だな。お前は駄目だが、俺は良いとか、ジャイアニズムかよ。反吐が出るな!」
「…じゃいあにずむが何か分からぬが、反吐が出るだと?」
怒りの表情を浮かべているけど、何言ってんだ?
「お前よ、じゃあ、自らは恩恵を受けて、相手は踏みにじるのが正しいと?」
「そうではない。支配するには力が必要だ。その力を手放せと?」
「おお、それなら豊臣家も力を持ってもいいじゃないか?家康にその領土を手放せと言えよ。だって、豊臣家に従ったんだろ?従っているなら出来るよな、お前の話なら」
「それは…」
「領地を返せない時点で、お前の考えは矛盾しかないんだよ。家康はそんな事を考えず、叔父上のように天下を取りたいんだろうな。綺麗ごとのお題目を出してきて、豊臣家を潰そうとする薄汚さだろ。でも、それがこの時代のやり方だし、叔父上も同じだったけどな。ああ、家康は叔父上を見て、秀信のように秀頼を遇しようと思っているかもしれないな」
「…」
「ま、お前ら三河者の偏屈さ、頑固さは一筋縄ではいけないから、家康も苦労しているんだろうけど」
「我々の忠義は」
「三河での一向一揆は?」
「それは…」
「忠義があるなら、何故、分裂したんだ?」
「…」
三河武士の忠義なんて、家康が幕府を開いてから作られたとしか思わない。
家康の若い頃を見ていたら、三河の武士たちが忠義の欠片もなく、離散集合や一族内での権力争いもあった。
そんな事は、日本全国どこにでもある事だし、忠義というものも同じだろう。
なのに、三河武士だけが忠義者として持ち上げられるのがおかしい。
幕府が開かれた以降、三河の武士たちが自らの格付けと権威の為に作られたんだろう。
もしくは、三河以来の家臣への所領を分けるのが難しいから、そういう風に名誉だけを与えたのかも?
「しかし、本当にバカばっかりだな」
「何がです」
「正成よ、叡山、南都、一向宗、日蓮宗と機内、東海、北陸と騒乱が起きて問題ばかりで、キリスト教…耶蘇教かを広めて、更に混とんとするのか?まして、唯一一神教なんて排他的だぞ?そんなものを信じるなんてなぁ」
「それはそうですな…親次は少し度が過ぎていますね」
「ああ、有能なんだけどな。信仰するのは自由だよ、でもな、それを政治に入れたら駄目なんだよ。その結果が一向一揆だからな。耶蘇教はもっと過激だから将来禍根を残すぞ。加賀で起きたように、在地の豪族や民衆と宗教に狂った連中が結びついて不満が爆発したらな。九州あたりで起きても驚かないぞ」
実際、加賀の一向一揆は一向門徒だけではなく、在地の豪族や民衆が結びついた結果で起きて、支配体制も決して一向宗の統制が出来たわけではない。
そして、島原の乱もキリスト教徒の蜂起のように昔は言われていたが、原因のひとつではあったが、きっかけは松倉勝家の悪政で、ブチ切れた連中が蜂起した結果、キリスト教徒への厳しい棄教と生活が厳しい者たち、仕える家が亡くなった牢人が結びついて大きなものになっていった。
その中心が天草四郎と言われているけど。
あれは神輿であって、周囲には旧小西家の家臣など、戦慣れした者や知識があるものが指揮したんだろうな。
だからあれだけの戦いになったと思う。
「別に信仰を捨てるなとは言わなよ」
「そんなことを言えば、親次は逐電しますよ」
「ただな」
「ん?」
「神や仏が声をかけてきているんじゃないんだよ。人が声を発している。神や仏の声は信じれるかもしれないが、人が話せば信じるに値しない。まして、神や仏を語って言うやつなんぞ、信用する必要はない。一向宗や叡山を見ろよ、敵対したら仏敵だぞ?仏がそんな事いったのか?だれが聞いたんだ?仏なら微笑んでスルーするだろ。もし、問題があるなら明王や天部の神が処罰にくるんじゃない?でも、聞いたことないぞ?ああ、上杉謙信は毘沙門天の生まれ変わりみたいに言われているが、そんなわけあるかよ」
「殿、それ以上は」
「そうだな。とりあえず、信仰は否定しない。でも、信仰に支配されるなぐらいは通達するか」
「それぐらいなら」
「おう、終わってからな。親次とはじっくり話すわ」
「お願いします」
「忠義を持っている者を否定はしないが、それに酔うなよ忠勝。ほかに言うことあるか?」
「…ありませぬ」
「あ、ひとつ聞きたいが」
「何でしょう」
「家康て、武芸の腕前がすごいって、本当?」
「ええ、殿は柳生以外にも色々と剣を習っておりますし、弓、槍もたしなみます。鷹狩などで心身も常に鍛えております」
「そっかぁ、そうなんだなぁ」
やっぱり、あの年齢でもヤバそうだな。
俺の知っているじいさんも、七十も超えていたのに平然と瓦とか板とか割っていたなぁ。
この時代だと、もっとエグイかもしれない。
殴りに行ったら、殴り返されるモブキャラになりかねない…
おかしい、本当におかしい。
(喧嘩はうまいし、そこそこ強い。でも、勢いだけだからほとんど負けているんだぞ?お前のスタンスだから相手も許しているけど。普通なら終わってるぞお前は…)
タク…お前、そう思っていたのか?
『徳川家康の陣』
「どうだった、忠勝」
「突発的な行動で、戦を始める気はないと思われます」
「そうか」
やっぱり、秀秋の暴走か。
まったく、寝返りもせず頭の痛い事ばかりを…
「稲葉殿も困っておられました」
「だろうな」
秀秋のような愚か者を主君にすると、すべてを台無しにされて大変であろうな。
信雄の事を思い出すわ。
こちらと手を結んでいたくせに、勝手に秀吉と和睦して兵を引きをって…
あれはあれで、秀吉に対してこちらの強さを見せつけ、面目も立ったから良かったが。
「あと」
「ん?なんだ」
忠勝から秀秋の話を聞いたが、ふざけているな。
子どもの遊びと、合戦を同じと思っておるのか?
脳が酒に使って、おかしくなったんだろうな。
「わしを殴りに来るとはな」
「はい、ただ、殿の事を伝えると、絶望した表情を浮かべておりました」
「それは?」
「勝てないと思ったのではないでしょうか」
「ああ、そういうことか」
確かに最近は頻繁に鍛えておらぬが、秀秋ごとに負ける気はしない。
まして、小手を付けた状態で殴られたら怪我だけではすまぬ…が、秀秋ごとに当てられるとは思わぬがな。
ただ、わしをかなり高く評価しているのが驚きか、後は、南蛮や紅毛あたりの話も考えさせられるな。
はあ、こういう時、正信が居ればな。
亀井茲矩…茲矩
小西行長…行長
織田秀信…秀信
志賀親次…親次
織田信雄…信雄
本多忠勝…忠勝
本多正信…正信




