25話
『本多忠勝の陣』
何故、太鼓の音がなっているのだ?
近くに来てみたが、一定の間隔でなっておるが…
戦の合図ではないのは本当のようだな。
兵たちも遺骸の片づけや傷の手当をしておるな。
ん?
近くの村の者たちも来ているのか。
流石に追いはぎは許されておらぬようだがら、日銭を渡しておるようだな。
「これは本多様」
「ご苦労、何が問題は起きておらぬか」
「…あの太鼓の音で少し混乱しましたが、小早川様の方が来られて小早川様が行われていると謝罪があってからは落ち着きました」
「そうか」
「はい、なり始めた時は、村の者たちや兵たちが逃げ出しそうになりまして…」
「…大変だったな」
それはそうだろうな、休戦と言っておいて、太鼓が鳴り始めたら休戦の約定を破り攻めてきたと思ってもおかしくはない。
わしがこの場に居ても臨戦態勢になって、攻撃を警戒するか、逆に攻めたてたかもしれん。
まったく、紛らわしい!
小早川殿の戯けが!
「本多様どちらに?」
「小早川様に真意を確かめに行ってくる」
「殿!」
「なんだ?」
「そのようなことは言われておりませんぞ!」
「構わぬ、後で殿には詫びを入れる」
「そう言う問題ではありませぬ!殿!」
別に小早川様を討ち取りに行くわけではない。
話をしに行くだけというのに…
わしを何だと思っているんだ?
「大殿に伝えよ!」
「はっ」
「皆、殿の後を追うぞ!」
「おう!殿は怒れば何をするかわからん!休戦中に問題を起こしたら家を潰すことになるぞ!」
煩いな、わしは童ではないぞ!
『小早川秀秋の陣』
正成め、煩いな!
ちょっと、皆を鼓舞するためにコンサートをしただけなのに!
くそ!おれは権力にはめげない!
明日をつかむんだ!
(ジンは…)
何だろう、居ないはずのアヤに呆れた目で見られている気がする…
「殿、聞いておられるのか?」
「聞いているぞ、鼓舞するには音楽が一番じゃないか!」
「時と場合によるんです!…ん?」
「殿」
「どうした?」
「本多様が来られました」
「え?なんで?」
「何でと言われても、殿の行いを問いに来たのでは?」
「俺、何かした?」
「太鼓の事ですよ!」
「ああ…あ?その程度で?」
「はぁ…本多殿に来てもらってくれ」
「はっ」
たかが太鼓を鳴らして、歌を歌っただけでか?
なんだ?
は!?まさか、俺の歌声に感動したとか!
「殿?」
「ん?」
「何か勘違いしている気がしますが、その考えは全く違いますよ」
「…お前、エスパーか!?」
「えすぱー?」
「俺の思考を読めるのか?」
「いえ、表情で分かりますし、今までの発言から想像できますよ」
「ガッデム!」
「はぁ」
おや、何だろうドスドスという足音聞こえてきた気がする。
ロボットと疑われている忠勝か?
だから、ドスドスと?
あれ、落ち着いてくだされって、声も一緒に聞こえてくるな。
なんか怒っているのか?
俺の美声に惹かれたのでは?
「ごめん!」
「本多殿、良くおいで下された。このような場所では、おもてなしは出来ませぬが」
「稲葉殿、ありがとうございます」
「来られたのは、太鼓の件ですな」
「そうです」
「うちのバ…殿が申し訳ございません。他意はありませんので、徳川様にもお詫びしておいてください。各方面に謝罪の伝令は送っております」
「なるほど、ご苦労されておられるのですな」
なんだ、忠勝の言葉に正成は苦笑で返している。
まるで、俺が問題児のこまったちゃんみたいに!
ぷんぷんだ!
「おい正成、俺は主君だぞ?もっとこうだな、言い方ないか?」
「ありません。中途半端に言うと殿はご理解できないようですので」
「…きっついな!もっとやさしく!」
「ふっ」
乾いた笑いで返してきやがった!?
主君だと俺は!
もう少し、敬ってくれ!
「無理です」
「だから、心を読むな!」
「小早川様」
「なんだ?」
「あの太鼓は何だったのですか?攻めの合図と思いましたぞ」
「え?!あれは兵たちを鼓舞する為のコンサートだぞ?」
「こんさーと?」
「ん~、猿楽のようなものだ」
「太鼓の音ではさすがに誰もそう思いませんぞ。まして、今は休戦しているとは言え戦場。少々迂闊ではありませんか?」
「何を言っているだ?」
「…何とは?」
あれ、忠勝の家臣たちが慌てだしたぞ?
キレそうなのか?
「兵を鼓舞するのは将としての役目では?」
「そうですが、やり方があるのでは?」
「俺は、俺のロックに従う。だから、歌を聴かせることが兵たちを鼓舞する術だから歌ったんだが?」
「ろっく?しかし、不用意に太鼓を鳴らすことが問題になると考えなかったのですか?」
「仕方ないだろう。ドラムセットも、ギターもエレキ…は無理だし、ベースやキーボードにシンセサイザーもないからな。即席のドラム代わりの太鼓と、似非ギターぐらいしかないじゃないか。マイクがないから声も通らないし…」
「…いったい何を言っているのだ?俺をコケにしているのか?」
「コケにするかよ、お前みたいなやつを。自ら首絞める気ないぞ?日本一ともいえる武技、武力を持つ呂布のようなお前を」
忠勝は眉を潜めているな。
そもそも、いったい何を言っているんだ。
こんな化け物、小細工にやり合うわけないだろう。
「殿、本多殿の言われる通り、殿がどう思われるかではなく、周囲がどう思うかが問題なんです」
「ああ、そういう事か。それなら、済まなかったな!」
正成の言う通り、確かに、俺ではなく周囲がどう考えるかが…
まだまだ、俺の影響力がない証拠だな!
俺がやれば、安心して納得できるようなビックな男にならないといけないのか!
ロックよ!ロックの神よ!俺に力を!
(いや、お前を信頼をしているんじゃなく、皆呆れて、放置しているだけだぞ)
うるせい!ジン!
そんなことないだろう、皆笑っていたじゃないか!
笑って…あれ、笑っていたのか?
愛想笑いかな?
乾いた笑いかな?
おや?
…いや、違う!
あれは俺をまぶしくて、近づきずらいから笑っていたんだ!
(ああ、うん、そう思いたければ、そうしておけよ)
ジン!!!
呆れるんじゃねぇ!
「小早川様?」
「偶に…偶ではなく、よくおかしくなるのでしばらく放置して下さい」
「…はあ、いや、本当に大変そうですな」
「そうですが、まあ、以前に比べればよくなりましたよ」
「なるほど」
「はあ、悪かった。家康にも詫びの手紙書くから持って行ってくれ」
「…」
「一応、俺は豊臣一門で、同格だからな?そんな顔するなよ」
「分かりました」
「そう言えば、小早川様は殿と戦う事にしたのは何故です?」
あれ、忠勝も頼勝と長政の話を知っているのか?
知っているか。
「高虎が鉄砲で挑発してきたのと、長政の手下が挑発してきたからな。家康が喧嘩売ってきたって事だろう?下の者の責任は上が負うべきじゃないか?だから、家康を一発殴るためだよ」
「…は?」
「まあ、そんなこと言われたら、そんな表情になりますよね」
鳩が豆鉄砲を食ったような表情している忠勝…珍しい?
稲葉正成…正成
平岡頼勝…頼勝
本多忠勝…忠勝
黒田長政…長政
藤堂高虎…高虎




