24話
『徳川家康の陣』
ふう、皆が集まってきたか。
正則の猪武者は来ずと、あの愚か者は口車に乗せやすかったのだがな。
まあよい、一豊や高虎ならば、わしの意図を読み取ってくれるだろうし、長政も使いようがある。
忠興や幸長は気を付けねばなるまいが、輝政は問題なかろう。
「殿」
「皆来たか」
「福島様以外は」
「あれは来ぬな」
「はい」
まさか、秀秋如きに一騎打ちで敗れるとはな。
首を取られず、そのままついていったとか、初めに聞いた時は信じられなかったが。
ふむ、忠興は厳しい表情をしているな。
長政は顔を青ざめておるわ。
ふん、お主の不甲斐ない調略の結果が今の状態だから仕方ないか。
たが、野戦であれば、負ける気はせぬ。
気を付けるべきは、吉継のみ。
後の者たちは兵数で上回れば負けることはない。
「皆の者、ご苦労である」
「「はっ」」
「さて、昨日は激戦の為、数多くの被害が出たと思うが、どのような状況だ」
「我々はまだ負けておらぬ!」
「細川殿の心意気は良し!だが、今は兵はどのようになっておられる?」
「吾輩かは軟弱なものはおらぬゆえ、まだまだ問題ありませぬ!」
忠興は意気軒昂だが、嫁のガラシャが自害した事で三成を恨んでおるからだろうが…
がむしゃらに攻めたて、被害も大きいと聞いているが、それを問うても反発するか。
「ならば、明日もよろしくお頼み申す」
「任せなされ!」
「黒田殿、竹中殿、加藤殿の被害はどうだ」
「私もまだまだ問題ありません」
「私は厳しいです」
「私は問題ありませんが、少し、下がっておきたかと」
長政は秀秋と広家の失策があるから引くことは出来んか、ならばすりつぶれてもらおう。
これで潰れるならそれまでのことよ。
重門は元々兵数も少ないから仕方あるまい。
嘉明は一旦再編させたいのだろうが、今日あればできそうなものだが、正則の離反の影響か…無理はさせれぬか。
「黒田殿も細川殿と共に石田を攻めたてて欲しい。吉田殿、織田殿、金森殿は、竹中殿と加藤殿と入れ替わって頂きたい」
「分かりました」
重勝、長益、長近と入れ替えれば、それなりに戦えるだろう。
「松平家重、松平家清らにそれぞれ二千の兵を与えて、石田勢の後詰とする」
「ありがとうございます」
「黒田殿もはげまれよ」
「はっ」
「筒井殿、田中殿はどうか」
「福島勢が退かれたゆえ、小西と宇喜多の攻撃により被害が出ており、一度再編したいと思います」
「私も同様に入れ替わっていただきたいと思います」
ふむ、定次は先代とは比べることが出来ぬはど、戦力が減ったな。
兵数はいるが、指揮するものがいない。
流石に、定次と吉政では秀家と行長の兵は抑えきれぬか…
「分かった。生駒殿と入れ替わってもらう。直政、忠吉も宇喜多攻めに参加せよ」
「分かりました」
直政であれば十分に秀家や行長に対抗できるであろうが、兵数が少ないな。
「忠政、成次にそれぞれ三千の兵を与えへ、忠吉に付けるゆえ使いこなせ」
「はっ、父上」
忠吉は未だに後継者を狙っているようだな。
乱世であればそれでも良いが、秀康を推す連中が騒ぎそうだ。
厄介なことに、正信は秀康を推しているがわしの決断には反対せぬだろう。
「藤堂殿、京極殿、寺沢殿、中村殿、脇坂殿はどうか」
「さすがに、大谷殿の手勢、被害が大きいです。言いたくありませんが、一旦、後方に下がって再編を行いたいです」
「そうか、藤堂殿が言われるなら他の方々も同じかな?」
「はい、小早川と三家の攻勢を防ぐのが精一杯です」
「京極殿の言われる通り我々も同じです」
「長曾我部勢は強勢で守るならば本多殿の後詰と中村殿の援護で行えますが…」
流石に小早川の兵数を考えれば、馬房柵もなく守りの準備をしていない状況では厳しいであろうな。
「直勝、正次、清正、康俊にそれぞれ二千を与える。忠勝、差配しろ」
「はっ、そうなると本陣が薄くなりますが」
「構わぬ。勝てねば意味がない。宇喜多を大谷を止めろ」
「はっ」
正則のせいで、福島勢があてにできなくなったのが痛い。
長政も正則も役に立たぬ!
「浅野殿、池田殿、山内殿はどうか」
「今のところは、徳川殿の援軍もあり十分対処できています」
「池田殿の言われる通り、戦いも他の場所と違い遅かったため、そこまでの被害はありませぬ」
輝政も頼もしい言葉だ。
幸長も十分に対処できているようだな。
豊氏も頷いている。
「蜂須賀殿も後詰として参戦してくだされ」
「分かりました」
中山道から敵が来るか分からぬから、警戒のために至鎮を置いておいたが、そんな事も行っておられぬ。
秀元如きならばあしらえるだろうが、広家が曲者だからな。
恵瓊や正家は戦下手だから注意だけしておけば十分だがな。
「皆様方、昨日のように攻めたてて頂きたい。戦下手と苦労知らずの者たちならば、我々の敵ではない。時間がたてば、中山道の秀忠もやってくるだろう。そうなればこちらの優位は動かぬ」
「殿、そうなれば、あちらも大津を攻めていた軍勢が来るのでは?」
忠勝、確かにそうだが今言わずともよかろうに、高虎や長政はあえて口を閉ざしているぞ。
「忠勝の言う通り、大津攻めの毛利らが来るだろう。しかし、そうなれば補給が厳しくなるはずだ。あちらは兵糧を含めて十二分な蓄えもあるまい。持久戦になればこちらが有利となる。それにしびれを切らした女子が騒ぐかもしれぬからな」
「確かに、あのお方なら騒ぐかもしれませんな。詰問状を石田殿に送ったとしても私は不思議におもいません」
忠勝の言葉に、何人かが頷いておるな。
淀の方には父浅井長政、母お市の方、継父柴田勝家が自害し、兄も死罪となっているからな
ことさら子どもである秀頼を失う恐怖があるのだろうな。
だからこそ、騒ぎやすく、三成にとっての弱点になっている。
「奥州も動きもあるが、秀康が守っているから抜かれることはない」
「しかし、佐竹の動きも不透明ですが」
「佐竹は、先代が止めているから動くことはない。先代に背けない状況では家中もまとまりきれまい」
義重はこちらが有利と考え家臣を纏めて、義宣を抑えている。
まあ、義宣が三成に与している以上、戦いが終わればどこぞへ飛ばす予定だがな。
それも義重は予測していそうだがな。
「と、殿」
「なんだ!軍議中だぞ!」
「まて、忠勝」
「はっ」
「どうした」
「小早川の陣から太鼓が鳴らされております!」
「なんだと!?」
忠勝が驚いて立ち上がっているが、他の者は首を傾げているな。
律儀な三成が停戦を反故にするわけではなく、秀秋が勝手に軍を動かすほどの戯け…かもしれん。
「石田は停戦を破ったのか!」
「落ち着け、忠勝」
「しかし!」
「落ち着け」
「…はっ」
「で、小早川の兵は動いているのか?」
「いえ、遺体を回収しているだけです」
「ふむ…」
どういう事なんだ?
秀秋は戯けだが…
「様子を見てまいれ」
「では、私が」
「忠勝が出ずとも」
「いえ、私であれば何があっても対処できます」
「…分かった、行ってまいれ」
「はっ」
まったく、秀秋の戯けめ…
竹中重門…重門
加藤嘉明…嘉明
黒田長政…長政
細川忠興…忠興
筒井定次…定次
田中吉政…吉政
吉田重勝…重勝
織田長益…長益
金森長近…長近
生駒一正…一正
井伊直政…直政
松平忠吉…忠吉
藤堂高虎…高虎
京極高知…高知
寺沢広高…広高
脇坂安治…安治
中村一忠…一忠
本多忠勝…忠勝
有馬豊氏…豊氏
浅野幸長…幸長
池田輝政…輝政
山内一豊…一豊
蜂須賀至鎮…至鎮
徳川秀忠…秀忠
結城秀康…秀康
松平家重…家重
松平家清…家清
鳥居忠政…忠政
鳥居成次…成次
本多正信…正信
永井直勝…直勝
阿部正次…正次
内藤清正…清正
本多康俊…康俊
島清興…清興
宇喜多秀家…秀家
小西行長…行長
吉川広家…広家
毛利秀元…秀元
長束正家…正家
佐竹義重…義重
佐竹義宣…義宣




