22話
「左近よ」
「何でしょう」
「何かあれば、三成を殴って求めろよ?」
「それは…」
「殴るは揶揄だが、この石頭はきつく言っても分からないだろうからな。吉継でも止めれないんだから…なんだろうな、どうやったら柔らかくなるのか…」
「なるわけないだろうが、こいつの石頭はガキの頃からの生粋だぞ?皆で取っ組み合いしても変わらなかったんだから、もう駄目だよ、終わってるんだよ」
「福島殿?」
「睨んだところで事実だろ?」
「そうか、なら、三成の恥ずかしい出来事ないか?例えば、おねしょしたとか?脱糞したとか?お化け怖いとか?」
「小早川殿?」
なんだなんだ、睨んでいる三成は怖い…怖くないな。
ふてくされた子どもに見える。
「じゃあ、維新さんは俺たちの陣の近くに移動してもらうよ。ついでに、兵の一部を預ける事にする」
「ほう、良いので?」
「うん、維新さんなら上手く使うだろうし、いい加減、藤堂や京極が邪魔だからな」
「しかし、配置は再編されると思われるが」
「ああ、そうか。無傷の兵と入れ替わるのか?」
「そうだと思うぞ。そうでなければ一日も休戦しないだろう」
「後方の兵と入れ替えか…こちらも入れ替えが必要か」
くそ、もう少し早く入れ替わっていたら、色々な手がうてたのに!
楽器も造れたのに!
バンドも造れたのに!
あれか、狂言や猿楽やってる連中を集めたら、バックダンサーとか…いけるか?いけるな!
まったく、何だってこんなタイミングだったんだ。
「福島殿」
「なんだ、三成」
「小早川殿がぶつぶつ言いだして、訳の分からない事を言っているぞ?狂言とか、こんな時に何を?」
「気にするな、ほっとけば元に戻る。考えるだけ無駄だ」
「…そうか」
まあ、陣に戻ったら即席の楽器造るか。
皮はないだろうから、なめしたりしないといけないからすぐ使えないだろうかならぁ。
木をくり抜いて、幕でもまけば、即席の太鼓になるか…
「そう言えば、三成」
「何です。元に戻りましたか?」
「なんだよ、元に戻ったって…お前、大砲持っていたよな?」
「大砲?」
「大筒だ、国崩しか?」
「ええ、持ってきています」
「という事は、砲弾もあるよな?」
「あります」
「そうか。木砲って知っているか?」
「知っていますが、あれは耐久性が劣っていますよ」
「構わないんじゃない?何発か売れれば良いし、使い続ける必要はないだろ?」
「確かにそうですが…」
「佐和山あたりから大急ぎで補充して、一度に数発、間隔をあけて何度か打ち続ける方が良いんじゃないか?」
「…確かに」
「それに、国崩しも連続で撃てないだろうし、それなら、使い捨てで何発も撃てる方が良いだろうよ」
「左近」
「はっ、手配してきます」
「長政は引くだろうけど、忠興は引きそうにないなぁ」
「そうですな」
「お前が人質なんか取ろうとしなかったら、定石でも間違ったな」
「終わった事です」
「まあな、これからの事はしっかりとな。後、元康にも状況を伝えておけよ。情報共有は大事だからな」
「分かっています」
「中山道に宗茂を回してくれ、それ以外は北國街道に回しよいよ」
「それはこちらで考えておきます」
「はいはい、お願いしますよ。じゃ、俺は陣に戻る」
「分かりました…宇喜多殿の陣によりますか?」
「うーん、いいや別に、吉政相手なら十分だろう。直政が来たら大変だろうけど。十二分に対応できるだろうし…あいつ暑苦しい…」
「真面目な方です」
「いや、ボンボンで熱血とか…質が悪いわ、相性が悪い。あいつにはロック魂がない!」
「分かった分かった」
「おざなりすぎないか、正則?」
「そうか?まあ、いいじゃないか。三成」
「何です」
「腹に一発、お前も俺の腹に一発、それで終わりだ」
「…はぁ、分かりました」
「とりあえず、帰るわ」
「分かりました」
維新さんがこちらに来るのは良いな。
宗茂も来たら、忠勝に勝てる確率が上がる。
まあ、その前に戦いそうだけど…
『宇喜多秀家の陣』
ふむ、一旦、戦いは終わりだ。
いい汗かいた!
「全登」
「はっ」
「明日は、兵たちを順次休めておいて」
「分かりました」
「傷ついたものは後方に、馬房柵の補強もお願い」
「分かりました」
ふう、戸川、岡、花房らが裏切り家中が乱れ、引き締めを行っている時に関ケ原とは運がないな。
不運ならば、幸運も来るだろう。
秀秋が寝返るかもしれないと石田殿や大谷殿から聞いていたが、杞憂だったな。
まあ、当然だ。
豊臣一門の秀秋が裏切るわけがない。
まったく、二人とも心配しすぎなんだよ。
『黒田長政の陣』
どうした事か、秀秋も広家も寝返らなかっただと?
頼勝や猪之助は何をしていたんだ!
毛利は秀元が強引に動く可能性もあったが、秀秋が裏切れば身動きが取れなくなったはず…
くそ!どこで失敗したのか!
「殿」
「なんだ、又兵衛」
「どうされます」
「そんなことわかっておろう、このまま、細川殿と共に石田を攻めるだけだ」
「しかし、兵たちも疲れております」
「分かっておるわ!差し出がましい!」
「…はっ」
又兵衛め、生意気な!
主君であるわしに反抗的な態度ばかり!
一騎打ちで負けそうな時も手助けもせず、周りも押しとどめておったとか。
助ける気もないとは!
「殿」
「なんだ!」
「徳川様からの伝令が」
「!?」
調略の失敗を責めるためか?
父上は、徳川様の事を底が見えぬと言われていたが、私には律儀な方にしか思えない。
しかし、調略の失敗は責められるであろうな。
「はぁ、分かった。お連れしろ」
「いえ、言付けしてから戻られました」
「…そうか」
そこまでお怒りなのか?
確かに、本来であればもう決着がついていたはず、その怒りは深いであろうな。
「それで徳川殿はなんと」
「はっ、明日、本陣にて軍議を行う為、お越し願いたいと。無理であれば、代理の者をと」
叱責ではないか。
まあ、それはそうか、戦も終わっておらず、こんなところで叱責もないだろうし、書状を書く暇もなかったろう。
気が重いな、でも、行かねばならないか。
『細川忠興の陣』
くそ!
三成の首を取れなかったか!
ガラシャの敵を討つまで終わらぬぞ!
「殿」
「なんだ」
「徳川様より伝令にて、明日、軍議を行う為本陣に来られたしと」
「分かった」
徳川殿も情けない。
三成如きにここまで後手に回るとは!
頼りなき!
黒田長政…長政
細川忠興…忠興
毛利元康…元康
立花宗茂…宗茂
田中吉政…吉政
井伊直政…直政




