18話
ああ、正成が渋い表情でこちらに来る…
逃げるか!
うっ!?
「何をするんだ、親次」
「稲葉殿に怒られたくはありませんので」
「いやいや、仮にもお前の主君だよな?俺?」
「はい、ですので主君が至らぬなら還元するのも家臣の勤め」
「何も言ってない!お前は俺の腕を柄で射るだけだ!そして、びくともしない!?」
「ははは、身体の位置と重心でこれぐらいできます」
「いや、だが!痛い!痛い!腕を握る手が強すぎないか?!」
「ははは、何のことやら」
「その笑い方嫌いだ!」
「なんだその寸劇は、お前の家老が来てるんだからしゃきっとしろ」
「助けろよ、正則!」
「家中の話を俺にふるな」
くそ!味方になってくれる奴はいないのか!?
周りを見ても目をそらしている!
は!?
なんか渋い表情から、さわやかな笑顔になっている!?
「殿」
「うむ、ご苦労だった!俺は疲れたので休む!」
「ハハハハハ」
あれ、笑い方が親次とは違うな…
「正吉!」
あれ?いないぞ?
「正吉殿は、平岡殿の元に行かれています」
「逃げたな!?」
「お役目の報告です。殿と一緒にしないでください。あと、殿が頼んだものを集めに行っています」
「さすが!正吉!」
「はぁ」
「殿」
「なんだ、正成」
「ちょっと、お話があるのですが?」
「俺は疲れた!」
「ちょっと、お話があるのですが?」
うっ、二回も同じことを…
「悪かった。長く陣をあけていて、色々あったんだよ」
だから、そんなさわやかな笑顔で見つめるな、逆に怖い。
「それに、俺よりもお前の方が兵の扱いがうまい。俺が指揮してミスっても意味がないからな。明日以降も頼む」
「…殿、はぁ。殿はそこまでおかしな差配はされていません。手堅いやり方ですので問題はありません」
「そうかもしれないが、今回は、安治みたいな動きの分からないやつも致し、三家もいつ振り返るかわからないからな。臨機応変に対応するのはお前の方が長けている」
「その信頼はありがたいのですが、主君として陣に居ることで、家臣も兵も安心して戦えるのです」
「あのな、俺が兵たちからどう思われているか分かっているから、そんな慰めはいらない」
「慰めではありません。家臣は忠義と恩賞の為に戦うのです。それを評価する主君がどこに居るかもわからないのは不安でしかありません。まして、どこかで屍をさらしているかもしれない。そうなると家は潰れ武功は評価されないのです」
「分かった、分かった。正則も連れてきたんだ。休ませてやってくれ」
「そうですね。福島様、失礼しました」
「構わない」
「ここにおられても構わないのですか?殿の酔狂に付き合う必要はないと思いますが」
「確かにな。でも、こいつに負けたし、兵を返して徳川殿を攻めろと言われたら断っていただろうな」
「そうですか…殿の話を聞いて、納得されましたか?」
「おい!正成!肩から手を放せ!痛い!」
「話があるので、逃げませんように」
「稲葉殿に迷惑をかけているんだ。話を聞いてやれ」
「ええぇ」
「ガキ見たいにいうんじゃねぇ!」
「痛てぇ、殴るな!脳細胞が何億匹なくなったかもしれないし、脳出血したらどうするんだ!馬鹿力!」
本当に痛い、手甲を付けているのに!
「軽く小突いただけだろ。やかましい」
「正成!正則がいじめる!」
「はいはい、福島様、とりあえず休める場所を用意しておりますので」
「分かった」
「む…まあ、分かった。とりあえず、飯を食べよう。そこで話を聞く」
「分かりました」
戦場での食事は味気ないものだけど。
とりあえず腹に入れないとな。
「酒はいらないぞ」
「本当に?」
「いらない、もう飲まない」
「ははは、お前が酒を止めれるはずはない」
「止めるさ、このままでは多分、酒害で死ぬことになるからな。多分、肝がやられている」
「は?」
「殿?」
「若い頃から酒を飲み過ぎたんだろう。体が出来上がる前に飲み過ぎたから内臓が弱っているはずだ。いまさらかもしれないが、酒を止めないと数年で死ぬな」
「医者でもないお間が分かるのか?」
「毛利元就の父や兄が酒害で死んだと言われているし、足利義尚も死因は酒害だろうと思う。その話を聞いていたら同じなんだよ。このままでは幻覚、幻聴が出てくるかもな。なので、酒は止める。手遅れとしても俺はロックを広めたいからな!」
「…また、ろっくか、何だそれ?」
「うーん、今はギターもドラムもないからなぁ。よし、明日見せてやろう!」
「いらん、ろくでもない気がする」
「殿、皆の邪魔だけはしないでください」
「…ふっ、俺はお前らの威圧には屈しない!っと、とりあえず、飯だ、飯」
「はぁ、分かりました」
「まあ、俺は酒を飲むが」
「あ、正則も酒はやめとけ」
「なんでだよ」
「お前は酒乱だ。酒を飲むと記憶がなくなり、行動が攻撃的なる。今後、失敗する可能性があるから、飲むとしても一杯ぐらいにしておけ」
「なんで、いう事聞かないといけない?」
「まあ、好きにしたら良いけど。ここでは飲むな。誰も責任が持てない。ほら、吉長さんが顔を空に向けているぞ」
「何?才蔵?」
「殿は気が付かれていないでしょうが。小早川様の言う通りです。何度か、刀を振り回されたこともあります。奥方様が嘆かれて叱られたことが何度あるか…」
「うっ、それはいうな」
「ほら、奥さんも大変なんだから止めておけよ。ほどほどにな」
「…はぁ、分かった」
正則の酒乱は酷いからな。
日本号の話もあるし、黒田清隆みたいな話は伝わってないだけで、実際あったかもしれないしな。
酒は飲んでも飲まれるな…
飲まれた小早川秀秋と福祉正則が此処にいる!
ロッカーなら酒ぐらいとは思うけど、身体がつぶれたらロックも広めれないしなぁ。
くそ!ロッカーならビール瓶片手に!煙草を!って、思うけど。
でもなぁ、身体に対するリスクが高すぎるし、止める方が良いよ。
この身体、既に酒で肝臓や腎臓やられている可能性あるから、無理が出来ない!
『徳川家康の陣』
諸将に手紙を出さねばな、三成にも、吉継にも出すか。
そうか、維新にも出した方が良いか。
元忠の忠義は分かるし、内部からの裏切りも危惧したんだろうが、頼んでいた者たちを城から追い出すとはな。
だからこそ、耐えれたのかもしれないが。
「正純」
「はっ」
「諸将を明日集まってもらえ」
「分かりました」
「石田方の連中にも書状を出す」
「伊賀者を使いますか?」
「いや、使者を出す」
「あいさつ程度だ」
「分かりました」
これで、揺さぶれるとは思わぬが、疑心暗鬼にでもなってくれれば御の字だな。
三成はこちらにそんなことを仕掛けてくるとは思わないから気が楽だ。
暗殺もできればよいが…
そんなに甘くはないだろうな
島津義弘…維新
鳥居元忠…元忠




