16話
「そこの君!俺と一緒にロックのスターにならないか!」
「は、はぁ?」
「今は分からない!だが、この戦いの後の太平の世にはロックが必要だ!だから、君も!」
「殿、何をされているのです?」
「いや、今はまだ家康も殴りに行けないし、やることがないから、バンドのメンバーを集めに!こちつの体格はドラマーにぴったりだ!」
「はぁ、ここは大谷様の陣です。失礼すぎませんんか?」
「親次!吉継はそんなケチな事いわないから大丈夫だ!」
「何を根拠に…」
「…流石にほうり出す気はないですが」
「Hey!吉継!」
「…親次殿、大変ですね」
「はい、何処でどうなったのか…まあ、前の飲んだくれよりはマシですが」
「確かに」
「おい!聞こえているぞ!」
「聞こえるように話しています」
「なんだって!」
「あまり、周りに迷惑をかけないでください」
「分かってるYO!」
「飲んだくれの時よりも絡み酒みたいになって鬱陶しいですね」
吉継って、こんなに口悪かったか?
うーん、まあいいけどさ。
バンドしたいなぁ、歌いたいな!
とっとと、戦なんぞ終わらせて、ステージ作りたい!
歌舞伎はないけど、能の部隊があるから、演奏ぐらいできんじゃね?
でも、ドラムやギターもないしなぁ
鼓や太鼓、ほら貝、尺八、横笛、琴、神事で使う楽器とか…ロックじゃない!?
琵琶とか使えるか?
色々な楽器を集めてやらないと。
そう言えば、和楽器のバンドあったよな?
それを考えると、出来るのか?
いや、出来るのではない、やるんだ!
そして、俺がパイオニアになるんだ!
「うおぉぉぉぉぉ」
「大谷殿」
「なんです、福島殿」
「あれ、なんかヤバい薬でもやってんじゃないのか?それとも酒が頭にまでいったんじゃないか?」
「…そうだと良いんですけど、あれは、まともですよ」
「まともかぁ」
「どうします?今なら逃げて、兵たちの元に行けますよ?」
「そうだなぁ、それでも良いけど。負けた立場としてはな。ここで逃げるのもな…三成あたりに馬鹿にされそうで、それはそれで嫌だな」
「相変わらず、あなた方は…似たもの同士ですよ」
「はぁ!?何を言っている?!」
「どちらも思い込んだら一直線じゃないですか。石田殿は私に、福島殿は加藤殿に後始末を押し付けるのも一緒。豊臣家への忠誠度も高いのも同じ。兵站への考えも殿下の薫陶を受けて意識している。まあ、三成殿は酒乱でも恐妻家でもないですが」
「お前まで、恐妻家とかいうのか?!」
「皆口に出さないだけで、思ってますよ」
「…お前、そんな奴だったか?」
「ふっ」
「なんだその笑い」
「私はこの身体、もう先は長くありません。この戦いで命を失っても良いと思っています。畳の上で死ぬのもね」
「なんだ、お前もやっぱ武士だな」
「当たり前です。畳で死ぬのは病に負ける負け戦、ならば、戦場で討ち死にも良いでしょう。殿下への良い土産話ですよ」
「はぁ、だが、お前が居なければ、三成だけでは内部はボロボロになるぞ?あれは融通が利かなさすぎる」
「この身体ではね…まあ、小早川殿が何とかしてくれると期待します、祈ってます、笑ってます」
「最後の笑ってますってなんだよ、前の状態ならアレだが今ならまともか」
「ええ、話してみて、先を考えていますし、徳川家を潰す気がないのが良いですね」
「単純な奴なら潰そうとするだろうが、徳川家臣もそれなりの領地を得ているからな。家を潰すなら挙兵してもおかしくない」
「そうです。結城殿と江戸中納言殿で家を分ければ、所領を減らしても抑えこむこともできるでしょう」
「結城殿がどうするかだけどな。あの人も俺と同じで感情で動くからな…」
「親子仲が悪いと言われていますが、やはり、親子ですからね」
「義理人情が厚いというのは、感情で動く気が短い奴に多いな。その分、江戸中納言殿は腹に蓄えるから分かりずらい。素直で徳川殿や嫁さんに頭が上がらない分、腹にいろいろ溜め込んでいそうだがな」
「あなたと同じ恐妻家なかまですね」
「うっさいぞ!」
なんか、二人で話しているな。
年齢的にも、やっぱり仲が良いんだろうか?
正則が単純で義理堅いから助かっている。
俺なら逃げるな…
「今日は日が暮れたら、戦は終わるかな」
「なんだ、絶叫していたんじゃないのか?」
「奇行もほどほどに」
「うっさいわ。これだけ長い時間戦ったら、一旦、休むかな?」
「そうですね。休戦になると思います」
「日が暮れれば、敵味方分からんからな。もうすぐ、止まるんじゃないか?あとは、負傷者や死者の片づけか」
「そうですね。夜襲や暗殺には気を付ける必要ありますね」
「夜襲は分かるが、暗殺?」
「伊賀者、甲賀者が居ますからね。それ以外にも、少数で来る可能性はあります」
「なら、周囲のかがり火を増やすか?」
「それぐらいですね。後はや夜番の強化です」
「…なら、此処に居ても邪魔だから小早川の陣に戻るか」
「さようなら」
「おいぃぃぃ、引き留めろよ!」
「邪魔ですよ、負傷者の手当てや再編が必要なので」
「ううう、正則ぃ、吉継がいじめる」
「そうか、じゃあ、おれも陣に戻るか」
「一緒に来いよ!」
「大谷殿に悪いじゃないか」
「そうじゃないよね!小早川の陣に来いって!」
「はぁ、仕方ないな…」
「戦終わったら、時間かかるかもしれないけど、美味しいもの食べさせるからよ!」
「そこで、一騎打ちの話はでないのか?」
「それはそれ、これはこれ。お前なら約束を守ると思っているから問題ない!」
「はぁ、今日は大谷殿と秀秋がどんな奴か分かって、疲れたな…」
「小早川の陣では寝ていいぞ!襲うやつもいないし、万全を期して忠勝と戦ってほしいからな!」
「へいへい」
「なんだよ!その気の抜けた返事は!ロッケンロール!って言えよ」
「…じゃあ、大谷殿、世話になった」
「はい、酒は難しいですが、戦が終わればお茶でも」
「おう、生き残れよ、死ぬなよ。お前は、殿下が認めたやつなんだからな」
「ははは、ありがとうございます」
「なんだよ、お前ら俺に対する対応と違いすぎる!?」
とりあえず、小早川の陣に戻るか、正成と話ししないとな。
裏切らないし、正則が離脱すると西軍が勝てると思ったんだけど。
そんなにもろくないか。
家康も援軍を繰り出して来たし、兵数が互角だとこんなもんだろうな。
何処かで何かないと…
『石田三成の陣』
小早川殿や毛利殿が攻めても崩れぬか。
これだけ、有利な陣であっても、互角の兵数であれば長陣は当たり前か。
こちらも優秀な将兵がいるが、徳川勢をはじめ、あちらも同じ。
「殿」
「左近か」
「はっ」
「夜は休戦だな」
「はい、明日も含めて、死者を良ければ戦いも厳しいかと」
「徳川殿に使者を」
ん?
何かな、誰かが伝令を送ってきたか?
「殿」
「どうした」
「黒田様から明日は負傷者、死者の対応の為に休戦との使者が」
「どう思う、左近。罠かな?」
「いえ、それはないかと。流石にこれだけの戦いで、兵数だと」
「使者をこれへ」
ふう、一旦は落ち着けるか。
再編を考えなければいけないな。
毛利大蔵大輔殿がくれば、こちらが優勢になるか。
いやそうなれば、江戸中納言殿が来てるかもしれない。
中々、上手くいかぬな。
毛利元康…毛利大蔵大輔




