10話
『長宗我部盛親の陣』
「殿!脇坂の兵がこちらに向いています!」
ふむ、物見の話を聞くと、脇坂はこちらと戦う気だな。
ならば、踏みつぶすまでだ。
軟弱な淡路の兵なぞ、踏みつぶす。
考えたら、親父の四国統一を邪魔したのは織田だが、踏みつぶしたのは豊臣だし、兄信親を死に追いやったのも豊臣だ。
仙石のやろうが居たら首を切り落として、親父と兄の墓前に添えるんだが…
それは無理だが、脇坂も豊臣だ。
実際は、水軍での輸送だったが、関わったのは事実。
首を斬り落として、恨みを晴らしている。
「皆の者!敵は脇坂!我ら長曾我部の仇敵でもある!見方であれば許すが、敵となれば踏み潰すだけだ!親父たちの恨みを晴らせ!」
「「おう!」」
「吉成!先陣を任せる!弱兵を踏みつぶせ!」
「はっ!」
『波部又右衛門』
「波部殿 」
「殿から伝令が」
「なんと?」
「脇坂は裏切ったので、長曾我部の動きに合わせて攻撃しろとのことです」
「そうか、そちらの物見は?」
噂をすればだな、
「帰ってきたようです」
「どうだ?」
「脇坂勢は、向きを反転させ長曾我部勢と戦う陣形に変更しておりました」
「今は最中か?」
「はい」
「こちらへの抑えは?」
「百ほどを」
「そうか」
こちらは五百ほど、百であれば問題ないが、脇坂は三千ほど。
長曾我部勢と合わせればよいが、そんな時間はない。
そして、今は陣形を変えて慌ただしいはずだ。
抑えがあっても、動いたという事だけで脇坂殿は慌てずとも、兵はそうではあるまい。
小勢であっても、兵はこちらの兵数は教えられていないはず。
本体が来たと思わせれば…
「それと、殿がこれを使えと」
「…これは、殿の馬印」
「予備の一つらしいですが、これを使えと」
「ははは、なかなか、殿は策略を使われるな」
これで、殿がこちらに来ていると誤認させれるか。
本体が来ているとすれば、兵たちは動揺する。
少なくとも数千、そして、前には長曾我部の兵、挟撃される恐怖を与えることが出来るか。
「よし!この馬印を立て攻撃するぞ!」
「あそこであれば、馬印は見えるが兵がいるか分かりずらいだろう」
「分かった」
「弓隊を配置させ、長槍隊を後ろに!」
「長曾我部勢も動いているらしいから、こちらへ向かう兵もそこまでないだろう。殿からは敵がこちらに多く来たら森に散会して、襲撃を繰り返せと言われたぞ」
「それも良いな、散開する時は組頭単位で行動するように伝えろ」
「分かった」
ふふふ、長曾我部勢との共同とは言え、脇坂を倒せば功を挙げることが出来るな!
やってやる!
『脇坂安治の陣』
まだ、陣替えが終わらんか。
後方からくるとは思わなかったから、そちらには意識を向けていなかった。
左方からくると思っていたが…
「まだ、終わらんか!」
「はっ、もうすぐ終わるようです」
くそ、ん、どうした?
「と、殿!」
「どうした!」
「左の森の中に小早川の馬印が!」
「なに!?」
小早川は本当に喧嘩を売られたとして、こちらに全軍を向かわせたのか?
まさか、藤堂や京極と戦っている状況でか?
しかし、あれは馬鹿者だから来る可能性もある…
「だが、どれぐらいの兵だ!」
「数百ほどです」
数百か、ならば、全軍ではないな。
森から降りてくる以上、一気に兵を送り出してくるはずはない。
ならば、一部か、それでも千ではなく、三千はくるか?
ちっ、長曾我部も来る以上、挟撃の危険がある。
そして、今は陣替えで引くことも難しい。
なんて、時機に来やがる!
「抑えの兵だけでは無理か?」
「馬印を見た兵が動揺して、抑えきれないようです。敵からも殿が後詰めの兵を送ってくるから、今は攻めよ、耐えよと言っているのを聞いて、逃げ出そうとするものも」
「分かった、追加で五百ほどを後詰で送る。おい!」
「はっ!」
「と、殿!」
「今度はなんだ!」
「長曾我部勢が!」
「もう来たのか!?あの距離だぞ!前線はどうなっている!」
「ぎりぎり配置は出来ましたが、流石に弓隊や鉄砲隊は…」
「槍隊で防げ!弓隊は敵後方を射るように伝えよ!寺沢殿と本多殿に後詰を!」
「はっ」
寺沢殿には難しいか。
本多殿には寝返りの話は伝わっていると思うが、どうなるか。
本多殿が来れば、戦況は好転するだろう。
『寺沢広高の陣』
何だと、脇坂殿から後詰の依頼だと?
あれは石田方ではないのか?
「お主は本当に脇坂殿の使者か?」
「はっ!殿は徳川様に従っております」
寝返っていたのか。
まあ、徳川様ならあり得るか。
石田殿は人望がなさすぎるからな。
「それは分かったが、こちらは藤堂殿と京極殿の後詰をしていて余裕がない」
「分かっておりますが、何卒」
南宮山に居たはずの長曾我部がこちらに来ていて、小早川からの挟撃されている。
そこが破られれば、こちらにも確かにまずいがない袖は振れぬが。
「分かった。だが、二百ほどしか出せん」
「ありがとうございます」
「一緒に帰ればよい。おい!お前のところの兵を援軍に向かわせろ」
「はっ」
はあ、小早川もこちらに付くと思って、楽な戦と思ったがな。
『徳川家康の陣』
くそ!
秀秋のガキが寝返らないだぞ!
長政!あの愚か者め、自信満々に寝返るとか言ったくせに!
「殿」
くそ、軍配を地面に叩きつけてしまったわ。
正信が居れば、相談できるものを。
「宗矩」
「はっ」
「どうなっている」
「小早川の攻勢によって、前線が乱れております」
「そうだな」
「正純」
「後方にいる浅野殿らをこちらに向かわせますか」
正純も正信と同じ戦下手だな。
正信ならまだましな策を考えるだろうが、正純は経験不足過ぎる。
だからこそ、秀忠の元に正信を置いたのだがな。
正信では抑えきれなんだか。
秀忠の兵があれば、まだ、やりようがあるんだが。
「本陣を前に進める」
「殿、危険です」
「煩いぞ、正純。お主には戦の機微が分からぬか。わしが前に進めば前線の諸将は奮起し、乱れも収まるのだ」
「しかし…」
分かっておらん、正純は。
此処で動かず、留まっていれば前線は崩壊する。
動けば、奮起するだろうし、三成たちも浮足立つだろう。
「宗矩」
「周囲を固めよ」
「はっ」
「前へ出るぞ!」
『小早川秀秋の陣』
一進一退だな、流石に強いか。
高虎はひとかどの武将だしな。
意外なのは、高知が奮戦している事だな。
弱い武将と思っていたが…所詮、ゲームのパラメータだから実際は違うんだろうな。
大津城も京極が守っているし、意外に能力あるんだろうな。
「殿」
「どうした?」
「徳川の本陣が移動しているようです」
「前線の督戦か」
「そのようです」
これで、前線が落ち着くのか?
そうは、させたくない。
「ならば、正則を捕縛に行く」
「危険です」
「これを」
「これは?」
「俺に何かあれば、お前が後を継げ」
「は?」
「徳川に降るも、戦うも任せる」
「いや、そこまでの…」
「勝つには正則の武力がいるんだよ」
「…分かりました。しかし、ご無理はしては駄目ですぞ」
「分かった」
はぁ、思い出したけど、家康の周りには柳生がいるんだよなぁ。
何とかの軍団も怖いけど、柳生も怖いなぁ。
対策どうしよう?




