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急がば回れじゃ遅すぎるっ  ——ただし、笑いの裏には、それぞれの過去がある  作者: 井氷鹿
第2章 Laroue De Fortune ~ 運命の輪 ~

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小日向のお悩み

1日遅れてしまいました!

「孔ちゃん」

 小日向の呼びかけに気が付かないのか、孔明はドキュメントから目を離さない。

「孔ちゃん? 聞こえてる~?」

 やっぱり気が付かないようだ。 

 テーブルの上をさっと見て、小日向は手元にあった用紙を丸めメガホンにして叫んだ。 

「孔ちゃ~ん!」

「うわぁっ」

 椅子から飛び上がった様に肩をびくつかせ、孔明が顔を上げる。

「びっくりした。何ですかいきなり大声で」

「やっと気が付いた」

 と嬉しそうに笑い、小日向が手を振る。

 アイドルかよ、あんたは。

「何ですか」 

「そんな露骨に嫌な顔しなくても」

 いやな気がしてるわけではない。

 むしろ小日向の事が好きな孔明だが、顔を見るとどうしてもムカつくらしい。

「さっきから呼んでるのに、気が付かないから孔ちゃん」

「ああ、すみません。流石にシステムが古いせいか、ドキュメントとのずれが酷くて、それにちょっと触っただけでもかなりの穴があって……」 

 と手元を見ながら、孔明が進捗の報告を始めた。

「うん。ありがとう」

「今日中にペネトレーションテストを仕掛けようかと考えてます。その……」

「ペネトレーションは任せるよ。こっちでも一回かけたから、結果が出たら突き合わせて確認だね」

「ああ、はい。わかりました」

 さすがに先にやってたか、と孔明は一人ごち持っていたペンで頭を搔いた。

「それより、お昼にしよう!」 

 え? と思い時計を見ると正午を回っている。

 首をめぐらすと、小日向が手に朝見たお弁当箱の入った巾着を持ってニコニコ笑っていた。


 二人で可愛らしい柄の入った巾着を下げ、パーティションで区切られた部屋に入る。

 そこにはテーブルと椅子が何組か並べられた、休憩室だ。

 簡単な流しと小型の冷蔵庫、それに設置されたばかりのデロンギがあった。

 先に席に着いた小日向が、ほれほれと自分の前の席に手招いている。

 二人しか出社してないのに、離れて食うのも変な話。

 やれやれと言った体で、孔明が言われた席に巾着を置き、持参したマグを流しで洗う。

 お茶を注いで戻ってくると、

「コーヒーだけじゃないんだ」

「緑茶も烏龍茶も、紅茶もありますよ。紅茶は希望を言えば用意します」

「外資ってすげーな。俺、明日から水筒要らないじゃん。マグ持ってこよっと」

 言いながら慣れた手つきで弁当を用意する。

 孔明も蓋を開け、中を見た。

 咄嗟に小日向と中身を確認する。

 おおっ! 一品多いぞ。

 と孔明は内心でガッツポーズを決め、ふふんと鼻を鳴らした。

「あれ、孔ちゃんのに昨日のおかずが入ってる」

 と言いながら、スッと箸が伸びてきた。

「何するんですか!あげませんよ」

 弁当箱を両手で持ち上げ、さっと避ける。

「ええ~っ。青椒牛肉絲、美味しかったのに」

「昨日食べたくせに」

 睨まれ、仕方なさそうに小日向は箸をひっこめる。

「ところでさ、佐藤忠からキックオフの話が来てて、日程を決めてくれって」

 言われた孔明はと言えば、箸が届かない様にと横を向いて夢中で手に持った弁当を食べている。

「平日の方が良いよね、仕事終わりで今週の金曜とか」

「明後日ですか? いいんじゃないかな。こっちのメンバーにはボクから聞いときます」

「うん、助かる。それと、キックオフにはうちの上司も来る事になってるから、紹介するよ」

「はぁ」

 弁当を食べ終え、一式持って流しで弁当箱を洗い始めた。

「四年前までアメリカに居たんだ」

「エリートっスね」

 うん、と返事して小日向は急に黙り込んだ。

 孔明は手拭き用のペーパーを使い、洗った容器の水気をふき取ると席に戻って小日向の顔を見た。

「もしかして、和哉さんその上司と合わないとか」

「だったらまだいいんだけどねー」

 と答えると、ながーいため息をついた。

いつも読んで下さりありがとうございます。

第2章は毎週土曜日更新予定です。

どうぞ宜しくお願いします。

下の☆☆☆☆☆評価もお待ちしてます。ぜひ★★★★★にして私のモチベ維持にご協力お願いします。

コメントもリアクションも待てます。レビュー頂けるとマジで喜びます。


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