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急がば回れじゃ遅すぎるっ  ——ただし、笑いの裏には、それぞれの過去がある  作者: 井氷鹿
第2章 Laroue De Fortune ~ 運命の輪 ~

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20/22

お弁当

 本日から、MTTデータが借りた新オフィスへ出勤となった孔明だが、そのせいか昨夜から落ち着かないようだ。

 朝のルーティンも含め、結果一時間ほど早めの出勤になってしまった。

 閑散としたホールを通り、一人エレベータに乗る。

 カードキーをスライドさせ、新しいオフィスのドアを開く。

 本格的な始動にはまだ早いが、予定通りオフィス内の配線工事は終了したようだ。

 さすが、天下のMTTデータ様、作業工程はきっちりだ。

 満足げに頷きながら、首をめぐらす。

 室内配線はOAフロア方式と配線ダクト・ポール型のハイブリッドタイプが採用された。

 オフィス中央の島には、この配線ダクト・ポール型がきっと機動力を発揮するはずだ。

 そう信じて孔明が提案した案が、通った結果だった。

 

 室内を見渡しながら自分のデスクに歩いて行く。

 肩に下げたショルダーを一旦デスクに置き、それから中央の島まで移動して天井を見上げた。

 つり下がった電源タブを引っ張り、レール上をスライドさせてみた。

 OUTECH日本のオフィスは主にこの天井からの吊り下げ型だが、最新のダクトはデザインも動きも違うようで。

 それから届いた資料を取りに、孔明は自社のオフィスに出かけて行った。

 と言っても、すぐ隣だけどね。

 

 昨日の内に佐藤忠から届けられていた資料の入った段ボール。

 それを、積んであった台車ごと運び込みデスク脇の棚へと並べ始めた。

 長年の使用で角が丸くなり、年季の入ったキングファイルだ。

 厚さが並べる孔明の手の平ほどあるファイルが、何冊もある。

 詰め込むだけ挟み込んだからか、表裏の表紙はどれも湾曲していた。

 その中から数冊を、孔明は自分のデスクに置いた。

 それから、また台車を押してオフィスを出て行った。

 書類を取りに行った時セットしたデロンギの準備が、そろそろできた頃だ。

 暫くして満足そうな顔の孔明が、淹れたてのコーヒーが入ったマグを持って戻ってきた。

 デスクにマグを置き、早速ドキュメントに目を通し始めた。

 

 ファイルを読んでいた孔明の前に、何とも可愛らしい巾着がポンと置かれる。

 ページを繰る手が止まり、巾着に視線が動く。

 貼り付けた様な笑顔で見上げると、満面の笑みの小日向が立っていた。

「アンちゃんが孔ちゃんのも作ったからって、お昼」

 と、自分の巾着も孔明に見せ、嬉しそうに左右に振っている。

「しばらく内勤だからさ、ここに缶詰じゃん。俺ら」

 孔明は咄嗟に弁当箱の大きさを見比べる。

「あれ、迷惑だった」

 と小日向が巾着に手を伸ばすのを見て、さっと孔明の手が伸びた。

「いえ、ありがたく頂きます!」

 両手で抱え、懐に抱く。

「良かった。おかずなんだろうね、楽しみだね」

 そう言いながら、小日向は自分のデスクに背中に背負っていたリュックを降ろし、席に着いた。

 抽斗にお弁当の巾着をしまい、 続けて水筒を二本、リュックから取り出しデスクに並べる。

 それを呆気にとられて見ている孔明を左に見ながら、小日向は自分のデスクを整理し始める。

 リュックからラップトップを出し、デスク横にリュックを提げる。

 それからデスクトップのスイッチを入れ、孔明と同じく分厚い資料を棚から持って来てデスクに広げた。

 おもむろに水筒の一本の蓋を開ける。

 孔明の鼻先にコーヒーの香りが漂ってきた。

「相変わらず、飲んでるんですねコーヒー」 

「孔ちゃんもじゃん」

 と笑顔で、孔明のデスクに載ってるマグに向かって顎をしゃくる。

「ボクのはブラックじゃないです」

 それを聞いて、知ってると言いたげに小日向は笑顔で頷いた。

 今日中に、こちらのオフィスにもデロンギが届く手配になっている。

 孔明はドキュメントに目を落としたまま、ぶっきらぼうに声をかけた。

「午後には、淹れたての美味いエスプレッソが飲めますよ」 

第2章始まりました。

いつも読んで頂き、ありがとうございます!。

毎週土曜日更新となりました。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。

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