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「これって、置手紙よね」と、香奈が全員に訊いた。
「うん」と、亜衣が頷く。
「本当に壮介君がやったわけじゃないの?」
香奈が壮介を見て、そう訊いた。
「ああ、本当にそうなんだ」と、壮介が言った。
「となると、壮介になりすました誰かの仕業ということ?」と、香奈が訊いた。
「俺はそうだとしか思えない」と、壮介が断言した。「第一、オレが起きたのって、貴紀たちが起きた後だから、そんなことできるはずがないんだ」
「確かに、さっきの皆の話からすれば、そうなるよね」と、貴紀が言った。
「あたしだって、起きたのは壮介君と同じくらいだよ」と、香奈が言った。
「じゃあ、壮介は貴紀やオレや亜衣の誰かだと言いたいのか? 冗談じゃない。貴紀たちは知らないけど、オレはみゆきちゃんにそんな置手紙なんかしてないぞ」
瞬太郎がそう言うと、「うちだって」と、亜衣も反論した。
「じゃあ、貴紀か?」
ややあって瞬太郎が貴紀に訊いた。
「僕だって違うよ」と、貴紀は答えた。「現に僕たちは銃声で起きたんだ。そうだろう? その音で起きて外の様子を見に行ったんだから、それ以前に置手紙を忍ばせることなんてできないよ」
貴紀がそう言うと、「だよなあ。貴紀の言う通りだ」と、瞬太郎が壮介と香奈を見て言った。
「壮介、お前だろ?」
それから、瞬太郎が壮介に訊いた。
「俺じゃないんだって。さっきから言ってるだろ!」
壮介は苛立ちながら、そう答えた。
「じゃあ、香奈か?」と、瞬太郎は今度、香奈に訊いた。
「あたしでもありません」と、香奈はきっぱりと言った。
「じゃあ、やっぱり、壮介、お前だろう?」
瞬太郎は壮介を見て、にやりと笑った。
「だから、本当に俺じゃないんだって。俺以外の誰かだよ」
「お前しかいないんだよ!」
瞬太郎が大声で叫んだ。
「おい、いい加減にしろよ!」
その後、壮介が怒るように言った。
すると、壮介の持っていたその紙きれがひらひらと床に落ちた。そして、その紙は手紙の面が裏になった。
「二人とも、やめて!」
亜衣が大声で叫んだ。そして、「みんな、見て」と、全員にその紙を注目させた。
「この紙、裏側に文字が書いてあるよ」
亜衣に言われた通りその紙を見ると、その紙の裏面にローマ字が書かれていた。大文字で『MA』と書かれていた。
「MA……」と、壮介が呟いた。
「MAって何かしら?」
それから、香奈がそう言った。
「何かの頭文字かな?」と、亜衣が言った。
「何かって?」と、瞬太郎が訊く。
「例えば、人の名前とか?」と、壮介が言った。
「もしかして、そいつが犯人だとか?」
その後、瞬太郎がにやりと笑って言った。
「ああ、その可能性もありそうだな」と、壮介も笑った。
「MA……M……A……。誰だろう」と、瞬太郎は呟きながら考える。
他の四人もそのイニシャルの人物を考え始めた。
「この五人の中にいるか?」
瞬太郎がそう訊いた。「壮介は?」
「俺は今野壮介、だから、KS。もしくは、SKかな」
壮介がそう言うと、「じゃあ、違うね」と、瞬太郎が言った。
その後、「香奈は?」と瞬太郎が訊く。
「あたしは、東野香奈だから、HK。もしくは、KHね」
「香奈でもないのか。貴紀は?」
「僕は西村貴紀。NT。もしくは、TNになるね」と、貴紀は答えた。
「そうか。じゃあ、違うな。亜衣は……島田亜衣だから……。」
「ASだね。後、SAか」
「惜しいけど、違うなあ……。」と、瞬太郎は呟くように言った。
「惜しいって、止めてよ。うちじゃないから!」と、亜衣は言った。「瞬君は、森瞬太郎だから、MSね」
「うん。もしくは、SM」
「SMって、サディズムとマゾヒズムみたいだね」
壮介がそう言ってにやりと笑う。
「おい、やめろよ」と、瞬太郎は言って笑った。その後、それが可笑しかったのか他の皆も笑った。
「この中に、それっぽい名前の奴はいないな。それじゃあ、一体何なんだ?」
瞬太郎がそう言うと、「もう一人、居たじゃない」と、香奈が思い出すように言った。
「ああ」
香奈のその言葉で思い出したのだろう。「みゆきちゃんね。みゆきちゃんって、苗字なんだっけ?」
瞬太郎が皆にそう訊いた。
「松本だよ」と、壮介が答えた。
「松本か。ええっと、それじゃあ、松本みゆきだから……」と、瞬太郎が考えるなり、「MM」と、壮介がすぐに言った。
「MMか。お前の彼女、ドMか?」
瞬太郎は壮介の顔を見て、にやりと笑った。
「ちげえよ。どっちかって言うと、Sだな……。」
「Sなんだ。意外だな……。」
瞬太郎がそう言うと、「って、おい、そんな話をしてるんじゃないだろ! イニシャルの話だ」と、壮介はきっぱりと言った。
「ああ、わりいわりい」
瞬太郎がそう言うと、他の四人も笑った。
「MMなら、違うわね」と、香奈が言った。
「あ」
その後、壮介が閃いたように言った。
「これ、MAじゃなくて、「ま」とも読めない?」
「『ま』ね。確かに」と、香奈が言った。
「じゃあ、もしや……」
その後、瞬太郎が口を開いた。
「名前に『ま』が付く人が犯人か?」
「あたしは入ってないよ」と、香奈が言った。
それから、「僕も」と、貴紀が言った。
「俺も違う」と、壮介が言った。
「オレだって、ないね」と、瞬太郎が言った。
その後、亜衣が口を開いた。
「うち……入ってる」
「しまだあい、あ、本当だ!」と、瞬太郎がそれに気付いて言った。「犯人は、亜衣なのか?」
それから、瞬太郎が亜衣にそう訊いた。
「瞬君、やめてよ! うちじゃないって!」
「ホントに?」
「ホントにホントだって! ねえ、瞬君、信じて!」
亜衣は泣きそうな顔でそう言った。
「うん、オレも亜衣じゃないとは思うんだけどさ……」
瞬太郎がそう言った後、「ねえ、瞬太郎くん、もう一人いるじゃない?」と、香奈が口を開いた。
「もう一人? ああ、みゆきちゃんね。まつもとみゆきだから、彼女も『ま』が付くのか」
「そうだね。この六人の中に、『ま』がつくのは、亜衣ちゃんとみゆきちゃんの二人ね。けど、みゆきちゃんはもう死んじゃってるから違う。それと、亜衣も違うと思うの」
「そうか」
「じゃあ、一体誰が?」
壮介がそう訊くと、「イニシャルでもローマ字でもない何か別の意味があるんじゃない?」と、香奈が言った。




