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男女六人殺人事件  作者: 落川翔太
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「はあ、なんか疲れた~」

 香奈が伸びをしながら言った。

「ウチもなんか眠くなってきちゃった」と、亜衣も言った。

「ずっと話していたからね」と、貴紀が言った。

「あ、俺、ちょっと一服してもいい?」と、壮介が訊いた。

「いいよ」と香奈は言って、「一旦、みんなで休憩する?」と他の三人にも訊いた。

「オレは全然いいよ」と、瞬太郎が言った。

 それから、「ちょっと仮眠取りたいかも」と、亜衣が言った。

「分かった。貴紀君もそれでいい?」

 香奈にそう訊かれ、「うん、いいよ」と、貴紀は答えた。

「じゃあ、それで。休憩は一時間くらいでいいかな? 今が三時十五分だから、四時十五分までにする?」

 香奈がそう言うと、「五時くらいまで休憩して、その後もう夜ご飯にしない?」と、壮介がそう提案をした。

「ああ、いいかも」と、瞬太郎が言った。

「うん。うちもそれでいいよ」と、亜衣も言った。

「分かった。あ、夕飯はどうする?」

 それから、香奈が訊いた。

「またスーパーに食材かお弁当とかでも買い出しに行けばいいんじゃないかな? それかどこかで食べに行くでもいいけど」

 壮介がそう言った。

「そうだね。皆もそれでいい?」

 香奈が五人全員にそう訊くと、皆が頷いた。

「じゃあ、五時まで各自休憩で」

 香奈がそう言うと、五人は散り散りにリビングから離れた。

 壮介はウッドデッキへ行き、煙草を吸い始めた。亜衣は瞬太郎を連れて階段を上がり、自分の部屋へと向かった。香奈も二階へ上がり、自分の部屋に戻った。

 貴紀はリビングのソファに座り、リモコンのスイッチを押して、テレビを観ていた。

 午後五時を過ぎた頃、二階にいた香奈と亜衣、瞬太郎の三人が降りて来て、リビングにやって来た。

「よし、買い出しに行くか」

 壮介が言った。その後、「みんなで行こうか?」と壮介が言ったが、貴紀が「警察が来るかもしれないから、誰か一人でも残っていた方がいい」と言った。

「ああ、そうか」と壮介はそれを思い出して、「じゃあ、誰が残る?」と彼は四人に訊いた。

「僕が残るよ」

 それから、貴紀が返事をした。

「分かった。じゃあ、貴紀宜しく」と、壮介は貴紀に言った。

「うん」

「あ、財布財布……。」

 壮介はそう言って、二階へ財布を取りに行く。その後、すぐに降りてきた壮介が神妙な顔つきになっていた。

「なあ、俺の財布、知らないか?」

 壮介のその言葉に、皆が真顔になる。それから、それぞれが「知らない」と言った。

「本当に知らない?」と、壮介が再び皆に訊く。

 それから、「部屋に置いてたんじゃないの?」と、香奈が訊いた。

「うん。確かに持っていたはずなんだけど……、どこか別のところに置いたのかな?」

「もしかして、窃盗犯に盗まれたとか?」

 瞬太郎が茶化すように言って笑った。

「そんなことあるかよ……。」

「だよな……。」

「とりあえず、みんなで手分けして探そうよ」

 それから、亜衣がそう言った。

「そうだね」と、貴紀は頷いた。

「ゴメン、頼むよ」

 壮介がそう言った後、皆で壮介の財布を探し始めた。

 それから五人全員で、壮介の財布を探した。リビングやキッチン、トイレや二階のそれぞれの部屋などを見て回ったが、それは見当たらなかった。その後、「外に落ちてたりしないかな?」という香奈の発言で皆で外へ行き、ウッドデッキや別荘の周り、それから、車の中も見たが、どこにもなかった。

「うそ……マジか……。」

 壮介が残念そうに呟いた。

「それとさ、スマホもないんだよ……。」

 その後、壮介が思い出すように言った。

「え!?」

 亜衣と香奈、瞬太郎の三人が驚いた。

「スマホも?」と、亜衣が訊いた。

「うん……」

「スマホらしきものもなかったよね?」と、香奈が言った。

「そうだな」と、瞬太郎が頷いた。「もしかして、本当に盗まれたんじゃないの?」

 その後、貴紀は昨日の夜のことを思い出した。ウッドデッキのテーブルにスマホが置いてあった。

「スマホ見たよ」

 貴紀はそう言うと、「え!? 本当かい」と、壮介がビックリしたように言った。

「どこで見たんだ?」

 それから、壮介が訊いた。

「昨日の夜、夜風に当たろうとしてウッドデッキに出たら、そこのテーブルに置いてあったんだよ」

「そうだ、思い出した。あの時、スマホと財布を置いたんだった!」

 それから、壮介が思い出したように言った。

「それで? スマホはどこへやったんだ?」

「スマホは金庫の中にしまったよ。無用心だって思ったから」

「そっか。財布は?」

「財布? 財布はなかったよ」

 貴紀が言った。

「無かった? 本当に?」

 壮介が訊いた。

「ああ、本当だよ」と、貴紀は答えた。

 それから、貴紀はすぐに金庫の鍵を開けて、壮介のそのスマホを手に取った。それから、そのスマホを壮介に一度、手渡しそれを見せた。

「ああ、確かにこれは俺のだ」

 壮介は安心したように言った。

「じゃあ、もしかして……。」

 その後、香奈が口を開いた。「お財布は本当に盗まれたってこと?」

「そんなこと……。」

 壮介が呟くように言った。

「そうなんじゃないの?」と、瞬太郎が言った。

「おそらく」と、貴紀が言った。

「じゃあ、俺、買い物はできないや……。」

 それから、壮介がそう言った。

「あたしが出すよ。お金は」

 その後、香奈が言った。「うちも出そうか?」と、亜衣も言った。「オレも出すよ」と、瞬太郎が言った。その後、「僕も」と、貴紀が言った。

「ゴメン、みんな、ありがとう」

 壮介はそう言って微笑んだ。

「貴紀君、金庫からあたしの財布取ってもいい?」

 香奈がそう貴紀に言った。

「ああ、いいよ」

 貴紀は金庫を開けた。香奈は自分の財布を取り出した。それから、亜衣と瞬太郎も各々の財布を取った。

 貴紀も自分の財布を取り出して、そこから五千円札を取り出して、壮介に手渡した。

「貴紀、サンキュー」

「おう」

 それから、壮介はポケットから車のカギを取り出し、早速、外へ出た。他の四人も、壮介の後を追うように外に出た。壮介はすぐに車を出し、スーパーへと出向した。

 それから三十分程して、壮介たちが別荘に戻ってきた。

「貴紀、ただいま!」

 スーパーの袋を手に持った亜衣と瞬太郎が玄関からやって来て言った。

「おかえり。買い出しありがとう。何買ったの?」

「カレーでも作ろうって話になって、カレーの材料とご飯をね」と、亜衣が言った。

「おお、カレーか。いいね!」

「うん、後、焼きそばの材料も。明日食べる用に。それと、追加でビールとワインとつまみも」

「へー、たくさん買ったな……」

「まあね。これだけあれば、この二、三日くらいは困らないだろうかなと思ってね」

 それから、瞬太郎が言った。

「確かにそうだね」

 貴紀はそう言って笑った。

 それから、亜衣と瞬太郎がキッチンで冷蔵庫に買った食材とお酒を閉まった。

 少しして、壮介と香奈もリビングに入ってきた。

「貴紀、留守番ありがとう」

 それから、壮介が言った。

「はいよー」

「警察は来たか? って、パトカーもないし、誰も来ていないか」

 壮介はそう言って、笑う。

「ああ、そうだね」

「そうか。てか、腹減ったな……。」

「今からカレー作るから待ってて!」

 キッチンにいた亜衣が大声で言った。

「はいよー。と、その前に一服……」と言って、壮介はウッドデッキの方へと行った。

「ねえ、瞬君、手伝って」

 それから、キッチンにいる亜衣が瞬太郎にそう言った。

「分かった分かった」

 瞬太郎はそう言って、「何をしたらいい?」と、亜衣に訊いた。

 野菜を洗ってと亜衣に言われた瞬太郎は分かったと言って、ニンジンやジャガイモなどの野菜を洗い始めた。

「亜衣ちゃん、あたしも手伝うよ」

 リビングにいた香奈がそう言ってキッチンへと行き、料理の手伝いを始めた。

「僕も」と貴紀もキッチンにいる亜衣たちに言ったが、「大丈夫だよ。貴紀君はゆっくりしてていいよ」と亜衣に言われたので、「分かった」と返事をして、一度、二階に上がり、部屋にあったカバンから一冊の本を取って下に降りた。リビングへ戻り、貴紀はソファに座って、その本を読み始めた。最近読んでいるミステリーの小説である。

 貴紀はその小説を読んでいた時、ふとあることを思い出した。それは、かつての友人の言葉である。

「そう言えば、僕たちって一人一人がミステリー作家と同じ名前だよね?」

 そう言ったのは、高校時代の同級生である我孫子守(あびこまもる)である。

 彼のその言葉に貴紀たちメンバー六人が考えた後、「確かに!」と言って驚いた。

 貴紀は苗字が西村だ。だから、ミステリー作家である西村京太郎(にしむらきょうたろう)と同じ苗字だったのだ。そして、香奈は苗字が東野なので、東野圭吾(ひがしのけいご)と同じであった。亜衣は島田だから、島田荘司(しまだそうじ)と一緒の苗字だった。瞬太郎は森だから、森博嗣(もりひろし)と同じ苗字であった。壮介は今野だから、今野敏(こんのびん)と同じ苗字だ。

 そして、一番面白いのがみゆきだった。みゆきは苗字が松本なので、松本清張(まつもとせいちょう)と同じ苗字であり、下の名前がみゆきで宮部(みやべ)みゆきと同じ名前である。つまり、みゆきは二人の名前が合体した名前に気づくと、五人が皆、「すごい!」と、声を上げた。

 そして、当人である彼も我孫子という名字だったので、我孫子武丸(あびこたけまる)と同じ苗字であった。

 高校で仲良くなったメンバーの名前が、ミステリー作家と同じ名前だったことはたまたまであった。

 それを思い出した貴紀はくすりと笑った。その後すぐに、貴紀は彼が不慮の事故で亡くなったことを思い出し、少し悲しい気持ちになっていた。

「できたよ」

 夜六時前くらいに、夕飯が出来上がった。カレーのいい匂いがした。香奈がパックのご飯を温め、それをお皿に盛った。それから、亜衣が出来たカレーを掛け、瞬太郎がそれをダイニングテーブルの上に置いていった。

 席に着いていた貴紀と壮介の前にカレーが置かれた。瞬太郎が全員分のカレーを置き、席に着く。香奈と亜衣も、冷蔵庫からビールを出して、テーブルの上に置くと、一緒に席に着いた。

「うまそう!」と壮介が言って、ビールの缶を開けた。「ね、おいしそう」と貴紀も言って、その缶を開けた。他の三人もビールを開け、「じゃあ、乾杯!」と瞬太郎が言って五人で乾杯した。

 五人はビールを飲んだ。ビールは冷えていて美味かった。

「じゃあ、いただきます」と壮介は言って、カレーを食べ始めた。

「うん、うまい!」

 壮介は顔をほころばして言った。

「本当!?」

 亜衣はそう訊いて、自分も一口食べた。

「うん、本当だあ」と、亜衣も笑顔で言った。

 それから、香奈も食べた。香奈はうんうんと頷いた。それから、貴紀もカレーを食べてみた。そのカレーは美味しかった。

 その後、瞬太郎もそのカレーを一口食べた。

「うん、うまいな、これ」と嬉しそうに言って、もう一口食べた。

 その後も、貴紀たち五人はそのカレーを食べながらビールを飲み、テレビを観て談笑していた。

「ごちそうさま。美味しかったな」

 五人が食べ終わると、壮介が言った。

「うん、美味しかった」と、貴紀も言った。

「ね、良かった」と、亜衣は言って微笑んだ。

「お風呂入ろうかな?」

 それから、瞬太郎が言った。

「あ、まだ洗ってないんじゃない?」と、香奈が思い出して言った。

「あ、そっか。みんなお風呂入る?」

 それから、「うん」と、亜衣が頷いた。

「じゃあ、洗ってくるよ」

 瞬太郎はそう言って、お風呂場へ行った。

「俺はちょっと一服」と言って、壮介はウッドデッキに行った。

「片づけますか」と香奈が言って、「うん」と亜衣が頷いた。

「手伝うよ」

 それから、貴紀はそう言って、亜衣や香奈の手伝いをした。

「貴紀君、ありがとう」と、亜衣が言った。

「いえいえ」

「ねえ、コーヒーでも飲む?」

 それから、亜衣が二人にそう訊いた。

「ああ、いいね。香奈も飲む?」

「うん、飲もうかな」

 香奈はニコリと笑って言った。

「他の皆も飲むかな?」

「飲むんじゃない?」

「そうだよね。じゃあ、作るからちょっとゆっくりしてていいよ」

「ありがとう」

 貴紀はそう言うと、亜衣はコーヒーを作り始めた。貴紀と香奈はリビングのソファに座って、コーヒーができるまでテレビを観て待っていた。

「お待たせ」

 亜衣が香奈と貴紀のコーヒーをテーブルに置いた。

「ありがとう」と香奈が言って、カップに手を伸ばした。

「いただきます」と言って、貴紀はコーヒーを一口啜った。うん、うまい。

「いい匂いがするなあ」

 その後、お風呂洗いを済ませた瞬太郎がリビングにやって来て、言った。

「瞬君もコーヒー飲む?」

 亜衣にそう訊かれて、「うん。飲みたい」と瞬太郎は答えた。瞬太郎はすぐにそのソファに座ると、亜衣が「はい」と言って、コーヒーのカップを瞬太郎に手渡した。

「サンキュー」と言って、瞬太郎はコーヒーを啜る。

「あちち」

「気を付けてね」と、亜衣は言って笑う。

「亜衣ちゃん、俺も飲みたい」

 それから、タバコを吸い終えた壮介がリビングにやって来て、言った。

「いいよ」

 亜衣はそう言って、壮介の分のコーヒーをカップに注いで彼に手渡した。

「ありがとう」

 ソファに座った壮介がそう言って、コーヒーを啜る。

 その後、亜衣もコーヒーカップを持ってソファに座った。

 コーヒーを飲み終えると、五人は各々好きなように過ごすことになった。

 瞬太郎はお風呂に入った。貴紀はリビングのソファで読書をしていた。亜衣はダイニングテーブルで絵を描いた。香奈はピアノを弾いた。壮介は部屋で寝ると言って二階へと上がっていった。

「ふー、さっぱりした」

 お風呂から出た瞬太郎がリビングにやって来て、そう言った。

「風呂空いたよ」

 瞬太郎がそう言うと、「じゃあ、次、うち入ろうかな」と、亜衣が言った。

「入っていい?」

 亜衣が貴紀や香奈に確認するように聞いた。

「いいよ」と、貴紀は言った。

「もちろん」と、香奈も答えた。

「じゃあ、お言葉に甘えて」と亜衣は言って、お風呂場へ向かった。

「ふー、あちい」

 瞬太郎はそう言って、キッチンの冷蔵庫からビールを取り出した。それから、その缶を開けてそれを飲んだ。

「ぷはー」と、瞬太郎がビールを飲んで息をつく。「うめー」

 それを見た貴紀と香奈は笑った。

「お前らもどうだ?」

 それから、瞬太郎がそう言った。

「僕はまだお風呂にも入っていないから」と、貴紀は断った。その後、「あたしもいいや」と香奈が言った。

「ああ、そうか。ゴメンゴメン」

 瞬太郎はそう言って笑った。

「夜風にでも当たってこよう」

 それから、瞬太郎はそう言って、リビングの窓を開けてウッドデッキに出た。

 しばらくの間、瞬太郎はウッドデッキでビールを飲みながら、夜風に当たっていた。

「おーい、貴紀」

 その後、ウッドデッキの方から瞬太郎の声がした。

「星がきれいだぞ!」

 貴紀と香奈がリビングからウッドデッキへ出ようとした時、突然、外から発砲音が聞こえた。

 それから、うーと呻く声が聞こえた。

 どうしたのだろうと貴紀と香奈がウッドデッキから出ると、そこから少し離れた所に瞬太郎が倒れていた。

「瞬太郎!?」

 貴紀はすぐに瞬太郎の所に駆け寄った。後を追うように香奈もそこへやって来た。

「うそ……!?」

 香奈は瞬太郎を見るなり、顔を覆ってしゃがみ込んだ。

「なんか銃声が聞こえた気がしたんだけど……」

 少しして、その別荘から壮介が出てきて、そう言った。

「うん。見てよ、これ」

 貴紀はそう言って、倒れている瞬太郎を指した。

「しゅ、瞬太郎!?」

 そこに倒れている瞬太郎を見た壮介が驚くように言った。

「うそ、マジかよ……。――てか、亜衣は?」

 それから、壮介が周りを見渡しながらそう訊いた。

「お風呂に入るって言ってたけど……。」

 貴紀がそう言うと、「お風呂か」と呟くように言った。

「見てこようか?」

 それから、香奈がそう言った。

「あ、うん」と、貴紀が頷いた。

「香奈、宜しく」と壮介も言った。

「分かったわ」と香奈が言って、一度、別荘へ戻り、お風呂場に亜衣がいるかどうかを見に行った。

 香奈が別荘に戻り、お風呂場を覗いたが、亜衣はすでにお風呂から出たようで、そこに彼女は居なかった。その後、香奈はリビングへ行くと、そこに亜衣の姿があった。

「あ、香奈」と、亜衣が彼女に気付いて言った。「お風呂空いたよ」

「ここにいたんだ」

「ここにいたんだって? あれ? みんなは?」

 亜衣は不思議そうに訊いた。

「外にいるよ」

「外? なんで?」

 亜衣にそう訊かれて、香奈はどうして皆が外にいるのか、答えられなかった。

 答えられない訳ではなかった。瞬太郎が殺されたと言えばいいだけなのだが、それをガールフレンドである亜衣に伝えるには可哀想すぎると思ったからだ。

 けれど、それを伝えない訳にはいかないし、それに、いやでもそれはすぐに分かってしまうことなのだと香奈は気付いた。

「ねえ、香奈? どうかしたの?」

 香奈が考えていると、亜衣がそう訊いた。

「亜衣、ちょっと目を瞑って」

 香奈はそう言った。

「目? 瞑るの?」

「うん」

「瞑ったよ」

 亜衣は目を瞑って言った。

「目を開けてっていうまでは、瞑っててね」

「うん、分かった」

 亜衣がそう言うと、「じゃあ、ちょっとついて来て」と香奈は言って亜衣の腕を引っ張り、彼女を外へ連れ出した。

「目開けていいよ」

 香奈はそこで亜衣にそう言った。

 亜衣はそこで目を開ける。そして、目の前に倒れている人物を見るなり、「きゃあ!!」と叫んだ。

 すぐに亜衣は手で顔を覆うようにした。それから、「瞬太郎なの?」と、皆に訊いた。

「……そうだよ」と、壮介が言った。

「見たく無かったよね……」と、香奈が呟くように言った。その後すぐに「ゴメンね」と、香奈が小さい声で謝った。

「うん」と、亜衣が頷いた。それから、「けど、香奈が謝る必要ないよ。だって、香奈は悪くないもん」と、亜衣が言った。

「どうして……? どうして、瞬君が……。」

 その後、亜衣がそう呟くように言った。他の皆は何も言えずにいた。

「瞬太郎はどうして外に行ったんだ?」

 それから、壮介が訊いた。

 貴紀がおもむろに口を開いた。

「お風呂から出た後、瞬太郎は冷蔵庫からビールを取り出して、ビールを飲んでいたんだ。その時、暑いから外の風に当たるって言って、リビングからウッドデッキに出ていったんだよ」

「ほう」

「その後だよ。瞬太郎が外で『星がきれいだよ』って言ったんだ」

「星ね……。」

 壮介はそう言うと、空を見上げた。貴紀たちも夜空を見た。

 夜空にはたくさんの星がきらきらと輝いているのが見えた。

「瞬太郎は多分、星が綺麗だったから一緒に観ようとしていたんだと思う。その時にさ、バーンって、発砲音がしたのに気が付いた僕と香奈が外へ出てみると、瞬太郎が倒れていたんだよ……。」

「なるほどね……。」

 貴紀の話を聞いて、納得した様子で壮介が言った。

「壮介は、あの時どこにいたんだ?」

 それから今度、貴紀が訊いた。

「二階の自室だよ。碁を打っていたんだよ」

「本当に?」と、香奈が訊いた。

「ああ、本当だよ。嘘だと思ったら、部屋を見たらいい。部屋は囲碁をやっていた時のままだから」

 壮介がそう言った。

「そう」

「で、俺も部屋から発砲音が聞こえたからビックリして、もしかしてと思って、すぐに部屋を出たよ」

「そうなんだ」

「そういや、そん時、俺、一瞬リビングを見たけど、亜衣はいなかったな……。」

「うちはお風呂に入っていたもん」と、亜衣が答えた。

「お風呂ねえ……。でも、さっき香奈が見に行った時には、リビングにいたんだよな?」と、壮介が訊いた。

「ええ、そうだったわ」と、香奈が言った。

「本当に入ってたって!」

「ふーん」

「でもさ、うちは発砲音なんか聞こえなかったよ。お風呂に入っていたから聞こえなかったんだよね」

 亜衣がそう言った。

「聞こえなかった?」

「うん。だから、そう言ってるでしょ?」

「そうか」

「うん、だから、うちがお風呂から出て、部屋で着替えてからリビングに行ったの。そしたら、誰もいなくて……。みんなどうしたんだろうって思ってたら、香奈が来たからうち安心したの」

「じゃあ、要するに、香奈と自分がリビングに居て、壮介が二階にいて、亜衣がお風呂に入っていたって訳ね」

 貴紀が整理するように言った。

「そうなるね」と、香奈が言った。

「けど、誰かが嘘をついている可能性だってあるぞ」と、壮介が言った。

「嘘ねえ……」

 貴紀は呟くように言った。この中に嘘をついている人がもしかしたらいるのかもしれない。すると、一体誰だろう。貴紀からしてみれば、壮介か亜衣のどちらかが怪しく見えるのだった。香奈と一緒にリビングにいたからである。それに、貴紀自身、殺される前の瞬太郎を見ていたのである。貴紀からすれば、二人のどちらかだと思った。

 突然、雨が降り出した。

「雨だ、戻ろう!」と、壮介が言った。

「ねえ、瞬君たちをこのままにしておくの?」

 それから、亜衣がそう言った。

 貴紀たちの足元には、瞬太郎とみゆきが地面に仰向けになって倒れている。

「二人とも雨に濡れちゃあ、可哀想でしょ?」

「そうだね。どうする? 二人を別荘まで運ぶ?」と、香奈が言った。

「ダメだよ、香奈」

 それから、壮介がそう言った。「警察が来るまでは、遺体は動かしちゃだめだよ!」

「そっか……。」

 香奈が納得した様子で言った。

「じゃあ、どうするの? このまま放置?」と、亜衣が心配そうに言った。

「うーん、そうだなぁ……。あ、そうだ。ビニールシートか何かを被せるっていうのはどうかな?」

 それから、壮介がそう言った。

「そうしよう!」と、亜衣が言った。

 その後すぐに香奈が口を開く。

「ビニールシートはどこかにあるんだっけ?」

「いや、なかったと思うな……。」

 それから、貴紀が言った。

「無いのか。なにか代わりになるものはないかな?」

 壮介がそう言うと、「じゃあさ」と、亜衣が言った。

「毛布でいいんじゃない? ほら、部屋にあった」

「ああ、そうだね」と、貴紀は頷いた。

「うん、そうしよう」と壮介も言って、「貴紀、取りに行くぞ!」と、彼は貴紀にそう言った。「おう」と、貴紀は返事をして別荘へ入る。

 壮介は一度、香奈や亜衣の方を振り向き、「二人も中に入りな」と言った。うんと、二人は頷いた。

 雨はすぐに本降りになってきた。

 貴紀たち四人は、一度別荘へ戻った。


 壮介と貴紀は二階へ上がった。壮介はみゆきの部屋に入っていった。貴紀は瞬太郎の部屋へ入る。

 彼の部屋に入ると、ふと貴紀は一枚の紙きれが落ちているのに気が付いた。貴紀はその紙を拾って、それを見た。どうやら手紙のようである。貴紀はそれを読んでみることにした。

『瞬太郎へ 話したいことがあるの。夜、寝る前に外に来てほしい。待ってるね。 亜衣より』

 貴紀はそれを見て、思い出した。それは、みゆきの時にも同じような置手紙があったのである。それから、貴紀はその手紙の裏面を見てみた。

 すると、そこには前と同じようにローマ字が二つ並んでいた。しかし、今回の手紙には、「MO」と書いてあった。

 一体何なのだろう、そう貴紀は考えていると、「おい、貴紀」と廊下から壮介の声がした。

 ああ、毛布を持っていくんだった、と貴紀はそこで用を思い出し、その紙をポケットにしまった。そして、瞬太郎のベッドから毛布を取り上げると、すぐに廊下へ出て、壮介の後を追った。

 貴紀たちは外へ行き、倒れていた二人にその毛布を掛けてあげた。それを終えると、貴紀たちはすぐに別荘に戻った。

 雨に濡れた貴紀たちは順番にお風呂に入ることにした。さっきお風呂に入った亜衣も雨に濡れたので、もう一度入ると言って入った。

 四人はお風呂に入った後、リビングに集まっていた。

 そこで香奈がピアノを弾いていた。貴紀たち三人は、香奈のピアノを聴いていた。香奈の弾くピアノは上手で耳に心地が良かった。香奈は猫ふんじゃったを弾いた。次に、トルコ行進曲を弾いた。

 香奈はそれを弾き終わると、一度、ピアノを弾く手を止めた。それから少しして、香奈はまたピアノを弾き始めた。

 次の曲は、別の曲だった。夏っぽいメロディーの曲である。貴紀はその曲を聴いたことがあった。確か男性何人かのグループバンドだったと思うけれど、誰のなんていう曲かを思い出せなかった。

 しばらく香奈はその曲を弾いた。弾き終わると、亜衣と壮介が拍手をしたので、貴紀も拍手をする。

「ねえ、香奈、今のなんて曲?」

 それから、亜衣がそう訊いた。

「今の? 『若者のすべて』って曲だよ」と、香奈は皆に微笑んで言った。

 ああ、と貴紀は思い出した。「若者のすべて」と言う曲だった。アーティストは確か……。

「フジファブリックね」

 それから、壮介が言った。

「正解」と、香奈はにこりと笑って言った。

 そうだ。フジファブリックだ。彼らは男性四人組のグループバンドである。

「この曲、いい曲だよね」と、壮介が言った。

「うん、ボーカルの歌が上手いんだよね」と、香奈が言った。

「そうそう」と、壮介が頷いた。「でも、もうその人は亡くなってるんだよね」

 壮介がそう言うと、「え? そうなの?」と亜衣が驚くように言った。

 そう言えば、確かにもう亡くなっていたはずだなと貴紀は思った。

「うん。そうなの……。」と、香奈が言った。

「原因は不明らしいけどね」

 それから、壮介が呟くように言った。

「そうなんだ……。」と、亜衣が悲しむように言った。

 貴紀は悲しく思っていた。そのバンドのボーカルの人が亡くなったからではなく、実際に貴紀たちの中に死んでしまった人物が二名いたからである。みゆきちゃんと瞬太郎である。先ほどまで貴紀は二人が亡くなったという実感がなかった。けれど、段々とその実感が湧き始めていた。

「最後の……花火に……か」

 香奈は歌詞を思い出すようにして言った。

「最後の花火?」と、貴紀が訊いた。

「みゆきと瞬太郎君にとっては、あの花火が本当に最後になっちゃったんだ……。」

 それから、香奈がぼそりと言った。

「ああ……そっか。それは寂しいな」と、貴紀は言った。

「みゆき……。」

 ややあって、壮介が亡くなってしまったみゆきを思い出しながら言った。

「瞬君……。」と、亜衣も瞬太郎のことを思い出し、そう呟いていた。


 外は雨が降り続いていた。

 その後、四人は終始無言でいた。貴紀は、四人でこれ以上話しても埒が明かないのではないかと思っていた。

 それから、しばらくして、壮介が口を開いた。

「なあ、今日はもう寝ないかい?」

「うん、そうだね」と、香奈が言った。

「うん」と、貴紀も頷いた。うんと、亜衣も頷いた。

 それから、四人は二階へ上がった。

「じゃあ、おやすみ」

 壮介はそう言って、自室に入った。

「おやすみ」と香奈と亜衣も言って、自分の部屋に入っていった。

「おやすみ」

 貴紀も眠ることにして、自室の扉を開けた。

 部屋に入り、貴紀はベッドに横たわった。ポケットから先ほど瞬太郎の部屋で見つけた置手紙を取り出した。

 改めてその手紙の本文を読んだ。その手紙は、亜衣から瞬太郎へのものだった。貴紀はにやりと笑った。おそらく瞬太郎やみゆきを殺した犯人は、亜衣に違いない……。証拠はこの手紙であろう。

 しかし、動機は何だろうか……。貴紀はそれを考えるが、全くそれが思いつかなかった。

「それに……。」

 そう呟いて、貴紀はその手紙を裏返す。

「このMOってなんだろう……。」

 そう考えているうちに、貴紀は眠りについていた。

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