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神様と使徒の異世界白書  作者: 麿独活
第一章 【魔物という存在】
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第一章30 『神様と恐れ』

 元気が無い理由が、自身の中に得体の知れない力があることだとシオンは打ち明けてくれた。

 それに対し、俺はどう答えるべきか思案した後、俺が見た有りのままを伝え、素直に感じたことを伝えようと思った。


「俺が気が付いた時、シオンは目の前にはいなかった……だから、倒れた後になにがあったのかは分からない……その後、破壊の後を追いかけて辿り着いた先で、シオンを見つけた。そこでお前は背中から翼を生やして、見た事も無い力を使って戦っていたよ」


 それから俺は見たままをシオンに伝え、俺がどうやってヴリトラを倒したのかまでを話した。

 ただ、アースディア様と今日話した件は伏せた。これ以上悩みを増やすのは避けたい。


「……そう……トウマはそんなボクを見てどう思ったの?」


 服を掴んでいたシオンの手にギュッと力が入る。俺の答えを聞くのに、明らかに怯える様子が伝わって来る。


「……正直、少し怖いとは思ったよ。特にあの斧槍(ハルバード)から出ていた光の刃は触れたものを一瞬で分解、消滅させていた……触れたらヤバイと感じたよ……」


「…………」


 目をギュッと閉じ、フルフルと少し震えながら俯くシオン。そんなシオンの頭を再び優しく撫でながら続ける。


「……でも、俺が本当に怖かったのは他のことだ」


「他のこと?」


 不安そうに瞳を揺らしながら、顔を上げるシオン。


「……シオンが消えてしまうかも知れない……その方が怖かった」


 そう言ってシオンの頭を抱き寄せる。


「とにかく必死だったよ……だから、今の俺の中にあるのは、ただただシオンが無事で良かったと思う気持ちだけだ」


 そう伝えると、シオンはさっきより震えが強くなり、こちらに縋りつくように胸に顔を埋める。そして――


「ウゥ~……」


 と、泣き始める。


「また泣く……」


「だっでぇぇ~……」


 苦笑しながら、泣き出すシオンの頭を撫でて慰める。シオンは得体の知れない力に対して怯えていたが、真に怖かったのは、俺に恐れられていないかだったらしい。

 普段の態度でそんな素振りをしたことは無いんだが、やっぱりこれは最初の出会いに問題があったのだろうか……いや、根本的に俺と離れることを恐れているんだろう。

 今回も、俺が消えかけて怖がらせてしまったようだし……もっと強くならないと、と改めて思う。


 しかし、なんだかすっかり父親感覚が刷り込まれてしまった気がする。

 本来なら、アースディア様の役割だと思うんだが、ほぼ丸投げされてしまったし……もっとしっかりしないとなぁ、と思いながら暫くシオンの頭を撫で続けていた。

 暫くして落ち着いたシオンは、再び聞いてくる。


「トウマ……」


「ん?」


「トウマは、この力に関してなにか聞いてる?」


 ……さて、どう答えたものか。俺も力に関しては、詳しく知っている訳ではない。アースディア様も『まだ言えん』と言っていたし……。


「……少し話をしたが、詳しくはまだ言えない、だそうだ。色々事情があるみたいだな……まあ、シオンを思って黙っているのは感じたよ」


 嘘は付きたくないので、ここは当たり障りのない答えしか言えない。


「……そっか」


 シオンはそれで納得したのか、それ以上は追及してこなかった。アースディア様とは、シオンの方が付き合いが長い……シオンはまだまだ子どもだが、それなりに思慮深くもあるし、色々察したのかも知れない。

 しかし、お互いの立場などを加味して考えると、シオンとアースディア様達の関係は本当に難しいなと思う。

 任務が本格化すれば、完全に上司と部下だ……それを考えると、今後はアースディア様達には安易に甘えることさえ出来なくなる……この小さな成りで、思った以上に重い使命を背負ってしまっている。


「(アースディア様が無茶をした理由も分かる気がする……そして、俺の立場の重要性も……)」


 ただただ異世界に憧れる気持ちだけでは、これから先必ず壁にぶつかる気がする……シオンは俺の恩人であり、主……あの夢の謎の存在が教えてくれた通り、俺の大切な神だ。


「(絶対に守りたい……)」


 そう思い、シオンを抱きしめる。


「ト、トウマ……?」


「あ、ああ……すまん。苦しかったか?」


 抱きしめていた手の力を緩めるが――


「ううん……もっとギュッとして」


 と、擦り寄ってくる。


「ああ」


 再びシオンを抱きしめると、嬉しそうに顔を綻ばせる。


「トウマ……ずっと一緒にいてね」


「ああ、もちろんだ」


 そう答えて頭を撫でると、シオンは安心したように目を閉じ、そのまますぐに眠りに就いた。食欲不振だけでなく、少し寝不足気味でもあったのかも知れない。だが、これで回復に向かうだろう。

 俺も安心したのかすぐに眠気が襲ってきた。俺も寝ようと思った時、ふとあることを思い出す。


「(そう言えば、異界での約束……まだ果たしていないな)」


 シオンが不調だったので見送っていたが、この様子なら明日やってもいいかもと思い、段取りを頭の中で固めた後、俺も眠りに就いた。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 朝、眠りから覚めると、シオンは俺のそばで丸まって気持ち良さそうに寝ていて、顔色も良かった。

 俺はそれを見て軽く笑うと、起こさないようにベッドを出て、朝食の用意を行う。

 一通り準備が整ったところで「おはよ~……」と寝ぼけまなこでシオンが起きてくる。


「おはよう、朝食出来てるから顔を洗って来な」


「は~い……」


 その後、二人で用意した朝食を食べる。シオンは食欲も戻ったようで、モリモリと食べてご飯もおかわりしていた。もう大丈夫そうだ。

 そんな風に安心していると、呼び鈴が鳴る。おそらくフェルビナさんだ。

 最近は出入りが頻繁になったんで、面倒だとのことでアースディア様やフェルビナさんはフリーパスで領域に入って来れるようにした。その為、最近の尋ねてくる合図は家の呼び鈴へと変わっていた。

 その瞬間、昨夜のことが頭に思い浮かぶ。シオンのケアですっかり忘れていたが、ちょっと顔を合わせ辛い状況に陥っていたんだった。


「(どうしよう……なんも考えてなかった)」


 そんな風に呼び鈴に出るのを躊躇っていると、シオンが不思議そうに聞いてくる。


「どうしたの、トウマ? 多分フェルビナだと思うけど、出ないの?」


 いつも呼び鈴に出るのは俺の役目だ。一応、シオンの使徒なので、この手の応待は俺がするべきだと立候補したんだが、いつまでも動かないので不思議に思ったんだろう。


「あ、ああ……」


 俺は少し気まずい思いを抱きながら呼び鈴に出ると、案の定フェルビナさんがモニターに映し出される。そして、俺を見て少し照れた表情で挨拶をする。


「あ……お、おはようございます! トウマ様!」


「お、おはよう、ございます!」


 俺もそれに釣られて、少し顔が熱くなりながら返事をする。


「…………」


「…………」


 そして、なにやらモニター越しにお見合いしてしまう俺達……


「ムゥ~……なにしてるのさ、二人して!」


 敏感になにかを感じ取ったのか、シオンが近づいてくる。


「べ、別に、なんでもない! それより、ほらシオン! フェルビナさんが着たぞ!」


「そんなの見れば分かるよ……なにかあったの?」


「な、なにも無い!」


「ホントに~……」


 不審な表情で暫く睨まれるが――


「まあ、いいけど……検診だよね。準備しよう」


 と、そう言って外に行こうとするが、ふと昨日の夜思い浮かんだことを実行しないと、と思いシオンに声を掛ける。


「あ、悪いシオン。今日の検診は、俺の付き添いは無しで行ってくれ」


「え!? なんで!」


「ちょっと用事が出来てな。午前中の内に片付けたいんだ」


「用事ってなに?」


「悪いが秘密だ」


「ええ~!?」


 俺の突然の拒否に戸惑うシオン。だが、ここは悪いが諦めて貰う。


「もう大丈夫だろう? 先生とちゃんと話して、もう大丈夫だって伝えて来い」


「ウゥ~……」


 少し駄々をこねるが、俺の意思が固いのを見抜いたのか――


「分かったよ~……」


 と、諦めるシオン。おそらく精神状態が改善した影響もあるんだろう。


「ああ、行ってらっしゃい」


「行ってきま~す……」


 少し元気のない声だったが、シオンはそのまま玄関に向かい、そのまま検診へと向かった。


「さてと……やりますか!」


 俺はそう気合を入れて、昨夜思い付いた準備を進める為に台所に向かった。



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