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神様と使徒の異世界白書  作者: 麿独活
第一章 【魔物という存在】
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第一章31 『神様と新たな冒険』

 トウマに悩みを打ち明け、ズシッと重かった心の澱みがすっかり無くなって軽くなった。

 食欲も戻って、トウマの朝ごはんを久しぶりに満足行くまで堪能できた。我ながら、単純だなぁ~と思う。

 だけど、これでもう大丈夫だと思ったのに、何故か今朝のトウマは少し冷たかった。検診にも付き添ってくれなかったし、フェルビナとはなんか余所余所しい……。

 だから、検診が終わったらすぐに帰ろうと思っていたのに、事はそう簡単には終わらなかった。


「もう~……アースディア様のせいですっかり遅くなっちゃった……」


 ボクは、ちょっと愚痴りながら自身の領域へと向かう。

 早々に検診を終えて帰ろうとした矢先に、アースディア様に話があるって呼び止められ、やれ報告書の内容が大雑把だとか、やれもっと詳しく書き直せとか言われて書斎に軟禁された。そのせいで、大分遅くなった。


「(トウマに念話で助けを求めても、忙しいから無理って拒否されるし……)」


 今朝からなんか様子がおかしい……昨日はあんなに優しかったのに……。


「(やっぱりトウマは……ううん、そんなことない! トウマはちゃんと言ってくれた。ずっと一緒にいてくれるって!)」


 昨夜、しっかりトウマの気持ちを確認したのに、すぐに怖さがぶり返す……。

 やっぱりトウマのことになると、ボクの心はいつも不安定だ……平静を保とうと思うけど、中々上手くいかない。

 今回見てくれた治療神に相談すれば良かったかなと思うけど、初めて会ったから言い辛かったし……そうなるとフェルビナに相談した方が良いのかも知れない。

 今回の冒険で色々と反省点も見つかったし、それを改善する上でも、もっと周りを頼るべきなんだと思う。

 すぐに心が不安定にならないよう、より一層強くなりたい……ボクがしっかりしてないと、またトウマが傷付く結果になるかも知れないのだから……。


「(もう、あんな思いをするのは絶対に嫌だ……)」


 目が覚めて、ボクを抱えていたトウマが消えかけていたのを見た時は、本当に怖かった。

 ようやく見つけた心の拠り所が目の前で失われる恐怖……心の奥底から、得体の知れない黒い手が伸びてきて、心臓を握り締める……そんな怖気が走る痛みが胸を締め付けた。

 そして、その後に凍り付くような感覚が広がって、とても空虚な穴が心に空いたようになった。

 トウマが倒れた時もそうだった……ただ、あの時は意識が飛んでしまって覚えてないけど、同じような恐怖が心を襲ったのは覚えてる。

 それと怒りだ……ボクからトウマを奪おうとした存在がたまらなく憎かった。恐怖と怒りでボクはあの時、暴走したんだ……そして、謎の力を使った。


 トウマから聞いた話を、今日アースディア様にぶつけてみたけど、のらりくらりと躱されてしまった。

 トウマが言っていた通り、まだ話してくれる気はないみたい……ボクのことなのに隠し立てする意味がよく分からないけど、それだけ謎の力は重要な物なのだと思う。


「(……ボクの出生と関係あるのかな……)」


 ボクの出生は、実はよく分かっていない。物心ついた時には、アースディア様やフェルビナがそばにいて、さも当たり前のように下級神となるべく育てられた。

 何度か出生に関して追及したが、時が来たら教えるの一点張りで教えてくれることは無かった。余りにも頑なだったんで、いつしか知ることを諦め、気にしなくなっていた。

 そして、降って湧いて出た使徒選びの話……その過程でトウマと出会った。


「(……色々思い直すと、ボクって怪しさ抜群の神様だよね……出生不明で謎の力を持ち、おまけに性別も定まっていない中途半端な神……いつか、それらの真実と向き合う時が来るのかな?)」


 ううん……もうその時が少しづつ来ているのかも知れない。

 全てを知るのはまだまだ先かも知れないけど、それを知って行くことでこんな不安定な心の揺らぎも収まって来るのかな……。


「(……それが強くなる為の第一歩、なのかも知れない)」


 色々と考え事をしながら自身の領域に向かってたせいか、気が付けばもう目の前に領域門が見えて来ていた。


「(……とりあえず、今日はトウマのことが気になるから早く帰ろう)」


 直近で一番気になるのはトウマのことなので、意識を切り替えて領域門の中へと移動し、自身の領域へと繋がるよう転送術式を展開する。

 そして、再び自身の領域に戻ってくると、既に日が落ち始めていて夕暮れが草原を色鮮やかに染めていた。

 ボクは草原を駈けて家の前へと急ぐ。そして、玄関のドアを開けてリビングへ向かうと、フワッとなにか美味しそうな匂いが漂っていることに気付く。


「(この匂いって……)」


 なにか嗅いだことのある匂いを感じながら、リビングのドアを開ける。


「ただいま~……」


「おう、おかえりシオン」


 そう言って出迎えてくれたトウマは、エプロンをして両手で鍋を持った状態だった。そして、その背後のテーブルには色々な料理が所狭しと並べられている。


「トウマ……どうしたの、その料理?」


「どうしたって、今朝から色々作って用意していたんだよ」


「用意って……この量を?」


「ああ、これぐらい俺とシオンならいけるだろ?」


 確かにボクや使徒になったトウマにとって、満腹なんて感覚は無いに等しいけど……それより、もしかしてこの料理はボクの為に?


「……なんで急に?」


 トウマの意図がよく分からない……朝はちょっと冷たかったのに、返ってきたらこの厚遇……そんな動揺したボクに当然のようにトウマが言う。


「なんでって……約束しただろ? 異界から帰ったら好きな料理を作ってやるって」


「あ……」


 そう言えばそんな話をした。途中でヴリトラが来て話は中断したし、その後の騒動ですっかり忘れてた。

 驚くボクを尻目に、トウマが優しく笑いながら言う。


「今朝の様子から、食欲は戻ったみたいだったからな。だから、やり残した約束を実行しようと思って、朝からシオンの好きな料理を色々作ってたんだ」


 確かにトウマの言う通り、テーブルに並んでいる料理はボクの好物ばかりだ……それに――


「この匂いって……」


「開けてみな」


 と、手に持った鍋を近付けて来たから、鍋の蓋を開けるとブワッと白い湯気と共に、スパイシーな香りが辺りに立ち込める。


「……カレー」


「良い匂いだろ? かなり手間を掛けたし、具材やスパイスにも拘った。おそらく今までの俺カレーの中でも最高傑作だと自負している!」


 そう得意げに言うトウマ……忙しいってこのことだったんだ。朝からずっとボクとの約束を果たす為に、こんなに一杯作ってくれてたんだ。

 そう思うと、胸が一杯になって視界が滲み出す。


「コラコラ、泣くなシオン」


「だ、だって……」


 無理だよ……こんなことされて泣かないなんて出来ない。ボクの心が再び揺らいで、不安定になる。

 ……でもその感覚は、不安や恐怖と違ってとても温かい気持ちを心の内に満たしてくれた。


「ほら、せっかく作った料理が冷めるから早く食べよう。そして、色々あって遅れたが、任務を無事達成したお祝いをしよう、シオン」


「……うん!」


 ボクは込み上げる涙を腕で拭い、笑顔で答える。

 それを見たトウマも、優しそうに微笑んでご馳走が並んだテーブルへと、とっておきのカレーを運んだ。

 ボクはその背を追いかけてテーブルに付き、トウマの気持ちが籠った手料理を沢山食べて、幸せの味を堪能した。

 ボクはこの日食べた料理の味を決して忘れないと思う。そうして、ボクたちの初めての冒険は、本当の意味で幕を閉じた。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 初任務から一ヶ月後……俺達は、ある世界へ繋がる領域門の前に来ていた。

 あの異界での調査も一通り終わり、任務結果から見いだされた改善点の見直し訓練も無事乗り越えた俺とシオンは、いよいよ異世界での任務が言い渡された。


「いよいよだね、トウマ!」


「ああ!」


 俺とシオンは顔を見合わせる。シオンの瞳には期待の光が宿り、ワクワクしているのがすぐ分かった。

 俺も同様の気持ちだ。とうとう本格的な冒険へと俺達は踏み出す。

 ここから先は、異界の任務と同様にアースディア様やフェルビナさんの助けも無い。俺たち二人の力で全てを乗り越えなければならない。

 準備は万端に整えたとはいえ、少し不安は過る……しかし、それを上回る異世界への期待……そして、二人で行く未知なる冒険に奮い立つ気持ちの方が強かった。

 それだけ心が充実している……こんな気持ちを再び味わいたくて、俺は人間であることを辞めたんだと実感が湧く。


「トウマ、すっごく良い顔してるよ」


 俺の顔を見て、シオンは嬉しそうに笑う。


「シオンこそ」


 俺達は二人笑いあう。

 これから行く道は、決して生易しいものじゃないのは分かっている。それでも、俺の心には生きている実感と抑えきれない程の遠い地に憧れる想いが満ちていた。


「さあ、行こう、トウマ!」


 そう言って、使徒に生まれ変わったあの日に見たように、手をこちらに伸ばすシオン。

 俺はその手を取り、強く答える。


「ああ、行こう! まだ見ぬ異世界へ!」


 そうして俺達は足を踏み出した……その先に広がるであろう、未知の世界に向けて……。



神様と使徒の異世界白書、これにて第一章終了となります。

ここまでお付き合い頂いた読者の皆様は、本当にありがとうございました!

いや~……そこそこ長かったです。途中で新作に手を出すという愚行をしてしまったので、致し方なかったですが、無事書ききれてホッとしました。


さて、この作品ですが、正直このまま連載とするか、一旦完結として、別作品として再び続きを書くか迷っています。続きを書くことは確定なんですが、どのような形で書くのかを迷っている次第です。

二作品書いて、やっぱりなろうは一度スタートダッシュをとちると、取り戻すのは至難の業だと感じました。

ここから浮上しようと思うと、それこそ受賞でもするか、知名度のあるスコッパーの方に運よく掘り起こして貰わないと難しいのでしょう。


この作品、場合によってはPVも200超えたりするんですが、結局露出を少し得ても最初の序章で脱落してしまう人ばかりなので、結局浮上は出来ないんですよね。

だから、スタートダッシュで如何に多くのPV得て、その勢いでランキングに上り、露出を更に確保して、勢いを維持するのが必須なのだと感じました。


それには、一日三回更新ぐらいのハイペースで、常に目に晒す勢いで公開していかないと難しいというのが結論です。

その為には大量に書き溜めする事と、新規投稿で出直すしかない……後は運ですね。まあ、それで上手くいくのかと言われても、未知数なんですけどね……。


そんな諸々の事情により、この作品の更新は一旦止めようと思います。

とはいっても、公開を止めるだけで書き続けることは辞めるつもりはないので、続きは、いつの日か必ず公開しようとは思っています。

ここまで読んで頂いた貴重な読者様には本当に申し訳ないと思っております。大変申し訳ございません。


ですが、やっぱり読んで貰えない作品には、存在意義はないと思っています。(あくまでも私自身が生み出す作品に対してであって、他意はありません)

読んで欲しいから公開しているのであって、サイトに死蔵される為に書いている訳ではないです。

そして、生み出した作品に対して「読まれる努力は惜しむべきじゃない」というのが、私の信念でもありますので、その為に必要な行為はすべてやって行こうと思っております。

ですので、私の活動を少しでも見て頂けている方には、生温かい目で私の作品の行く末を見届けて頂けると幸いです。長い目でw


それでは、再びお目に掛かれる日を少しでも早くする為に、執筆に戻ります。

ではでは、お元気で! 絶対に帰ってきます!!


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