↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様と使徒の異世界白書  作者: 麿独活
第一章 【魔物という存在】
42/44

第一章29 『神様と悩み』

 アースディア様と話していたところにシオンが乱入して来て話は中断されてしまったが、粗方の顛末は把握出来た。

 色々と不安要素の多い内容だったが、今回の一件を受けて旧神連合(オールド・デウス)の連中も、そう簡単には動けなくはなった筈というのが、アースディア様の結論だった。

 俺達が本格的に任務に就く前に、相手の出鼻を挫きたいという目論見は、概ね上手くいったと見ているそうだが、決して油断はしないようにと釘は刺された。

 それと、シオンには今回の一件に関して――特に旧神連合に関しては、出来る限り伏せて欲しいとも言われた。

 今はまだ、あの子が抱える力が狙われていることを知って欲しくはないそうだ。

 とは言え、完全に隠しきることも難しいだろうから、上手く説明して欲しいと頼まれた。

 全く……シオンのことに関しては、もう完全にこちらに任せる腹積もりらしい。まあ、シオンの使徒は俺なのだから異論はないんだが……。

 さて、どう説明したものかと思いながら、晩飯を食べていると……。


「ごちそうさま」


 そう言ってシオンが箸を置く。

 出された物の八割方は食べてくれたようだが、シオンは食事を終えてしまう。どうやら、まだいつもの食欲は戻らないらしい……いつもならおかわりもするのに……。


「(カウンセリング……上手くいっていないのか?)もういいのか?」


「うん……ごめんね、トウマ」


「いいよ。風呂の用意は終わっているから、入ってサッパリして来な」


「うん……」


 あまり元気のない返事をして、シオンはリビングのドアから出て風呂場へと向かうが――


「……トウマ、一緒に入ろ?」


 と、出て行ったドアからピョコンと顔を出して言う。


「……一人で入れ」


「……ケチ」


 プウ……と膨れてドアから離れ、今度こそ風呂場へと向かって行った。

 帰って来てからというもの、すぐに甘えてくる……休みの日だけだと約束したのに、毎日一緒に寝ると言って聞かないし……。

 異界を冒険して、多少逞しくなったと思ったんだが、すっかり最初の頃に巻き戻ってしまった感じだ。

 このままでは良くないな……と思いつつも、妙案が思い浮かばない。そう思い、アースディア様から貰った指輪を操作し、ある人に繋げる。


『(あ、もしもし……フェルビナさん?)』


『(え!? あ、トウマ様!?)』


 この指輪、アースディア様だけではなく、パスを登録すればその相手にも繋げられる便利アイテムだったりする。ただ、パスを通してあるシオンの領域や神界内でしか繋がらない。

 しかし、フェルビナさんに繋いだのは良いが、なにやら反応がちょっと動揺している。


『(すいません、今大丈夫ですか?)』


『(えっと~……そ、その……)』


『(あ、難しいなら後ほど改めますけど……)』


『(い、いえ……大丈夫です。どうかしたのですか?)』


 なにやら様子がおかしかったが、大丈夫そうだ。そう思い話を続ける。


『(すいません、急に……ちょっとシオンのことで相談があって……)』


『(シオンですか? なにかありました?)』


『(あったと言うより、まだ元気がないんですよね……それでカウンセリングってどうなっているのかと思って……あまり内容を聞くのも駄目なんでしょうけど、気になって……)』


 心に関することだから、基本は身内でも診療内容を聞くのは憚られるが、少しでも元気がない理由を掴む為には、手掛かりが欲しい。


『(……そうですか。カウンセリングですから私も詳しくは聞いていないですが、担当している方からは、大分回復してきているという話は聞いています。ただ……)』


 なにやら語尾に困ったニュアンスが含まれているのを感じる。なにかあったんだろうか?


『(ただ、どうしたんですか?)』


『(実はあの子……悩みを抱えているのは分かっているんですが、中々話してくれないらしいです。かと言って無理やり聞き出す訳にもいかないんで、少しづつ話して心を開いてくれるよう対応しているそうです)』


 悩み……確かに元気がない理由としては妥当な線だ。通院もしていたし、あまり不用意に俺から探りを入れないようにはしていたんだが……。


『(なるほど……シオンってそこそこ社交的に見えますけど、そうでもないんですか?)』


 前々から気になっていたことだ。交友関係は俺が知る限りでは、アースディア様とフェルビナさん……それと友達という未だ見ぬ下級神の娘だけだ……その娘とも、俺と契約を結んでからは会っていないらしい。

 人懐っこい性格ではありそうなんだが、相手を選んでいる節もあるし、我儘で頑固なところもあるから、他人に早々心を開く感じでもない……悩みを相談出来る相手もいないのだろうか?


『(あの子は結構人見知りですよ。だから、悩みを抱え込んでしまっているのだと思います。だから、トウマ様……)』


『(……そうですね。俺がそれを聞くべきなんでしょう。多分、最近甘えがちなのも切っ掛けを探しているのかも……だけど、変に強がる部分もありますから、切り出せないのかも知れませんね)』


 皆まで言われなくても、フェルビナさんの言いたいことは分かった。

 俺も頭を色々整理出来ていない部分があったから、中々シオンの気持ちに気付いてあげられていなかった。シオンはちゃんと、甘えるという行為でサインを出していたのに……。


『(……ありがとうございます。しっかり、シオンと話してみます)』


『(いえ……お役に立てたのなら良かったです。シオンのこと、よろしくお願いしますね)』


『(はい、じゃあ……)』


 話が終わり、念話を切ろうとすると、シオンの呼ぶ声が聞こえる。


「トウマ~! ……お風呂上がったよ~!」


「ああ! 分かった!」


 どうやらシオンがお風呂から上がったようで、風呂場から声が届き、それに応える。


『(トウマ様? どうしたんですか?)』


『(ああ、すいません。シオンがお風呂から上がったみたいです)』


 突然、念話の声が途切れて不思議に思ったのか、フェルビナさんが聞いてきたので答えるが――


『(そうですか。シオンもお風呂に入っていたんですね)』


 と、なにやら聞き捨てならない返答が返ってくる。


『(へ!?)』


『(え? ……あ!?)』


 自分の発言がなにを示しているのかに気付き、フェルビナさんが動揺の声を上げる。


『(…………)』


『(…………)』


 二人の間に気まずい沈黙が続き、俺は顔に血が上って熱くなる……なるほど、少し気まずそうだったのはそのせいか……。


『(あ~……その、すいませんでした)』


『(い、いえ……その……私の方こそすいません)』


『(そ、それじゃあ、失礼します! あの、お邪魔してすいませんでした!)』


『(いいえ! その、こちらこそ、申し訳ありません! 失礼いたします!)』


 そう言ってプツリと念話が途切れて指輪の光も消える。

 しまったな……次に顔合わせた時、どんな顔をすればいいのか迷う……でも、フェルビナさんのお風呂か……天使の入浴……そんな風に、ちょっと妄想を膨らませていると――


「なに赤くなってるのさ……」


 と、いつの間にそばに来たのか、シオンが不審な顔をしてこちらを見上げていた。


「い!? な、なんでもない!?」


 慌てて取り繕い誤魔化す。


「ふ~ん……」


 不審そうな顔をして冷蔵庫の方に歩いて行き、フルーツ牛乳を取り出してゴクゴクと飲み干すシオン。


「それじゃあ、俺も風呂に入ってくるな!」


 俺はそう言って、そそくさとその場を去ろうとする。だが、すぐにシオンに呼び止められる。


「トウマ!」


「な、なんだ?」


「……今日も一緒に寝て良い?」


 そう言って少し不安そうな顔をして聞いてくる。内心、さっきのことを突っ込まれると思っていたが、少しホッとして答える。


「いいよ、先に布団に入っとけ」


「うん!」


 シオンは嬉しそうな顔をして俺の部屋へと駈けて行った。俺は内心苦笑しながら、自身も風呂に入る為にリビングを後にした。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 風呂に入ってサッパリした俺は、頭を乾かして自室へと移動する。すると、俺のベッドの布団に既に潜り込んでいたシオンは、俺を見て嬉しそうに笑う。


「トウマ、早く早く!」


「はいはい……」


 俺は苦笑しながら布団をめくり潜り込む。するとシオンがすぐさま擦り寄ってきて、さも当たり前のように肩口付近に頭を置いてくっついてくる。


「……トウマ、あったかい。それに良い匂い……」


「風呂から上がったばかりだからな……」


 そう言って少し態勢を整えた後、シオンの頭を優しく撫でる。シオンは気持ちよさそうにして目を閉じる。


「シオン……」


「な~に~、トウマ~……」


 シオンはご満悦のようで目を閉じながら、とろっとした声で答える。こうしていると、悩みなんてなさそうに思えるが、俺は本題を切り出す。


「最近甘えっぱなしだが、なにか言いたいことがあるんじゃないのか?」


 回りくどいことをしても仕方ないので、真っ直ぐに聞く。


「…………」


 シオンは目を閉じて答えようとしないが、眉を不安げに少し(ひそ)めた。俺はシオンの頭を優しく撫でながら続ける。


「なにか不安を抱え込んでいるなら、ちゃんと言え。俺はその為にお前のそばにいるんだから……」


 シオンがキュッと、俺の胸元の服を手で掴む。少し迷っているようだが、暫く頭を撫で続けならが待つと、シオンがポツリと答える。


「……トウマは、ボクが怖くない?」


「……どうしたんだ急に?」


 シオンの意図がよく分からず聞き返す。すると、シオンは目を開けて、不安そうに瞳を揺らしながら言う。


「だって……見たんでしょ? あの異界をあんな風に壊したボクを……」


 そう言ってこちらを見つめるシオン。


「……もしかして覚えているのか?」


 そう聞くと、シオンは首を振る。


「……でも、分かるよ。あの惨状を生み出したのは、ヴリトラじゃない……ボク、なんでしょ?」


 まいったな……いつの間に確認したのだろう……あの異界は、あれ以降調査の為に立ち入り禁止だった筈だ。

 ということは、俺が気絶していた時、先に目を覚ました際に確認したのか……迂闊だったな。


「……あんな酷い惨状、ボクも初めて見た……あんなことが出来るなんて……ねえ、トウマ教えて! ボクいったいなにをしたの?」


 不安そうな顔で追及してくるシオン。その様子は得体の知れない力に怯えているようだった。

 さて、どうしたものか……アースディア様からは、詳しいことは伏せて欲しいと言われていたし……そう思いながら、俺はシオンにどう答えるべきか悩み、しばし口を閉ざしてしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。