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神様と使徒の異世界白書  作者: 麿独活
第一章 【魔物という存在】
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第一章22 『神様と現れた脅威』

 シオンと俺は、正体不明の存在の正体を探る為、森林エリアの最後の特異個体がいる場所を目指していた。

 森の木々を間を高速で縫うように移動していく。


『(トウマ、そろそろ近いよ!)』


『(分かった。どこか身を隠しながら監視出来る場所はあるか?)』


『(え~と……右手にかなり大きい木があるよ。そこからなら監視しやすいと思う)』


『(よし、そこに行こう)』


『(うん)』


 俺たちは進路を変え、シオンが指定した巨木の方向へ進む。そして、その木の根元に辿り着くと、二人揃って高くジャンプして木の頂上付近まで登る。


「……うん、見晴らしは良いな。シオン、特異個体はどこら辺だ?」


「……あの辺りだね。視覚を強化すれば、ちゃんと見えるよ」


 そう言って、北の方向の森林を指差す。俺も視覚強化を行ってシオンが指差す部分を見てみる。すると、一キロ程先の森の木々の合間をガサガサと動いている姿が見えた。


「いた……あれが森林エリアの最後の特異個体『アーマーインセクト』か……」


 見た目は、上半身はカマキリのような姿をしており、下半身はアリという、ハイブリットな巨大な虫の魔物だった。

 その名が示すように、頭や背中部分は強固な外骨格を備えていて、かなり堅そうだ。

 大きさは、大体五メートル程だろうか……今までの特異個体と比べれば小さいが、十分なサイズだ。

 特異個体は、今まであったモノ達も同じくかなり大きい。これから現れるかも知れないレベルAもしくはレベルSともなると、どんな大きさになるのやらと心配になる。

 そして、そんなアーマーインセクトの周りには、二メートル近いの巨大なアリが屯している。レベルDの『キラーアント』だ。

 森のせいで視覚では数を把握出来ないが、事前に確認したマップでは五十匹はいた。その証拠に、森の合間の所々に蠢く影が見える。


「……見る限り、まだ異変は起こってなさそうだね」


「そうだな……鬼が出るか蛇が出るか……」


「それってどういう意味?」


「前途には、どんな運命が待ち構えているのか予測出来ないって故事だよ。まあなにも起きない方がいいんだが……」


 そう言って、アーマーインセクトを見る。これから自身の身になにかが襲い掛かるかも知れない等、微塵も感じていないのか、キラーアントがせっせと運んだのか、山積みになっている森の動物の死骸をムシャムシャと食べている。どうやらお食事中らしい。


「うわ~……あまり拡大して見たくはない光景だな……」


 ちょっとしたグロシーンに、思わず目を逸らす。


「だね~……ずっとアーマーインセクトを見るより、マップの反応を注視した方がいいかも」


「そうだな。なら、それはシオンに頼む。俺は、山岳エリアの方角を監視しておくよ」


「了解」


 そうしてシオンはマップを担当し、俺はおそらく謎の存在が来るであろう方角を監視する役目を担った。そして、それぞれ特異個体の群れを監視し続ける。

 そうして、一時間程経った頃……突如異変は起こった。


「トウマ!」


 マップを監視していたシオンが、急に声を上げる。


「来たか!」


「分かんない! でも、キラーアントの反応がドンドン消えて行ってる!」


 俺もマップを確認すると、シオンの言う通りアーマーインセクトを中心に囲うように広がっていたキラーアントの反応が、北の方向から包囲を食い破るように消えて行っている。だが、案の定マップにはその存在の姿は確認出来ない。

 慌ててその方向に視線を向ける。すると、その付近の森になにかが木々の間を縫うように高速で移動する影が見えた。


「な、なんだ……アレ……」


「……いる……森の中をなにか物凄い長さの影が高速で移動してる。なにあのスピード……速い!」


 シオンもマップから顔を上げて、俺と同じように森を注視していた。

 俺は森の合間に目を凝らし続ける。すると、目に映っていたキラーアントの一匹が、異様に長い影が通り過ぎた瞬間消え去り、衝撃で吹き飛んだのか、その場にちぎれた足だけが一本残った無残な姿に変り果てる。

 どうやら高速で移動しながら、キラーアントをドンドン喰っていっているらしい。この前の山岳エリアでも、同じように特異個体の群れを襲っていたのだろうか?

 

「トウマ! もうキラーアントが半分以上やられてる……このままじゃ、特異個体もあっという間にやられるよ!」


 シオンが焦ったように声を上げる。確かにこのままでは不味い。正体を掴む為にリスクを承知でここに来ているのに、ただ速い長い影というだけでは情報が少なすぎる。


「(どうする……!)」


 少し考えた後、ある事を思い付いた俺は、双剣を引き抜き、すぐさま組み立てて弓にする。


「ど、どうするの、トウマ?」


 シオンが突然弓を組み立てた俺に疑問を持ち、聞いてくる。


「一か八かだが、爆裂矢をアーマーインセクトがいる付近に撃ち込む」


「ええ!? だ、大丈夫なのそんなことして……」


「とにかく、驚かせて弛緩させる。そうすれば、警戒して動きを止めるだろう」


「でも、それだとこっちの存在にも気付かれるかも知れないよ?」


「山なりに撃って射線からこちらの位置は読み取れないようにはする。だから、シオンはしっかりと見ておいてくれ」


「分かった!」


 俺はすぐさま矢を物質化するが、その際、矢尻部分をいつもより大きく作って重くする。そして性質付与で矢に細工を施し、その矢を番えて上空に向けて引き絞る。

 着弾地点の位置との相対距離を考え、出来るだけ狙う箇所の直上から落下する角度を予測する。

 あまりやったことの無い射撃だが、なにも当てる訳じゃない。狙った付近に落下するだけでいい。そう思い、狙いを定めて弓を放つ。

 放たれた矢は空高く舞い上がり、やがて上昇出来る限界まで上がった後、力を失って自由落下を始めて地面へと落ちて行く。


「(よし、悪くない位置だ)」


 やがて、矢は飛び上がった先の直下の地面へと迫り、着弾した瞬間、森に大きな爆炎が舞い上がる。


「よし! シオンどうだ」


「今確認してる!」


 そう言って、森を凝視するシオン。やがて、シオンが声を上げる。


「見えた! あそこ! 動きを止めてる」


 シオンが指差す方向に視線を向ける。すると、そこにはシオンの言う通り巨大な胴体を横たわらせて居座るなにかがいた。


「な、なんだアレ……蛇、なのか?」


 森に遮られているせいで一部だが、見えた胴体は真っ赤な鱗に覆われていて、ヌメッとした光沢を放っている。明らかに蛇に酷似した形状だ。

 しかし、異様なのはその太さだ。そこら辺に生えている巨木に負けないぐらい太い。そして特筆すべきなのは長さだ……どこまで続いているのか森のせいで判別しにくいが、信じられないぐらい長い……。あちらこちらの森の隙間から胴体が見えている。

 それらを踏まえた長さを想定すると、おそらく一〇〇メートルは優に超えている。シーサーペントやサンドワームの比じゃない。


「うそ……そんな、あり得ない……」


 すると、突如シオンが慄きながら言葉を発する。


「ど、どうした?」


 俺が訪ね返すと、シオンは森のある箇所を指差す。そこに視線を向けると、奴はそこにいた。

 赤黒い鱗を纏い、巨大な丸いギョロリとした目玉を忙しなく動かして周囲を確認している。その口は人間でいうなら耳元まで大きく裂けており、その口先からは引っ切り無しに先が割れた太い舌を出して震わせている。


「ア、アレが頭部か、デカいな。思った通り蛇の魔物……本当に蛇が出るとはな。アレが何だか知っているのかシオン?」


「……ヴリトラだ……」


「ヴリトラ?」


 どっかで聞いたことがあるような気がする。確かゲームでもかなり強い蛇のモンスターに、そんな名前の奴がいたような……。そう思い、肝心なことを聞く。


「……ランクは?」


「……ヴリトラは、神話級――レベルSに相当する魔物だよ……」


「なっ!?」


 最悪の予感が的中する。予測はしていたが、本当にレベルSの魔物がいたなんて……。

ガーディウスの奴、一体どうやってあんな魔物を用意したんだ? と疑問に思うが、今はそんなことを考えている場合じゃない。

 これからどうするかを考える為、シオンに確認する。


「俺達で勝てるか?」


「分からない……レベルSでもピンキリらしいし……でも、以前フェルビナが戦ったことがあるみたいで、その時はかなり苦労したって……」


 フェルビナさんでも手こずる強さなのか……それを考えると、俺達ではかなり危険な相手という訳だ。

 これは、急いで次の算段を決めないと、本当にシャレにならない事態になるかも知れない。



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