第三十話 オークオーバーロード襲来3
対峙するエレノアとオークオーバーロード。
エレノアは体中血だらけで今にも瀕死になりそうだ。
対するオークオーバーロードはほぼ無傷だ。
オークオーバーロードは魔杖を構えて、魔術を放つ。
極大の炎魔法だ。それがエレノアに直撃する。エレノアは黄金盾を起動して、威力を1割に抑えた。
だが、それでもかなりのダメージを負ってしまった。
それもそのはず。このオークオーバーロードの魔力の高さは桁が違う。なのでそのままではもちろん普通の人間なら死んでしまうし、防御魔法を使用しても、生傷は受けるであろう。
こんな化け物と呼ぶのも烏滸がましいほど、本物の凶悪な魔物は人智を超えていた。
天界に住む神族のほうがマシなんであろうかと思うほど強力な敵だ。
エレノアの剣技が炸裂する。焔真剣。高温の焔が剣から迸る、剣に厚塗りされた焔がオークオーバーロードを燃やす。
オークオーバーロードは少しだけ暑さを感じだが、ほどなくして火を振り払い、消して何ともなかったのようにその場に鎮座していた。
にやりと笑うオークオーバーロード。そのまま魔杖を構えて、今度は風の極大魔術を放つ。
テンペスト・クラッシュ・ギガハリケーン。大嵐の風量で放たれたそれは風の衝撃を増大させて、エレノアに襲い掛かる。
エレノアはそれを空歩で空に逃げて回避する。
空中を旋廻しながら、それを回避しながら、オークオーバーロードに取って置きの剣技をぶつける。
「鬼神殺しの十戒斬!!!」
鬼神を殺すほどの強大な一撃を十の戒により研ぎ澄まされた剣に与える極大の魔力を籠めて放たれる斬撃。
それは意図も容易くオークオーバーロードの左腕を斬り飛ばした。
「ブオオオオオオオオオオオオオオオオ!??」
オークオーバーロードはあまりにもことで驚愕の声を出した。
まさか左腕を持って行かれるとは思わなかったようだ。
「止めだ…………千裁天下剣(サウザンド・ジャッジメント・ヘブンズダウンソード)!!!」
黄金色の目映い光がレウロニア草原を包み込んだ。
決着はついたかと思われた。だが……
「戦闘モード二ヘンカスル……」
「何っ!???」
エレノアの渾身の剣技を突如出現した極大剣に防がれた。
そしてエレノアを殴り飛ばして、極大剣で叩き切った。
エレノアは咄嗟にイージスを発動したが、それでも腹から大量に出血した。
「ぐはっ!!」
エレノアはもうほぼ瀕死だった。
そしてそんなエレノアの首を持ち、握りつぶそうとする。
「ぐああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「ブヒヒヒヒヒ……コノママヒトオモイニクビノホネヲオッテヤル……ソシテソノアトニオカシテヤル」
死後も辱めを受けるのかとエレノアは諦めと後悔で一杯だった。
最後にやはり……あいつと一緒に世界を見て回りたかったなと……思った。
右頬に一発。それはただの一発ではなかった。人智を超えた、怪力で込められた威力はオーク―オーバーロードを遥か彼方に飛んで行かせた。
空中に放り出されたエレノアをやさしくお姫様抱っこしていたのは、数基だった。
「よう、姫剣士さん危ないところだったな。今直すからなハイヒール」
「数基まさかお前が来るなんて……いや来ると信じていただからこんな無茶をしたんだ」
「まあつのる話は置いといて、今はあれを倒さないといけないよな」
もちろん今の一撃で死んでいればよかったのだが、そんなことはなくオークオーバーロードは遠くから数基を見ていた。
そして刹那、神速のスピードで数基に迫る。
数基はエレノアを遥か後方の街のほうに飛ばした。
着地の時はクッションを張るようにサイコキネシスを調節した。
「数基!…………もう後で沢山かまってもらうぞ死ぬんじゃないぞ数基」
極大剣が数基に揮われる。サイガソードをすぐさま抜き、応対する。
剣と剣がぶつかり合う。そのまま何度も撃ち合いが続いていく。
百回ほど続いた撃ち合いで数基が僅かに剣を懐に入れた。
そのまあオークオーバーロードが後退していたが、胸の辺りが切られていた。
そして数基が今までにない魔法を使う。
「超次元極双波導!!」
オークオーバーロードが吹っ飛ぶ。塵になったのかと思えた。
しかしオークオーバーロードは瞬時に魔杖を構えて、防御魔術を使っていた。
だが、それでもオーク―バーロードは闘志を燃やす。
殲滅魔術――炎竜殲滅打破。
オークオーバーロードは自身の持つ最大級の魔術を放った。
レウロニア草原は一瞬で地獄と化した。そのまま煙が晴れるまで5分ほど経つ。オークオーバーロードはやったか!?と思った。それがフラグになるとも知らず。
無傷で数基は立っていた。それもそのはず全力の超念壁で普通に防げたのだから。
「もう、いいだろ? じゃあそろそろ俺のターンだ!」
オークオーバーロードを念力で持ち上げて、遥か天空に飛ばした。
高度10000フィート。マイナス40度の気温で、オークオーバーロードは凍るような寒さを感じた。そのまま叩き潰された。
それを何度も、何度も何度も何度も何度もそしてそのまま空中に降りてきたオークオーバーロードを一閃。
オークオーバーロードは死んだと思われた。だがまだ終わりではなかった。
暗雲立ち込めるようなオークオーバーロードの死体が異常事態になっていた。
暗黒の瘴気と共にオークオーバーロードはオークリッチロードに変貌した。
「サテ……ワレも本気を出すとスルカ」
「なんだと……!?」
数基は驚愕していた。あの怪物がまたしても強大な化け物になって帰ってきたのだ。
無限の力でもあるのではないだろうかと数基らしくない弱音を吐きそうになっていた。
オークリッチロードは暗黒魔術を使用した。
「ダークネスロードグラビティ」
数基はその暗黒魔術をまともに喰らいそうになったが、サイコバリアで完全に防いだ。
サイガソードを構えて、振りかぶる。殲滅するかのように一振り、刹那オークリッチロードの首が飛ぶ。だが、すぐに首が生える。その繰り返しだ。そもそも骨みたいになったから物理攻撃が効くとは思えない。
ならば炎魔法だなと数基は考えた。炎魔法を放った数基は炎滅の魔人に魅せられたかのような錯覚を感じた。喰らい魂を迸る混沌を体に受けた。
オークオーバーロードは消滅していた。帝国騎士団は歓声を上げた。だが、数基は言い知れぬ不安を感じていた。まだ、何かある……そんな予感が。




