第二十六話 聖剣を追い求める少女
サバリア帝国の公爵家令嬢のエレノア・シュエル・サーバリアルスはサバリア帝国の遠い南に位置する、難関迷宮の一つ選定の迷宮に来ていた。
エレノアは目的があってここに来ていた。
エレノアは強さを追い求める過程で自分に無いものそれは力だと悟った。
エレノアは現在16歳だが、3歳のころには剣を持ち、7歳のころには周りに誰一人として自分に勝てる同年代の男の子はいなかったし、12歳にもなれば剣闘大会に史上初の若年だが完全優勝を果たしたほどの実力だ。
16歳になった今でも、Bランクの冒険者としても名声を得ているし、仲間はとらない道理だが、唯一メイドのアサラさんをたまに呼び出して仲間に加えて迷宮に潜るぐらいだ。
そんなエレノアが今選定の迷宮の第十八階層という深部にまで来ていた。
ここは全二十五階層で構成された迷宮だ。
難易度的には途中までならCランク冒険者でもいけると言われているが、二十三階層以降だとまだ踏破したものがいないという迷宮でエレノアは油断できないでいた。
そもそもCランク冒険者ともなればかなりの実力だ、その上のエレノアと同じBランクともなれば飛竜―ワイバーンを単騎で撃破できる実力を備えられる。
Aランクともなればもはや一流の冒険者であり、キマイラやグリフォン、ケルベロスと言った伝説の魔獣を倒せる実力を備えられる。
Sランク冒険者なんてそもそもサバリア帝国には歴史上5人しかいないし、現在でも3人しかいない。
いわゆる竜種ドラゴンや魔族の中級悪魔などを相手にしても遅れをとらないしそのぐらいの実力がなければSランク冒険者の資格はない。
その上歴史上の伝説の英雄である最古の勇者――1000年以上昔の話だ、雷鳴の勇者は今でいうSSランク冒険者の実力があったと言われている。
今でこそその雷鳴の勇者は歴史上二番目に強い勇者と言われているが、それでも人間離れした力を誇る勇者だったのは明白だろう。
歴史上一番強いと評価された英雄の勇者、今から200年前の出来事だった、大魔王ザンキラスと名乗る魔族が現れて地上が制圧されていった魔族によって、しかしその状況をひっくり返したのが後に剛鉄の勇者と呼ばれたかなりの長身の男だった、巨大な岩を粉砕した、ドラゴンを余裕で倒した、魔法が効かないなどの逸話が残っている、そんな剛鉄の勇者が大魔王ザンキラスを倒して長らく平和が戻った。
それが現在でも制定上実質的な最高ランクのSSSランクだった。
いちおうその上にGランクがあるがそれこそ御伽話だ。
神魔神話の伝説の勇者光の勇者が剣を揮えば、地を割り、海を割り、空を割ったと書かれている。
光のごとき速さで動いて、伝説の竜ウロボロスを一人で倒したと言われている。
さらにそこには邪神を撃ち滅ぼしたと書いている。
邪神――それはこの世界では無い違う神の世界から現れた邪な神。
その存在は神すらの力を余裕で越えて、世界を災厄に導く存在。
この世界は一度邪神によって滅ぼされたと書いている。
もちろん定かではない、こうして私たちは生き残っているので完全に滅んでいないのだがらそういうことだろう。
エレノアは神魔記録という本を閉じて、一人迷宮に佇んでいた。
さあ、私は手に入れてみせる。
伝説の剣、エクスカリバーを。
エレノアは深く深層に行くのであった。
――深部選定の迷宮第二十三階層にてエレノアはデューンサソリカブトと交戦していた。
サソリカブトは赤い硬質的な鎧のような殻に覆われていた。
そんなサソリカブトに齢16にて周りからは剣姫と呼ばれて、敵なしと思われているエレノアでも苦戦していた。
なんという堅い皮膚なんだ、これでは私の愛剣ですら傷をつけられないとは。
エレノアは苦虫を潰したような顔で動揺していた。
それでもエレノアはまだ余裕があった。
まず自分に身体強化魔法をかけて、力と速度を上げる、耐久も上がっているのでこいつの凶悪そうな尻尾の棘に刺されても何とかなるだろう。
エレノアは一応防御力が高く、そして軽く動きやすいミスリルの鎧を装備していた。
この鎧により強靭な防御力と機動力を両立できるのである。
盾は持たないが鎧によりなんとか防御力はあるのでなんとかなっていた。
どちらかというとエレノアの戦法は回避して攻撃のヒットアンドウェイ戦法なので、片手が自由な方が有利だ。
剣を右手で持って、左手で魔法を放つ、そういう戦い方になる自然と。
と言ってもこれはエレノアぐらいしかできない芸当だ。
剣を持ったまま魔法を使うなどは、通常では考えられなかった。
帝国の中では破格の才能と実力を備えた、才女として努力してきた結果なのだが、エレノアは剣と魔法の才に恵まれた。
剣に魔法を纏わせる魔法剣を使えるのもエレノアぐらいだ。
エレノアは炎と風と雷と光の魔法が得意だ。
そんな彼女でも使えないものがある。
回復魔法だ。
だが、それでもエレノアには得意な物があった。
剣技の開発。
剣技を開発して自分のものだけにする。
そしてエレノアは11歳のころから開発を行い、16歳になる現在までに、数々の剣技を習得した。
エレノアの必殺技其の一『桜花斬』、其の二『ストライクソードスラッシュ』、其の三『シルバーコールドリザイル』などがある。
どれも一品級のものである。
そしてエレノアの桜花斬がサソリカブトに炸裂した。
ザクリッ! ただ一撃のその剣の軌跡は堅い皮膚を持つサソリカブトを粉砕した。
よし、なんとかなったか、さて次の敵は……
エレノアはそのまま第二十四階層に行くのであった。
第二十四階層にはBランク冒険者が相手するには限界である強敵が現れた。
Aランクモンスターデスタランチュラ。
獰猛な性格で、十本の足を持ち、赤と黄色とピンク色の外観で、体長が4メートルにもなる巨大な蜘蛛型モンスターだ。
しかも鎌のような爪で刺されたら猛毒に侵されて、解毒剤を飲まなければ一時間もしないうちに死んでしまうのだ。
デスタランチュラはしかもかなりの速度を持つ、その上堅く力があり、知能が高い蜘蛛だ。
そんな蜘蛛をエレノアはまずは距離をとり、魔法で攻撃しようとした。
しかしデスタランチュラがそれに気づいて、高速で近づいてくる。
行動が遅れた、エレノアが後ろにバックした瞬間、デスタランチュラが爪を伸ばしてきて、鎧の上から刺してきた。
幸いにも鎧により直接肌に毒爪が襲い掛かることはなかったが、鎧に穴が開いた。
そのまま後ろに下がり、状況を整理するエレノア。
どうする? このまま近接戦は不利だ、だが高威力の魔法を発動するまでの隙は作らせてくれないだろうな……ならばここはいっそ。
エレノアは決意した、あえて不利な近接戦で勝負する。
鎧を破られたことを考慮して、風の防御魔法『イージスウィンドアーマー』を使用した。
これによりある程度の攻撃を風の防護結界により防げる。
だが、魔力消費が激しいので、維持コストがとてつもない。
だが短期決戦ならこの程度の魔力消費量はなんとかなる。
エレノアはデスタランチュラに突っ込んだ。
デスタランチュラの猛攻は何とか防げたようだ、そして魔法剣『ライトニングサウンソード』で一撃、二撃目に『アースブレイクソード』、三撃目に『グラビティエクスソード』で止めをさした。
強敵だった、さあ最終階層に行こう。
エレノアはついに最終階層の第二十五階層に到達するのであった。
階層主のいる扉を開けて、そこにいたのはSランクモンスターキルギガントサーペント。
通称巨大殺人蛇。
そのあまりにも巨大な体躯により人を圧倒して丸呑みしてゆっくりと消化してしまうであろう。
皮膚は鋼のように固いしその巨体に似合わずに動きは黒豹よりも速い。
こんなモンスターいくらエレノアでも倒すことは出来ないと悟った。
いやそれでもやるんだ私はそのために今まで生きてきた。
選定の迷宮を踏破したら手に入るであろう伝説の聖剣の噂を聞いた時からそれは決まっていた。
いくぞ……さあこいこのデカブツめ!!
エレノアは命を賭けて敵に突撃していった――
――百はゆうに超えた、その何百回と繰り返されたぎりぎりの攻防戦の勝敗を決しようとしたのは巨大な殺人蛇のほうだった。
エレノアが魔法を放ち、出来た一瞬の隙をついて殺人蛇が噛みついてきた、そしてそれをなんとか避けた瞬間にそれは囮の攻撃だったと気づいた。
その瞬間に巨大な長い尻尾の一撃を体全体に受けた。
致命的な一撃だつた、その巨体から繰り出された一撃は破壊的な衝撃をエレノアに喰らわせた。
これによりエレノアは内部にダメージを受けて、出血した。
かなりの大出血だった、これにより動くことが出来ない。
エレノアは死を覚悟した、殺人蛇が獲物を追い詰めるようにそのまま近づいて唾を垂らしてそのまま丸呑みしようとする。
勢いよく齧り付こうとした殺人蛇がエレノアを捕えようとする。
エレノアはまだ最後まで希望を捨てなかった。
こうなったら私の全魔力で放つこの最大の魔法で……
ただしこれを放てば私もただでは済まないが。
「ウィンドバーンカタストロ……」
そのとき一つの人影が階層主の部屋に現れた。
殺人蛇の顔面を拳でただ殴ったその謎の人物が。
そしてなんとそれだけ巨大な体長十メートルはあろうである殺人蛇が遥か後方に吹っ飛んだ。
そのまま謎の人物が振り返った。
「おっと……なんか面白そうだから試しに入ってみたら思わぬ場面に遭遇しちまったな、なんだ? 大丈夫かお前血だらけじゃねえかほれヒール」
そうするとエレノアの傷がみるみるうちに塞がり、体力が回復していく。
その黒い服を纏った謎の男が呟く。
「よし……これでなんともないだろ、さてあのデカブツを倒しちまうんだろ? 一人だと荷が重いだろ、だから俺が手伝うよ」
「君はいったい?」
「俺の名前は進動数基。ただの軍人さ」
エレノアの実際の本気の戦闘力はSランクに匹敵すると思います。
彼女はまだ本気を出してないわけです。




