Gランク
そのまま五分ほどが経過した。
剣術:中の結果が出て喜んでいたフェルスのテンションも落ちてきていた。
フェルスは落ち着かず足をモゾモゾさせては結果を待っている。
エルマはフェルスとは対照的に綺麗な姿勢でじっとしていた。
「ねえ、ランクって何?強さで決まるの?」
フェルスは沈黙に耐えきれずエルマに質問する。
「そうね、大まかにいえば強さよ。さっきの測定器の結果から割り出すの。私はAランク。フェルスは多分、Cランクなんじゃないかしら。魔術の判定が出てこなかったけれど、剣術の判定が大きかったからCが妥当なラインよ」
「おお、Cランクか!それでランクが違うと何が起きるの?」
「受けられるクエスト内容が変わるわ。討伐部門なら討伐対象のレベルが上がるわね。ちなみに生産部門や運営部門には簡易的なランクしかないわ。細かく分かれているのは討伐部門だけね」
「そうなんだね。より難しい護衛の仕事ができるってことか」
フェルスは空想を膨らませていた。
護衛をして世界中の色んなものを見たいな。
それで色んなものを食べてピカピカの武器を手に入れるんだ。
だが、二人はそんな話をしながらも、リアナが急に呼び出されたことに悪い予感を感じ取っていた。
ちょうどその時、リアナが帰ってきた。
場に緊張が走る。
「お待たせしました」
リアナは先ほどまでと何ら変わらない淡白な調子でそう言うと、席についた。
「まず、フェルス様のランクですが......」
フェルスは固唾を飲む。
万が一Dランクにでもなったら悲しい。
なぜならフェルスはもうCランク気分だったからだ。
「......Gランクです」
エルマの顔が青ざめた。
通常、ランクはAからFまでしかない。
特別例として、超越者などがSランクとなることはある。
逆に、Gランクも特別例として知られていた。
Gランク、それは管理対象階級であった。
かつて盗賊であった者など、前科者が認定されるのが普通だ。
やはり壁を壊したことが響いたのだろうか。
「そんな、フェルスがGランクなんておかしいです。あの壁は事故なんです。証言させてください。それに他にも報告することが必要なので、話を聞いてもらいたいです」
「それは不要です。壁の件については調査が終了しました。取り調べ予定でしたが、それも不要です。報告というのは、禁域周辺に湧いた異様に強い魔物のことでしょうか。それも調査済みなので報告不要です」
「そんな......」
フェルスはGランクと聞いて、Cよりも低かったのでがっかりした。
しかし、Gランクが特別なランクであることなど知らなかったので、どこか楽観的に状況を見てもいた。
だが、リアナとエルマのやりとりを聞いて、かなり状況が悪くなっていると悟った。
エルマは禁域の魔物の件があまりにも早くギルドに伝わっているのを恐ろしく感じていた。
「それとエルマ様のランクについてですが、本来なら上級魔法使いとしての身分が考慮されますが、今回は防壁損壊の連帯責任を重く考え、特例として暫定的なGランクへ降格とします」
エルマの顔がさらに青ざめる。
自分までGランクになるとは夢にも思わなかった。
「そんな、そんなのおかしいわ。事故が故意ではないことを証言させてくれませんか」
「決定ですので、申し訳ありません。こちらが証です」
リアナは二人にGランクの証を手渡す。
エルマのAランクの証は破棄された。
この部屋に入れられた事といい、途中でリアナが席を外してからGランクを宣言したことといい、不穏であった。
何か大きな力が働いているーーエルマは不気味な気配を感じとった。
「それでは、Gランクの仕事についてです。Gランクですので討伐部門や生産部門などの区分はありません。当面は城壁の修理をしてもらいます」
「分かりました」
エルマはこれ以上この事務的な女に抵抗しても無駄だと思い、決定を受け入れた。
「城壁を直すんだね。護衛じゃないのは残念だけど、頑張る、ます」
城壁を直すのはフェルスにとってそれほど嫌な仕事ではない気がした。
それに、仕事が与えられたことで、自分がどこか認められたようにも感じていた。
「後は、城壁を壊した分の賠償金の支払いもお願いします」
「え......」
「現金でも現物でも構いません。60レグルいただければ。今払えなければ城壁修復の給与から天引きさせていただきます。もちろん、生活ができる程度の余裕を残して天引きするのでご安心ください」
エルマは急速に状況が悪化していくのを感じた。60レグル、3ヶ月は暮らせる金額だ。




