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クエスト完了

 白いスライムはその場で跳ね、嬉しそうにフェルスの方へ寄ってきた。

 エルマは一応いつでも魔法で攻撃できるようにじっと見守る。

 スライムはエルマの方を見ると、また嬉しそうに跳ね、エルマにも寄ってきた。


「これは、ものすごい粒子の密度だ。それに、人に攻撃してこないだと......!」


 ゼノは圧倒されたように白いスライムを眺め、感嘆の息を漏らした。

 次の瞬間、ゼノに気づいたスライムはゼノを威嚇する。


「なんで、このスライム、どうしたのかしら」


 エルマも白いスライムに驚きを感じていた。

 エルマに懐いている様子だったからである。


 青かった頃と、何か性質が変わったのだろうか。

 だが、ゼノには敵対している。

 どうしてだろう。


 フェルスは白いスライムに触れると、胸に抱きかかえた。

 プルプルとした表面を撫で、大事に扱っている。


「どうして白くなっちゃったのかしら。それに光ってるわ」


 エルマは改めて疑問を投げかける。


「流石は俺のペットだ」


 フェルスは自慢気だった。


「でも、この突き刺すような光り方、ゴーレムから出てきた石にそっくりね。あの石食べちゃったんじゃないかしら」


 エルマは自分でも自分の言ったことを信じられない、と言った様子で話した。


「スライムが何かを食べるだなんて聞いたことはないがなあ」


 ゼノは不思議そうな様子だ。


「でもあの石無くなっちゃったし、スライムと石は同じ場所にお留守番させてたし、食べちゃったのも本当かも」


 フェルスは謎が解けた、という風なスッキリとした表情をしている。


「まあそれが自然な考え方ね。でも分からないことを考えても仕方がないわ、とりあえずギルドに向かいましょ」


「いや、分からないというのはまだ早い。私にこのスライムを観察させてくれれば何かわかるかもしれないぞ」


 ゼノは口を挟む。また新たに追求すべき謎が増えたと、嬉しそうな表情をしている。


「それは後でいくらでもやればいいわ。とりあえずクエストが終わった報告をしにいくわよ」


 エルマはフェルスとゼノを振り返り、前に向かって歩くよう促した。

 日が傾いていたので、エルマは早くクエストを終わらせたかったのだ。

 フェルスはスライムを収納魔法の中にしまった。


「むう、それもそうだな。まずは報奨金を得て少しでも早く借金を返さなければだ」


 ゼノとフェルスはエルマに従い着いてくる。

 ゼノの先ほどまでの嬉しそうな表情は急速に萎み、虚ろな目をしている。


「ゼノもGランクだから壁修復を任されたのよね?借金もあるって、何したの?」


「話せば長くなるが、まあ簡潔に言えば実験の失敗で住んでいた住居とその周辺一体を木っ端微塵にしてしまったのだよ。お陰で街はごちゃごちゃだし120レグルの借金だ。まったく。人に被害が出なくて良かったが」


 120レグル......エルマは自分達の借金60レグルと比べ、ゼノに同情した。


「実験か?なんかワクワクするなあ」


 フェルスは実験という言葉の響きに目を輝かせた。


「ふふ、世界を観測するための実験だ。師匠も今度参加するか?」


「うん!」


「師匠がいれば今までよりもっと多くのことが分かりそうだな。楽しくなってきたぞ」


 ゼノはどうやら元気を取り戻したらしい。

 足取りは軽快になる。

 エルマはゼノのその単純さにおかしくなり思わず笑みがこぼれた。


「どうしたのだ?」


「なんでもないわ」


 そんな会話をしていたらギルドはもうすぐだった。

 今度はフェルスとエルマを待ち構える衛兵はいない。


 ギルドに入り、エルマは受付のリアナにクエストの完了の報告をした。


 リアナは眉をピクッと動かす。


「先ほど依頼したばかりですよね?」


 エルマは自分が疲労感のあまり致命的なミスを犯したことに気づいた。

 普通こんなに早いペースで壁の修復が終わるはずはない。


「ええ、そうです......」


 エルマは歯切れ悪く呟くようにして返答する。


「一度調査をしてきます。後方の座席にてお待ちください」


 リアナはカウンターの奥に入ると、書類を手にしてギルドから出ていった。


「どうしよう、怪しまれちゃった」


 エルマは自分があまりにもうっかりしていることに嫌気がさした。


「私も師匠の力を見て有頂天になっていた。反省しなければならないな」


 ゼノもこう続ける。

 一方のフェルスはと言うと、エルマとゼノの反省モードを感じとって自分が失敗してしまったと思った。


「仕事終わらせるのが早すぎたかな?」


 フェルスはエルマに聞く。

 フェルスにとって壁の修復は普通の速度で普通に仕事をしただけであった。


 しかし、フェルスも自分の魔法の常識が他の人の魔法とは異なることは分かってきていたので、まずいことをしてしまったかもしれないと落ち込み始めていた。


「大丈夫よ、きっとなんとかなる」


 エルマはそうフェルスを励ます。


 ゼノも大丈夫だと言いたげにフェルスの肩をポンと叩いた。


 しばらくしてリアナは帰ってきたが、いつも通りほとんど無表情だった。


「このスピードで城壁を直せたのはおかしいですね。頑張って取り組んでも一週間はかかりそうです。それに修復のための接着剤も一切使われた形跡が無かったので不思議でなりません」


 リアナは冷たく言い放つ。

 エルマは焦った。

 しまった、接着剤の袋を未開封のまま置き去りにしてしまっていた。


 朝からフェルスと出会いゴーレムを倒しゼノと出会い、と出来事が多すぎて疲労が溜まっているのだと痛感する。

 早く休みたい、エルマは切に願った。


「まあいいでしょう。今回の仕事は達成とします。こちらが達成報酬です」


 リアナからエルマ、フェルス、ゼノの3人にそれぞれ5レグルが支払われた。


「次の仕事についてですが、今回の件と合わせて問い合わせとしますので翌日14時にまたこちらへいらしてください。時間通りに来られないとペナルティがあるので遅れないようにしてくださいね」


 エルマは問い合わせという言葉に嫌な予感がしたが、もう運命に身を任せるしかないと腹をくくった。

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