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第4場 黒い羽根


オディールは、ロットバルトとオデットの会話を物陰から聞いていた。

「あの方は、あの娘を愛しているのだろうか……」

静かな声が闇に溶ける。

「何故、すぐに命を奪わないの?」

黒い羽根を指先でもてあそびながら、オディールは呟いた。

「私達、黒き魔術師が最も力を得るのは、“死”そのものだというのに――」

脳裏に、遠い日の記憶が蘇る。

幼き日、オディールが生まれ育った村では、魔力を持つ者は忌み嫌われていた。オディールには人が見るものを偽りの姿で見せることの出来る力があった。本人はちょっとしたイタズラでしたことも魔力のない人々は彼女を恐れ、 石を投げ、 やがて実の親でさえ、その手を離した。彼女は哀しみのあまり力を暴走させた。制御できぬ魔力に怯え、 誰も近づこうとはしなかった。

――ただ一人を除いて。

傷を負う事すら厭わず、幼い自分へ歩み寄ってきた男。

漆黒の外套を纏った、美しい魔術師。

『お前の力が、私には必要だ』

その言葉を、 オディールは今も忘れられない。

誰かに必要だと言われたのは、 あの日が初めてだった。

ロットバルトは幼い彼女を見下ろし、静かに告げた。

『今から、お前はオディールと名乗れ』

その日から、 彼女は“オディール”となった。

不思議な事に、 自分はあの囚われの姫――オデットと、どこか面差しが似ている。

ロットバルト様は私の中にオデットを見ているのだろうか…

オディールはそっと胸に手を当てた。

「ロットバルト様……」

我が主。 我が名を与えし御方。

そして私が密かに思いを寄せる方


「たとえ、この命に代えても――」

月明かりの中、 黒い羽根が静かに舞い落ちる。

「私は、あなたをお守りいたします」

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