外典 決意 Ⅳ
※一部に流血や、暴力的、もしくは生理的嫌悪感を伴う描写がある場合がございます。
苦手な方はご注意ください
「別にいいけど……あっ!?アキト、お前それより昨日何で来なかったんだよ!?今日も朝しかいないしさぁ!?」
夜にいきなり現れて話がしたいと言われ、戸惑いながらも受諾した直後、俺は昨晩長時間待たされた苛つきもあってか、思わず怒鳴りながら問うと、アキトは申し訳無さそうに顔を伏せた。
「ご、ごめん……昨日は、急に体調が悪くなって……実は、今日も昼から寝てたんだ……」
むぅ……体調不良ならしゃーないな……
「……起きても大丈夫なん?」
「う、うん……僕から呼んだのに、本当にごめん。」
「そっか……分かったよ。まぁ、桜井とかも居なかったしなー……そんな事もあるかー……」
にしても、七人も同時に来なかったのは、皆体調でも崩したからかな?
まぁ、清水は大丈夫そうに見えたから、体調不良だけって訳じゃないのかもね。
「……また、桜井……」
「ん?何か言った?」
そんな風に俺が呑気に考えていると、何故かアキトは顔を顰めつつ何かを呟く。
「いや、何でもない……」
「そう?……んで、話って何?何か用だったん?」
「あ、あぁ……うん……」
俺がそう問い掛けるものの、どういう訳かアキトは俺の後ろに控えていたナギさんへ、険しい表情を向ける。
……何だろ?アキトのヤツ、何で怖い顔でナギさんを見て……?
「では、私は暫く席を外しております。」
「分かりました……」
どうやらナギさんも自分が睨まれていると気付いたらしく、自ら退室を申し出たので、俺は仕方なく頷くと、彼女はそそくさと部屋を後にした。
「ヒロト……あの人と、仲良くなったの……?」
「いや、別に……」
仲良くなるとか以前に、何か警戒されてるというか……まぁ、アキトに言っても分からないだろうけどさ。
はぁ……
「……あの人達と、仲良くするのはやめておいた方がいいよ……」
「え?なんで?俺達をお世話してくれてる人なのに?」
仲良くなれないまでも、今のままだと一緒に生活する上で息苦しくなるから、最低限普通に接して貰うにはどうしたものかと内心で悩んでいると、何故か迷うような素振りを見せた後でアキトが突然そんな事を言い出す。
よく知りもしないうちからそんな事を言うだなんて、アキトは何を考えているんだよ?
それにナギさんは多分、そんなに悪い人じゃないぞ?
「……だ、だって……僕、聞いたんだ……あの人達は、獣人だって……だから……」
「はぁ?お前、何言ってんの?」
ナギさんが、獣人?
どっからどう見ても俺らと変わらない人間じゃねーか!
「クレイって……兵士が、僕と清水にだけって……アイツらは、僕達を探りに来ているスパイなんだって……」
「お、おい?アキト……?」
何だか、アキトの様子がおかしいような……?
「スパイって……メイドさん達が全員?」
「そ、そうだよ……」
「お前……大丈夫か?」
「ヒロトは、僕を疑うの……?」
「いや、そうじゃなくて……」
オレがアキトの様子がおかしな事に訝しむと、アキトは酷く悲しそうな表情で俺にそう尋ねてくる。
疑ってるとかじゃないんだけど、何て言えばいいんだろ……
「それに、僕……見たんだよ……僕の部屋にいるアイツらの服を裂いて確かめたんだ……アイツら、間違いなく人間なんかじゃないよ!!」
「ア、アキト……お前、どうしたんだ……?」
ふ、服を引き裂いた!?
そこまでするだなんて……アキトのヤツ、本当におかしくなってないか?
「……お願い、信じてよ……」
「いや、信じるとかじゃなくて……大丈夫か?アキト……お前、変だよ……」
「僕は変なんかじゃない!!!!」
ただアキトを気遣っていただけなのに、俺の言葉が余程癪に触ったのか、アキトは叫んだ後に突然俯いてしまった。
「お、おい……アキト?」
「僕が……何とかしないと……選ばれた僕じゃなきゃ……」
……うん?何かぶつぶつ言ってる……?
「大丈夫か……?」
「待っててね、ヒロト……僕が、どうにかするから……」
「お、おい!?アキト!!」
そうして独り言を言っていたかと思えば、アキトは突然顔を上げ俺の目を真剣に見つめながら告げると、俺が呼び止めているのを無視しつつ足早に部屋を後にした。
アイツ、どうしちまったんだよ……
「……失礼致します。」
「あ、ナギさん……お帰り……」
俺が暫く呆然としながらアキトが出て行った扉を見つめているうちに、ナギさんが入れ替わりで戻ってくる。
アキトのヤツ、彼女達が獣人だなんて酷い出鱈目を言っていたけれど、やっぱりどう見ても人間だよなぁ……
「……ハァ……ちょっともう我慢出来ないわ……ヒロト……だっけ?アンタ、人を見る目が無さすぎ……」
「え?ナギさん……?」
「アンタ、人は良いのかもしれないけどさ?そんなんじゃ、いつか痛い目を見るだけよ?」
改めて入ってきたナギさんへ視線を向けていると、彼女はいきなり盛大な溜め息を吐いてから、俺を睨むようにしつつ口を開く。
ちょっと彼女が何を言ってんのか、分かんない……え?ナギさん……?いきなり、何?
「それに昼間のクソガキはともかく、今のガキは危ないわ。目が血走ってたもの……惚れた腫れたの末に、刃傷沙汰を起こすヤツと一緒な目ね、アレは。」
いきなり口調が変わった事も含め、突然の忠告で困惑する俺を他所に、彼女は言葉を続けるのだが……
……それは、流石に聞き捨てならないな?
そもそも、ナギさんとアキトは初対面だろ!?
「ナギさんにアキトの何が分かるって言うんですか!?」
そりゃ、いきなり睨みつけたのはアキトだけどさ!?
そこまで言わなくたってよくない!?
「分かるわよ?散々、修羅場ってヤツを見てきたの、アタシ。」
「だからって、人の友達を悪く言う必要なんて無いでしょ!?」
「友達……ねぇ?」
「な、何です……?」
「アンタ、その友達の事……どれだけ知っているの?歳や家族の有無だけじゃない。さっきのガキが何を考え、どういう事に悲しみ、何を抱えてきたのか、全て知っているの?」
正直、面と向かってそう問われてしまうと、頷ける人なんて存在しないだろう。
だって、そんなの当たり前だ。
全く同じ人間が存在しない以上、その人の全てを知るなんて不可能だから……
「そんなの……そんなの分からなくたって、友達だから分かりますよ!!」
……でも、俺は……そんなナギさんの言葉に、つい反発してしまった。
ついさっき、親友の事が理解出来なかったにも関わらず、その苛立ちも含め俺は彼女へぶつけたんだ。
すると……
「へぇ……?」
……彼女はどういう訳か口角を上げ、怪しい笑みを浮かべたのだった。
「何ですか……?」
「なら、いい事を教えてあげる……アタシはね?その友達に裏切られたから、此処にいるのよ。」
「え……?」
「アタシにも、アンタみたいに友達を信じていた時期がある……でも、その友達は……会いに行ったアタシを、汚いと罵ったの。」
汚い……?どうしてそんな言葉を?
「何か、理由があったんじゃ……」
「……そうね。理由なら、あったわ。アタシが、自分を売ったから……だと思う。でも、アタシにだってそうしなきゃならなかった理由がある。アタシ自身は勿論、家族があの街で生きていく為には仕方が無かったの……」
「ナギさん……」
自分の身体をって……何かの話でよく聞くけど、こんな時俺は何を言えばいいんだよ……
「どう?これでも、他人を信じられるとアタシに言えるの?」
彼女の悲痛な表情に、何と声を掛ければいいのか迷った直後、彼女は再び俺を真っ直ぐに見据えつつ、そう問い掛けた。
この人がどんな経験をしてきたか、俺には想像もつかないけどさ……
それでも、俺は……
「はい……」
……無闇に誰かを疑うだなんて、したくはない。
例えそれで騙されたとしても、それは騙した奴個人が悪いだけであって、他の人までそうだとは限らないと思うから。
「……そう。これを見ても、まだそんな事が言えるかしら?」
そうして彼女の問いに俺が頷いてみせると、ナギさんは険しい顔で徐に上着を脱ぎ始める。
いや!?
ちょっと待って!?何でいきなり!?
「な、何してるんですか!?」
「いいから、見なさい。」
突然の事に驚き、思わず目を背けた俺へ彼女が見るように告げたので、俺は恐る恐る彼女へと視線を向けてみた。
「見ろって……え……ナギさん、それ……」
……すると、素肌を晒した筈の彼女の鎖骨辺りから二の腕にかけて、左右対称に黒色の体毛で覆われているのが確認出来た為、俺は思わず言葉を失ってしまう。
「さっきのガキの言う通りよ。アタシは、獣人……とは言っても、殆ど人に近いから他の獣人程の力も無いけどね……これでどう?まだ、他人を信じられると言えるの?」
どうやら、彼女は部屋の外で俺達の会話を聞いていたらしく、俺を試すような口ぶりでこちらへ厳しい視線を向けてきた。
マジかよ……なら、アキトは全くのデタラメを教えられた訳じゃ無かったのか……
それに確か、朝食の後でトーマとかいう人から聞いた話だと獣人は敵だって……じゃあ、ナギさんも……?
……いや、有り得ないな。
だって敵であるなら、ナギさんがわざわざこんな事をする必要がない。
本当にスパイなら、黙ってたらいいだけだ。
なのに、この人は……
「俺は、ナギさんを信じます。」
……きっと、この人は優しい人なんだろう。
だったら俺は、よく知りもしない誰かの話より、目の前のこの人こそ信用するよ。
「アンタ……馬鹿でしょ?」
「まぁ……否定はしませんけど……」
実際、俺、リク、カナデの三人は三馬鹿って言われたりもするしね。
ケイだけ成績良いのは解せないが……
「何よそれ……何で馬鹿と言われて、怒りもしないの……でも、そっか……」
馬鹿と言われたのに素直に認めたからか、俺の返答を聞いたナギさんは何処か可笑しそうに微笑むと、再び俺に視線を向けて口を開く。
「……改めて、よろしくね?ヒロト……」
「は、はい……こちらこそ、ナギさん……」
何でかは分からないけど、仲良くなれた……って事でいいんかな……?
「アタシの事は、ナギでいいわ。」
いや、年上の女性をいきなり呼び捨てはちょっと……
「流石にいきなりは……」
「アタシもアンタらとそこまで違わないから、気にする必要はないわよ?」
いや、そういうんじゃなくてさぁ……
「……まぁいいケド……それより、アンタ達……人間なのに、獣人の言葉である扶桑の言葉を何処で覚えたの?アタシは、両親が扶桑から無理矢理連れて来られたからだけど……人間で扶桑の言葉を使うだなんて、此処の連中と同じで普通じゃないわ。」
「扶桑の言葉……?」
扶桑って何だ?それに言葉?もしかして、日本語の事?
「ちょっと待って?ヒロトはもしかして、扶桑を知らないの……?」
「はい……」
言葉自体は何かで聞いた事はあるけど、意味も知らないしね。
「なら、アンタら……何処から来たの?人の街からじゃないの?」
「何処って、日本ですけど……」
あっ、しまった……この人達に日本って言って通じる訳がないや……
「……はぁ?日本って……確か、アタシらの先祖と同じ……ヒロト、アタシを揶揄ってんでしょ?」
「いや、別に揶揄っては……」
「なら、そういう事にしといたげる……」
どういう訳か日本で通じはしたものの、俺の返答に彼女は不機嫌な様子でそう呟いた。
これ、まだ揶揄ってると思われてるな……嘘なんてついてないとはいえ、何て答えりゃ良かったんだよ……
「……そうだ、ヒロト?アタシの身体を見た感想は?何か無いの?」
「か、感想って……」
「これでも商品として売ってた自慢の身体よ?何かあるでしょ?」
だが、ムスッとしていたのも束の間で、彼女は何かに気付いたように不敵な笑みを浮かべつつ、半裸のまま胸元を隠し身体をくねらせて俺にそう尋ねてくる。
俺よりナギさんの方が揶揄ってるじゃん!?
こんなの、なんて答えればいいんだ!?
その後、彼女が飽きるまで揶揄われ続けたのは、言うまでもない。
翌朝、目を覚ました俺は、既に起きていたナギさんと挨拶を交わしたのちに、ひとりで食堂へと向かった。
流石に、毎日案内してもらうのはナギさんに悪いと思ったからなのだけど……するとどういう訳か、昨日の清水同様に何人かが食堂の中ではなく入り口から中の様子を伺っており、その中にはリクやケイの姿も確認出来る。
何だ何だ?
中で何か起きてんのか?
そう思い、俺はケイ達に声を掛けようと近付くのだが……
「はぁ!?アンタ、もう一度言ってみなさいよ!!」
「うっさいんだよ!君嶋!お前には関係無いだろ!!」
……中では何故か、高橋と君嶋が言い合いをしていたのだった。
え……?
何でいきなりこんな事なってんの……?
「あ、ヒロト……おはよ……」
「おはよ……朝から何なんコレ?」
「さぁ……?僕達が来た時には、こんな状況だったから、さっぱり……」
俺に気付いたケイが声を掛けてきたのだけど、ケイも何が何やらといった表情で、周りに居る他のクラスメイトも、同様の表情をしている事から、誰も喧嘩の原因を知らないらしい。
「なんか……クラスの雰囲気悪いよね?」
「うん……私の部屋も、夜中に近くの部屋から変な声が聞こえてきてて……ちょっと気持ち悪いのよ……多分、宮坂の部屋だと思うんだけど……」
「変な声?アイツ、オタクだから何か変な事してんじゃないの?」
「ヤダー……やめてよー……」
「アンタがそんなヤツだなんて思わなかったわ!」
「お前こそ、マジでうぜぇよ!!」
「ちょっとこれ、呑気に朝ごはん食べてられる雰囲気じゃねぇな……俺、また後で来るわ。」
「僕も……」
すると、近くに居た山岸と松岡がそんな話を始めたかと思えば、益々食堂の中の二人がヒートアップしていた為、リクやケイは出直すと言って、各々一度部屋へ帰る事にしたようだ。
まぁ、俺もこんな状況じゃ呑気に食べてられないから、一度部屋へ帰るか……
「あら?ヒロト、お帰り……早かったわね?」
まだ残っていたクラスメイトに軽く声を掛けてから部屋へ戻ると、ソファの上で寛いでいたナギさんが身体を起こして、そう問い掛けてきた。
「ただいま、ナギさん……実は、ちょっと揉め事があったみたいで、まだ朝ごはんを食べられてないんだ……」
あんな状況じゃあねぇ……?
「そうなの?ふぅ〜ん……じゃあ、アタシが作ってきてあげよっか?」
「ナギさんが?」
こういうのって、専門の料理人とかが作ってそうなんだけど……
「何?ヒロトはアタシの料理じゃ不満なの?」
どうやら、言い方が不味かったらしく、俺が問い返すとナギさんは酷く気分を害したような表情で睨みつけてくる。
「い、いや違うよ!?こういうのって、作る専門の人が居るんじゃないかって思ったから……」
「……本当に?」
「本当だって!」
「なら、そういう事にしといたげる。」
あっぶねぇ!
悪気は無かったんだけど、ちょっと言い方には気を付けないとヤバいな……普段ケイ達と話してる感覚だと、誤解させかねないぞ。
……にしても、ナギさんって見た目若そうなのに、何でも出来るんだな。
「それより、ナギさんは料理も得意なんだね?昨日はお茶とかも詳しかったし……」
「まぁ、これも教養ってヤツよ。それにアタシだって、アンタらのご飯作るの手伝ってたんだからね?」
「手伝ってた?まさか、俺達の食事って……ナギさん達が?」
コックみたいな人がいる訳じゃなかったんだ……
「そうよ?アタシ含めた何人かで作ってたの。昨日の昼から、アタシはお休みだったけど……」
そうだったのかぁ……
「……で、どうすんの?」
「じゃあ……お願いします……」
「分かったわ。待ってなさい。」
俺が素直にお願いすると、彼女はソファから立ち上がり、笑みを浮かべながらそう告げて、部屋を後にした。
暫くして、トレイにパンと目玉焼きに加え、簡単なサラダを乗せてナギさんが戻ってくる。
「朝ならこんなものでしょ。」
「ありがとう、ナギさん。」
「礼はいいわよ。これも仕事だからね。」
そう言った割に、彼女は少し照れ臭そうにしつつソファに腰掛けると、思い出したかのように再び口を開いた。
「しっかし、アレね?あんな状況じゃ、ヒロトがすぐ帰ってくる訳よね……あまりにも喧しいから、アタシも気になって調理場から覗いてみたけど、まだまだ続きそうな雰囲気だったわ……」
「まだやってたんだ、アイツら……」
エスカレートする前に、どうにかした方がいいのかな……でも原因が分からないと、仲裁に入りようもないし……
……などと俺が考えた直後、不意にナギさんは険しい表情で言葉を続けた。
「……でも、アタシが食事を運ぼうとした辺りで、昨日のヒロトの友達が現れたと思ったら、男の方が急に静かになったのよね。」
「え?」
アキトが現れたらって……
「ヒロトには悪いけど……アタシが見る限り、あのガキは人を落ち着かせるような事が出来る人間じゃないし、そんな時間も無かったわ。一体何をやったのかしら?」
アキト云々より、いきなりその場が収まったって部分のが気になるね……?
後でもう一度、食堂へ行ってみようかな?
───コンコン
もしかしたら、何が起きたかの話が聞けるかもと考え、もう一度食堂もしくは付近で誰かを探そうかと考えていると、ふいに扉をノックする音が響いた。
……ん?誰か来たか。
まぁ、俺の部屋を知ってるとなると、多分中村さんだけどさ?
「ヒロトくん、いる〜……?」
「中村さん、どうしたの?」
すると、俺が出迎えようとする前に、彼女が僅かに扉から顔を覗かせてきたので、少し引っ掛かりながらも問い掛けると、中村さんはそのまま部屋へと足を踏み入れる。
「ちょっと気になる事があって……それより、ごめんね。まだ朝ごはんの途中だったんだ?」
「ああ、うん大丈夫……それより、気になる事って?」
入ってきた彼女はテーブルの上に置かれていた朝食に気付きはしたものの、立ち去る気までは無いようで、少しだけ考える素振りを見せた後に口を開いた。
「……何か皆の様子、おかしくない……?」
「おかしい?」
もしかして、食堂の件かな……?
「私が君嶋さん達と食堂でご飯を食べていたら、高橋くん達が来たんだけど……南くん達と、急にどのメイドさんがかわいいかとかで、大声で騒ぎ始めたの……そうしたら、君嶋さんが急に不機嫌になって……」
「不機嫌に?君嶋が?」
「うん……高橋くん達なら普通にあり得る会話だったのに、それを知ってるはずの君嶋さんがいきなり……私、どうしたらいいか分かんなくなっちゃって……それで……さっきまでお部屋にいたの。」
なるほど……山岸とか松岡が言ってた、雰囲気悪いってそういう事か……
「ねぇ……どうしよう、ヒロトくん……」
「うーん……」
どうしようって……言われてもなぁ……俺らが口出せる話でもないし……それに、もうアキトが解決したみたいだから……
「ヒロト、悩む必要なんかないわ。ほっとけばいいのよ。」
「えー……?流石にそれは……」
見過ごすってのも、それはそれで何か違うような……?
「ヒ、ヒロト……?」
「第一、それって多少なりと、嫉妬が混ざってたからでしょう?じゃなきゃ、そうはならないわ。」
「そう……なのかなぁ?」
「だから、部外者が口を出してもいい事なんてないから、ほっときなさい。」
なるほど、確かにナギさんの言う通りか。
ただ完全に放置よりかは、色々皆と話してみて出来る事を探るべきだろうけど。
「ね、ねぇ……ヒロトくん……随分その人と仲良くなってるみたいだけど……」
どうやら、中村さんはナギさんと俺が親密になっていると考えたらしく、こちらを伺うような調子で問い掛けてくる。
「え?そう?」
まぁ、昨日よりか自然に話せるようにはなってるが、友達って程気安くもないような気も……うーん?だとしたら、仲良いと言えなくもないのかな……?
「そりゃそうよ。何せ、昨日ヒロトはアタシの裸を見てんだから。」
そんな風に俺が考えつつ中村さんへ返した直後、ナギさんが怪しい笑みを浮かべながら俺の肩に手を置き、とんでもない事を口走った。
「は、裸!?」
「ちょっとナギさん!?」
何でそんな紛らわしい言い方してんの!?
いや、確かに半裸のナギさんは見てるけども!?
「ヒロトくん、本当なの!?」
「あ、その……」
見た事自体は本当だから、中村さんになんて言えばいいんだよ!?
まさか、話の流れでそうなった……なんて、言う訳にもいかないしさ!?
「そ、そう……なんだ……」
「中村さん……?」
「私、お部屋に戻るね……」
「う、うん……またね?」
勝ち誇ったようなナギさんとは対照的に、俯いた中村さんはそう言うと、足早に俺の部屋を後にしたのだった。
な、何だ?急に……君嶋達をどうにかしようって相談をしにきたんじゃないの?
「……流石に、これならもう来なくなるわね。せいせいするわ。何が相談よ、馬鹿馬鹿しい。」
「え?ナギさん?」
もしかして、さっきのってワザと?
何でそんな事を?
「あのクソガキ、来る度にアタシに喧嘩売ってきてたんだから、アタシにだってやり返す権利ぐらいあるってもんよ。」
え?中村さんが、ナギさんに?
どういう事だ……?
「……ヒロト、覚えておきなさい……見える事だけが、全てじゃないの。」
「う、うん……」
事態を飲み込めていない俺へ、彼女が真剣な表情でそう告げた為、俺はよく理解しないまま頷くしか無かった。
その後、改めて朝食を摂ったのちに俺は再び食堂へと向かい、居合わせたケイやリク達と合流して、暫く食堂での出来事について話をしたのだが……
……三人もナギさん同様、今は下手に手出しをせず見守るべきだとの見解らしい。
まぁ、中村さんの話通りならやれる事もないから、静観するしかないかな。
暫くケイの部屋でそうやって話をしている内に昼になったので、四人で昼食を摂り、俺はまた部屋に帰ってきたものの……以降は、ナギさんの言う通り中村さんが再び訪れる事もなく、そのまま夕食の時間を迎える。
ちなみに、これは昼食の時もだったんだけど、朝の揉め事の影響か君嶋達のグループに加え、中村さん、アキト、久我、神谷、宮坂、桜井、樋口、清水がおらず、クラスのおよそ半分が居ない所為もあって、食堂は静まり返っていた。
反面、何故か高橋らのトリオに森田が混ざっていたのは、不思議だったかな?
アイツら、いつの間に仲良くなったんだろ?
……といった感じで、何か釈然としない気持ちを抱えたまま、夕食後に蒸し風呂も済ませてから、俺がベッドで横になっていると……
───コンコン
……昨晩同様、誰かが俺の部屋を訪ねてきたのだった。
よろしければ、ご意見、ご感想をお待ちしております。
批判などでも構いません。物語をよくする為の貴重なご意見は、真摯に受け止めさせて頂きます。
ブックマークや、評価、コメントは大変励みになりますので、是非よろしくお願いします。




