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ある暗殺者の手記 ー崩壊の序曲ー  作者: 眠る人
瓦解 ーCollapseー

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手記48

※一部に流血や、暴力的、もしくは生理的嫌悪感を伴う描写がある場合がございます。

苦手な方はご注意ください

「ところで、変な事を聞いていいかな?」


「聞くって、何を?」


 話がまとまった為、六人で部屋を後にしようとした時、ふと青木くんがオレ達に視線を投げかけながら尋ねてきた。


 んー……?改まって、一体どうしたのだろう?


「桜井くんと樋口さんは、何故一緒に?付き合っている……という訳でも無いよね?」


「あ、それ俺も気になってたんだよな。昨日は聞ける状況じゃなかったし。」


「確かに、うちも気になるー!」


 青木くんがそう尋ねると、武田くんや佐藤くんまでもが興味津々といった様子で聞いてくるのだが……どう話したものかな?


 樋口さんがオレに近づいたのって、本人曰く利用するつもりだったらしいけど、この場で彼女への心象を更に悪くする事を言うのもね……


 そう頭を悩ませつつ樋口さんに視線を向けると、同時に彼女が口を開く。


「……私がストーカーに追われている事を話したら、マサトくんが匿ってくれたのよ。」


「ストーカー……」


 樋口さんの説明に、青木くんは何か考える仕草を見せたかと思えば、眉を寄せながらもそう呟いた。


 ……おや?青木くんは樋口さんのストーカーに興味があるのかな?


「ええ。最初は眠れる場所が欲しくてマサトくんに近づいたのだけど、気付いたらこうして仲良くなっていたわ。」


「なるほど……ちなみに、そのストーカーについて詳しく聞かせてもらってもいい?」


「構わないけれど、私達も誰が犯人かまでは分からないわよ?」


「うん。問題無いよ。」


 ……何だろう?何となく、青木くんは心当たりがありそうな様子にも見えるが……


 樋口さんが青木くん達に説明するのを眺めながら、徐々に確信を得るかのように、青木くんが頷き始める様を見てオレがそう考えた直後、不意に彼が口を開いた。


「やっぱりね……」


「やっぱり?青木くん、犯人に心当たりがあるの?」

 

「いや、犯人じゃなく容疑者になら……かな?」


「……容疑者?」


 どういう事だ?


「うん……樋口さんは、小川くんからDM貰ったりした覚えはある?勿論、付き合ってって意味合いでね?」


「小川くんから……?覚えていないわ……というより、そういった類いのお誘いは直接間接問わず全てお断りしていたし、何よりSNS経由だと本名なんて……」


「別に、咎めてるとかじゃないんだよ。ただ、小川くんなら腹いせって線が考えられるってだけでさ?振られたって噂になっていたからね。」


 なるほど……故に彼ら三人組は、樋口さんの冤罪には関わっていたのだと推測は出来るけど……でも、もし彼がストーカーだったとして、樋口さんを見てアレだけ怯えるものかな……?


 樋口さんも、腑に落ちないって表情をしているし……


「小川くんとはさっき一度会ってるけど、樋口さんを見て凄く怖がってたから、ちょっと考えにくいと思うよ……?」


「そっか……だとしたら、今の話は忘れてくれるかな?そもそも、証拠も無いのに疑うべきでもないからね。」


「分かった。」


 まぁ、今の話は心の隅に置いとく程度でいいだろう。


「……で、これから皆の部屋を回るんだったけれど、今何人の部屋を回ったの?」


「君嶋さん達五人と、今言った小川くん、それに森田くんに加えて青木くん達三人だから、残りは六人かな?」


 亡くなった七名と、オレや樋口さんを除けば残りはそれだけのはず。


「君嶋さん達五人……?君嶋さん達のグループに誰が居たか分かる?」


 おや?他に何か引っかかる事でもあったのかな?


「ええ。川端さん、宮本さん、石田さん、松岡さんに君嶋さんの五人よ。」


「……石田さんと松岡さん?山岸さんではなくて?」


「そう。さっき私も驚いたのだけど、こちらに来た時とは、彼女達のグループの顔触れも変わっているの。」


「え?マジ?石田はともかく、松岡って君嶋達とあんま仲良くなかったよな?」


「うん。確かそのはずだよ。」


 いやー……こういう会話は混ざるに混ざれなくて、困っちゃうよね……


 グループの面子が変わったトコもあるって話は既に聞いていたから、理解自体出来るにしても、誰が誰だか分からないからなぁ……


 アルマも内容がよく分からなくて、青木くん達と樋口さんを交互に見ながら首を傾げてるし。

 

「ちょっと、ケイ!リク!桜井くんやその子が分からなさそうだから、話戻して!」


「……あ、ごめん。そうなると残りは、山岸さん、神谷くん、久我くん、白石さん、早瀬さんに……後は誰だろ?宮坂くん、だっけ?」


「宮坂は確か、食堂で一回見たはず……アイツ、すぐに見なくなったけど何してんだろ?」


「……そうね。その六人で間違いないわ。」


「早瀬、白石の女子二人は仲良いから多分一緒に行動してるんじゃね?……そいや、ピッタリ男女三人ずつ残ってるな。」


 ……うん、これはもう下手に理解しようとするより、青木くん達に任せた方が話は早いな?


「じゃあ、まずはそちらから回るとして、君嶋さん達はどうするの?多分、彼女達の事だから話を聞いてくれなかったんでしょ?」


 分からない事には首を突っ込まないようにしようかと考えた直後、青木くんが疑問を投げ掛けてくる。


 ……まぁ、話を聞いてくれないからって、殺人犯が彷徨いている手前、放っておくワケにもいかないか。


「ええ……」


 青木くんの問いに樋口さんは苦々しい表情で呟くが、全く策が無い訳ではないので、此処はオレから話すべきだろう。


「ついでに言えば、君嶋さん達が何か言ったからか、小川くんも聞いてくれなかったけれど……これについては、オレに考えがあるよ。」


「考え?」


「うん。実のところ君嶋さん達が樋口さんを犯人扱いしている件のうち、清水さんの件についてはオレ達、森田くんから状況を聞いた後に、彼の前で清水さんの部屋を確認しているんだよ。だから、その事を彼から証言して貰えば多分……森田くんは会話がちゃんと出来たから、協力自体は大丈夫だと思う。」


 君嶋さん達があの様子ではそれでも聞いてくれるか怪しいし、中村さんや高橋くん達については証明のしようもないのは変わらないから、分の悪い賭けではあるけどね。


 また樋口さんが演技したのだと言われかねないもの。


「……なるほど。」


「そもそもの話、樋口さんは清水さんが首謀者だと知らなかった訳だし……中村さんや高橋くん達に関しても、オレはずっと樋口さんと居たから、間違いなくやってないって言い切れるよ……証拠は無いけどさ。」


 でもまぁ、一箇所に集まれなかったとしても、他のクラスメイトに樋口さんの悪評を広める事だけ止めて貰えば、こちらとしても構わないけどね。


「流石の僕でも、そこまでは別に疑ってないよ……じゃあ、最初にまだ会ってない六人、次に森田くん、君嶋さん達、小川くんの順に回ろうか。君嶋さん達を説得出来ないと、小川くんは説得出来ないだろうしね。」


「うん。そうし…」


ーーーイヤダ!!シニタクナイ!!!


 青木くんへ同意を返そうとした直後、突然悲鳴にも似た叫び声が聞こえた為、オレは言葉を切って思わず辺りを見回す。


「……桜井くん?どうしたの?」


「いや……ちょっと……」


 すると、青木くんが訝しげな表情で尋ねてくるのだが、その隣で佐藤くんがオレ同様に、青い顔で辺りを確認するようにキョロキョロとしていた。


「カナデもどしたん?」


「リ、リク達は聞こえなかったの……?今、誰かが死にたくないって……」


「えー?俺は聞こえなかったけどなー……」


 この様子では、佐藤くんにも今の絶叫が聞こえていたらしい。


 そんな武田くん達のやり取りを見たからか、樋口さんは心配そうな表情でオレの顔を覗きこむ。


「マサトくん、もしかしてまた聞こえたの?」


「うん……」


「今回は佐藤くんにも聞こえたようだから、気のせいでは片付けられないわね……私が見たモノと同じような現象かもしれないし……」


 ……あー、樋口さんが魔法陣に触った時に見たっていうアレか。


 確か、人が死ぬ瞬間だけを圧縮して延々見せられたってヤツ……聞こえたのが助けてとか、死にたくないだったから、あり得るわ。


「カナデと桜井くんには、何かが聞こえていたって事……?」


「マジかよ……」


 いや?だとしたら、樋口さんに聞こえていない理由が……まぁ、考えても仕方ないな。


 今はそれより、三人の不安の色が濃くなっているから、此処は因果の力やら、樋口さんの見たものやらの話をして、多少でも紛らわせないと。

よろしければ、ご意見、ご感想をお待ちしております。

批判などでも構いません。物語をよくする為の貴重なご意見は、真摯に受け止めさせて頂きます。


ブックマークや、評価、コメントは大変励みになりますので、是非よろしくお願いします。


次回更新予定は 4月19日(日)18時となります

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