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ある暗殺者の手記 ー崩壊の序曲ー  作者: 眠る人
瓦解 ーCollapseー

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手記47

※一部に流血や、暴力的、もしくは生理的嫌悪感を伴う描写がある場合がございます。

苦手な方はご注意ください

「カナデ?どうしたの……って、キミ達一体何を……?」


「カナデもケイもどしたん?桜井が来たって聞こえたけど……ちょ!オマエら……!!」


 固まっている佐藤くんの後ろから青木くんが顔を覗かせたのだが、こちらを見るなり同じように困惑した表情で固まると、更にその後ろから武田くんが姿を見せてくるなり、オレ達三人が手を繋いでいるのを見て腹を抱えて爆笑し始める。


 そんな混迷した状況に、アルマは不思議そうに三人とオレ達へ交互に視線を向けてきた。


 ……って、何で樋口さんは平気な顔してるのよ?


 オレはめちゃくちゃ恥ずかしいのに!?


「ヤバい!しぬ……!!」


「リク、うるさい!ちょっと笑いすぎ!……何でそんな状況なのかは敢えて聞かないけれど、改めてどうしたの?」


 手を繋いだままでは説明もしにくいので、オレはアルマと繋いでいた手を離してから彼らと向かいあい、理由を話す事にした。


 ……それはそれとして、聞かないでくれてありがとう青木くん!!


「実は、三人に協力をお願いしたくて来たんだ。」


「僕達に?」

「ウチらに?」


「うん……もしかしたら、三人も知っているかもしれないけれど、実は昨晩中村さん、高橋くん、南くんの三人が殺されたんだ……」


「……その三人が?」


「……は?マジか……」


「ね、ねぇ、それ本当?」


 アレ?知らないとなると、此処にはまだ君嶋さん達は来ていないのかな?


 ……でも、だとしたら何で青木くんは樋口さんを見てるんだ?


 絶句する武田くんや佐藤くんを尻目に、何故か青木くんだけ樋口さんを睨むようにして見たので、不思議に思いつつもオレは言葉を続ける。


「そう。昨晩、中村さんの部屋にたどり着いた時、既に犯人の姿が無かったけど、オレ達は二人で彼女の遺体を見てるから間違いないよ……ただ、高橋くん達の件に関しては、さっき知ったから状況までは……」


「ちょっといいかな?それよりもまず、どうして桜井くん達が中村さんの部屋に?」


 そこを青木くんが確認するのも尤もだ。きちんと最初から説明していなかったよ……


「えっと、昨晩樋口さんと話している時に、ガラスの割れる音が聞こえたから、二人で現場を探していたんだよ。その時に……」


「なるほどね……それで、僕達はどうしたら?」


 ……しまった。真っ先に話すべきであるはずの、本題を忘れてるじゃん!?


「あ……ごめん。皆を襲っている奴が居るみたいだから、全員の安全の為にも一箇所に集まるべきじゃないかって思うんだ。だから……三人の力を貸して欲しい。オレ達じゃ、話すら聞いて貰えない事もあるから……」


「私からも、お願いするわ……」


 この三人は絶対に違うと予想はしていたけれど、アルマもいつも通りだから間違いなく犯人ではないな。


 だとしたら、やはりこの三人の力を借りなければ。


 そう考えながら、オレと樋口さんは頭を下げるのだが、直後青木くんが何かを考える素振りを見せたかと思うと、険しい表情で口を開いた。


「……よく分からないね。何でキミ達がそこまでするの?」


「おい、ケイ!?何言ってんだよ!?此処は桜井達と協力する場面だろ!?」


「ちょっとリクは黙ってて……桜井くん、悪いけど理由を聞かない事には、納得も協力も出来ないよ?」


「理由なんて別にいいだろ!?」


「だーかーらー……リクはちょっと黙ってなよ!」


 ……理由か。


 青木くんの言う通りだな。


 いきなり現れて、状況を伝えただけで理由も話さず協力しろってのは虫がいいというか、自分が同じ立場なら懐疑的に見るだろうしね。


 何よりもまず、殆ど皆と絡んで来なかったオレが言ってるのだから、胡散臭く感じるのは道理だ。


 なら、此処は余計な事は言わずに……


「……見過ごせないから、だよ。」


「見過ごせない?」


「うん。自分にほんの少しでもやれる事があるのに、やらないで見過ごすなんて、オレには出来ない。見ないフリも、したくない。それだけなんだ。」


 ……自分がどういう奴だったかを思い出してしまったからには、やるしかない。


 そんな素直な気持ちで青木くんへ告げると、彼は少し悩む素振りを見せつつ、口を開く。


「……偽善だね。」


「そう、かもね。」


 だとしても、オレは卑怯者にはなりたくない。


 例え偽善だと言われようが、自分だけが助かればいいなんて、とてもじゃないけど考えられないし、考えたくもないだけだ。


「おい!ケイ!!さっきからいい加減にしろよ!?……なぁ、桜井?オレは桜井に協力するぞ!ケイやカナデが何て言おうともな!」


「いや、リク?こればっかは、ウチもケイが間違ってると思うから、ウチも桜井くんに協力するよ?」


「ありがとう、佐藤くん、武田くん……」


 青木くんの協力が得られないのは残念だけど、二人が協力してくれるのはありがたい。


「……あのさぁ?皆で寄って集って、僕を悪者にしないでくれない?僕は別に、一切協力しないとは言ってないんだけど?確かに理由を聞かないと、とは言ったけどね?」


「へ?」


「リクとカナデがそんなんだから、僕が止めてるだけだろ!?……第一、あのヒロトと仲良くしていた桜井くんだよ?僕は、最初から疑ってなんかないって。」


「青木くん……」


「なら最初からそう言え!!分かりにくいんだよ!」


「二人はもうちょっと考えなよ!」


「まぁまぁ、リクもケイも落ち着いて……ただ、ケイはケイで言い方が良くないと、ウチも思うな。」


 なるほど……こちらを試したっていうより、多分青木くんは二人のブレーキ役を買って出たから、厳しい事を言っていたのね。


 何日か前に初めて話した時と大分印象が違うけれど、恐らくはこれが三人の本来の姿なのだろうな。


「……そうだね。カナデの言う通り、僕の言い方が悪かったと思う。そこはごめん……でも勘違いしないで欲しいけれど、僕が信じるのは桜井くんだけだ。樋口さんじゃない。」


「……分かっているわ。」


 え?樋口さんじゃ、ない……?青木くん、いきなりどうしたっていうんだよ?


 佐藤くんや武田くんだけでなく、樋口さんまで苦い顔をしているし……一体何なんだよ、この空気は……?


「だろうね。中村さんだけでなく、高橋くんや南くんまで殺されたとなると、皆も樋口さんがやったって考える筈だ。僕だって、証拠も無しに疑いたくはないさ……でも、桜井くんと一緒に行動していたとしても、こればっかりはね……だから、正直言えば僕達が協力しても彼女が居る限り難しいと思う。」


「そんな……」


 樋口さんに、そんな事が出来るわけないのに……青木くんはさっきからどうしてそんな事ばかり言うの?


「それでも、私だってマサトくんと同じで、目の前で起きている事を見過ごせないわ。」


「……そっか。分かったよ。桜井くんに免じて、僕も樋口さんを信じてみる。カナデやリクもそれでいいね?」


「いや、渋ってたのケイだけでしょ……」


「そうだそうだ!!」


「何で二人はもうソッチ側なんだよ……これじゃ、僕が一人で馬鹿みたいじゃないか……」


 青木くんは何処か疲れたような表情でボヤいた直後、気を取り直したかのように樋口さんへ視線を向け、口を開いた。


「ただ、高橋くん達三人が殺された事を黙ったまま説得したら、確実にトラブルになるから、皆にも言うけれど……いいよね?」


「……ええ。」


「ねぇ、さっきから何の話?それって、どういう意味なの……?」


 トラブル?先程から全く話が見えないのだが……中村さんはいじめ冤罪に関わってるらしいのでまだ分かるが、男子と仲良くして来なかった樋口さんと、その三人に何の関係が……?


「ごめんね、桜井くん。キミには何の話か分からなかったみたいだから話すけれど、高橋くん、南くん、小川くんの三人は樋口さんと因縁があるんだよ……中村さんも、勿論ね。」


「という事は……」


 因縁って……まさか、その男子グループもいじめ冤罪に関わっていたって事?


「うん。そのうち小川くんを除いた三人が狙われたとなれば……もう分かるよね?」


 マジか……思っていた以上に、事態は深刻だったのかよ……つまり、小川くんがあそこまで過剰な反応をしたのも、その所為?


 それに、オレから見たら柴田の一件で孤立した三人が狙われてしまっただけでも、クラスメイト達の視点だと樋口さんが一番怪しく見えてしまうと……こうなっては、君嶋さん達云々なんて殆ど関係無いな……


 そりゃ、君嶋さんがオレまで共犯扱いする訳だ……だから、樋口さんも武田くん達の協力が必要だと判断したのね。


「……こんな事言いたくはないけどさぁ、樋口さん……桜井くんにも黙ってるのは、ズルいよ?」


「それは……いえ、ごめんなさい……」


 青木くんの言葉に、樋口さんは申し訳なさそうに首を横へ振ってから顔を伏せたので、黙っていられなくなったオレは思わず彼へ言葉を返す。


「青木くん、それは違うよ。樋口さん自身、君嶋さん達に言われてついさっき初めて知った事も多いんだ。清水さんが発端だった事や、中村さんが共犯だった事とかさ……だから、責めないであげて。」


 そもそもが、樋口さんの中の認識と現実との乖離が酷いから、誰が分かるんだこんな状況って話よ。


 それに黙っていたというより、高橋くんや南くん、小川くんに関しては、彼女からすれば男子が絡んだ理由が分からないから、話すに話せなかっただけだと思う。


 ……ってか、オレが逆の立場でも誤解が怖くて言えるかどうか怪しい上に、樋口さんは彼らが冤罪事件に関わっていたと認知しているかすら、微妙なのでは?


 その男子三人については、きっと中村さんとかの擬装いじめの話であって、その後の樋口さん自身への嫌がらせの部分じゃないでしょ?


 だって、オレが見た範囲でも直接的な事は君嶋さん達のみで、他クラスの連中とかクラスメイトとかは噂や陰口をたたく事こそすれど、転ばせたり等等まではしていない訳だし。


「そっか……僕こそ、ごめん。言い過ぎた……今ので分かったよ。ちゃんと、何があったかを樋口さんなりに桜井くんへ話してたんだね。」


「最初は嘘つかれたけどね。いじめの主犯だったって……でも、生真面目な樋口さんにいじめなんて出来ない事ぐらい、見てたら分かるから。」


 どうも樋口さんは、オレと同じく自分の所為だと抱え込む傾向にあるみたいだから、嘘についてはこちらから見抜かないと、多分黙ったままだっただろうけどな!


「……桜井くん。キミ、雰囲気がどことなくヒロトと似てるよ。」


「そ、そう……?」


 そういや、ナギさんもそんな事言ってたっけ……


 でも、オレは近藤くんみたいな陽キャじゃないよ?


「もっと早くに知りたかったかな……今なら、僕にもヒロトの気持ちが分かるのに……」


「そうだな……」


「うん……」


 青木くんの呟きに、武田くんと佐藤くんも悲しそうな表情でやや俯いた直後、青木くんはかぶりを振ってから再び口を開く。


「……こうやってしんみりしてもしょうがないね。さぁ、皆の所へ行こうか。僕達も知ってしまったからには、放ってなんかおけないし。」


よろしければ、ご意見、ご感想をお待ちしております。

批判などでも構いません。物語をよくする為の貴重なご意見は、真摯に受け止めさせて頂きます。


ブックマークや、評価、コメントは大変励みになりますので、是非よろしくお願いします。


次回更新予定は 4月12日(日)18時となります

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