chap6-2
日刊にのっててビビってはいる、が
媚びないっ(媚びるほどの実力もない
→
問題は、そこではなかった。
圧倒的な威圧感を放つ白髪の女性でもない。異質な空気を漂わせる盗賊らしき格好の男性でもない。存在感が根本から隔絶している銀髪の女性でもない。
問題は、そこではなかった。
一人の、少女だ。
貴族なのか見たこともない豪奢なドレスを身に纏った、極普通の少女。
その、一つの行動。
その、一つの意識。
空間ごと張り裂けそうな一触即発の状況に、自然体で、それどころか不敵な笑みさえ浮かべてその只中を歩いていく。
信じられることではない。
考えられることではない。
確かに、そもそもが異質ではある。
冒険者の集うギルドに、貴族の少女。この構図はなかなかありえるものではない。ギルドの規則によって多少の規制はあっても、だからといって人の行為に制限をつけることはできない。単純にいえば、危険である。
それゆえに、少女の存在は異質ではある。
だが、それだけでは理由にはならない。
そもそも、貴族であろうが、勇者であろうが、英雄であろうが。
例えるなら、一億の軍勢の中に、何も考えずに単騎で飛び込む存在などありえないのだ。
貴族であっても、勇者であっても、英雄であっても。
決して面白がってそこに飛び込む者はありえない。
ならばこそ、少女の行動には一切の説明がつかなのだ。
鈍感など冗談でしかない。果敢など冗談にもならない。何の問題もないから、となればそれはただの冗談だ。
少女が、問題となる理由。
―――少女は一体、何がしたいのか?
―――少女は一体、何を考えているのか?
―――少女は一体、何者なのだろうか?
―――貴族でもない、勇者でもない、英雄でもない。
―――では、そもそも何者でもないのだろうか?
―――ふむ、そういうものか。いや、そういうものだろう。では、聞くのだが
―――君は一体、何なのだろう?
『冒険者の女性』side out
「えへ、えへ、えへえへへへへへへへへえへへへへへへへへへへへへへ」
込み上げる吐き気を抑えることは出来るけど、腹の底から溢れる笑いを抑えることが出来ない。
緩む涙腺を抑えることは出来るけど、笑みを作る表情を抑えることができない。
「えへ、えへへへへへへへ、えへへへへへへへへへへへッ」
「ど、どうしたんだ?」
「ど、どうしたんだって、どうもこうもないでしょ。えへへへへへ。『どうしたんだ?』だって? えへへへ、どうもしてないし、どうもしてるし、どうかしてるんだよ。じゃなかったら突然笑ったりしないでしょ?
そもそも僕は笑ってるの? 何故笑ってるの? 表面上は確かに笑ってるかもしれないけどさ、本当は心の奥底で泣いているかもしれないでしょ? えへへ、馬鹿馬鹿しい、実に馬鹿馬鹿しいよ。
何言ってるのかな? ねぇ、もう一度言ってみてよ。何て言ったっけ? 『君は一体、何なのだろう?』だっけ? 知らないよ、えへへへへへ、知ってるよ。
―――僕は、小石だ」
突然笑いだして、仰け反ったり、大声を出したり、支離滅裂なことを言った所為か、周囲の人々は立ち止まり、こちらに視線を向けている。
目の前の赤い女性も、何が起こったのか把握できないのか、口を開けて呆然としている。
「おかしいよ、みんな。えへ、なんでただの小石の僕を見捨ててくれないのかな。日本にいた時だって、結局二人の親友がいてしまった。絆があった。こっちの世界でも、ご丁寧に物語が用意されていて、いろんな登場人物がいて、関りをもってしまった。えへへ、基本的な生活を送るために、仕方なくなんとか知り合いレベルのまま、いつでも切り捨てられるようにしてるのに。なんで、こうして僕の内面に触れようとする輩があらわれる」
割れるように、頭が痛い。
違う。こんなことを言いたいんじゃない。
「違う、違う。別にいいんだ。切り捨てるだなんて、おこがましいにもほどがある。えへ、憐れんでくれているんだ。皆、僕のことを。うん、いや、わかっている。そもそも憐れんでいるわけでもない。えへ、普通だ。みんな普通にしている。そりゃ、ヒルデが勝手にこっちを切り捨てたのにはムカッと来たことは認めるよ」
こういう時は、いつも先生がいてくれた。大嫌い/大好きな先生。でも、今はいない。僕を止めてくれる人はいない。
――――。
ここは僕の所属する社会ではない。ならば、どういう態度をとっても問題はないだろう。
そもそも、『もう我慢する必要はないのだ』。
「うん。えへ、えへへ。何だろうね、うん。どうしたんだろうね、僕は。僕にもわからないよ。ああ、うん。わかった。わかったよ。認めるよ。折角、強大な力を、僕は持っているんだからさ、どうせだからね。-――うん。良い契機をもらったと思って、ここに宣言するよ」
ある日、ミームと会話した時のように―――。
『
そう、だから、僕が生きる理由はすでに決まっている。
「ねぇ、ミーム。僕が生きる理由はね」
「はい」
「僕には生きる理由なんて存在しない。そもそも、僕は生きてはいないんだ」
おそらく、死を回避するなら、この回答は大間違いだ。
理不尽には理由が存在しないものであろうから。『カゲビト』とはそういった存在でありそうだから。
しかし、小利口に生きる理由なんて僕には存在しない。
目線を逸らして生きるように。理不尽を受けずに済むように。ユーリ達の物語に深く関わらないように。カミーユの世界に囚われ続けない様に。ミームの存在を至極簡単に受け入れるように。
自分自身に執着しない様に。
それは、つまり――――――。』
「―――しあわせになるためでなく、川の水底に沈む小石の神話として」
勇者は悪しきドラゴンを倒し、平和と姫を手に入れ。
翁は美しき姫と共に過ごし、そして別れを経験し。
少年は葛藤と苦難の末に、世界を救い。
そして小石は―――。
美しく、儚く、寂しく、侘しく。
誰も知らない神話こそが、僕自身が求め、僕自身となるもの。
「アオキ・シズキ。二十歳。病名は『乖離性認識障害』。この場合、乖離していて、且つ認識できないのは、社会と自己。現実と自己。世界と自己。それは、所属という意識の欠如」
アルファに命じる。
「僕はどこからも来ず、僕は何者でもなく、僕はどこへも行けない」
赤く光りを放ち、炎の矢が至極当たり前のように冒険者の女性を貫く。
ただ、呆然と、わけがわからないといった風に崩れる女性。
果てしもない、愉悦が身の内を占める。
「だから、神話を始めてみるよ。無理やりね」
ばりばりのフィクションなので、もちろん乖離性認識障害なんて存在しません(解離の字であればあるっぽいですが)
相変わらずの風呂敷の広げ方。それはいいのだが文章が薄くなってしまう。
第二のプロローグ。といったところでしょうか。
後日細かい部分を修正を行う予定です。(大筋は変わらないですが)




