chap5-6
「エメロードさんの言葉を借りれば、これは彼らの物語なのかな?」
「あるいは、そうかもしれませんね」
順調に奥に行っているであろうユーリ達を見送り、僕とミームは迷宮入り口にて作戦会議を行っている。
「変に介入しないほうが良いような気もするけど」
「何故ですか?」
至極、不思議そうな顔をしてミームは僕に訪ねてくる。
何故か? 言われてみればその通りである。
「運命、なんてものは基本的には存在しません。そもそも、今回の物事においては、運命という言葉を使うことは語弊があると言えるでしょう」
「その通りだ。運命、ではなく、そうだなぁ、適材適所だった、とか?」
良い言葉が浮かばない。
「そうですね、もっと言えば、偶然、あるいは必然的にユーリさん達はこの迷宮に呼ばれ、やってきた、というだけのことです。運命、なんて大それたものではありません」
「運命、って言っちゃうと過去から未来まで確定しちゃっているみたいだもんね」
「そうです。シズキ様がおそらく危惧しているであろう、運命への介入に因る物語の破綻、なんてものは起こりえません。物語は、本の中にしか存在していないのですから」
あくまで平静なまま、ミームは僕の心の内を語り終える。
若干、浪漫のない話に眉を顰めてしまうが、まぁそれもしょうがない話だ。
ミームが迷宮へと足を進め、追いかけるように、僕も後に続く。
迷宮の中は以外と清潔な印象を受けた。どこかの神殿のような雰囲気さえ感じられる、妙に光沢のある青い石材で造られている。それ自体が発光性があるのか、松明などの光がなくても中は明るい。
ツルハシで掘りましたっ!! みたいなテンプレな洞窟をイメージしていた分、少しガッカリ感がある。
まぁ、あくまで生徒用なのだろうと自分を納得させつつ、ユーリ達と出会わないよう、前方に注意しながら歩みを進めていく。
「ところで、実際、どうする? ユーリ達と接触する?」
「まぁ、あのハイエルフも言っていたように、超越者が介入することは、この世界のためになりません。遠目から見守り、もし危険があれば助けるくらいに留めましょう」
「そのさ、ちょくちょく会話に出てるけど、超越者って、何?」
なんとなく、語感で伝わるが。
「先ほどの話を引っ張るならば、運命や物語を指先一つで壊してしまう、そんな存在ですよ。下はあのハイエルフや白竜から、最上位になればシズキ様をこの世界に送った存在などが一種の超越者と考えても良いでしょう」
「物騒な世界すぎるな」
「そのために、私達のような存在がいるのです。実際、推論ですが、私達は星の作ったワクチンではないかと、たまに考えます」
「ワクチン?」
「ええ、星を一個の生命体として考えたとき、体内に異常が起きた場合における、ワクチンです。シズキ様のいた世界には、魔力といったものが存在しませんでしたね?」
「うん、そうだね」
「こちらの世界には、全能なる魔力が存在します。それはきっと、星という単位にも影響していると考えれば、星に意思や思惑が存在するのか。『星を生命体と考えれば、その方向性はどこに向かっているのか』ということが重要になってきます。種を残すことか、自己の保全なのかということが」
「難しい話になってきた」
「まぁ、それなりに長い道のりです。よろしければ、お付き合いください」
ミームがソッと手を差し出してくる。僕はそれを握り、同じ歩調で歩み始める。
モンスターも出ない、つまらない迷宮を、僕とミームは親子のように進んでいく。




