chap5-5
ダンジョン、いわゆる迷宮は一般的には魔物が作り上げたものである。人間が森を切り倒し、荒野を均し、家を建て街を造るように、魔物は山であったり、或いは岩を掘り地下へとその住居を作っていく。
魔物のなんらかの習性なのか、掘り進められたその先には一般的に高品質の鉱物やアーティファクトが存在している。その魔力に惹かれ魔物は迷宮を深めていくらしい。
一般的に冒険者は二種類ある。
街の付近に存在する魔物を狩り、その安全性を確保する対価として報酬を得、あるいは森や高地に存在する魔物の素材を売り生計を立てるもの。
迷宮にもぐり、同じく魔物を素材として売り、さらに希少な鉱物やアーティファクトを売って生計を立てるもの。
そして、学院保有の迷宮は、もちろん後者を将来的に選択する者のために存在している。
初心者用は、地下十階まで存在し、迷宮に潜る時の注意点や、罠の解説、鉱物の発見と採取の方法などのわかりやすい説明書付き。さらに迷宮内での戦闘方法を教授してくれる優しい木偶人形が存在している。一つのフロアに一体の擬似モンスターがある時はピコピコハンマーであったり、ペーパーナイフであったりで攻撃してくる。
中級者用は二つある。一つは初心者用から一歩進んだ地下二十五階。ここから解説などはなくなるが、擬似モンスターであることは変わりない。少しだけそれも強くなっているようだ。
もう一つが今回の依頼である。
ところで、上級者用になると、急に話が変わってくる。強固な結界によって封印された扉の奥は、実際に本物の魔物がそこを掘り進め、現在の正確な最下層は不明。教師の厳重な選定を抜けたものだけが挑めるが、その迷宮内の生死には関与せず。十階ごとに聖域が存在し、そこにある転移装置によって学院へと戻ることができる。ところで何故か高等部になると、どこからか教師の認可を取らずに上級者用迷宮に入る裏技の噂が流れ出し、毎年高等部生徒による度胸試しが行われたりしている。
さて、中級者用迷宮の二つ目である。
「本来の最下層は地下四十階。魔物は配置した魔石による自然発生にまかせているため、蝙蝠やネズミが巨大化したものが多く、その内容としてダンジョンに長期間いる場合に対する対処を学ばせる目的があるが、そういった様々な理由からかなり人気がない、と」
「他が学院内にあるのに、ここだけ何故か学院の裏手にあるというのも理由の一つなのでしょう」
「不良がたむろしていそうだ―――っと」
話し声が聞こえる。思わず建物の影に隠れてしまった。
「本当に不良かな?」
「あるいは恋人同士の逢瀬かもしれません」
ソッと首だけを出して様子を見てみる。
そして、驚く。
「白いローブに金の刺繍が入った二人は、特殊魔法科の生徒。赤色の軍服に近いものを着ている方は、騎士科の生徒ですね」
―――何かが呼んでいる気がするんですっ
―――だめだよアンジェ、ここは最近立ち入り禁止になったんだよっ!! それに、精霊もざわついているし……
―――それでも、行かなきゃいけないような気がして
―――私も、基本的には反対です
―――セリカ、あなたも……
―――ですが、もしアンジェ様が絶対に行きたいというのでしたら、私もご一緒いたします。そして、何があっても守りきって見せましょう
―――ありがとうセリカッ!!
―――はぁ、セリカはいつも格好良すぎるよ。……僕だってアンジェには格好良いところ見せたいのに………
―――どうしたの? ユーリ?
―――な、なんでも無いよっ!! ほら、行くんでしょ? さぁ、行こう!!
―――フフ、ユーリはいつもどおり変だわ
「シズキ様が最初に出会った方たちですね」
「そういや、学院だもんね。忘れてたよ」
アンジェ、セリカ、そしてユーリがいたのだ。
30話やほー




