表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男だらけの世界の方が、何故か女性にモテるんだけど?  作者: イノセス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
95/100

95話~その結末をお見せしよう~

※他者視点※

「ふぅ。ほんと、手を焼いたぜ」


 一星は、漸く静かになった会議場の様子を見て、一息つく。

 それを、椅子に座らされた鞍瀬が見上げて来る。乱れた髪に、しかし、余裕の表情を浮かべて一星を見上げていた。

 まだ自分が優位に立っていると思っているのか?こいつは。

 全く分かってないと、一星は鞍瀬を睨みつける。


「何を笑ってんだよ、お前!自分のしでかした事の大きさが、分かってないのか!?官邸に乗り込んで、総理を危険な目に遭わせたんだぞ!?これは重大な反逆行為だ!」


 一星が(いきどお)ると、鞍瀬は「ふっ」と鼻で笑う。

 

「何を言うかと思えば、今更。話し合いの約束を違えたのはそちらだぞ?」

「なにっ!?」


 こいつ、管理局という強力な組織の頂点に居続けたから、傲慢になっていやがる。

 一星は現実を分からせる為に、真っすぐ指を向ける。

 事実を、突きつける。

 

「良いか、鞍瀬。長官だから許されるとでも思っているのかもしれないけどな、考えが甘いぞ!直ぐにもお前の任は解かれ、そのまま実刑になるんだ!お前に加担した者達も全員、重い罪に問われるぞ!悪党に成り下がったんだよ、お前は!」


 具体的な刑を示して、叩きのめしてやる。

 そう思って一星は、目を輝かせて鞍瀬を見る。いつも上からな彼の絶望する顔を見ようと、鼻息を荒くする。

 だが、鞍瀬は怯えることはなかった。ただ一つ、頷いた。

 

「既に覚悟は出来ている。ここに来る前からな」


 まるで全てを見透かすように、鞍瀬は椅子の背に体を預け、一星に嘲笑を向ける。


「君はどうなのだ?一星秘書官。国民を欺き続けた大罪に、向き合う覚悟は出来ているか?」

「大罪だと!?」


 一星の中で怒りが込み上げ、声が震える。足音荒く、余裕の表情を見せる鞍瀬に詰め寄る。


「何が大罪だ!何が覚悟だ!デタラメな事を言って、俺を、俺達を騙そうって魂胆か!?浅はかなんだよ、お前は!俺は正しい。絶対的に正しい!俺が作り上げた女神プロジェクトは、完ぺきな計画なんだよ!」


 そうさ。誰が見ても完璧な計画に仕上げた。中国の天女大躍進政策や、アメリカのエンジェルウィンクを参考にし、あれらの弱点を補強した完全版。ただ女性の数を減らすだけではなく、女性の露出頻度を増やし、男達の不満を解消する。そうすることで、更に労働生産性を向上させる計画なんだ。

 大国では後手後手に回ってしまった男性達の不満を、先んじて潰したこの計画は、称賛されることはあっても、決して非難されるものでは無い。


 怒りで顔を赤くしていた一星は、ふっと息を吐く。その口に、笑みを携える。

 そうさ。これで正しい。これだけが正解。それは、今まで成功してきた国策が証明している。俺が歩いているこの道こそが正道。

 だから、 


「無駄だよ、鞍瀬。お前が誰の手先かは知らないけれど、俺と母さんの政権は揺るがない。お前がどんなに揺さぶりを掛けようと、僕の計画は実行される!そして、日本は更に強くなる!そう、何れは大国をも抜き去って、この世界のトップに君臨する!熱い!熱い展開だぜ!」


 一星は両手を広げ、熱弁する。もう揺るがないと、目に宿る炎がメラメラと燃える。

 それを、鞍瀬が笑う。

 大爆笑。


「ふははははっ!まだそのような夢を見るか!」

「なんだとっ!」


 一星は再び顔を赤らめる。自分達の正道を笑われ、憤慨する。そして、嘲笑う鞍瀬の胸倉を掴む。重ねて来た全てを笑い飛ばす目の前の男に、拳を構える。

 それでも、鞍瀬は笑みを消さない。威圧的な笑みを浮かべ、一星を睨み上げる。


「何時かは、やがて何時かはと。そんなありもしない幻想を追い求め、一体どれ程の犠牲を強いてきた?」

「犠牲?おいおい。何を言っているんだ、鞍瀬元長官」


 今度は一星が苦笑を浮かべる。

 とうとうおかしなことを言い出した嘗ての仲間を、蔑む様に見下ろす。


「それこそ今更の事だろ?犠牲無くして、偉業は成せない!」


 いつの世もそうだ。何の犠牲も無く成功するなんて事は出来る筈もなく、何かしらの代償を払ってこそ大きな成果を得ることが出来る。

 それがこの世界。それが生きるって事だ。


「そんな当たり前の事まで分からなくなっちまったのか?鞍瀬!管理局の長官だった男の言葉がそれなんて…情けなくて涙が出てくるぞ、俺は!”たった”数百万人が犠牲になるだけで、1億を超える日本国民全員がハッピーになるんだ!素晴らしい事じゃないか!その犠牲だって、国家の為、そして女性の為に死ねるんだ。それこそが男の本望って奴だぜ!」


 一星が自信満々で放った言葉に、視線が集まる。鞍瀬の後ろで捕らえられた局員達は、顔を青くして一星を見る。

 そして、その長である鞍瀬は顔を伏せる。やれやれと大きく首を振って、再び顔を上げた。

 そこには、何の色も映さない瞳があった。


「では、その結末をお見せしよう。君が得意げに語った道の、末路だ」


 鞍瀬がパチンッと、後ろに回された手で指を鳴らすと、会議室のモニターが切り替わる。映像…テレビ中継の映像が流れた。白い壁。その壁の上には、真っ赤な国旗の中に黄色い星が躍っていた。 

 この国旗は、中国?中国北京市の特区前。その壁際で、黒い波が発生していた。

 …違う。波なんかじゃない。これ全部、中国の男性達だ。


 その波は、まるで壁に打ち付けるかのように押し寄せている。白い壁。その前に並ぶ緑色の戦車群が、黒い波の中に呑み込まれていくところだった。

 怒りに突き動かされた彼らは、銃弾が飛び交おうが止まる様子はない。前の人が倒れても、次から次へと黒い波がそれを上回り、壁へと押し寄せていた。

 怒りの津波。

 

 最近、きな臭いと言われていた中国だが、まさか暴動がここまで激化しているなんて…。

 映像に釘付けとなり、掴んでいた鞍瀬を放す一星。それに、鞍瀬が再び、「ふっ」と短い嘲笑を漏らす。


「己の道が正道と信じ、崩れぬと(おご)り、疑わず、(かえり)みず!その結果がこれだ!」


 鞍瀬が叫ぶと同時、テレビの向こう側で大きな爆発音が聞こえる。見ると、白かった壁の一部からモクモクと黒い煙が立ち上っていた。

 テロだ。群衆に紛れたテロリストが、特区の壁を攻撃したんだ。


「…違う」


 映像を観ながら、一星が零す。


「違う!これは中国の映像だ!日本とは全然違う!」

「何が違う!?何故違う?」


 問うて、また指を鳴らす鞍瀬。

 すると、映像が切り替わる。そこに映るのは、また白い壁の映像。

 でもこれは、中国じゃない。良く見知った風景。

 日本の、特区映像だった。


「違わぬさ!何も!」


 鞍瀬の言う通りだった。そこには、中国で見たのと同じ風景が広がっていた。白い壁に、黒い波が近づいている。後から後から、より濃くなる黒い波が壁へと押し寄せていた。

 一星にはそれが、崩壊の前兆に見えてならなかった。


「なんで、こんな事に…」

「分からぬか?これが人だ。人を内から動かす、感情だ」


 鞍瀬の目に、光が戻る。

 どす黒い、憎しみの光が。


「人とは、感情の生き物なのだよ。盤面の駒の様に、思い描いた通りに動いたりはしない。怒り、憎しみ、羨む。そうして抑圧された感情は、いずれ()ぜる。そうとも知らず、ただ踏みにじり続けたのは君達だ」

「ぐっ…」


 感情。

 そんなあやふやな物で、俺の計画が崩れるなんて!


「止めろ!今すぐ暴徒共を止めろ!お前達は何をやっている!」


 一星が隊員を怒鳴りつけると、迷彩服を着た指揮官らしき人が首を振る。


「守衛に着いた部隊との連絡が途絶えました。恐らく、女性の声にやられたものと…」

「なら増援を送れ!習志野で待機している部隊を出動させろ!」

「だっ、第一まで出動を?」

「そうだ!何としてでも止めろ!止めるんだ!」


 顔を真っ赤にして叫ぶ一星。

 信じられなかった。完璧な計画が、まだ始まったばかりで挫折するなんて。怒りと焦りでどうにかなりそうになり、一星は頭を押さえる。理解できず、目から火花が散っている様だった。

 倒れそうな一星を、鞍瀬は笑う。嘲笑の笑みを浮かべて。


「無駄だ、一星秘書官。もはや止める術などない!お前達が踏みにじり続けた人々の感情は、心は!大波となり全てを呑み込む!」


 「そして」と、鞍瀬は笑みを消す。鋭い視線で、一星を射抜く。


「そして滅ぶ。 特区は、滅ぶべくしてな」

「滅、ぶ…」


 その二文字が、頭の中を反響する。今映っている映像と、中国の映像が重なる。白い壁が崩壊し、男達が特区に雪崩れ込む様がありありと浮かんでくる。

 特区制度の崩壊。それは即ち、国の崩壊。

 特区が、日本そのものが終わる。

 

「ばかな…こんな、こんなことで…」


 信じたくなかった。でも、目の前で起こっていることが事実。多くの男性が、女性が、特区の壁に集まり、声を高らかに叫んでいる。『女性の為に』『壁なんて要らない』と、無数の感情が叫ばれていた。


「なんでだ…なんで。我々は…俺はただ、ただ強い国を作りたかっただけなのに…それなのに、なんで…」


 何故、こうなってしまったんだ。

 正しかったはずなのに、なんで、感情なんてもので…。


「誰か、止めてくれ…」


 一星の懇願に、答える者はいなかった。ただ映像から流れる、特区の最後を見届けるしか出来なかった。

 そう思った、その時、


『ご覧ください。現場で、何か動きがありました』


 レポーターの声が聞こえ、カメラがズームしていく。白い壁の、その上。屋上付近を映し出す。そこにはヘリポートがあり、自衛隊員が数人待機していた。

 その彼らが、動く。何かを見つけた様子で、慌てて駆け出す。

 その彼らが向かう先をカメラが追うと、そこには、


「ふっ。遅いぞ?黒川。減点だ」


 鞍瀬は笑う。楽しそうに。満足そうに。

 そして、目を輝かせる。

 走り出した彼に、注ぐ。


「さて、では見せてもらおうか。君が指し示す、もう一つの道とやらを」

道を示せるのでしょうか、黒川さん。


「ここが分水嶺だ。この世界がどうなるかの、な」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
取り敢えず犠牲をヨシとするなら大して頭も良くない男である一星君を犠牲にしなきゃね。コイツ何でこんなにも頭悪いの?多分外で技術者やってる連中の方がよっぽど頭回ると思うんだけど…。
一星秘書官は色々アレだが若手悪役として働いてる分立派。鞍瀬保安監は父親と政権どちら派かも不明で空気 男性が「気絶するまで戦えますか」レベルでブラック勤労するのは特区へのハコ・モノを貢ぐ際?だろうし、…
感情なんてもので計画が崩れておかしいは流石に頭が悪すぎてきつい 前提が男性が女性に貢献したいという感情ありきでスタートしてる計画なのに……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ