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男だらけの世界の方が、何故か女性にモテるんだけど?  作者: イノセス


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94/100

94話~屋上に、行くぞ…~

 仲間達の力を借りて、何とか局内に入る事に成功した俺は、鷲塚を含む数人の局員と共に制御室を目指して急いでいた。


「ゲートの制御は、男性側と女性側の2箇所ある。あの一星の事だ。女性側も閉めている可能性が高い」

「なら、そっちは俺が行くべきだな」


 俺が胸を叩くと、鷲塚は悔しそうに奥歯を噛み締めながら頷く。


「ああ、そうだ。貴様しかいない。お前がしくじれば、政府は女神プロジェクトを強行するだろう。どれだけの被害が出ようともな。アレはそう言う人種だ」


 ああ、分かっている。一星秘書官ならやりかねない。

 俺達は偶に通りかかる自衛隊員をやり過ごしながら、着実に奥へ奥へと進んでいく。そしてその内、見慣れた部屋の前に着く。鷲塚は迷わず、その部屋に入った。

 特区へ向かう黄金扉のある部屋だ。

 俺も続いて入ってみるも、すぐ違和感に気が付いた。扉の前にバリケードが敷かれていたのだ。

 それに加えて、


「くそっ!鍵穴が潰れていやがる」


 何かで埋められた鍵穴を見て、鷲塚が地団駄を踏む。

 こいつは…直ぐの復旧は難しいな。道具も無いし、知識も乏しい。時間を掛ければ出来ると思うが、また何時隊員がここに来るか分からない。


「自衛隊の奴ら、舐めた真似をしやがって…!」


 怒りながら、鷲塚が部屋を出る。

 次は何処に行くのかと思いながらついて行くと、またもや見慣れた部屋に辿り着く。

 進藤社長と鈴木さんに初対面した、面会室だ。

 以前来た時と変わらず、真ん中は透明な板が貼られており、その向こう側はこちらと同じような作りの部屋が広がっている。

 

 確かに、ここなら…。

 俺が期待に胸を膨らませると、しかし、鷲塚はまた怒った声で悪態をついた。


「やはりここも、対策してやがったか」


 そう言って、彼は板の嵌っている縁を指でなぞる。そこも、何かで埋められていた。

 俺は、彼が腰に下げている拳銃に視線を落とす。


「このアクリル板を壊す事は出来ないのか?」

「こいつは防弾仕様だ。俺達の豆鉄砲では傷しか付けられん」


 むっ。そうなのか。だから、板の接続部を見ていたのね。でも、そこも補強されてしまったと。

 この分だと、特区への侵入経路は全部潰されているんじゃないか?そこまでして、女性と男性の接触を避けたいって事なのか。


「鷲塚。取り敢えず、男性側の制御室に向かわないか?もしかしたら、それだけで物流が回復するかも知れない」

「バカか、貴様。あいつらだって、それくらいは分かっている。だから必ず、あの部屋には多くの守備兵を置いているだろう。だからこそ、そこは最後に回すべきなのだ」


 鷲塚は鼻に皺を寄せて、吐き捨てる。

 ああ、それはそうかもな。でもそれが分かっているって事はもしかして、こいつは最初から決死の思いでここに入ったって事なんじゃないか?


「鷲塚。お前…」


 俺は聞こうとしたが、自然と言葉を止めていた。誰かが、部屋に入って来たからだ。

 自衛隊…じゃない。扉が開いたのは向こう側。特区の方。そこから現れたのは、2つの影。

 鈴木さんと佐川さんだった。


「なっ!?」


 なんで、ここに2人が?

 驚きのあまり立ち尽くす俺に、2人が駆け寄って来る。アクリル板を必死に叩き、俺の名前を呼ぶ。


「黒川さん!」

「ケイゴ!そっちは無事か!?」

「あ、ああ!無事だ!」


 2人の声で、漸く俺の頭も冴える。アクリル板に近付き、両手を着く。2人の手に、重ねるように。


「そっちは大丈夫か!?物資の供給が止まって、暴動とか…」

「私達は大丈夫です!でも、困っている人は多くて…」


 やはりそうか。区外と離されたりしたら、脆弱な特区は成り立たない。

 2人の元気そうな顔を見れた安堵感の中に、僅かながら焦燥感が混じる。ここで何とかしないとと言う気持ちが、ドクンッと強くなる。


「待っていてくれ。必ず俺達が、ゲートを開けるから」

「あたしらも手伝うぜ!何をすれば良い?」


 おお。それは助か…。

 いや、待てよ。もし女性側にも守備隊が待ち構えていたら、2人に危険が及ぶ。そうなったら本末転倒だ。俺は2人を守りたいから、こうしているのに…。


「くっ、黒川…」


 迷っていると、鷲塚が俺の肩を掴み、赤い顔を向けてくる。


「屋上に、行くぞ…」

「屋上?」

「そうだ。そこなら、緊急脱出用のヘリポートが…ある。男女、兼用の、な。そこなら」


 彼女達と、合流出来る。

 そう言う事か!


「鈴木さん!」

「分かりました!黒川さん。屋上ですね」

「取り敢えず上に向かえばいいんだな?任せとけ」


 2人は笑顔を見せ、こちらに向けて手を振る。

 名残惜しかったが、俺も手を振って2人と別れる。

 屋上で2人と再会するんだと、足と心が軽くなった。


「浮かれるなよ、黒川」


 感情を抑え込んだ鷲塚が隣に並び、俺を睨み上げる。


「敵もヘリポートの存在は把握している。流石に、緊急避難経路を潰しはしないだろうが、警備は厳しくなるだろう。下手をすると、そこから増員を送ってくる事も考えられる」


 その鷲塚の忠告は、当たった。

 階を上がるに連れて、見回る隊員の数は増えていき、我々も何度か戦闘するはめになった。

 そして、いよいよ最上階への階段が見える所に来ると、


「暴徒確認!取り抑えろ!」


 自衛隊は階段前にバリケードを組んでおり、そこからこちらを攻撃してきた。

 実弾での発砲まではしてこないが、ゴム弾や暴徒鎮圧用のテーザー銃等は容赦なく飛んでくる。


「くそっ!一旦退くぞ!」


 堪らず、我々は逃げ出す。追撃してきた隊員を隠れてやり過ごした時には、かなりの距離を逃げてしまった。

 くっ。このままだと、何時まで経っても屋上にたどり着けない。ジリ貧で、何時か捕まる。


「こちら鷲塚。聞こえるか?応援が必要だ。手の空いている者は至急、松戸第1ゲート9階まで来い」

 

 焦る俺の隣で、鷲塚が無線で呼びかける。

 下で戦ってくれた局員に向けているみたい。でも、反応は芳しくなかった。


『無理っすよ、先輩!こっちも、次から次に湧いてくる奴らの対処で手一杯っす!』


 どうやら、下では新たな戦闘が繰り広げられているらしい。

 支社長達は大丈夫だろうか?


「くそっ。どいつもこいつも…」


 鷲塚が無線を額に当て、目を瞑る。

 万事休すってか?諦めるには早いぞ。


「鷲塚。俺に無線を貸してくれ。まだ、頼れる仲間が居る」

「…ふんっ。好きにしろ」


 一瞬躊躇した鷲塚だったが、俺に無線を投げ寄越す。

 乱暴な奴め。

 そう思いながら、俺は無線のチャンネルを変える。そして、呼び掛ける。


「聞こえるか?まっちゃん。まっちゃん。こちら黒川。応答願う」


 俺が掛けた相手は、松本君。官邸から出る時に、鷲塚が渡してくれた無線に話しかけていた。

 でも、反応がない。

 まさか、やられたのかと肝を冷やしていると、ブツブツと電波の入る音が。

 そして、


『先輩!聞こえますか?松本です!無事でしたか』


 元気な声が聞こえた。

 俺は音量のツマミを少し小さくして、現状を伝える。無事だが、屋上への道が塞がれていて救援が必要だと訴えた。

 でも、


『済みません。僕らも、ここから離れる訳には行かなくて、また何時暴動に発展するか分からない状況なんです』

「そうか…」


 オトハ様の声が肝だもんな。それが無いと、自衛隊と市民の衝突は免れない。

 でも逆に言えば、まだ支社長達が頑張っているって証拠でもある。それが聞けただけでも、儲けもの…。


『でも先輩。お役に立てるかもしれません。僕、屋上までの秘密のルートを聞いたことあるんで』

「なっ、なんだって?」


 そんな物が、本当にあるのか?

 俺はつい、鷲塚に視線を送る。すると彼も、眉を顰めて首を振った。

 局員が知らないルート?それは…。


「一体何処にあるんだ?そのルートは」

『拘留所です』



「ここが拘留所、だが…?」


 鷲塚に連れられて、我々は7階の拘留所へと辿り着く。中には数人の男が捕らえられていたが、今は無視。我々は松本君が言っていた、1番端の部屋へと入る。

 そこで、彼の言っていた通りに上を見ると…確かにあった。換気用のダクトだ。


「あれが、屋上に通じているのか」


 良く知っていたな。松本君のお友達は。1ヶ月の拘留中に、何をやっているんだか。


「黒川。こいつを持っていけ」


 俺が換気口を見上げていると、鷲塚が何かを差し出す。

 もう1個の無線かと思ったら…拳銃だった。


「ここからは別行動だ。自分の身は、自分で守れ」

「ありがとう。でも、銃はなぁ…」


 不思議と使えそうな感覚はあるが、なるべく自衛隊に向けて発砲したくない。撃てば向こうも本気になるから。

 流石に、自衛隊相手でそれは悪手すぎる。

 そう思って首を捻ると、鷲塚は「ふんっ」と鼻で笑って、銃を引っ込める。

 そして、


「そうだな。貴様にはこっちの方がお似合いだ」


 そう言って、小型の盾を渡して来る。片手で振り回せるくらいの小さな奴。

 うんうん。こっちの方が俺は好きだな。出来れば2枚ない?その方が、なんか戦える気がするんだよ。


「やはり変わっているな、貴様。銃より盾を選ぶとは」


 鷲塚は呆れた様に首を振り、手を挙げる。


「ではな。精々、無様に死なぬようにしろよ。そして死ぬなら、せめてゲートの1つくらいは開けてくれ」

「そう言うお前たちは、どうするんだ?」

「俺達は男性側(こっち)の制御室に向かう。その方が効率的だからな」

「鷲塚…」


 自ら死地に飛び込もうとする彼らに、俺はつい目を潤ませる。

 それを、鷲塚が「ふんっ!」と鼻息で吹き飛ばす。


「勘違いするなよ?俺達は選ばれたエリート様。その俺達が、そんなネズミの真似事なんて死んでもごめんだ。適役である貴様に譲ってやる。ただそれだけの事だ」

「またまた」


 このツンデレが。

 俺が笑みを向けていると、何処からか扉を開ける音が聞こえる。次いで、複数の足音も。

 それを聞いて、鷲塚が焦った顔を向けてくる。


「行け。早くっ」


 俺が何か言うより早く、局員達は俺を抱えて、換気口へと押し込める。そして、


「行くぞ!お前ら!」

「「「おぉおおお!!」」」


 鷲塚達の掛け声。その後には、激しい戦闘音が続いた。


「くっ…」


 鷲塚。お前達、自ら囮に…。


「絶対に、辿り着いてみせる」


 俺は涙を堪え、狭いダクトの中を這いずり始めた。

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― 新着の感想 ―
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前腕を膨らませたマッチョが、屋上で美女と会う。お前はキングコングか!w ダブルヒロインとは令和版は随分豪華になったもんだ。 鷲塚、いけ好かない小物だったが見直したぜ。オトハ様は沢山褒めてやってくださ…
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