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男だらけの世界の方が、何故か女性にモテるんだけど?  作者: イノセス


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93/100

93話~撃たせるな!~

「よーしっ。そんじゃ立ち上げるぞ!そりゃ!」

「「そりゃ!」」


 岩本係長の掛け声で、営業部の面々がスクリーンのフレームを立ち上げる。すると、青空の下に白いスクリーンが立ち上がる。その姿は、まるで航海に出る船に見えた。

 

「おーい、松本。こっちの準備は出来たぞ。そっちはどうだ?」

「こっちも準備出来ています。後は、皆さんがこっちに気付いてくれるかですけど…」


 暴動は激化していて、さっきは銃声も聞こえていた。幾らオトハ様の慰問会だと言っても、みんな気が付かないかもしれない。

 そんな不安を口にすると、「それは私に任せろ」と頼もしい声が上がる。

 杉森支社長だ。


「そっちの対応は、私と星里で何とかする。松本。お前はお2人を頼んだぞ」

「はいっ!頑張ります!」


 僕が頷くと、支社長は戸惑う星里部長を引っ張って、群衆の方へと行ってしまった。

 営業部の皆さんも、スクリーンの設置の為にと移動を開始した。それを見て、僕も動き出す。局員のバンから下した撮影機材の状態を確認し、車で待機していたオトハ様に話しかける。


「オトハ様。準備が出来ました」

「そう。では始めましょう」


 そう言って、オトハ様が車を降りる。その優雅な姿を見ただけで、僕の心臓が跳ねた。

 うっ。流石はオトハ様。お美しい。


「大丈夫ですか?先生」


 胸を押さえていると、アコさんが覗き込んで来る。

 僕の心臓が、更に飛び跳ねた。


「だっ、大丈夫だよ。うん」


 寧ろ、今の方が大丈夫じゃない。アコさん、相変わらず距離が近いよね。もう少し、距離を取って欲しいな。

 僕も、人の事は言えないけどさ。


「アコさんは、そこで休んでいて下さい」

「いいえ、先生!私もお手伝いしますっ!」


 そう言って、カメラを操作しようとする彼女だったが…間違って電源を切ってしまった。

 ああ。もしかして、機械が苦手なのかな?


「ええっと、ですね。アコさんには、照明をお願いしたいんですけど?」

「お任せ下さい!先生!」


 うん。上手くフォローできたと思う。アコさんも嬉しそうだし。

 そうして何とか撮影の準備を整えると、向こうの方から支社長の声が聞こえて来た。


『あー、あ〜…皆さん!ちょっと、こっちに注目してくれんか?皆さんが待ち望んどった慰問会を、これから復活させて見せます!しかも、出演して頂けるのはあの蘇芳乙葉様ですよ!今日を逃せば、次はいつ開かれるか分からない。まさに特別な慰問会なのです!』


 支社長のマイクパフォーマンスに、喧噪が小さくなっていく。小さな歓声も聞こえる気がする。

 そろそろかな?と身構えていると、僕の会社スマホが鳴る。相手は…星里部長。


『松本君。こっちはいつでも行けるよ』

「分かりました。では、このまま電話を繋いだままにしてもらって…オトハ様!撮影を始めたいと思います!」

「ええ、分かったわ」


 オトハ様が姿勢を正す。

 僕はカメラの上に手を出して、カウントダウンを行う。


「5…4…3…2…1…」


 スタートの代わりに、手を前に差し出してオトハ様に伝える。

 その瞬間、オトハ様がカメラに向かって微笑んだ。


「皆さん、こんばんは」


 カメラの向こうで、オトハ様が優雅に挨拶をされる。

 レンズ越し。でも、僕のすぐ目の前で彼女の眼差しが降り注ぐ。僕に向けて、その綺麗な瞳が真っ直ぐに向いている。そう意識してしまうと、また心臓がドキドキし始めた。手が震えそうになる。


 ああ、ダメだ。しっかりしなくちゃ。

 そうやって首を振ると、アコさんの姿が目に入る。一生懸命に手を伸ばして照明をかざす彼女は、僕の視線に気が付いてニカッと笑った。

 それだけで、不思議と手の震えが治まった。なんだか胸のあたりがフワフワする。オトハ様を見ても、心臓がキュってならなくなった。

 なんだか良く分からないけど…兎に角、今なら出来る!やれる気がするぞ!

 僕はカメラのアングルを調整して、彼女の一番美しい角度を探した。


 さぁ、皆さん。見て下さい。華麗なるオトハ様の慰問会ですよ!


〈◆〉 

 

『皆さん、こんばんは』


 スクリーンに映し出されたオトハ様が、優雅な挨拶をする。

 いつもの見栄え重視のドレスではないけれど、その微笑みと優雅な立ち居振る舞いだけでも凄い破壊力を持っていた。

 周りの男達が「うっ」と(うずくま)る程に。

 流石はオトハ様だ。


「なんだ!?あいつらは!」

「臨時慰問会など、聞いていないぞ!?」

「止めろ!許可のない慰問会の開催など、テロと変わらない!」


 だが、自衛隊員は目を吊り上げる。スクリーンを支える係長達を見つけて、放水銃をそちらに構えた。

 不味い。無防備な係長達があれを食らったら、タダじゃ済まないぞ!

 そう思った俺は、無謀にも放水銃を構える自衛隊へと走り出す。仲間を救う為、あらん限りの声を張り上げた。


「撃たせるな!オトハ様達を守るんだ!」

「「「おぉおおお!!」」」


 その声に、賛同の声が集まる。

 集まった男達ではない。彼らは皆、オトハ様の美しさに倒れ伏していた。

 では誰が?

 俺の視線の先で、白い波が出来上がっていた。今まで自衛隊と共に人々を拒絶していた局員達が、白い津波となって自衛隊に襲い掛かっていた。


「オトハ様を守れ!」

「「女性を守れ!」」

「撃たせるなっ!」

「「突っ込めぇ!!」」


 プライドを守ることに必死だった彼らが、女性を守ろうと身を投げ出そうとしている。自分達よりも遥かに強くて、強力な武器を持っている兵士達を前にしても、必死な形相で駆けつけた。

 自分達の小さなプライドよりも、守るべきプライドを見つけたとでも言うように。

 ああ、素晴らしいプライドだ。

 さぁ、行くぞ!


「銃を女性に向けさせるな!放水銃を撃てなくするんだ!」

「「「おぉおおお!!」」」


 俺の号令で、白い波が放水車へと一斉に向かう。彼らはフロントガラスに張り付いて、ボンネットの放水銃に取り付き、銃が動かないように無理やり固定した。

 自衛隊員達が、顔を歪める。


「くそっ!こいつら、血迷いやがって」

「引き剥がせ!こいつらも暴徒だ!」

「日本を守るためだ!」


 隊員達が矛先を変え、局員達に襲い掛かる。フロントに張り付く局を殴って引き剥がそうとし、放水銃を止めている奴に向けて催涙弾を投げつける。

 そうはさせない。

 俺は他の局員と連携して、自衛隊に掴みかかる。仲間を傷つけさせないよう、必死に国の兵士に纏わりついた。

 そんな時、別方向から雄叫びが上がった。


「行くぞ!野郎ども!営業部の底意地を見せてやれ!」

「「よっしゃぁああ!!」」


 岩本係長達だ。顔を真っ赤にしながらも、必死の形相でスクリーンを運んでいる。スクリーンに映るオトハ様の姿が、ドンドン近付いて来る。

 彼女がクルリと、その場で一回りする。


『もっと良く見なさい。私の舞を』

「ぐっ…はぁ、はぁ…まだまだぁ!」

「「おっ、おお…!」」


 はぁ、はぁ、と。息も絶え絶えな状態の係長達。それもその筈、直ぐ近くでオトハ様の声が降ってきているから、他の人より何倍も誘惑に駆られている筈だ。

 それでも、彼らは止まらなかった。そのまま、局員を取り囲む自衛隊員のすぐ前までスクリーンを持ってきた。

 映っていたオトハ様が、笑う。


『さぁ、お前達。争いを止めなさい。私のこの、美しい目を見なさい』

「「うっ…あぁ…」」


 放水を止めていた局員達も、彼らに殴りかかっていた自衛隊員も、その一言で膝を折る。催涙弾を投げようとしていた隊員は自爆し、ボンネットの上で威嚇射撃していた隊員は車から転げ落ちた。

 そうして、動いている者が殆どいなくなった。


「おいっ!」


 後ろから声。

 鷲塚だ。心臓を押さえながら、彼は指を差す。


「今だ!この隙に、局へ突入するぞ!」


 彼が指さす方向には、数台の装甲車が駐車してあった。ぴっちりとゲート前を塞いでいた筈の車両に、僅かな隙間が出来ているのが見えた。そこから、俺が何時も入区で使うゲート横の扉も見える。

 群衆が必死に繰り出した捨て身の体当たりが、隙間を作り出してくれたのか。

 ありがとう。みんなのお陰で、俺達の道が出来たんだ。


 俺も、鷲塚の背に付いて行こうとする。

 その時、


『黒川!』


 また、後ろから声。

 振り返ると、スクリーンの下で杉森支社長と星里部長が大きく手を振っていた。


『よろしく頼むぞ!黒川。お前に社運が…、日本の未来が掛かっとる!』

『怪我しないように気を付けなさい!ご安全に!』


 杉森支社長、星里部長…。


「黒川!一発デカいのかましたれ!」

「JIES魂、見せちゃれよ!黒川!」


 岩本係長、江川部長も…。


『この場は、私達に任せなさい』


 オトハ様まで…。

 

「はいっ!行ってきます、皆さん!」


 俺も、大きく手を振る。

 ここまで導いてくれた、仲間達に向けて。


「必ず!ゲートを開けてみせます!」


 決意を新たに、俺は駆け出した。

戦いは、いよいよ局の内部へ。


「外もまだ終わってはおらん」

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― 新着の感想 ―
特区内の女性を餓死させかねないバカ息子の企みに加担してる自衛隊の方が公式テロなんだよなぁ… >アコさん、相分からず距離が近いよね。もう少し、距離を取って欲しいな。 ここ、「相変わらず」かと思います
一般自衛隊員も管理局員と同等の女性耐性を有しているのか、ゲート前に展開するための特別選抜隊なのか 中継中のスクリーンを運搬する営業部は、撃沈直前で焼け付いた軍艦のバルブを素手で回すような気迫ですね …
族の皆さんは絶対悶絶すると思ったけどよく耐えた!(直だと多分駄目だったw) 黒川さん、皆で切り開いた門(ゲート)、特区側もバーン!とブチ破ってくれよな! ・・まぁ女性側局員や警官は銃の素人っぽいし?あ…
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