表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男だらけの世界の方が、何故か女性にモテるんだけど?  作者: イノセス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
75/100

75話〜またトラックが上って来るぞ?〜

 粗大ごみを捨てに来たはいいものの、問題が山積みであった。

 その一つを解消するべく、俺は誘導灯を振る作業員に話しかける。


「お姉さん。もしもその制約がなくなったら、粗砕ゴミを捨てるサポートをしてもらう事は可能ですか?」

「ん~?そーだね~。毎回は嫌だけど、偶にならいいよぉ。早くして欲しい時とかもあるしぃ」


 ふむふむ。そうか。それなら…。


「済みませんが、お姉さん。所長をお呼び頂けませんか?いらっしゃらなかったら、副所長でも」

「しょちょ~?」

「はい。少々ご相談したことがありまして」


 俺が頼み込むと、お姉さんは「いいよ~?」と気の抜けた様子のままにスマホで電話を掛ける。

 その間に、俺はソワソワしている2人の元に。


「さて、じゃあ俺達は、その人の荷下ろしを手伝ってあげようか」

「えっ?しちゃっても良いんですか?」

「責任がどうの言ってたじゃねぇか」

「それは、工場側と搬入者の間の話ね。俺達は同じ利用者だから」


 とは言え。


「お婆さん。荷下ろしをお手伝いしましょうか?」

「あら?良いの?じゃあ、お願いね。終わったら教えてちょうだい」


 さっきまでの弱弱しい演技を捨てて、運転席に戻ろうとするお婆さん。

 それを、俺は止める。

 

「おばあさんも一緒に作業してください。あと、もしも荷下ろしで車を傷つけても、一切の責任は負いかねますので」

「えっ?」

「ご承知いただけないなら、我々もお手伝い出来ません」

「…分かったよ」


 不貞腐れるお婆さん。

 やはり、最初から全部やらせる気で来ていたな。居るんだよな。こういう他力本願な奴。


「次からは、積み込みを手伝われた方も一緒に連れて来て下さいね?」


 そうでなければ、積み込むことも出来ない。

 そう思って念を押すと、お婆さんは「ふんっ」と、尊大な態度で返事した。

 全く…。こういう人が居るから、受け入れ基準も上げなくちゃいけなくなるんだ。


「黒川さん。誰かいらっしゃいましたよ?」


 お婆さんの荷物を丁度降ろし終える頃、太った女性が「フー、フー」言いながらこちらへ駆け寄って来た。お姉さん達と同じ作業着。きっと所長だろう。

 その人は俺達の前まで来ると、大きな目をカッと見開いて、自分の胸をドンドンッと叩いた。


「どうも、所長の西内です。お話は全部自分が聞きますんで、従業員に直接クレーム言うんはやめて下さい」


 クレームって…。

 一方的に決めつけられ、俺は相談しようとした言葉を飲み込んでしまう。

 そこに、鈴木さんが前に進み出る。


「違うんです。少しお話をさせて頂きたくて…」

「良いですよ。聞こうじゃないですか」


 だめだ。所長さんは俺達をクレーマーだと思って、完全に警戒態勢になっている。

 こう言う時は…。


「西内所長。今日は一般の搬入が多く、皆さんも大変苦労されている事と思います。我々はその負荷を、少しでも減らせればと思っています」


 セールストーク。相手に寄り添う姿勢を見せ、解決策をチラつかせる。

 ちょっと腹黒いかもだが、効果的だ。

 俺の目論見は、当たる。所長は少しだけ目の圧を下げてくれた。


「負荷を減らす?まさか、君らが手伝うとか言い出したりしませんよね?安全教育も受けてない一般人に、そんなことさせられませんよ?」

「勿論。直接手を出そうって意味ではありません。ただ、ちょっとアイディアをご提供出来たらと」

「アイディア?」


 所長が聞く姿勢になったので、俺は頭の中の知識を披露する。すると…。


「まぁ…確かに、それならちょっとは…」


 所長は苦い顔をした。

 でも、


「効果はあるかもしれないけど…でもね、今からは無理よ。私も含め、今日は手の空いている所員がいませんから」

「そこは、我々が実施します。所長にはただ、ご許可を頂ければと」

「君達が?」


 所長がポカンとしている前に、鈴木さんが進み出る。「私、こういう者です」と名刺を渡す。

 途端、所長の圧が無くなる。


「あぁ!ごめんなさい。JIEさんだったのね。道理でお詳しい訳だ」


 知っている名前で安心したみたい。もしかしたら、ここもうちの製品が入っているのかも。

 

「分かりました。けど、申し訳ないね。従業員でもない、メーカーさんにご協力頂いちゃって」

「いえ。お気になさらないでください。私達が手伝いたいって思っただけですので」

「そうです。これくらいの事でしたら、安全教育を受けていない我々でも出来ますので」


 鈴木さんに続いて俺も頷くと、所長は「いやぁ、助かります」とホッとした笑みを浮かべた。


 そうして、俺達は早速準備に入る。所長から許可を貰い、プラットホームの控室を貸してもらい、そこで作業をする。所長が持ってきてくれた大量のA3用紙と極太の油性ペンを目の前に、さてどうするかと構想を練る。


「もしよければ、私が書きましょうか?小さい頃、書道を習っていたので」

「そいつは助かるよ、鈴木さん」


 字は得意じゃないからな、俺。凄く助かる。

 そうして鈴木さんが書いてくれた物を、俺が並べて繋ぎ合わせ、空いた部分に佐川さんが色付けしてくれた。

 そうすると、1枚の大きな看板が出来上がった。


「よし、良いね。次は計量棟用のも作っていこうか」


 俺達は次々と、看板やチラシを作っていった。部屋にコピー機もあったので、そちらも使わせてもらって増版した。本当はパソコンで作った方が簡単だったけど、この部屋にあるパソコンは使えない。社内情報があるらしく、所長から許可が下りなかったからだ。

 それでも十分だった。準備を終えた我々は、再び所長に来てもらって、確認をしてもらった。


「おおっ!良いね。素晴らしい出来だ!」


 所長は大喜びで、早速看板を設置してくれた。

 俺達も手伝おうとしたけれど、混在作業になるからと、そこは止められた。

 徹底しているな、所長。もしかして建築関係の人?


「どうかな?こんなもんで」


 脚立に登った所長が、こちらに声をかける。彼女の頭上には、我々が作った看板が掲げられていた。

 〈荷降ろしはセルフでお願いします。作業員は手伝えません〜混在作業禁止〜〉

 看板には、そう書かれていた。

 これで、所員も断りやすくなるだろう。一般客も、そう言うものかと認識出来る。

 ただ、どうしても体力が厳しい人等は、車から降ろした後は手伝ってもいい事になった。作業を棲み分け出来れば、混在作業にならない。

 それを所長に明文化して貰い、受け入れのお姉さんにだけ渡しておく。


「うっし。じゃあ他の看板を置いてくるか」

「そうだな」


 俺と佐川さんは、他の看板を持って外に出る。それを、計量棟の前や来る途中の道端に設置して、車から見える様に調整する。

 〈小さなゴミは袋に入れて下さい〉〈長物は纏めて縛って〉〈産業廃棄物お断り!企業様は区役所へ〉


 うん。これなら、計量棟に来る前に準備出来るだろう。そしたら、計量も少しは楽になる。

 そう思って車の中を覗くと、慌ててゴソゴソし始める人が多数。中には窓を開けて「ちょっと!これ、どうすりゃいいの?」と聞いてくる人もいた。

 やっぱり、事前に何も調べず、ただゴミ捨てに来た人も多いみたいだ。


 そう言う人には、鈴木さんが作ってくれたチラシを渡す。簡単な説明と、〈詳しくは区のホームページへ〉と書かれた紙だ。

 それを受け取ると、大抵の人は顔を引っ込めて作業に戻った。

 そうそう。計量棟に着くまでに、捨てる準備を進めて下さいね。



「3人とも、ありがとう!めっちゃ楽になったって、所員みんなが感謝しているよ」


 一通り車の流れが落ち着いたのを見守った後、計量棟まで帰ってくると所長が待っていた。そこで、彼女から感謝の言葉を頂いた。


「ほんとね、毎年この時期は辛かったんだよ。初めて来るお客さんは何も分かってないし、常連さんは待たされたって怒鳴るし。あげくに、渋滞が伸び過ぎて公道まで潰しちゃうから、周辺住民からもクレームの嵐だった」


 朝来た時は、行列が下の道路まではみ出していたからね。そりゃクレームも来るだろう。

 大変でしたねと所長に同情していると、彼女は「でも」と表情を明るくした。


「それがどうだい?今年は煩わしいクレームが殆どなかった!変な質問も減って、プラットホームの清掃時間も出来た。ほんと、君達のお陰だよ。これ、良かったら貰ってくれない?ちょっとした、感謝の気持ちって事でさ」


 所長はそう言って、俺達に大きな紙袋を渡してくる。チラリと見ると、中にはミカンや乾麺の蕎麦などがパンパンに入っていた。

 それを見て、鈴木さんが慌てる。


「そんなっ!こんなに頂けませんっ」

「いいの、いいの!貰ってちょうだい。本当なら、コンサル料渡さないといけないレベルだけど、そうすると色々問題になっちゃうからさ。せめてもの気持ちってことで」

「えっと…分かり、ました」


 渋々受け取る鈴木さんを見て、所長さんもニッコリだ。

 その彼女の後ろに、受付のお姉さんが立つ。


「ねぇ、お兄さん。ここで働かない?」

「えっ!?」


 俺が驚くと、お姉さんはニヤっと笑みを浮かべる。


「所長も良いと思いません?彼が居たから、違法業者も撃退できた訳だし。私、彼と一緒に働きたいなぁ」

末包(すえかね)さん。そりゃ無理だよ。だって、男の人だよ?」

「別に良くない?男だって、めっちゃ有能なんだから」


 そう言って、こちらに流し目を向けて来るお姉さん。

 うっ。そんな目で見ないでくれ。


「ダメです!」


 眩しい眼差しに弱っていると、鈴木さんの背がそれを遮る。


「黒川さんは私の室員なんですから、引き抜きはダメです」

「ふ~ん。黒川って言うんだ、お兄さん」


 強いな、お姉さん。鈴木さんの睨みつけるが全然効いていない。

 鈴木さんもそう思ったのか、俺の腕を引っ張って「もう行きましょう!」と車へ誘う。


「皆さん!ありがと~!」


 車を発進させる時、バックミラーに手を振る西内所長の姿が見えた。俺も窓を開けて、手を振り返す。彼女は俺達の車が見えなくなるまで、ずっと手を振ってくれていた。


「良い人達だったな」

「何処がですか」


 俺の呟きに、鈴木さんが頬を膨らませる。

 いや、所長の事だよ?決して、受付のお姉さんの事じゃないよ?


「おっ。またトラックが上って来るぞ?」


 鈴木さんの誤解を解こうとしていると、後部座席の佐川さんが指をさす。見ると、反対車線を同じ型のトラックが3台上って来る所だった。


「これがアレか?産廃を持ってくる違法業者か?」

「さて、どうだろうね…」


 通り過ぎる車体に書かれていたのは〈白峰バイオケミカル〉の文字。何処かの企業っぽいが、産廃許可業者とは思えない名前だ。

 でも、本当に違法業者だろうか?こんな受け入れ時間ギリギリだと、一般の車に紛れて入ることも出来ない。3台も一緒に来れば、業者であることは一目瞭然だし…。

 何か、気になるな。


 そう思って暫くサイドミラーを見ていたが、トラックが工場から出て来る様子は無かった。

 受け入れ拒否されなかった。なら、許可業者だったのかな?

 そう思って、俺は視線を切った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
所長レベルの人でマトモな対応だったの初めてじゃねえか!って嬉しくなってたのになんかキナ臭い終わり方に……w 今度はどんなトラブルなのか
お、癒着か?w
きょうび、業務で使わない限りボールペンやシャーペンすらご無沙汰になりがち?だし、貴重な技能であるw JIEの女子社員やコンビニバイトのやる気の無さと、他人がやりたがらない現場の作業に従事して最低限回…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ