表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男だらけの世界の方が、何故か女性にモテるんだけど?  作者: イノセス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
74/100

74話〜そうよ!これは犯罪よ!〜

 ゴミ処理場に粗大ゴミを捨てに来たら、なんだか揉めている様子。そのせいで、渋滞が全く進まなくなっていた。

 きっとあれだろうと当たりを付け、俺は「ちょっと行ってくる」と車を降りた。

 すると、「私も行きます!」と鈴木さんも車を降りてしまった。


 お、おいおい。車はいいのか?


「カンナさんにお願いして来ました」


 その佐川さん、相当焦って運転席に移動しているけど?

 まぁ、鈴木さんが来てくれるのは助かる。今の俺は、川咲区長の紋所を持っていないからね。


「済みません。何かトラブルですか?」


 鈴木さんを連れて計量棟(搬入されたゴミの重さを計算する施設)に駆け寄ると、そこではツナギ姿のおばちゃんと、所員らしき制服の女性が睨み合っていた。

 そして、俺の声で両者が振り向く。鋭い眼差しをそのままに、俺に怒気を飛ばしてくる。


「なんだい、あんた。こいつらの仲間か?」

「部外者は口出さないで!」


 おお、怖い。


「何かトラブルならご協力します。我々も早く、ゴミを受け入れて欲しいので」

「そりゃ、この税金泥棒に言いな。アタイが持ってきたゴミを、受け入れないとか言い出しやがったんだ」


 うん。やっぱそうだよな。

 俺は思った通りのトラブルに、何処か安心感を覚えていた。

 ゴミ処理場の受け入れでは、割と良くある事だ。市民が受け入れ基準を把握していなくて、受け入れを拒否され、こうして激昂する。

 受け入れ基準を見ていない市民が悪いのもあるんだけど、基準が分かり難いって事もあるから、どっちとも言えない。


「一体、何を持って来られたんですか?」

「これだよ」


 おばちゃんが2tトラの荷台から取り出したのは、水撒きとかで使うホースドラムだ。

 なるほど。

 俺はおばちゃんから視線を切り、計量のお姉さんを見る。


「こちらはどの様な対応が必要になっているんですか?」

「縛るか袋に入れる決まりになってるのよ。なのにこのおばさん、さっきから聞いてないの一点張りで」


 お姉さんが憎々し気におばさんを睨むと、彼女も目を吊り上げる。

 

「そんなの、あんたが適当に言ってんでしょ!?若いからって調子乗ってんの?」

「違うって言ってるでしょ!」

「なら理由を説明しな!」

「規則だって言ってんでしょ!このクソババァ!」

「ババっ!?」


 ああ、喧嘩しないで。

 俺は引っ掻かれながら2人を離す。鈴木さんも直ぐに動いてくれて、お姉さんの方を宥める。

 助かるよ。じゃあ俺はこっちと。


「ご説明します。この様に長いヒモ状の物をそのまま投入されると、クレーンに絡まったり、機械が故障する原因になるんです。そうなれば最悪、ゴミ処理自体が出来なくなってしまいます。ご不便をお掛けしますが、ご対応をお願い致します」

「……ふんっ。最初から、そう言えば良かったのよ」


 何か言いたそうだったおばちゃんだったが、頭を深く下げる俺を見て苦し紛れの言葉を吐く。そして、荷台に登ってドラムを袋に入れ始めた。

 うんうん。良かった、良かっ………うん?


「ちょっと待ってください」

「今度はなんだい?」


 直ぐに作業が終わらないおばちゃんに、俺は声をかけた。

 ホース1個に時間かけ過ぎだろ?もしかして…。


「ちょっと、荷台を確認させて貰いますよ」

「あっ、ダメだよっ」


 止めようとするおばちゃんを振り切り、俺は荷台を覗き込む。

 すると、


「ああ、これは…」


 荷台の上には、所狭しとホースドラムが並んでいた。その数はとても、一般家庭から出る量じゃない。

 つまり、これは…。


「もしかして貴女、何か事業をされているんじゃないですか?だとしたらこれは一般ゴミじゃない。歴とした産業廃棄物だ」

「ぐっ…」

「黒川さん。産業廃棄…ってなんですか?」


 苦しそうに唸るおばちゃんを見て、鈴木さんが不思議そうに聞いてくる。なので、俺は簡単に説明する。

 産業廃棄物。ざっくり言うと、お仕事で出たゴミだ。その中でも、法律で定められた種類のゴミがそう呼ばれ、専門業者が回収しなければならない決まりになっている。もし破れば、懲役だって付く立派な犯罪だ。

 

「ですよね?お姉さん」


 振り向いて問いかけると、お姉さんは何度も頷く。


「そうよ!これは犯罪よ!ここを通りたかったら、ちゃんと許可書を見せなさい!」

「……」


 おばちゃんは憎々し気に俺達を見るけど、何も言えない。

 まぁ、こんなホースの末端処理もしない人が、許可業者とは到底思えないからね。きっと、なんちゃって廃品回収でお小遣いを稼ごうとしたんだろう。

 案の定、おばちゃんは慌てて車に乗り込んで、施設から出て行ってしまった。

 さて、


「お姉さん。この次のトラックも気を付けた方が良いですよ。さっきのと同種なので、同業かもしれません」


 同じようなトラックが連チャンすると言うのは稀だ。もしかしたら、グループでの犯行なのかも。

 そう思って運転席を覗いてみたら、運転手のお婆さんは慌てて目を伏せて、列から外れて出ていった。

 ほら、やっぱり。


「凄い!流石は黒川さんです!」


 違法業者を見送っていると、鈴木さんが小さく拍手してくれる。

 いやいや。こんなの大した事じゃない。ゴミの受け入れでは良くある事だ。

 俺が首を振っていると、拍手が増えた。

 うん?


「ホント凄いよ、あんた。マジで助かった」


 計量棟のお姉さんにまで褒められてしまった。


「ってかさ、今になって気付いたけど…あんたって、男?」

「うっ」


 俺は息を飲む。

 冷静になって気付いてしまったか。こりゃ、罵声でも浴びせられるか?

 そう思ったけど、お姉さんは興味深げに俺を覗き込む。


「ふぅ〜ん。男って、もっと気持ち悪いの想像してたけど、思ったよりカッコ良いんだね。めっちゃ頼りになったし」

「それは、どうも…」


 急に褒められてしまい、俺は肩透かしにあった気分だった。

 そうして首後ろを摩っていると、お姉さんが俺の袖を掴む。

 へっ?


「ねぇ。良かったらさ、このまま手伝ってくれない?今日は特に搬入が多いから、お兄さんが居ると助かるんだよねぇ~」

「ダメです!」


 俺とお姉さんの間に入った鈴木さんが、キッパリと断る。


「私達も粗大ごみを捨てに来たんですから、お手伝いしている時間はありません」

「えぇ~…ちょっとだけ」

「ダメです。そう言って、最後まで手伝わせるつもりでしょ?」

「ちっ」


 おーい。舌打ちが聞こえてるよ?なかなかに腹黒なお姉さんだ。鈴木さんが断ってくれて助かった。

 

 俺は鈴木さんに連れられて、車に戻る。突然運転を押し付けられた佐川さんが「勘弁してくれ」と苦言を呈したが、何があったかを話すと、すぐ機嫌を直した。

 俺がヒーローみたいに持ち上げて来るが、佐川さんが喜ぶので訂正し辛い。ぐぬぬ…。


「でも、気を付けて下さいね?黒川さん」

「うん?俺?」

 

 突然振られて、俺は驚く。

 それに、鈴木さんが口を尖らせる。


「そうですよ。あとちょっとで、受付を手伝いそうになっていたでしょ?」

「うっ…、確かに」


 鈴木さんが居なかったら、確実に手伝っていた。

 俺が認めると、鈴木さんが小さくため息を吐いた。


「黒川さんは他人に優し過ぎるんです。だから、ちゃんと自分も労わって下さい」

「ああ、うん。気を付けるよ」


 俺が頷くと、鈴木さんは「そこが、良いところでもあるんですけど…」と小さく呟く。

 う〜ん。ただ優柔不断なだけかもしれないぞ?


「なんか、テーマパークに来たみたいだな」


 そのまま運転席に収まった佐川さんが、楽し気に呟く。

 計量のトラブルが解消したので、我々も受付を済ませて、工場のスロープを登る。そこで、佐川さんのテンションが少し上がっていた。

 確かに、某テーマパークのジェットコースターみたいだ。でも、この先にあるのはプラットフォーム。急な下り坂じゃないからね。


「はーい。ここで止まってぇ〜」


 そしてプラットフォームに到着すると、椅子に座ったままの作業員が、誘導灯を一文字にして俺達の車を止める。でもすぐに、向こうのゴミの山を誘導灯で指した。


「は〜い。じゃあ、あそこでゴミを降ろしてね〜。ゴミの種類が書いてあるから、ちゃんと自分達で分別するんだよ〜?」


 俺達は示された場所に車を付け、粗大ゴミを降ろす。作業員が言っていた様に、壁には〈可燃ごみ〉とか〈鉄〉とか〈ステンレス〉と細かく別れていた。

 区外のゴミ処理場と一緒だけど、みんな鉄とステンレスをパッと見で分かるんかね?

 そんな心配をしていると、何処からか悲痛な声が上がった。


「ああ、なんて事なのぉ!」


 その声の方を見ると、細い初老の女性が両手を開いて嘆いていた。

 また何か、トラブルの予感。


「おーい!どうしたんだよ?ばーちゃん」


 佐川さんが手を挙げて、女性の元へと駆け寄る。鈴木さんも心配そうに、その背中について行った。

 2人を見た女性は、涙を浮かべて作業員を指さす。


「聞いてちょうだい!この人、荷物を降ろすの手伝ってくれないの!」

「だからさぁ。それが規則なんだってぇ〜」


 非難された作業員が、椅子に座ったまま首を振る。

 それを見て、鈴木さんが眉を顰める。


「規則って…相手はお年寄りなんですよ?」

「そうだぜ。年寄りは大切にしろって、学校で習わなかったか?」


 佐川さんも追従して、2人は詰め寄る勢いで作業員の方へと向かう。

 それを、俺は慌てて止めた。

 どうどう。


「何故止めるんですか?黒川さん」

「こういう時のヒーローだろうが」


 いや、だから、俺はヒーローなんかじゃないって。


「2人とも落ち着いてくれ。この規則にも、ちゃんとした理由があるんだ」

「理由?」

「そうだ」


 持ち込みごみの多くは、袋などに入っていない剥き出しの物が多い。家具とか家電とか、そんな大型の物がね。そう言う物ってどうしても、移動させる時にいろんな所に当たる。車だったり、人だったり。


「それの当たり所が悪くて、車を傷つけてしまったりすることがある。その時、もしも作業員が手伝って傷付けたらどうなる?」

「あっ…作業員のせいにする人が出てきます」


 眉を大きく下げた鈴木さんに、俺は「その通り」と大きく頷く。


「親切心から手伝うのは素晴らしいけど、責任の所在が曖昧な状態で作業するのはとても不味い。工場で働く人は、しっかりと事業主と契約を交わして働いている。そこに、契約も何も白紙のお客さんと、作業員の混在作業は双方にとって危険。だから、お姉さんは手伝えないって言っているんだ」

「なるほどぉ~」


 お~い。お姉さん?分かってないで断ってたの?そりゃ、トラブルにもなるよ。

 納得するお姉さんと鈴木さん。でも、その隣の佐川さんは腕を組んで唸る。


「でもよぉ。やっぱ、お年寄りを放置するのはどうかと思うんだけどなぁ」


 流石は警察官だな、佐川さん。正義感が強い。


「そうだな」


 俺も腕組みをして、考える。

 どうにかして、根本的な解決が出来ないものかと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
本日もお困りごとを解決し地道に女性ファンを獲得wメディア露出とかすると口コミとの相乗効果が出そうだ 流石の主人公も、法務上の隙の無い免責事項の定型文を書き起こし署名頂いて手伝ったりは…しないよね?w…
作業員は「決まりだから無理」でええんよ しつこいなら上呼ぶだけで今の説明してくれるはずや この世界でしてくれるのかはわからんけどwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ