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男だらけの世界の方が、何故か女性にモテるんだけど?  作者: イノセス


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49/54

49話〜かんぱーい!〜

「いやぁ〜。今回の仕事もヤバかったなぁ」


 ゴミ処理場を出てすぐに、後ろの席で佐川さんが感慨深くそう言う。

 それに、運転しながら鈴木さんが相槌を打つ。


「前回以上にヒヤヒヤしましたよ。原因がなかなか分からなかったですし、黒川さんも負傷しちゃうし」


 うっ。


「その節は、ご心配お掛けしました…」

「もう、ダメですよ?黒川さん。1人で無茶をしたら」

「気を付けるよ」


 本当に気を付けないとな。あれでも、まだ慎重になった方なんだから。

 もし鈴木さんから『無理するな』と言われていなかったら、きっと俺はバルブを閉めようと躍起になって、もっと脱出が遅れていただろう。下手すると、汚水に溺れていたかも。

 本当に、気を付けないと。


「まぁ、まぁ、鈴木ちゃん。黒川も反省してんだから、もう良いだろ?」

「佐川さんもですよ!」

「うへぇ~」

 

 本当だぞ?佐川さん。1人だけ関係ないみたいな顔してるけどさ。

 相変わらずの佐川さんに頬を膨らませた鈴木さんだったが、不意に「ふふ」と笑う。


「でも確かに、また上手く行きましたね。今回はみんなで頑張った感じがしますし」

「ああ、そうだな。俺1人だったら、こんな上手く行かなかったよ。この3人だから解決したんだと思う」

 

 鈴木さんはデータを纏めてくれたし、見落としていた部分を気付かせてくれた。危うい俺を正してくれたのも彼女だ。

 佐川さんにも色々助けられた。扉を閉じてくれたのは勿論、ピットの異変を察知してくれたし、いつの間にか職員さん達と仲良くなって情報を引き出していた。

 本当に、この3人だから出来たことだ。

 俺がそう褒めると、2人は嬉しそうな顔をする。佐川さんが声を弾ませる。


「ならさ、祝勝会しようぜ?」

「「祝勝会?」」

「おう。だってさ、あたしら頑張ったじゃん?工場が止まらなかったのも、あたしらのお陰だし」

「それは…確かにそうですけど。でも、黒川さんは帰らないといけないですし」


 鈴木さんが遠慮がちに視線を寄越してくるので、俺は手を振る。


「俺のことは気にしなくていいよ。どっちにせよ、今日退区する気はなかったから」


 前回もこのくらいの時間に帰ったら、大変な目に遭った。手続きで時間が掛かって、壁を出たのが深夜だったからな。タクシーに深夜料金たんまり取られてしまった。

 だから…。


「俺も賛成かな。また警察署に泊めて貰えるならな」

「よっし、決まりだな。あたし行きつけの居酒屋で、バーッと盛大に飲み明かそうぜ!」


 おーい。明かしちゃダメだろ?署に泊める気ないんか?


「私飲めませんよ?車なんで」

「代行頼めばいいじゃん」

「平日だから捕まりませんよ。そもそも佐川さん、まだ勤務中では?」

「うっ。それは…そうだけどよぉ…」


 と言う事で、我々は祝勝会の為にレストランへと寄った。

 でも、


「えっ?入店出来ない?」


 何を頼むかで盛り上がっていた我々に、予想外の反応が返って来た。

 店長らしき人が、俺を睨み上げる。


「他のお客の迷惑になるんで、帰って貰えませんか?」

「そんな、迷惑なんて。私達はただ食事を…」

「鈴木さん」


 食い下がろうとする彼女の肩に手を置いて、思い留まってもらう。周囲を見ると、こちらを不安そうに見ている人達ばかりだったからだ。「男?」「マジで?」という非難めいた声も漏れ聞こえる。

 無理をして入店しても、良いことは無いだろう。お互いに。


「ごめんなさい、黒川さん」


 店を出るとすぐ、鈴木さんが謝って来た。

 いやいや。


「鈴木さんのせいじゃないよ。男性に対して苦手意識があるのは、どうしようもない事なんだからさ」

「それは…でも…」


 納得出来ない様子の鈴木さん。そこに、佐川さんが軽快に手を叩く。


「うっし。じゃあやっぱ、あたしの行きつけ行こうぜ」

「でも…」

「大丈夫だって、酒は飲まない。飲まなくても美味いんだ、あそこの飯はさ。それに、店長ならきっと、男でも入れてくれるから」

「本当です?」


 鈴木さんが不安そうに聞く。彼女ではなく、俺の事なのに。

 優しい子だ。

 それに、佐川さんが大きく頷く。


「大丈夫だって。あたしでも入店出来るんだから」

「確かにですね」

「おい!なんでそれで納得すんだよ!」


 ごめん。

 俺も安心してしまった。

 

「いえ。佐川さんなら酔っ払って、色々やらかしそうだなって思ってしまって」

「それは…まぁ、否定しないけどよ」


 否定しないんかい!

 俺じゃなくて、佐川さんのせいで出禁になるのでは?


 そんな不安を抱えながら向かったものの、佐川さん行きつけの居酒屋は我々を迎え入れてくれた。佐川さんが酒を飲まず、俺をしっかりと監視するってのが条件だったけど。

 それって、彼女が酒乱だとかって意味じゃないよね?


「かんぱーい!」

「乾杯」「か、かんぱい…」


 豪快にグラスをぶつけてくる佐川さん。あまりの勢いに、グラスが割れないか心配なレベルだ。鈴木さんなんて、怖がってグラスを引っ込めながら乾杯してる。

 それでも、佐川さんは気にした素振りも見せずに勢い良く飲み干して、「ぷは〜っ!」と満足そうに息を吐く。

 ただの麦茶だよな?彼女の麦だけ、発酵してたりする?


「やっぱ、仕事した後の飯は美味いな。それが上手くいったら余計にさ」

「ああ、俺もそう思うよ」


 ここの料理が美味いのもあるけど、トラブルを解決した事も大きいだろう。そうでなかったら、飯が喉も通らなかったかも。


「なんかさぁ、今回お前達と一緒に仕事してて思ったんだけど、あたしって警察官よりこっちの方が合ってそうなんだよな」

「こっちって、私達の案件対応のこと?」

「そう。こう、足で稼いで、現場でバシッと決める。すげぇカッコイイじゃん」


 格好良いか。そう言ってくれるのは嬉しい。

 けどな。


「本来はもっと地味だぞ?データと睨み合いをして、対策を重ねて失敗して、会議を重ねてまた対策を考えるんだ」

「でも、2回とも派手だったじゃん?」

「それは…」


 それは、特区の設備だったからだ。ここは女性しかいない地域で、十分な技術も知識も得られない陸の孤島。だから、本来では起こりえない重大トラブルがポンポンと立て続けに起きた。2つのトラブルを対応して、俺はそれを痛感した。

 でも、それを口にするのは(はばか)られた。言えば、女性達を不安にさせてしまいそうだったから。

 どういうべきか困っていると、鈴木さんが助け舟を出してくれる。


「でも、警察官も立派なお仕事じゃないですか。佐川さんなら、活躍の機会も多そうですし」

「ないない。そもそも、特区で犯罪なんて滅多に起きない。あっても口喧嘩がエスカレートしたくらいだ」

「まぁ、満たされてはいるもんな」


 外から男達が沢山貢いでいるから、女性達が物資で飢えることは無いだろう。満たされていれば、犯罪も減る。

 完全に減るとは、思えないけど。


「だから退屈だったんだよ。ただドライブして、犬も食わない喧嘩の仲裁してさぁ」


 それは…確かに詰まらんな。転職したい気持ちも分かる。

 

「工夫次第ですよ、佐川さん。私も、ただデータを打ち込むだけの仕事が嫌でしたけど、色々工夫して楽しんでました」

「そりゃお前は、黒川が居るからだろ?」

「ひゃっ!?」


 小さく悲鳴を上げ、鈴木さんの手から箸が落ちる。俺がそれを拾って顔を上げると、そこには顔を真っ赤にした鈴木さんが。

 えっ!?どうした?鈴木さん。まさか…いや、そんな訳無い。俺は三十路のオッサンだぞ?


「にゃ、にゃにを言っているですか!佐川さん!」

「なにを怒ってんだよ?事実だろ?あたしも黒川と一緒に居て、すげぇ楽しいんだ」


 えっ?

 突然の告白に、今度は俺が顔を熱くする。

 面と向かって言われると、凄く恥ずかしいな。加えて、それを言ってくれたのがこんな美女だから、余計に心が浮足立ってしまう。ついつい、口元が緩んでしまった。


「はっは、済まない。年甲斐も無く喜んでしまった」


 俺は気恥しさを紛らわせようと、首の後ろに手を置く。

 そうして自然と下がった視線の先で、少し赤い鈴木さんの顔が俺を覗き込んだ。


「くっ、黒川さん。私も、その、貴方と一緒だと、とても勉強になってですね。ですから、何時も感謝していて」

「鈴木さん」


 一生懸命に感謝を伝えてくる彼女を見て、俺は心が満たされる。

 オーバーフローする。


「ちょっ!なんで黒川さん、泣いているんですか!?」

「済まん。歳をとると、どうも涙腺が緩くなっちまって」

「歳って…私と5つしか違わないじゃないですか」

 

 そうなんだけどさ。君達の、あまりにもピュアな心が目に染みたんだよ。

 俺が目頭を押さえていると、肩をバンバン叩かれる。

 見えないけれど、100%佐川さんだ。


「青春だなぁ。よしっ、お姉さんが一杯奢ってやるよ。お~い、店長!」

「ちょっと、ダメですって、佐川さん。お酒はNG」

「いいじゃんよ、ミヤちゃん。ちょっとくらい」

「み、みや、ちゃん?」

「おう。美夜子って言うんだろ?だからミヤちゃんだよ。可愛くていいだろ?」

「かっ、かわいい?」


 頑張って目を開けると、さっきと同じくらい顔を赤くした鈴木さんが見えた。

 あまり、こうやって呼ばれ慣れてないのかな?

 微笑ましく思っていると、机の上にドンドンッと、ジュースと料理が並ぶ。

 店長だ。


「楽しそうだね、カンナちゃん。これ、サービスね」

「うぃ~っす、店長。サンキュ~」

「済みません!ありがとうございます」

「良いよ、良いよ。店が明るくなって、客足も増えてきたから助かってるよ。男が来た時は、どうなるかと思ったけどねぇ」


 店長さんが意味深な目をこちらに向けて来るから、俺は背筋を伸ばして「突然すみません」と謝っておいた。

 すると、店長は破顔する。


「あんた、普通の男と違うね。気持ち悪くないし、寧ろ見てると気持ちがフワフワして、こんなおばさんが若くなった気分だよ」

「そ、そうですか?」


 なんか懐かしいノリだな。まだ学生だったころ、近所のおばちゃん連中に同じような事言われたよ。

 でも、この世界は女性が希少な世界で、男を嫌悪している。それでも俺に好意的になってくれるなんて…この人が良い人だからだろうか?それとも…。

 店長さんに期待を寄せていると、彼女は「まぁ、でも」と振り返る。棚の上に乗ったテレビを見て、頬を染める。


「流石に、スバル様程ではないけどね」


 そのテレビの中では、スバル様がハニカミながら踊っていた。店内の客は殆ど、その姿に釘付けになっている。その全員が、店主と同じ乙女の顔になっていた。

 相変わらずキャラ強いな、スバル様。

 この時の俺は、こんな感想しか抱けなかった。

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― 新着の感想 ―
一般の男はDNA弄られてんのかってレベルで愚鈍になってるからなぁ
持たざる低ランク男性集団が特区へのテロを企むどころか、特区から押し付けられたゴミという名の、超お宝 グッズを漁る権(さすがに男性管理局員がその辺取り締まってるとは思うが)を巡り奪い合いそうな世界だしw…
リアルな男が野蛮で汚いと思われてる以上、理想を演じる男装の麗人は最強よな…。
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